「令和悪魔くん」にむけて〜いち悪魔くんファンの徒然〜

まずはじめに
本文は、昨年2021年11月27日に開催された「ゲゲゲ忌2021 アニメ特別上映会・悪魔くんスペシャルデー」と、水木しげる生誕100周年を記念して制作が予定されている「令和悪魔くん」にむけての筆者の思いをまとめたものとなります。

掲載されている朗読劇の内容およびトークショーの内容は「ゲゲゲ忌2021・悪魔くんスペシャルデー」アーカイブ配信終了前に筆者が自力で文字起こしをしたものになります。

またここに綴るのはあくまでファン一個人の思いであり、「令和悪魔くん」という作品を楽しみにしている方に対する非難・批判・否定の意図はございません。

【悪魔くんとは】
水木しげる先生の執筆された漫画作品・そのシリーズの総称。
1万年に1人の優れた頭脳と素質をもった少年が魔法陣にて悪魔を召喚し、その強大な力をもってして世界を救済し、楽園という人類の夢のために奮闘する物語。

水木しげる原作の「悪魔くんシリーズ」は、主人公が媒体ごとに大きく分けて3人存在する。

★松下一郎(1963年「貸本版悪魔くん」、1970年「悪魔くん 千年王国」他)
★山田真吾(1966年「マガジン版悪魔くん」、1993年「ノストラダムスの大予言」他)
★埋れ木真吾(1988年「ボンボン版悪魔くん」、1989年「アニメ版悪魔くん」他)

この3人が原作および旧メディアミックスの主人公達である。

【令和悪魔くんとは】
アニメ放映30周年を記念して開催された「ゲゲゲ忌2019 アニメ特別上映会・悪魔くんスペシャルデー」内で起こった平成悪魔くんのファンの会場での大合唱がきっかけで始動した東映アニメーション制作の企画。
1989年「アニメ版悪魔くん」の続編作品とされ、水木しげる生誕100周年プロジェクト作品の一つとして現在制作中。

※以降1989年に放映されたアニメ版を「平成悪魔くん」/「平成版」と呼称します。

筆者は、「悪魔くん」もとい水木しげる先生の大ファンです。
自称するのもおこがましいとは思いますが、特にアニメにもなっている埋れ木真吾版悪魔くんには並々ならぬ思いがあり、昨年2021年3月に制作が発表された「令和悪魔くん」の企画が発足するきっかけとなった「ゲゲゲ忌2019 アニメ特別上映会・悪魔くんスペシャルデー」のオープニング大合唱にも現地参加しておりました。(また、初回含める全3回は全て現地上映会会場にて参加しています。)

ここで一度ゲゲゲ忌と昨年開催された2021年悪魔くんデーについて簡単にご説明させていただきたく思います。

【ゲゲゲ忌とは】
「水木マンガの生まれた街 調布」では、調布市名誉市民・水木しげるさんの功績をたたえ、命日の11月30日を「ゲゲゲ忌」とし、水木しげるさんゆかりの地を巡るイベントなどを毎年開催しています。

(調布市観光協会公式サイト・調布観光ナビ引用)

【ゲゲゲ忌2021・悪魔くんスペシャルデーとは】

2019年の初開催から3回目となった「悪魔くんスペシャルデー」(2021/11/27開催)。
「平成悪魔くん」の第8話、第1話、第6話が上映され、それと同時にキャストおよび制作陣登壇によるトークショー、朗読劇、水木しげる生誕100周年プロジェクトの「令和悪魔くん」作品情報が公開された。

[プログラム]
・永富大地プロデューサーからの挨拶
・「平成悪魔くん」第8話上映
・キャスト登壇/スペシャルトークショー
・朗読劇(およそ10分)
・「平成悪魔くん」第1話上映 & 永富P、佐藤D、三田さん、古川さんによるオーディオコメンタリー
・令和悪魔くん新情報解禁(新ティザー発表/キャラクター情報解禁/追崎Dのラフ画公開)
・「平成悪魔くん」第6話上映
・特典付き じゃんけん大会(上映会会場限定)

