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温泉むすめの画期的な点

はじめに

各温泉地ごとに2次元キャラクターを作成し、コンテンツ化している温泉むすめ。私が思うこのコンテンツの画期的な点は「キュレーションメディアになっていること」だと考える。

私が執筆を試みる理由は、自分の主張を伝えたいからというのもあるが、この観光業界自体についてまとめておきたいと思っているからでもある。なので、前提知識として観光業界についてもまとめている。温泉むすめをきっかけに地方に興味を持った方もいるのではないだろうか。そのような方の一助になればとも思っている。
また、多数補足として様々なテーマを取り上げている。賛成か反対かなど何か考えるきっかけになればと思う。論旨に深く関わるものでもないので、読み飛ばしていただいて構わない。
展開の仕方だが、まず観光業界自体を概観していく。具体的には観光の成立要素を分解し、分解した要素を観光の歴史に照らし合わせて理解を深めていくことを試みる。次に、現在の観光に欠かせない存在であるだろう地方自治体や観光協会について紹介する。そして最後に、観光をマクロとミクロの視点で捉え、構造を捉え、観光業界の概観を実現する。
次に、私の考えるインターネットメディアの成功条件を紹介し、当該コンテンツとその条件を照らし合わせ、私の主張を試みる。

数点注意点がある。
・私が論じるのは温泉むすめというコンテンツ自体の画期的な点(特にメディアの観点から)である。温泉むすめ運営の提供する個別具体的なサービス展開などについては言及しないことをはじめに断っておく。(主にファンベースの観点から論じてはみたいが)
・私は地域活性に携わっているものではない。なので、専門的実務的な話はできないし、間違っているかもしれない。地方ビジネスを考えていてリアルな話を知りたい方は木下斉の『地元がヤバイ…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』などを読むと面白いと思う。
・長い文章になるので、ゆっくり読み進めていただければと思う。削ろうと思えば削れてコンパクトにもできたのだが、なにぶん伝えたいよりも書きたいという想いが先行してしまったため、こうなってしまった笑。読むのが面倒な方は1章を読んだら4章に進んでもらえればと思う。2,3章も面白く書いたつもりなので、読んでもらえると素直に嬉しい。

目次
はじめに
1. 観光の成立要素
2. 観光の歴史
3. 観光協会と地方自治体
4. 観光業界の構造
5. 観光とインターネットメディア(検索とツイッター)
6. インターネットメディアの成立条件と観光業界へのあてはめ
7. キュレーションメディアとしての温泉むすめ
おわりに

1. 観光の成立要素

まず、観光がどのように成立するのかを分解して考えていきたい。私は成立要素を、①観光客がいること、②観光インフラが整っていること、③観光資源があること、④観光客が観光したいと思うこと と分解する。それぞれ見ていこう。
①観光客がいること
例えば余暇時間の全くない世界だとしたら観光客になれないため、観光が成立しない。
②観光インフラが整っていること
観光インフラとは、道路交通網が整備されていること、旅館やホテルなど宿泊施設があることなどが挙げられる。
③観光資源があること
観光資源は有形無形を問わない。言い換えるならば、観光客が観光する目的となるもの全部が観光資源といえよう。特定の建物だけではなく、特定の人物、思想、イベント、その地に行くこと自体なども含まれ、一般的に複数の目的で観光する。
「その地に行くこと自体」とは、その地に行ってツイッター等で報告すれば目的を達成できる状態を意味する。インスタ映えな料理を撮って投稿すれば満足するようなインスタグラム的な価値観に近しい。言わば、本質(料理の味)よりも外(料理の見た目)を重視する姿勢である。
私は高山匠美という高山温泉のキャラクターが好きだが、高山に観光に行ってツイッターに報告した時、何とも言えぬ満足感を得た。そういう感覚は皆さまにはないだろうか。本質(観光の内容)よりも、外(観光に行ったこと自体)で目的が達成されるのだ。
④観光客が観光したいと思うこと(観光客がその地に行きたいと思うこと)
必ずしも観光客が観光したいと思う必要はないのだが、大方必要になる要素だと考える。この要素において、メディアは大きな力を持つ。

現在、①と②は大方達成できているとみていいだろう。キーとなるのは③と④、後述するが、特に観光業界の構造上④が難しいと考える。そこに現れたのが温泉むすめというコンテンツだ!というのが、私の主張である。

簡潔ではあるが、観光の成立要素を把握できた。次は成立要素を頭に留めつつ、以下の点に注目して観光の歴史をざっと振り返りたい。
「観光インフラの整備」
「観光目的の娯楽化」
「観光客(日本人)の変化」
「マスメディアが与えた影響」

補足:インスタグラム的な価値観
インスタグラム的と称したが、この感覚は昔の「誇示するために高い車を買う人の気持ち」と近しいものであり、別段新しいものではないと考える。そして、悪いことでもない。外(誇示したい気持ち)から入り本質(車の良さ)に気づくこともある。観光旅行も同様で、キャラクターが温泉地に設定されているからという理由から、その観光地や観光資源の良さを知ることもあるのだ。
そのことに近い表現を東浩紀は『ゲンロン0観光客の哲学』でしており、「郵便的」と名付けている。
"郵便的とは・・・むしろ 、誤配すなわち配達の失敗や予期しないコミュニケ ーションの可能性を多く含む状態という意味で使われている・・・。観光はまさにこの意味で 「郵便的 」である 。ぼくたちは観光でさまざまな事物に出会う 。なかには本国ではけっして出会わないはずの事物もある 。たとえば美術にまったく興味がないひとも 、フランスやイタリアに行けば美術館めぐりをしてみたりする。"
(終)

