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人はスーツケースひとつでも生きられる

住居を移ると、いかにゴミ(不用品)に囲まれて暮らしているかに気づかされます。そんなリアルを、ニューヨークから一時帰国中の私がレポートします。

入国の水際?顛末はこちら。私のツイートにコメントが付いてリツイートされたものです。

“ポニーテール”シリーズに憧れて

テレビ・ドラマにもなったこちらの80’s小説シリーズ。ドラマーを目指すヒロインは、白Tシャツとジーンズが定番スタイル。「所持品はスーツケースひとつだけ」という、風任せのポニテ・ガールです。

きっと可愛いんでしょうね。「自分に自信があるからそんなことができるんだ」と、当時は眩しい思いで読みました。

ところが、必要に迫られてみたら、普通にできました!「できるわけない」とたいていの人は思うからこそ、小説の設定として成り立つのでしょうが……。

実は誰にでもできることだと判明。

昨年秋、かさばる家財以外全て引き揚げた緊急帰国から、本当にスーツケースひとつでNYに戻っちゃったんです。この感染症状況で先が読めなかったので……。

必需品の電子ピアノとパソコンは、「あちらで買って、要らなくなったら売ればいい」と……。

ホテル・ステイっぽい生活

ホームレスの人って、意外に物持ちですよね。「拾えるものは拾って」カートに山のように積んでたり。(日本ではあまり見ないか……)

これ、住む場所がある人にもありがちでは? で、今回は何を買うにも「本当に要るものか?」と考えました。結果、かなりミニマルなNY生活に。例えば、近所にブランド家庭用品のアウトレットがあるので、以前は素敵なコーヒー・カップを見つける度に買っていました。

毎朝「今日はどれにしようかな」と選ぶのは楽しかったけど、結局飽きてしまうんです。で、また別のが欲しくなって……w

でも今回は、人気のカフェでも使われているこちらの耐熱マグ($3.50)ひとつで通しました。

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やってみた感想は、「ホームレスっぽい」の真逆。ホテルのルームサービスではいつも同じ食器が供されますが、それ的な贅沢感が味わえました。

アメリカ不良品地獄での気づき

さて、肝心の商売道具。中古のMacBookを買ったはいいけれど、電源ケーブルを抜こうとしたら金具だけ本体に残してすっぽ抜け!

すぐにアマゾンに電話して、代替品を送ってもらいました。「証拠写真が要りますか?」と聞いたら、そんなの要らないって。向こうはユルい社会です。訳のわからない文句をつけてくるヤツはいくらでもいるので、さっさと要求聞き入れた方が早く仕事が終わる、みたいな……w

アメリカは「100個の製品が要る時、120個作ればそのうち100個は合格品」のアバウト世界。詳しくはこちら、以前の記事にて。

それとなんと、新品の電子ピアノの調律が狂いました!ある朝弾いたら、「何、この曲?!気持ち悪い!」チューナーで測ったら、半音の1/10ほど低くて……。

アマゾンのサポート担当者がたまたま音楽やってる男の子で、二人でオンライン・マニュアルを見ながらあれこれリカバリーを試しました。そこからメーカーにも電話を繋ぎましたがラチあかず……。返品・交換になりました。

逆に、日本は優れた品質管理で不良品を出さない文化なので、断捨離が難しそう。

だって、失敗を許さない文化ゆえに、みんな必死でお仕事しています。そうして手をかけて作られた物を、ポイ捨てはしづらいですよね。今回の私みたいに「要らなくなったら売り払う」方式は、アメリカほどには浸透しなさそう。

さらに、いつでも何でも(ピアノでも)捨てていいアメリカに比べて、日本のゴミ捨てルールは煩雑。ゴミ屋敷を推進しているように見えます。 

パリジェンヌ流にオシャレになるには

衣類についてもコーヒー・カップと同じで、着回しのきく数着だけで事足りました。(スティーブ・ジョブズ方式?)

よくある、パリジェンヌ流の”少ない手持ち服でコーデ・バリエ”指南の本。フランス語を勉強中だから興味はありましたが、実践には至っていませんでした。なぜなら、それを始めるために新しく服を買わなくてはいけないと思っていたから。

Non, non!  ありもので応用すればできます。(とエラそうに言って、実はその手の本をちゃんと読んだことはないのですがw) 

ご参考までに、今回持っていった服は――スカート2, パンツ2、トップス(薄)4、(厚)3、ワンピース1です。美容院に行けなくて髪が伸びてしまったので、ヘア・アクセを買い足してアレンジを楽しんでいたのも、コーデに幅ができた要因かも。

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いつもオシャレなデザイナーの親友アナ。服やアクセを選んでもらってます。これはニューヨーク最後の夜、アナおすすめのジョージア料理店にて。

まとめ〜片づけの魔法はロケット方式で

以上の流れは、薬品・文房具etc.についても同様。基本の何品かで何不自由なく生活できます。食器類・キッチン用品は主にルームメイトから拝借。

お気に入り品が詰まったスーツケースひとつで生きられるなんて、ユートピア小説を地でいくよう!

かといって、アメリカでも大人気のコンマリ魔法流に、「ときめかなければ捨てる」とは割り切れません。物と心は繋がっていて、愛せない不用品でも捨てるのが辛いこともあるから……。

私の場合、コーヒー・カップを買ってばかりの頃は、アメリカ音楽業界トライアル中だったんです。不用品を買い込むようなこの気晴らしにも、エネルギーをもらっていた気がします。

無事にデビューした今は、ロケットで言えば発射ブースタを装着した一段目を切り離す時期かな、と感じています。身軽になって、広い宇宙に飛び出すために……。

人によってその時期はまちまちじゃないでしょうか。例えばある日、誰かの言葉にむしゃくしゃしたり傷ついて、たまらなく物を捨てたくなるかもしれません。それが魔法のタイミングかも!

私が日本で担当していた歌手のヒット曲の歌詞に、”スーツケースをひとつ提げて”というのがありました。恋に破れ、想い出の街から去っていく女性の旅情が共感されたようです。

新しい冒険が始まる4月。あなたはスーツケースに何を詰めるでしょうか。傷心? 決意? それとも希望?

スーツケースひとつの方も、それ以上の方も、どうぞ良い人生の旅を!

冒頭の写真はJFKから離陸直後の帰りのJAL便から。微かにマンハッタンのビル群が望めます。