見出し画像

シネマレビュー: Casse-tête chinois(邦題:ニューヨークの巴里夫)

"Casse-tête chinois(邦題:ニューヨークの巴里夫)"を観た。2013年、フランス映画。『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』に続くトリロジー(三部作)の最終章である今作では、ロマン・デュリス演じる主人公のグザヴィエはとうとうニューヨークへ。

悩める20代前半の若者から始まり、小説家として成功しながらも未だに自由な行き方や幸せの在り方を模索してとどまることを知らない40代を迎えた彼が、今度はニューヨークを走りまわる。前作、前々作から続く複数の女性との複雑な関係性も本章でさらに面白くなった。 

三部作なので、今回で終わりかと思うと実は寂しい。この映画のファンはとても多いと思うが、わたしもその一人。特にヨーロッパに留学経験のある人でこの映画を知らない人はいないだろう。三部作の最後は、より話は大規模になったが、思い切りはっちゃけた感じでとても良かった。フランス語と英語でケンカしたり(片一方はフランス語しか話さず、もう一方は英語しか話さない。でもお互いの言語は理解ししている。その状態でケンカする。そのうちわたしたちもスウェーデン語と日本語でケンカするのかな、とエミールと話していた)、優柔不断に拍車がかかりとうとうすごい方法を選んだり。ショーペンハウアーやヘーゲルなど哲学者と対峙するシーンも良かった。 

スウェーデン語字幕で観たのだけど、ナレーションや大半の会話はフランス語と英語なのでわかるのだけど(フランス人監督にフランス人の主人公の英語なので)、今回はその他にもイディッシュ語、スペイン語、そして中国語が出てきてさらにインターナショナル感が増しててますますスパニッシュアパートメントだった。さすがに中国語で話している時にスウェーデン語の字幕はきつかった…でもこのロストイントランスレーション感は監督の狙ったものではないかとも思う。

邦題の『ニューヨークの巴里夫』は『巴里のアメリカ人』のパロディーだと思われる。エスプリが効いてますね。一章、二章では扱われなかったアジアが今回のメインになっていて嬉しかったし面白かった。アメリ好きにはオドレイ・トトゥが中国語を話してるのを見て驚いて欲しい!

監督のセドリック・クラピッシュの映画は"Chacun cherche son chat(邦題:猫が行方不明)"も独特の雰囲気を持つ映画で非常に良い。

90年代のパリの魅力が存分に伝わってきてウズウズする。行きたくなる。もうないけれど。90年代のパリ。若いロマン・デュリスくんも出ている。

夏のパリは暑くてけだるくて、みんな避暑地や海のそばにバカンスに行ってしまって街は空っぽになる(そこではみんなサガンの『悲しみよこんにちは』やカミュの『異邦人』みたいな生活をする。もちろん事件前までの生活だ。若しくはフッツジェラルドの『夜はやさし』のモデルになったマーフィー夫妻の避暑地での過ごし方(『優雅な生活が最高の復讐である』)みたいな生活をする。要は毎日朝から晩まで海に飛び込んで?、夜はワインを飲んで読書をしたりする)。猫を探す主人公とバスティーユ界隈に住む人々のほのぼのしたやりとりが心を和ませる。

主人公の雰囲気やファッション、ライフスタイルも可愛い。フランス好きの人をはじめ、ぜひ色んな人に観てもらいたい映画。

--------------------------------------------------------------------

【過去テキスト】

シネマレビュー: Land Ho!

https://note.mu/minotonefinland/n/n1f7e8e240883

1年前の今日:

https://note.mu/minotonefinland/n/nc6c323670bea

せかい食べ物紀行―第一話、パリとアップルタルトとトマトと玉子の炒め物:

https://note.mu/minotonefinland/n/n72a918228e5c

フィンランド―若手起業家たちの生まれる地:

https://note.mu/minotonefinland/n/ncb081698cdf8

かつてmixiで友だちに書いてもらった紹介文を振り返ってみた:

https://note.mu/minotonefinland/n/n1f9ed7196e07

アールヌーボー、ジャポニズム、サイケデリック、女性:

https://note.mu/minotonefinland/n/n8e2725c2bdcf

時の宙づり:

https://note.mu/minotonefinland/n/n2a182b91e783

不思議惑星キン・ザ・ザ(Кин-дза-дза! Kin-dza-dza!):

https://note.mu/minotonefinland/n/n3d2e049be0ff

日本からのサプライズの贈り物:

https://note.mu/minotonefinland/n/n1f33b547e2f4

フランスについて、2014年夏に思うこと:

https://note.mu/minotonefinland/n/n5bbe675bd806

エミールの故郷への旅(前編):

https://note.mu/minotonefinland/n/n8d7f3bc8d61d

エミールの故郷への旅(後編):

https://note.mu/minotonefinland/n/n6ccb485254c2

水とフィンランド:

https://note.mu/minotonefinland/n/n82f0e024aaab

ヘルシンキグルメ事情~アジア料理編~:

https://note.mu/minotonefinland/n/nb1e44b47da30

わたしがフィンランドに来た理由:

https://note.mu/minotonefinland/n/nf9cd82162c26

ベジタリアン生活inフィンランド①:

https://note.mu/minotonefinland/n/n9e7f84cdc7d0

Vappuサバイバル記・前編

https://note.mu/minotonefinland/n/n2dd4a87d414a

サマーコテージでお皿を洗うという行為:

https://note.mu/minotonefinland/n/n01d215a61928

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?