補足:高山匠美
えらい可愛い。めっちゃ可愛い。
https://note.mu/onsen_musume/n/nceeae70aef94
これみてください。もーーー可愛いしかないし、なんっっっって心優しいんだ……
イラスト担当のらぐほのえりかさんが最近描いてくださった高山匠美ちゃん、えーーーーーーーーーーーらい可愛いので、是非チェックしてもらえたらと思う。
https://twitter.com/ragho_net/status/1096334462315446273?s=21
(終)

1. 観光の歴史

この章の前半部分は私の主張とは外れる部分であるため、読むのが面倒な方は後半部分(大競争の時代)から読んでもらえればと思う。

地域観光の歴史において、NHK『ダーウィンの海〜超巨視的産業学〜case.温泉街』では、
①1945年までを発生の時代
②1945〜1991年までを大競争の時代
③1991〜2011年までを低迷の時代
④2011年〜を再生の時代
と区分していたので、そちらを利用して考えていきたい。

〜発生の時代〜
そもそも「観光」の語源は古く、約二千年前の中国『易経』まで遡る。
詳述はしないが、須田寛の『日本の観光きのう・あす・いま』によると、元々観光とは
"「地域のすぐれたもの 、美しいものを多くの人々が心をこめてみ 、かつ学ぶこと 、またそれのためにその美しいものを地域をあげて心をこめてみて貰う 」よう努力をすること 、それによって 「人的交流を促進すること 」"
であると要約している。
ただ、この感覚を持って観光をしている人は多くないだろう。恐らく殆どの人は、単純に楽しさを求めて観光している。では、今のような娯楽的感覚で楽しむ観光はいつから始まったのだろうか。

江戸時代までの観光の主な目的は宗教的な性質を帯びており、現在とは大きく異なっていた。観光というよりも、修行と言った方が正しいかもしれない。また、富裕層や高貴な人々しかまともに観光することはできなかった。
※温泉は主に禊や湯治の場として利用されていた。ちなみに、歴史の教科書でよく名前が挙げられる行基や弘法大師、平賀源内などは温泉を発見したとされていることでも有名である。

一般大衆まで観光が普及したのは明治時代からである。観光インフラ(前章②の要素)が整えられ、観光客(前章①の要素)が旅行できるようになったのだ。その時、観光はビジネスとなり観光目的の娯楽化が起こった。具体的には、修学旅行や大型団体観光旅行が行われるようになり始めた
【観光インフラ】
明治維新×インフラで容易に想起されるのが、恐らく鉄道開通だろう。しかし鉄道だけではインフラは整備されたとは言えない。道路や宿はどうしたのだろうか。
実は、道路や宿は江戸時代に大方整備されていたのだ。なぜならば、参勤交代制度によって道路や宿駅の整備が不可欠だったからである(小中学校などで暗記させられた知識が何かのプロセスになっているのを発見するのはとても心地いい。これぞ読書や思考を巡らす醍醐味の1つだと勝手に思っている)。
また、観光はビジネスである。そのため、お金が必要だ。明治政府は新貨条例により貨幣の統一を試みていたため、その影響も少なからずあると考える。
【観光客】
インフラが整っても観光客(①の要素)がいなければならない。そのためには、労働者階級が力や一定の富を持ち、余暇時間の存在する大衆社会を築いていなければならなかった。それを可能にしたのが産業革命である。
【観光目的の娯楽化】
なぜ江戸時代まで主に宗教的な観光であったのが、明治時代になって急に娯楽化したのか。
それはトマス・クックの存在が大きな要因である。
観光ビジネスの始まりは19世紀に活躍したトマス・クックによる。鉄道を利用した最初の団体旅行を企画した人物だ。それだけではなく、ガイドブックやホテルクーポンなどの手法も考案し、1872年には世界一周ツアーも実現した。恐らく日本は彼を参考に観光ビジネスを展開したのだろう。

ケーススタディ:熱海の発展
観光インフラ整備の重要さの例として、熱海を取り上げる。熱海は観光地として大人気であることは言わずもがなであるが、その端緒は1934年丹那トンネルの開通にある。このトンネルにより東海道線が熱海を通るようになったのだ。
それをビジネスチャンスとした旅館王 王野甚松は300人収容の大規模旅館施設やローマ風呂を建設し、多くの観光客を呼ぶことが出来た。

〜大競争の時代〜
戦後の時代である。観光をする主体は日本人であるため、まずは戦後日本人はどのような価値観が形成されていたのかを見ていく。
落合陽一の『日本再興戦略』によると、
"1945年以降の日本は、足並みをそろえ、官僚がトップダウンで政策をつくった世界だったので、一個人は自分の考えを明確に持たなくてもいいように筋道がたっていました。"と書き、高度経済成長は「均一な教育」「住宅ローン」「マスメディアによる消費者購買行動」によって達成できたと述べている。つまり均一な教育を与えた前提で、住宅ローンにより家計のお金の自由を奪い、マスメディアによる世論操作を行い、需要喚起していたのである。均質的な価値観のもと、マスメディアにより均一的な幸せの在り方(家族を持つこと=幸せなど)が提供され、それに従って消費者購買行動を行なっていたのである。
【マスメディアが与える影響】
SNSなどなく、テレビやラジオくらいしかなかった時代を想像していただきたい。テレビやラジオが情報として絶対的な力を持つことは容易に想像できるだろう。そこで、「この車を持ってる人はめちゃくちゃイケてる!」というCMが流れたらどう思うだろうか。このCMは他の人も見ている、つまりこの車を持てばめちゃくちゃイケてると思われる可能性が高いと考えはしないだろうか。
今はSNS時代なので、個人主義的で自分なりの独自の価値観を持つことが必要な時代になっている。オリジナリティが求められ、センスが問われたりもする。そのため、そのような均質的な価値観に違和感を覚えるかもしれない。