[登壇者]
・永富大地 様(「ゲゲゲの鬼太郎 第6期」プロデューサー/「令和悪魔くん」プロデューサー)
・佐藤順一 様(「平成悪魔くん」監督/「令和悪魔くん」総監督)
・追崎史敏 様(「令和悪魔くん」シリーズ監督・キャラクター原案)
・三田ゆう子 様(「平成悪魔くん」主人公・埋れ木真吾 役)
・古川登志夫 様(「平成悪魔くん」メフィスト2世役)

今回このような形で筆を取らせていただきましたのは、
いま「令和悪魔くん」に対して感じている私個人の作品への警鐘、そして「令和悪魔くん」を制作する東映アニメーションに対する問題提起のためです。

昨年2021年の「悪魔くんスペシャルデー」に参加して、私は「悪魔くん」という作品の行く末を非常に案じております。

では私が、なにをもってそのように思ったのか。

ここからは「ゲゲゲ忌2021・悪魔くんスペシャルデー」散見された「令和悪魔くんの諸設定における懸念点」、「朗読劇での矛盾点」そして「制作陣のご発言」について、各項目に綴っていきたく存じます。

1、「令和悪魔くん」の設定について

はじめに『「平成悪魔くん」の続編』とされている「令和悪魔くん」の現時点での情報から、作品に対する懸念点を考えていきたいと思います。

昨年11月27日の「悪魔くんスペシャルデー」内で公開された「令和悪魔くん」の作品情報を以下にまとめてみました。

   【2021年悪魔くんデーで公開された「令和悪魔くん」の設定】

① 「令和悪魔くん」は「平成悪魔くん」の続編である。
②「令和悪魔くん」の舞台は平成版からおよそ十数年経過した世界である。
③ 埋れ木一郎は、2代目の「悪魔くん」である。
④メフィスト2世は埋れ木エツ子と結婚し、子供(メフィスト3世)がいる。
⑤ 埋れ木真吾はファウスト博士の跡を継いでいるうえ、身体的成長がない。(ティザービジュアルより)
⑥ 「見えない学校」はありし日の姿をとどめておらず破壊されている(ティザービジュアルより)

以上のことを鑑みた、続編の懸念点を下記に綴っていきたいと思います。

懸念① 悪魔くん「一万年に一人」問題


まず昨年11月27日の悪魔くんデーで、

① 「令和悪魔くん」は「平成悪魔くん」の続編。
②「令和悪魔くん」の舞台は平成版からおよそ十数年経過した世界である。
③ 埋れ木一郎は、2代目の「悪魔くん」である。

という3点が明らかになりましたが、

埋れ木一郎は平成版主人公である埋れ木真吾と姓が同一であり、また「令和悪魔くん」の舞台が平成版からおよそ十数年経過した世界である……という点を鑑みると

埋れ木一郎は、埋れ木真吾の一親等(息子)ないし三親等(甥っ子)の血縁関係にある可能性が現時点で限りなく高いと思われます。
(2世と埋れ木エツ子が結婚していることからその息子?ここは現時点での明言はない為詳細は不明)

この項は、現時点でその可能性が高いことを懸念してのことなのですが……まず第一に

「悪魔くん」は「1万年に一人現れる救世主」を指す称号です。

この設定はこれまでの原作および過去メディアミックス全ての「悪魔くん」シリーズにおいて一度も覆ったことがなく、「1万年に一人しか存在しない」というのは設定上の確定事項となります。

故にたった30年ぽっちで「1万年に一人」現れる悪魔くんの2代目?がぽっと出で現れる訳はなく、

またそれと同時に「悪魔くん」は血縁による世襲制ではありません。

仮に「令和版が平成版から一万年経過した世界である」という場合なら2代目が出現するのも設定上での矛盾がありませんが

②「令和悪魔くん」の舞台は平成版からおよそ十数年経過した世界である。
④メフィスト2世は埋れ木エツ子と結婚し、子供(メフィスト3世)がいる。

この点を鑑みると、それはまかり通らず設定の段階でかなり詰んでいるといって差し支えない状況かと思います。

ただ、現時点で彼は「埋れ木一郎」という名前しか明かされていないため
『埋れ木姓ではあるが、遠い未来の一万年後からやってきた悪魔くん』
等であれば設定上矛盾はありません。
しかし佐藤順一総監督様がこれを発表した同日に平成悪魔くんの作品履修をおこなっていたのをみると、制作陣がその考えに至ってるのかすらも危ういな……と訝しみの気持ちが拭えないというのが正直なところです。(佐藤総監督様の発言に関しましては後ほど別項にて詳しく後述します。)

