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人は面倒くささを求める生き物

フィンランドファンがよく感動する「何もしない、をする」というフレーズ。フィンランド人は夏になると4~5週間の休みをとってサマーコテージに出かけ、時計を外し、携帯電話の電源を切り、湖のそばで沈まない太陽を眺めて、ひたすら「何もしない、をする」。

実はわたしも前職でよく謳い文句に使っていたフレーズだが、実際フィンランドで2014年の夏を過ごしてわかったことは、「何もしない」をするためにサマーコテージに行くのではなく、淡々とした日常生活から抜け出すために、そしてあえて厄介な仕事を増やすためにサマーコテージに行くのだということだ。

この国は人口が少ないので出会いも少ないし、保守的で控えめな人が多い。よほどパーティー野郎でもない限り(※ちなみにわたしの周りはちょっと特別で、メディア関係の人やアーティスト、DJなどが多いので明るくて社交的でパーティーメイカーな人たちが多い。)活動範囲や友達のグループは非常に限られている。特に秋〜冬は毎日同じような暮らしを強いられる。朝起きて、仕事に出かけて、夕方帰宅して家で静かに過ごす。15時には暗いし。×9カ月。1ヶ月半だけある夏が唯一、毎日外に出かてサマーコテージで過ごすチャンスなのだ。(※ちょっと補足すると、秋~冬ももちろん新しい人々に会う機会も十分にあるといえばある。イベントもパーティーもあることにはある。でも夏のあの、毎日外で過ごす!パーティー!!っていうノリとは全然違う)

夏はみんな機嫌がいいし冬はみんな鬱々としている(比較的にネ!日照時間も非常に短いので)。だからなのか、「ハロー、おもろい日本人来たで!」という感じでパーティーやら遊びに参加すると、みんなドドッと近づいてきて話しかけてくれる。フレンドリーな国民性というのもあるかもしれないけれど、よそものに興味津々。どんどん質問を投げかけてくれる。新しいお店ができたらみんなこぞって出かけるし。生活の刺激が欲しくてたまらないのだなぁと思う。

サマーコテージに行ったら食べ物はいちいちクーラーボックスに入れて車や船に詰めて運ばなきゃならないし、使った部屋は掃除しなくちゃならないし(掃除方法もプリミティブ)、サウナの準備やトイレを堆肥にする作業、井戸から水を汲んでお皿を洗ったりなど、仕事量は倍増する。それでもみんな行く。楽しいから。冬もずーっと過ごすことになる同じ家にいるより何千倍も楽しいから。自然の中で過ごすのはとっても気持ちいいし。

人は不便さを楽しむ生き物なんだなぁと実感する。人づきあいもそうかなと思う。ただ心地よくルーティーンを過ごすだけの時間なんてつまらない。同じ家で毎日を過ごしてどこにもでかけない日々のように。穏やかに生きたいのであれば誰とも付き合わない方が面倒も回避できるし、問題も少ない。でも人は人を求める。自分とは違う視点や意見を持った、刺激を与えてくれる人を。好奇心を掻き立てられる瞬間をいつも求めている。たとえそれが良質なものでなくても、欠点が多くて嫌な思いをすることがあろうとも、人は人と関わりたいし、面倒くさい人でも面白ければみんなそばにいたくなる。だからソーシャルメディアがあるし、パーティー(飲み会)があるのだと思う。

わたしはみんなにとって面白い人でいなくてはならない、と思った。これまでいつも、日本の友だちや家族、フィンランドの友だち、エミール、そしてエミールの家族に迷惑かけてすまない、問題児ですまない、と落ち込み、自己嫌悪に陥っていたけれど、サマーコテージのトイレ小屋のように、土をかけてあとでそれを畑に運んで堆肥にする作業は臭いし面倒だし重いしだるいけど、でも楽しい、みたいな、そんな存在でいたいと思う。みんなもきっと、こいつは手間がかかる、迷惑な存在だ、欠点だらけだ、と思いつつも付き合ってくれるのは、サマーコテージのトイレが家のトイレより面倒だけど楽しいのと同じで、不便も多いけどきっと一緒にいることを楽しんでくれているからなのだろうと思う。トイレ小屋のような存在でも、いいんだもん。それはそれで、面白いんだもん。

なんだかはちゃめちゃな文になってしまいました。すいません。


【過去テキスト】

時の宙づり

https://note.mu/minotonefinland/n/n2a182b91e783

不思議惑星キン・ザ・ザ(Кин-дза-дза! Kin-dza-dza!):

https://note.mu/minotonefinland/n/n3d2e049be0ff

日本からのサプライズの贈り物:

https://note.mu/minotonefinland/n/n1f33b547e2f4

フランスについて、2014年夏に思うこと:

https://note.mu/minotonefinland/n/n5bbe675bd806

エミールの故郷への旅(前編):

https://note.mu/minotonefinland/n/n8d7f3bc8d61d

エミールの故郷への旅(後編):

https://note.mu/minotonefinland/n/n6ccb485254c2

水とフィンランド:

https://note.mu/minotonefinland/n/n82f0e024aaab

ヘルシンキグルメ事情~アジア料理編~:

https://note.mu/minotonefinland/n/nb1e44b47da30

わたしがフィンランドに来た理由:

https://note.mu/minotonefinland/n/nf9cd82162c2

ベジタリアン生活inフィンランド①:

https://note.mu/minotonefinland/n/n9e7f84cdc7d0

Vappuサバイバル記・前編

https://note.mu/minotonefinland/n/n2dd4a87d414a

サマーコテージでお皿を洗うという行為:

https://note.mu/minotonefinland/n/n01d215a61928

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