補足:幸せ
そもそも、幸せという概念は明治時代以降の産物と言われている。自然体でいればいいのに、メディアなどが幸せを定義するため、その幸せを求めてしまう「幸せ依存症」となっている。
SUPER BEAVERというアーティストの楽曲『美しい日』の中で、
"もしかして幸せは、訪れるものでも待ってるものでもなくて、今ここにあることに気が付くものなんじゃないかな。"と綴っている。
また、エーリッヒ・フロムは『愛するということ』の中で、
"今日の人間の幸福は「楽しい」ということだ。楽しいとは、何でも「手に入れ」、消費することだ。世界は、私たちの消費欲を満たすための1つの大きな物体だ。私たちは限りない期待を抱き、希望を失わず、それでいて永遠に失望している。"と書いており、考えさせられる。
(終)

補足:個人
明治維新により近代的な個人が目指された。昔は長屋に住み、近くの人々との交流は密であったが、今は隣の人の名前さえ分からない。個人主義故に孤立を招いたのである。また、昔は子どもを地域で育てていた、今は家族のみによって育てられている。それ故に不幸なことが起きているのは最近のニュースでよく耳にする。個人主義的な感覚と共同体的な感覚、両者並存の価値観を意識することが求められているのではなかろうか。
実際模索はされている。
麻生内閣時の財務大臣であった中川昭一は、『飛翔する日本』にて、教育の究極の目的は均質ではなく人間として生きていくための力を得ることと述べている。それを達成するために、家庭と地域社会の重要さを説いている。
また、2018年7月に行われた小泉進次郎と落合陽一によるニコニコ生放送番組『平成最後の夏期講習(社会科編)人生100年時代の社会保障とポリテック』の子育ての章では、核家族化による子育ての家族負担増の課題を挙げた上で、その解決策として「手が空いている人材(高齢者など)に子どもの面倒を見てもらえるサービス」「子育てに携われる地域コミュニティの再構築」を考えていた。
(終)

それでは、戦後日本人の均質化が与えた観光への影響を見ていこう。
落合陽一がNHK『ダーウィンの海〜超巨視的産業学〜case.温泉街』にて、「客がコモディティ化すると、街もコモディティ化する」と述べている通り、客の均質化=ニーズの均質化は街の均質化につながった。ただ、テレビなどのマスメディアの影響力もあり、観光業界は大いに盛り上がった。ある観光旅館のテレビCMのキャッチフレーズが流行語にもなったくらい、CMが打たれていたという。熱海では動物ショー、草津では湯もみショーなども企画されるようになり、団体旅行者を主なターゲットとして、観光客の取り合いが起こっていた。それはこの時代の生存戦略としては正解だった。バブル崩壊が起きるまでは。

補足:マスメディア
マスメディアは立法・行政・司法に続く「第4の権力」と言われるほど、特に世論操作において影響力は大きい。上述したように、個人の価値観でさえも操作することが可能となっている。
(終)

〜低迷の時代〜
バブル崩壊により低迷の時代を迎えることになった。低迷の時代に入ると、日本人はある疑義を持つようになる。
上田紀行『生きる意味』によると、
"私たちはこれまで常に「誰かが意味を与えてくれる」ことに慣れていた。子どものときは親が意味を与えてくれる。学校が意味を与えてくれる。そして就職すれば会社が意味を与えてくれる。そのように社会の側が私たちの「生きる意味」を与えてくれていた。しかし、いまやその「与えられる」意味を生きても私たちに幸せは訪れない。"と述べており、この大きな変換点がバブル崩壊だったのではないかと思料する。国、社会、会社など、意味を与えてくれた存在の信用に傷がついた瞬間だからだ。
バブル崩壊による観光客の減少により、広告効果があまり期待できなくなったため、費用の観点からマスメディアの影響力を利用することは有名観光地以外では難しくなっていった。また団体旅行よりも家族旅行や個人旅行など、少人数での旅行がスタンダードとなっていった。大集団から小集団(或いは個人)へ、この変化に各観光地は対応しなければならなくなったのである。

補足:生きる意味
インパルス板倉は新R25のインタビュー『「僕はイライラしたまま死ぬ」インパルス板倉に"創作の源"をきいたら、想像以上の鬼才だった』にて、
"「人生ムダじゃない」ってことを逆算的に結論づけてくれるから、宗教とかがあるんだって思うんですよ。・・・今は、頑張ることの意味を自分で設定して、「自分で哲学をつくって生きたらいいんじゃないか」と思ってます。"と述べている。
私は、これまで生きる意味は親、自然、神、宗教、国家、会社、マスメディアによって虚構的に与えられてきたものだと思う。しかし板倉の言う通り、今は自分で自分に頑張る意味、生きる意味を与えなくてはならない時代に突入していると思料する。
しかし、AIの登場によりその考えはまたかわってくるのではないかとも思っている。個人の情報を集積したAIは好みなどを判断・提案でき、「自分自身よりも自分のことを知っている存在」として定着したら、そのAIの判断に無根拠に従ってしまうのではないだろうか?それは、AIに生きる意味を与えてもらっているのか、AIの情報は自分自身の蓄積に過ぎないため、自分で自分に生きる意味を与えてるのに等しいのか…果たして。
モリス・バーマンの『デカルトからベイトソンへ〜世界の再魔術化〜』において、世界は高度なテクノロジー時代に入ると再魔術化すると述べている。錬金術など合理的な考えを必ずしも持っていなかった科学革命前の時代を魔術の時代と呼び、科学革命以後の合理的な時代を脱魔術の時代とマックス・ウェーバーは名付けていて、ITにより再魔術化してしまうというのだ。AIがそうなるのかならないのか…注目していきたいところである。
※再魔術に関して、アドルノとホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』も有名。メディアによって見せかけの多様性や価値に振り回されてしまい、均質化していき、最終的には制度の奴隷になっていく様を批判している。
(終)