今回作られるのは「平成悪魔くん」から地続きとされる続編です。

故に、場合によっては初設定そのものを白紙にしなければならないレベルなのでは?と私は現状を大いに危惧しています。

懸念② 経過年数とキャラデザの経年の差に矛盾が生じている点

昨年11月27日の悪魔くんデーでは「令和悪魔くん」監督の追崎史敏氏の描いたイメージラフ画も同時に発表されましたが、その中で平成悪魔くん作中で提示されているキャラクター設定と確実に矛盾する部分をみて少し不安に思う点がありました。
それが、令和版悪魔くんのメフィスト老のキャラデザについてです。

11月27日時点で公開された追崎監督のラフ画で描写されたメフィスト老は、平成版から比べてもかなり老化が進行した状態で描写されていました。

しかし、メフィスト老は「平成アニメ版悪魔くん」第13・14話において

「10000年前に妖怪と悪魔の大戦争が勃発した際に、メフィスト老が閻魔に二度と地獄に立ち入らないと約束した」

という作中明言がされており、14話では大戦時に閻魔大王と面識があること。また14話時点で1万年ぶりの再会を果たしていることが閻魔大王の発言から示唆されています。したがって

アニメ版メフィスト老は、平成版時点で10000歳以上生きていることが確定している超長命キャラクターであり、たった数十年であそこまで老け込むことは通常考えてありえないのです。

平成悪魔くん作中でも度々示唆されていますが、平成悪魔くんに登場する悪魔たちはのきなみ超長寿であり、作中での明言から人類有史開始前後からの活動が示唆されているキャラクターも複数存在します。

たとえば平成版アニメ悪魔くんの第10使徒・鳥乙女ナスカも、第26話で

ナスカの母はハチドリの地上絵を描いたのちに、お前(鳥乙女ナスカ)を産んで死んだ

という作中明言があり、ハチドリの地上絵が描かれたペルー・ナスカ文明の繁栄期から逆算すると、推定1500歳である可能性が非常に高いキャラクターです。

そのため、あの世界における悪魔の「成長」に関するありとあらゆる描写について平成悪魔くん上の設定のフィードバックが多分に求められることは言わずもがなです。
しかし、11月27日に公開されたメフィスト老のラフ画からはそういった既存設定の反映がなされた上で描画がなされているとは到底思えず、結果的に制作陣側の平成悪魔くんに対する履修及びフィードバックが十分になされていないことの裏付けになってしまっているのは非常に由々しき事であると考えています。

過去自作した平成(アニメ・ボンボン)版悪魔くん年表です。ご参考まで。


懸念③ メフィスト2世と埋れ木エツ子の結婚と2人の間に出来た子供について

また今回の令和版悪魔くんにおいて、メフィスト2世と埋れ木エツ子の結婚と子供ができた事についても2点ほど懸念事項があります。
(以降この2人のカプリングを指しメフィエツと呼称します。)

まず1点目
昨年11月27日の上映会では、制作陣側から

永富P:はい。そして安定のえっちゃんとね、ちょっとこう。(中略)メフィスト2世も頬がぽっと赤くなったりするってことは、相思相愛っていう感じですよね。
永富P :やっぱそういう印象受けますよね〜!本当にね〜!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

永富P:佐藤監督。メフィスト3世は誰と誰の子供なんでしたっけ。
佐藤D:なんと、先ほどラブラブだったメフィスト2世とえっちゃんの間に、
生まれた(笑)

という「相思相愛」だったことを仄めかす趣旨の発言が、幾度となくかなり露骨に提示されていたかと思います。
確かに平成悪魔くん作中でのメフィエツは作中でお互いを意識し合うような発言や描写が存在していました。しかし、
実際作中で告白等をしてお互い気持ちを確かめ合い、決定的に結ばれた描写があったわけではなく子供同士の淡い「両片思い」のような関係として描かれていたかと思います。

そのため制作側から幾度となく発せられた「相思相愛」発言はいささか令和版メフィエツ成立正当化の為の『既存設定の捏造』に近い令和版制作陣側からのゴリ押しに近いものであったのではと感じています。

故に多くの旧作ファンからあそこまでの拒否反応が出るのは必然であり、事実私自身もあの場での制作陣の皆様から度々でる「相思相愛」発言はかなり受け入れ難いものでした。
上映会の情報解禁時に「令和版悪魔くんでメフィエツが相思相愛になり結婚した」という設定を出したかった場合は、メフィエツのカップル成立は平成版で描かれなかったことを制作側が認識した上で、成立に至った経緯を説明する。またもしあの段階で説明できないのであればそれを配慮した上で発言する必要があったかと思います。


2点目に、
今回メフィエツが成立したことと同時に、その子供であるメフィスト3世という新キャラクターの情報が開示されましたが。
上映会での制作陣の皆様の話を拝聴しているとどうもメフィスト2世というキャラクターが結婚し子供を成すということに対する認識について、あまりに思慮が浅すぎるのではないかと私は感じました。

「平成悪魔くん」でのメフィスト2世は、
『「悪魔くん」である埋れ木真吾の12使徒としてユートピア実現と世界の平和のために命をかけねばならない立場』です。

第33話「狙われた!メフィスト2世」では、魔界で懸賞金をかけられ2世の命が直接狙われることもありました。
故に、黒悪魔に対して自力で対抗・撃退する手段を持たない人間である埋れ木エツ子との間に家庭を持ち、子供を持つということは2世にとっての大きな弱点になります。

私が本件で最も危惧しているのは、メフィスト2世が世界と悪魔くんを守り戦う「12使徒」という立場でありながら、同時に守れるかわからない妻子を持つことのリスクと責任を考慮しない浅慮なキャラクターとして描かれることです。

平成悪魔くんでのメフィスト2世は基本的に、他人を思いやる気持ちをもち、いけないことはいけないと断ずる「許さない優しさ」をもった責任感ある熱くて真っ直ぐな男でした。
それは作中でも度々描写されることが多いので言わずもがなかと思いますが、最も注目すべきなのは平成版42話最終回です。

東嶽大帝を倒した後にファウスト博士からそれぞれの道へ進むことを進言され、悪魔くんとの別離を惜しむ12使徒を「みっともねえぜ!」といって啖呵を切って一番に叱りつけたのはメフィスト2世でした。
平成悪魔くんで「悪魔くんとのお別れ」という選択肢を選んだのは紛れもないメフィスト2世本人です。

ここは個人の解釈になりますが、あれは「悪魔の世界に、大好きな埋れ木兄妹を巻き込むわけにはいかない」「人間らしく生きてほしい」という理性ある「愛」の形だったではないでしょうか?

だからこそ、今回の「メフィエツ結婚」と「2人の子供の存在」は、平成版最終回で人間である埋れ木真吾……そして彼の好きだった埋れ木エツ子を思いやって「別離」という理性的な選択を自らとった、平成版メフィスト2世の選択に反する行為なのです。
また、「令和悪魔くん」を描く上でこの点を十分擦り合わせしないと、平成版ファンの思い描く平成版2世のキャラクター性との大きな剥離を招く可能性があります。
メフィエツ成立の理由づけをよほどしっかり設定しないと過去作との矛盾が生まれるどころか、令和版2世が考えなしのクズキャラに成り下がる危険性を孕んでいるのではないかと私は非常に心配しております。

また、邪推ではありますが。
そもそも「メフィスト3世」というキャラクターが登場した経緯も

「メフィスト2世は女性ファンに人気がある」→「女性人気にあやかりたい」→「でも2世は埋れ木真吾の12使徒だから、新主人公(埋れ木一郎)の使徒にはなれないかな?」→「そういえば2世はエッちゃんといい感じの雰囲気だったな」→「よし!エッちゃんと2世くっつけて3世を作って一郎にあてがおう!」

という感じで諸設定に至ったのではないでしょうか。あくまで邪推ですが。
前述していた通り、「平成版アニメ悪魔くん」を制作陣側がしっかり見て反芻していれば「いや、そうはならんやろ」な設定であることは言うまでもないわけですが、そうなっちゃったことに今ひどく頭を抱えている次第であります。