〜再生の時代〜
2011年以降、観光客は増加の一途をたどっている。その大きな要因は、言わずもがなであるが外国人観光客である。そしてそれは、メディアの影響力がとても大きい。
少し驚かれると思うかもしれないが、2017年4月~6月の外国人観光客伸び率1位に輝いたのは徳島県である。理由は、祖谷(いや)温泉が外国人にバズったからある。蔓橋と露天風呂、とても魅力的なところで私も是非とも行きたい(誰か行こう!)
それでも、なぜバズったのだろうか。それは、外国の雑誌で祖谷が紹介されたからである。逆に、それだけだったのだ。メディアの影響力というものは凄いものがある。
ただ、日本人観光客数は増加しておらず横ばいを続けている。バブル崩壊やSNSにより均一的な価値観ではなく、個々の価値観を大切にする傾向のある日本人が増えているため、そこに合わせた戦略を持つ必要がある。そのためには、イメージターゲットを定め、前章に述べた③と④の構築をすることが不可欠だと考える。

さて、観光の歴史や今を概観して、観光がどのようにして成り立つようになったのか、日本人(観光客)はどのような価値観になっているのかなどをざっと見ることができた。
また、祖谷温泉や高度経済成長の時代の例のように、メディアの影響を用いて観光を盛り上げていくことが大切だと改めて考えさせられた。

次は、観光地に欠かせない存在になるだろう地方自治体や観光協会について、簡潔に紹介したいと思う。次の章は完全にメモ書き程度であるので、飛ばしてもらって差し支えない。

補足:バズる(長すぎる笑)
SNSなどにおいてバズを起こすこと(ブームを起こすこと)が重要であると考えられているが、果たしてそれだけで良いのだろうか。
CIVILIANというアーティストは、楽曲『僕ラノ承認戦争feat.majiko』にて、”野良猫が鳴いていました。動画に撮って公開しました。それを見た人間がみんな好き勝手言ってました。「呑気な顔して可愛い」だとか「みすぼらしくて可哀想」だとか。一度眠って目覚めたらもう忘れてました。”
と綴っており、ブームも同様で、すぐに忘れ去られてしまう。なので、ブームを起こし、顧客を惹きつけ、継続して関わり続けてくれる関係を作ることが一番重要であると考える。そのことをムーブメントと呼ぶことにする(このブームとムーブメントの違いはラップバトルのUMB2018春選抜大会におけるBASEvs早雲において、BASEが使用した表現である)。
最近、Vtuberの斗和キセキがまさにムーブメントを起こしたと思う。ブームを起こした一回のツイートだけではなく、今も彼女のツイートのリツイート数はとても多い。詳細は
斗和キセキがレッドフレーム改でバズったのは奇跡じゃない」を参照していただければと思う。私もこのブログの内容に同感で、特にツイッターが面白ければフォロワーが増える部分に大いに共感した。Vtuberはツイッター映えしやすいと考えていたためだ。あくまで個人的な憶測(偏見)に過ぎないが、
①Vtuberのようなキャラクターものが好きな人(オタク)はツイッターをしている人が多く、且つリツイートを比較的気軽にする傾向がある、
②Vtuberと人間とでは、Vtuberの方がキャラクター性に関して許容範囲が広いため、発言の幅も広くなる(ツンデレ属性は2次元だからこそとか)、
③キャラクターで運営するため、特定の思想や物議を醸すツイートは自然に控えられ、面白いツイートなどで埋められやすい(バズったツイートを見た人は、まずそのバズり主のプロフィールを確認し、数ツイート遡って面白そうならフォローするという行動をしていると思うため、埋められていることは結構重要な要素だと思う)
などによって、ツイッターと相性がいいのだろうなあと考えていた。
では、観光においてムーブメントとなるためには、観光客がどのような状態になっていることが理想なのだろうか。それは、
①何回も訪れてくれるようになること、
②友人などに積極的に紹介してくれること、
③何回も訪れることはなくとも、地域のクラウドファンディングなどに積極的に協力してくれるようになること

などが考えられるだろう。特に観光において②の影響力は大きいため、②の視点を持つことは不可欠だと考える。
理想的なファン作りに関しては佐藤尚之の『ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために』を参照したい。この本では、ファンをコアファンにし、そのコアファンにより潜在的なファンを呼んでくれるサイクルを作り出すことが大切だと述べている。「ファン→コアファンにすること」と「コアファンがファンを呼んでくれるようにすること」の2つに分解して戦略立てることの大切さを知ることが出来る本だ。今回、私が挙げた3つの要素のうちの①と②の要素に該当する。
では、もう少し②について掘り下げていこう。具体的に、自分がある観光地のコアファンになったと仮定して、想像してみてほしい。「ある観光地が好きで、2年に一度ほど訪れるくらい。観光地に訪れたら、SNSで料理や景色などをアップするのだ。今回もいい旅行だった。」
一見、このケースはSNSにもアップしてるから②の要素を満たしているのではないかと感じるが、私はあまりそうは思わない。少し考えてみてほしい。SNSにアップするのはなぜだろうか?
殆どの場合、「純粋に観光地を紹介したいからアップしてる!」というわけではなく、承認欲求や自慢や凄いものをシェアしてフォロワーに驚いてほしい気持などなどが入り混じっているのではないだろうか。
さらに言うなら、SNSにアップしてだれかが見たとする。その人はいつまで覚えてくれているだろうか?ブームの話と近いと思うが、情報量の多すぎるSNSではすぐに忘れてしまう。②が達成されているとは必ずしも言えないのではないかと考える。
それでは、②はどのようにすれば満たされるのだろうか?まずはコアファンの理想の状態を描き、その次にその理想の状態に達するためにできることの模索、という順序で考えてみることにする。
コアファンの理想の状態は「ほぼ毎日観光地についてSNSでつぶやいてくれる」「コアファンが友人に積極的におススメしてくれる」などが考えられる。毎日つぶやいてくれることを望むのは無理があるので、おススメしてくれるようにするためにできることを模索していこう。
おススメしてくれるようにするためには、
①おススメしたいと思わせる、
②コアファンはどんな感じでおススメしているかを考え、おススメしやすい環境を整える(きっかけを作る

 などが挙げられるだろう。
①に関して、例えば、複数人でないと楽しめないようなイベントが年一回開かれるとしたらどうだろうか。その人はそのイベントに行きたい。でも、複数人いないとならない。だから誘おう、とか考えてもおかしくない。
②はとても難しいのだが、環境を整えるというよりおススメするキッカケを作るという観点で、マスコットキャラクターのキーホルダーなどが挙げられると思う。コアファンがキーホルダーを付けることで周りの友人がそれについて聞き出してくれ、おススメしやすい感じになる。素人な考えで恐縮だが、他にも様々アイデアがあると思う。議論してみたい。
(終)

補足:「また来たい」と思ってもらうためには
「また来たい」と思ってもらうには、本来的には観光地で様々感動してもらうことが一番だと思う。
ただもう一つあるのであれば、それは観光客の帰り際に観光できていない場所(又は季節によって彩りが180度変わる場所なども考えられる)を提示することだと思う。短期間でその観光地を完全制覇できることは少ない。何箇所かはいけないことが多いのだ。観光客の帰り際はなんだか少し寂しい感情を持つ人が多いと思う。そのような状態で行ってない場所をババンと提示されたら、「また行きてえ!」となってくれやすいのではないだろうか。帰り際は暇な人が多いから、その時間をいかに再観光又は他者におススメしてもらえるように、印象付けたりすることが大切だと勝手に思っている。
(これは地域政策というよりも国のインバウンド政策で使える考えだと思っている。)
(終)

3.観光協会と地方自治体

観光協会について、詳しくはウィキペディアを見ていただければと思う笑。観光協会に関する本は読んでいないので、殆どそこからの抜粋だ笑。
活動に関しては、皆さまのご想像通りだと思う。私が注目したいのは、運営に関してである。
まずはお金周り。財源は地方自治体からの補助金、金融機関からの融資、会費、観光イベントの収入、各種団体からの観光に関する事業委託による収入などである。儲かる事業は中々できないと思うので、予算の範囲内でやり繰りしているのが基本的な姿勢となっていると思う。
なので、観光協会はそこまで大きな問題なくやってそう…と思われるかもしれないが、2018年3月に阿波おどりを運営していた徳島市観光協会が破産した。累積赤字額は4億円を超えていたそうだ。地方自治体との損失補償契約によって銀行から融資を受けていたため招いた結果であるが、詳しくは徳島県HP『徳島市観光協会の破産手続き開始について』を参考にしていただきたい。
上記URL内4ページ目に、なぜこのようなことが起きてしまったのかについての記述があり、「収支均衡に対する視点の欠如」「当事者意識の希薄さ」「会計・契約に関する不適正な経理」が原因だと述べている。これはとても重要な部分で、観光協会全体(行政組織全般か)に通じる問題なのではないかと思う。木下斉『地元がヤバイ…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』では、
"役所が予算なんか出してやってもあかん 。誰も身銭切ってないから本気にならへんねん 。儲かりもせんことにみんなで時間使ってりゃ 、そりゃ活性化どころか衰退するわ 。"
と述べられている。
このように、観光協会においてもビジネス的観点と当事者意識は必要不可欠なのだと思う。ちなみに、阿波おどり事業は民間委託するそうで現在募集中とのこと。良い判断だと思う。
次に、人材に関して。低年収で新卒採用などが行われることが少なく、定年退職者の温床になっているそうである。有名観光都市ならば話は別だと思うが、これだと若年層は入ってこない。仮に若年層が入ってきたとしても、強烈なトップダウン組織であることが想定されるため、中々意見を述べることができないなど組織構造的な難しさも出てくるだろう。

次に、地方自治体に関してである。詳細まで紹介すると広範すぎてしまうので、最低限に抑える。地方自治体は主に都道府県及び市町村のことを指す(他にもあるけど)。都道府県及び市町村と、観光協会とで協力し合って観光を盛り上げようとしているのだ。ただ、温度感の違いもあり、地方自治体はインバウンド客の増加を求めているが、観光協会はインバウンド客の増加をあまり求めていないことなどもある。そこで政策の食い違いが起きてしまうこともあるだろう。難しい問題である。