平成版との地続き続編ですし、せめて作中で納得いく説明やフォローがあればいいなとは思うのですが……制作陣の作品への姿勢や、後述する朗読劇での技量をみるにあまり期待が持てなそうだな……というのが今の私の正直な気持ちです。

懸念④ 令和版悪魔くんでの埋れ木真吾の扱いについて

今回の令和版悪魔くんの埋れ木真吾の扱いに関しても、メフィスト2世同様に懸念事項があります。11月27日のトークショー内で制作陣の皆様から

「令和版悪魔くんの埋れ木真吾は、ファウスト博士の跡を継いで見えない学校の校長になった」

という情報開示がありましたが、
平成版から十数年の年月が経過しているとの明言があるにも関わらず、ティザービジュアルの埋れ木真吾が小学5年生時の容姿のままという点を推察するに、

「令和版悪魔くんの埋れ木真吾は何らかの要因により、すでに人間の枠から外れた存在となっている」

ものと予想しております。

しかし、埋れ木真吾に対し「人の道を外れた」という設定を使用するのであれば、平成版で彼の周囲にいた仲間たちが、「埋れ木真吾という人間が本来送るべき生活」のため様々なサポートをし、また思いやりをもって接していた描写が作中あったことを留意する必要があると思います。

代表的な描写を例にあげると

11話、見えない学校で長時間修行を行っていた埋れ木真吾に対し、ファウスト博士が「悪魔くん、今日はもう帰りなさい。お母さんたちが心配するといけないからね。埋れ木真吾くんとしてもきちんとしないとね」と諭した場面

17話、「事件解決のため天狗の寝ぐらに向かわなければいけない」という悪魔くんとしての使命と、「父・茂の新人賞受賞パーティーに出席する」という埋れ木真吾としての家庭内行事。
彼がこの2択に板挟みになった時に、12使徒が気を遣って受賞パーティーに行くように進言してあげた場面。

42話最終回、メフィスト2世が悪魔くんとの別離を惜しむ12使徒に対し「みっともねえぜ!」といって叱りつけ、悪魔くんを人間界に送り出しお別れすることを選択した場面。

など、多岐に渡ります。

平成版作中での12使徒とファウスト博士が、「悪魔くん」である埋れ木真吾を必要としながらも、真吾本人が使命に没頭し、ゆえに蔑ろにしがちだった人間界での「家族団欒」や「子供らしい生活」を非常に尊重した上で彼のサポートを行なっていたことは最早いうまでもありません。

だからこそ、仮に「平成悪魔くん後の彼が自主的に人の身を外れる」もしくは「外れたのちに自主的に見えない学校の校長に就任する選択をした」としたら、12使徒やファウスト博士は、彼の家族や友人そして彼自身を思いやり、「人の道から外れることを真っ先に止める」もしくは「人の道から外れた彼に対し、内心複雑な思いを描いているor快く思っていない」可能性が非常に高いと思われます。

仮にですが。この点を留意せず

[令和版悪魔くんで埋れ木真吾が人の道を外れることを、12使徒とファウスト博士が推奨しているor喜ぶor特段何も思っていない]

ように令和版作中で描写された場合、それは前作の12使徒のキャラクター性と埋れ木真吾との関連性に大きな剥離を招く可能性があります。

正直、令和版悪魔くん制作陣の皆様が上映会で、
「埋れ木真吾の見えない学校就職」について大変にこやかにお話しされていた
ことから上記の懸念事項に対し、重きを置かれて作品制作を行なっていない。もしくはその点を非常に軽んじて令和版悪魔くんを制作されているのではないかと、私は大変不安に思っております。

ここからはより個人の感情が伴った意見となりますが、そもそも論として

平成悪魔くんのファウスト博士は選ばれた存在である一万年に1人の「悪魔くん(救世主)」になれなかった者であったため、救世を成すため真の「悪魔くん(救世主)」をサポートするべく見えない学校の校長をしていた。
という背景があります。
故に平成版作中で『真の救世主』とされている、埋れ木真吾がファウスト博士のポジションに収まるというのはある種の格落ちに近い扱い方です。

埋れ木真吾こそ、この世界に極楽をもらす存在である」と平成版作中で明言されていたように、本来彼はいちサポートキャラに収まるような器ではありません。
また本来平成版続編を名乗るのであれば、作中明言のあった設定は基本厳守されるべきものであると思います。