補足:若者と高齢者
最近は、高齢者ドライバーやコンビニで態度の大きい高齢者、感情論のみで若者を愚弄する高齢者などの影響で、若者と高齢者に隔たりみたいなものが出てきている気がしている。核家族化が進み、構造的にも高齢者と関わる機会が減ってきているのも一因であろう。
ハンス・ロスリングの『ファクトフルネス』では、ニュースの危険性を取り上げている。基本的に、ニュース番組は悪いニュースばかりをしてしまい、良いニュースは少ない。視聴者は悪いニュースばかりに引っ張られてしまい、そこで印象も悪くなってしまうのだ。
確かに、高齢者ドライバー問題は解決しなければならない問題であろう(地方に住んでいてほかの交通機関を使えない高齢者も多いため、難しい問題ではあるが…)。ただ、悪いニュースが増えても、悪い出来事が増えたとは限らない。問題を起こしているのは、高齢者の方々のごく一部に過ぎない。ステキな高齢者の方も沢山いらっしゃる。
超高齢社会なのだから、年齢層関係なく交流が出来ないのだろうか。精神が弱りがちな若者の横で高齢者が励ましてくれたり、高齢者の話を若者が聞いたり少しサポートしたりなどが、地域レベルで行えたらいいな、と私は勝手に思っている。
(終)

4. 観光業界の構造

それでは、観光業界をミクロとマクロに分け、構造で捉えてみたいと思う。
簡潔にするため、インバウンドは考えず日本人観光客のみで想定する。
主に国の視点だが、観光業界全体或いは複数の観光地を盛り上げようとする視点をマクロ視点、主に観光協会や地方自治体などの視点だが、自身の観光地を盛り上げようとする視点をミクロ視点と呼んで区別することにする。温泉むすめは1つの地域ではなく全体を盛り上げようとしているため、マクロ視点に該当する
ミクロ視点の立場では、基本的には自身の観光地のみの観光客数を増やすことを目的にしている。他の観光地の観光客が増えて自身の観光地が増えなかったら意味がない。
マクロ視点の立場では、観光自体の活性化を目的にしているため、偏りがあろうが観光する人が増えれば良い。全体の観光客数を増やす立場だ。
ただ、マクロ視点において注意してもらいたいのが、マクロ視点側であるインターネットメディアの場合は活性化を直接の目的にしておらず、インターネット広告による収入でビジネスをしているので、インターネットメディア閲覧数の増加が直接の目的となる
基本的な構造は以上の通りである。次に、マクロ視点のインターネットメディア、特にインターネット検索及びツイッターと観光について見ていきたい。

5.観光とインターネットメディア(検索とツイッター)

・インターネット検索と観光
インターネット検索にはセレンディピティ(偶然の発見や閃き)がないと言われているのを聞いたことがあるが、同感である。
検索したいことしか検索ができない。
「有馬温泉」と検索すれば、有馬温泉について出てくるだろう。逆にいうと、この検索では他の観光地はあまりヒットしない。
それでは、どこか観光したいが観光地が決まっていない場合どうするだろうか? そうした場合、おそらく「観光」や「旅行」のみで検索するか、「旅行 おススメ」みたいに調べると思う。大体、決まった観光地が出てきたりするだろうと思う。「旅行」で検索すると、JALなどのツアーが入ってしまう。
色々調べてみると気づかれると思うが、観光業界には多大な影響力を持っておりトップを走るキュレーションメディアが存在していない。つまり、幾つかメディアや観光紹介サイトがあるが、「観光と言ったらこのサイト見れば良いじゃん!」というのがないのだ。
普通あってもおかしくはないし便利そうであるが、何故なのだろうか。

・ツイッターと観光
ツイッターで検索してもらえればと思うが、ツイッターにおいては網羅的に紹介している観光紹介アカウントが殆どない。大抵、ある1地域の観光紹介アカウントだろう。あったら便利そうだと思うのだが、こちらもないのだ。何故だろうか。

観光業界の構造とインターネットメディアに関して整理が出来たところで、次に一般的なインターネットメディアの成立条件について見ていこうと思うが、その前にキュレーションメディアを再定義し直したいと思う。
キュレーションメディアとは、特定のテーマに対して情報が集まっているメディアサイトのことである。次の章では、さらにこのキュレーションメディアを3つに分解しているため、先に解説しておきたい。
情報と人間には2つの方向性しかない。人間が自ら情報を得る「能動」と、情報が入ってくる「受動」である。簡単なようだが割と難しい。例で考えてみよう。
例1:「有馬温泉 観光」と検索すること
これは能動的行動である。自分の欲しい情報が明確となっており、検索しているからである。
例2:「観光 おススメ」と検索すること
これは双方向性のある行動とする。検索している時点で能動性を有しているが、自分の欲しい情報がまだ明確になっていない。検索先の「観光地10選」などで、何か発見(セレンディピティ)を期待している。このセレンディピティを起こす性質を持つものを私は受動とする
例3:ツイッターで良い観光地が流れてくること
これは受動的行動である。何もしてないのに勝手に情報が流れてくるからである。
つまり、顧客行動から受動的キュレーションメディアと能動的キュレーションメディア、双方向性のあるメディアに分けることが可能となる。
私は、次の章では受動的キュレーションメディアをキュレーションメディアと称しており、能動的キュレーションメディアはそのまま、双方向性のあるキュレーションメディアは、双方向性キュレーションメディアと表現している点に注意してもらえればと思う。また、両者を合わせてメディアと称している。

補足:セレンディピティがない
私もこの件に関しては前々から感じていたし、これは私の主張の骨子となっている。
テレビの場合、観光番組などによりセレンディピティがある。一方のインターネットの場合、セレンディピティが成立しにくい。
自分の得たい情報しか手に入らないのは視野狭窄をもたらしかねない。なので、ツイッターで敢えて「絵画を紹介するbot」などをフォローするようにしている。ふとTLを見た時、知らないが良い絵画が見つかるようにしたのだ。自身でセレンディピティを起こせるように設計してみるのも良いのかもしれない。または、そのようなサービスのアイデアがあれば。。。
(終)

6. インターネットメディアの成立条件と観光業界への当てはめ

ここに関してはほぼ持論であるが、ある程度的を得ているのではないかと勝手に思っている。
早速、見ていこう。
そもそも、何をもって成立とするのかは色々な観点があると思うが、細かいことは気にしないでいただければと思う。
下記に列挙する項目全て対策している必要はないが、私は以下の要素がしっかり対策されていれば、成立しやすいのだと思う。
①制作費
1つの記事制作だけでかなりお金がかかる場合、継続が難しくなる。
②SEO対策で検索エンジンの上位独占されていない業界
折角良いメディアを作っても、大手などがSEO対策をめちゃくちゃしてるところだった場合、露出が難しくなる。
③情報を得る他の手段の有無
情報を獲得する手段は必ずしもインターネットメディアだけではない。ファッション業界の場合はZOZOのようなECサイト自体が半メディア化している。
④そのメディアで紹介する事象の性質自体、メディアにあってるか否か
情報の量を集めればそれで良いというものでもない。
⑤ビジネスになっていること
一般的なメディアは広告収入を貰っているように、ビジネスを成立させなければならない。
⑥SNS的であること
これは絶対条件ではないし、ケースバイケースだと思う。
⑦競争性の有無
独自性が出せない内容だと、さまざまな似たメディアが乱立する。結局はコンテンツ量とSEO対策の競争になってしまう。

それでは、以上のことを踏まえ、観光業界に当てはめてみよう。
①制作費
基本めちゃくちゃかかる。写真を勝手に転載することはできないので、わざわざ撮影しに行かなければならない
文章のみにすることもできるが、文章のみの表現で、観光したいと思う人は満足するだろうか?
②SEO対策
「旅行」で調べると、JALなどの斡旋サイトに飛ばされるため、少し対策されている。観光で調べるとじゃらんネットが出てきた。そこはマークされているのだろう。どちらにせよ、大手との競争は免れなそうだ。
③他の手段
JALなどの旅行斡旋してくれる存在がいる。
④メディアにあってるか否か
ここはよく考えなければならないところだと思う。前章にて分解したように、メディアを3つに分解して考えてみる。
私が今回想定しているキュレーションメディアとは行きたい観光地を調べられるサイト、或いはセレンディピティ的に偶然知らなかった観光地を見つけられるサイトとしての性質を持つものである。
能動的キュレーションメディアの場合、元々行きたいところが決まっていてインターネット検索した人(有馬温泉とか)が釣れればいいのだ。また、双方向性キュレーションメディアも同じで、おススメ観光地10選などと毎年のように作り、おススメで検索した人が釣れればいいのだ。両者の場合、広告収入で儲かるし、別に観光地を盛り上げようという気持ちはあまりなく、閲覧者数を増やす努力をする。そして、多くの観光紹介メディアは双方向性か能動的なのである。
さて、私はあまり観光はキュレーションメディアにあっていないのではないかと思っている。
観光庁の観るナビを開いてみていただきたい。
http://www.nihon-kankou.or.jp/
よくまとまっている、本当に。メディアの中で、一番情報があって良いと思う。ただ、これで行きたい観光地を調べたいと思うだろうか。
私はあまり思わない。
情報量が多すぎて何が何だか分からない。さらに、上部には検索エンジンがついてて調べる必要があるため、結局検索(能動性)から逃れられない(しかも、階層的に何回も検索する必要があり、面倒)。
⑤ビジネスになっていること
これは広告収入などでお金儲けはできるため、あまり難しくはない。
⑥SNS的(投稿式)であること
じゃらんネットはこれを導入している。
⑦競争性の有無
写真さえあれば誰でも作れる。さらに、独自性は中々出しにくいため、競争は激しくなりがちだ。

まとめると、「具体的に観光地を入力してくれて検索してくる人」と「旅行 おススメと検索してくる人」が釣れれば、メディアとしては大成功まではいかなくとも成立はすると考える。ただ、検索する=その観光地を既に知っているということになってしまい、おススメにおいては似通ったおススメの観光地が多い。知名度の低い観光地にとっては、特に厳しい状況だと考える。
キュレーションメディアとして「行きたい観光地調べ」や「知らなかった観光地発見」ができるサイトがないため、そこが求められる。
そう、それを実現しているのが、温泉むすめなのである

7. キュレーションメディアとしての温泉むすめ

温泉むすめはキャラクターを通じて、知らない観光地を受動的に発見することができる。これはシンプルであるが、色々考えていくと特別な要素だと思う。受動的に情報を入手したら、その後能動的になって「鈍川 観光」などで調べ、じゃらんネットなどで情報を確かめるようにもなるし、既存の能動的キュレーションメディアと住み分けができているのも良い。

温泉むすめをまたメディアの成立条件で見ていきたい。
①制作費
メディアとして大々的に使っていないため、メディア制作費はかかっていないが、温泉むすめのコンテンツとしての費用はかかっている。
ここで今後の制作費に関してポイントだと思うのが、温泉むすめは観光協会などとつながりを作っていることである。
観光メディアを作るためには、写真は必須である。なぜなら、ビジュアルで惹きつけられる要素が大きいからである。
温泉むすめの場合、観光協会などから写真の提供を受けることができ得るため、比較的安価にメディアコンテンツも作ることができる可能性も秘めているのだ。(やるかやらないかは置いておいて)
②SEO対策
これは観光業界全体に関する話なので、変わりはないと思う。
③他の手段
上述した通り、検索せずセレンディピティ的に発見できる観光紹介メディアは殆どない。マイナーな観光地情報へもアクセスしやすいため、良いと思う。
④飛ばし
⑤ビジネス
エンタメとしてビジネスになっている。経営状況は推測の域を出ないので何とも言えないが、このコンテンツは続いて欲しいと思う。
⑥SNS的
SNS的ではないが、ファンとの交流はあるし、地方イベントで地方とファンを接続させている。
⑦競争性の有無
どちらかというと、エンタメ業界の中での競争が大変である。

少しややこしくなってしまった。メディアの観点から考えをまとめよう。
温泉むすめは検索などせずセレンディピティを起こせるキュレーションメディアである。恐らく他の観光メディアはビジネスモデルが成立しづらかったり儲かりづらいなどの理由で避けていたため、穴が空いていた部分である。広告収入ではなく、エンタメという別のマネタイズ手法でそれを実現したのだ。さらに、他のメディアと違い、様々な観光協会と連携できており、観光地の写真の許諾などさまざまな優遇を得られやすいのではないかと推察する。

補足:観光がキュレーションメディアとして成立しにくそうだと思う理由
題名の通りだが、キュレーションメディアとして成立しにくそうだなと感じる理由は下記の通りである。
①そもそもマイナーな観光地を行きたいと思う人が多くない(名前の知れてるメジャーな観光地の中から選択する人が多い)
ただ、メジャーな観光地は人が多いなどの理由で、のどかな観光地を求める傾向はあると思っている。
②写真を集めるのが大変
③ビジュアル(写真)がありすぎると、それはそれで鬱陶しさが出てきてしまう

温泉むすめはいい感じに受動的に情報を入手できる観光メディアとして機能している。ビジュアル(写真)がありすぎもしないため、気になった娘を発見→観光地検索みたいな行動を促すことができる。

 おわりに

前の章でマクロとミクロに構造分けをした。このようなキュレーションメディアはミクロである観光協会などはできないため、多くの期待を背負っているものだと思う。(ミクロとマクロに分けた構造を使い忘れていたため、ここで笑)
まだ実は観光というコンテンツ自体の取り扱いづらさについて論じて主張を補強したい感があったが疲れてノックダウンしたため、また書く機会があればと思う。補足も4章あたりからめっきり減った笑。

温泉むすめのコンテンツはまだまだ発展途上で今後どうなっていくのかわからない。
温泉むすめで地域活性を達成するためには、まずはファンの獲得が必要になる。つまり、地域活性を大目的、ファンの獲得を小目的に分けられる。さらに小目的を分解すると、新規ファンを獲得する政策とファンのコアファン化を目指す政策などになるだろう。一例に過ぎないが、このように構造を分解し、運営は何を目的にこの施策を打ったのだろう?などを考えると、面白いかもしれない。(多数の利害関係者が関わるコンテンツだと思うので、単純に構造だけを見るとそれはそれで見誤ると思うが)
今後も、注目していきたい。

地方活性はとても面白いテーマであるので、実際に仕事でかかわってみたいし、何か個人あるいは少人数レベルでできることはないだろうかと模索していきたい。
(ビジュアル攻めで観光紹介ユーチューブチャンネルとかやってみたいんだけど、制作費ががが)

最後に、高山匠美と花巻吹歌をよろしくです!

参考文献
木下斉『地元がヤバイ…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』(ダイヤモンド社)
東浩紀『ゲンロン0観光客の哲学』(株式会社ゲンロン)
NHK『ダーウィンの海〜超巨視的産業学〜case.温泉街』
須田寛『日本の観光きのう・いま・あす』(交通新聞社新書)
佐々木信行『温泉の科学:温泉を10倍楽しむための基礎知識!!』(サイエンス・アイ新書)
横山和輝『マーケット進化論』(日本評論社)
落合陽一『日本再興戦略』(幻冬社)
SUPER BEAVER『美しい日』https://www.youtube.com/watch?v=RF8mlN45vOQ
エーリッヒ・フロム『愛するということ』(紀伊国屋書店)
中川昭一『飛翔する日本』(講談社インターナショナル)
ニコニコ生放送番組『平成最後の夏期講習(社会科編)人生100年時代の社会保障とポリテック』
上田紀行『生きる意味』(岩波新書)
新R25『「僕はイライラしたまま死ぬ」インパルス板倉に"創作の源"をきいたら、想像以上の鬼才だった』https://r25.jp/article/652800927805629580
落合陽一『デジタルネイチャー:生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』(PLANETS/第二次惑星開発委員会)
モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ 世界の再魔術化』(国文社)
アドルノとホルクハイマー『啓蒙の弁証法 哲学的断想』(岩波文庫)
CIVILIAN『僕ラノ承認戦争feat.majiko』https://youtu.be/-59su5Dq6AU
ULTIMATE MC BATTLE2018 THE CHOICE IS YOURS vol.2 [DVD]
「斗和キセキがレッドフレーム改でバズったのは奇跡じゃない」https://null.style/archives/2998
ハンス・ロスリング『ファクトフルネス』(日経BP社)
佐藤尚之『ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために』(ちくま新書)
ウィキペディア「観光協会」
『徳島市観光協会の破産手続き開始について』
https://www.city.tokushima.tokushima.jp/shisei/machi_keikaku/kankokyoukaihasan.files/kankokyoukaihasan.pdf

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