しかし「悪魔くんスペシャルデー」の1話オーディオコメンタリー中に佐藤順一総監督様が第一話を見ながら

佐藤D「ファウスト博士は悪魔くんになろうと思ったけどなれなかった……んだっけ?」
永富P「めちゃくちゃ学習中ですね?」
佐藤D「いやー改めて見ると色々情報が入ってますねー。」

などとおっしゃっていたのをみると、どうもその設定すら理解していない状況で続編を制作しようとしているらしく。そのお姿にいち平成悪魔くんファンとしては思わず目眩を覚えてしまいます。

また2代目悪魔くんを称する埋れ木一郎というオリジナルキャラクターが登場している以上
「埋れ木真吾がファウスト博士の跡を継いで見えない学校の校長になった」
という設定は2代目悪魔くんのサポートのため設定されたこともまた逆説的に明らかであり、オリジナルの新キャラを立てるために既存キャラクターをサポートキャラとして降格したという経緯が垣間見えるため、訝しみの思いが拭えないというのがいちファンとしての正直な気持ちであります。

私は当初、公式が走り出した以上は「令和悪魔くん」をできる限り応援する気持ちでいました。大好きな埋れ木真吾の活躍がまた見られるのだということが嬉しかったですし、故にある程度の設定変更・付与は受け入れるつもりでした。
しかし今、正直な気持ちを吐露するのであれば……平成悪魔くんファンである私が真に切望していたのは、愛する埋れ木真吾が「主人公」として帰ってくる物語だったと思います。公式の続編であるのならなおのことです。
オリジナルキャラクターの引き立て役のような形で埋れ木真吾というキャラクターを据え置き

「ゲゲゲ忌2019の『悪魔くんスペシャルデー』の大合唱と、皆さん(平成悪魔くんファン)の応援で平成版の続編の令和悪魔くんができました!でも平成版とはテイストが変わります!しかも主人公は別のキャラです!」

などと言って膳立てをされることになるのなら、あの時現地で合唱を歌わない方がよかったのでは……と私は今も考えることがあります。

物語を動かすために大なり小なり劇的な展開を用いたいという意図はわかります。新規顧客を獲得するために新キャラクターを中心に据えたい。そのためにある程度要素を足さねばならない、また同時にそれに伴う変化も然りなのも理解しています。

しかし、理解した上で

私の愛する埋れ木真吾というキャラクターが、令和版の新キャラクターをお膳立てする為の都合のいいキャラクターとして、ただ消費されないことを強く強く願っています。


懸念⑤ ティザーポスターの見えない学校について

今回11月27日に令和悪魔くん新情報と同時に発表されたティザーポスターには、平成悪魔くんで活躍した「見えない学校」が崩れ、その崩れた「見えない学校」の上に新作主人公である埋れ木一郎とメフィスト3世が腰掛けている様子が描かれていました。

ティザーはこちらから見ることができます↓
(https://www.toei-anim.co.jp/kitaro/news/2021112701.php)

結論からいえば、今回のティザーは平成悪魔くんファンからみて悪い意味で非常にショックを受けるものであったかと思います。


「見えない学校」はただの背景でもなければ建造物でもなく、歴とした「意志がある生き物」です。
これは平成版作中でも幾度となく明言されています。

「見えない学校」は平成版主人公である埋れ木真吾と12使徒と、一緒に戦い、同時に苦楽を共にしたかけがえのない仲間として描写されていました。歴とした平成悪魔くんに登場する、ひとりのキャラクターなのです。私もそうですが、平成版ファンの中でも彼らと同じような思いで見えない学校を大切に思っている人はきっと多いのではないでしょうか。

しかし昨年11月27日のティザー公開時に、制作陣のみなさまが朗らかに笑いながら

追崎D「なんか大変なことになってますよね(笑)」

等とおっしゃっていたのを見ると、とてもそれを理解した上で作品制作をなさっているとは思えませんでした。

平成版の主人公である埋れ木真吾、12使徒たちをはじめとするキャラクター達の大切にしていた「見えない学校」。
またそんな「見えない学校」を含めた彼らを心から愛していた平成版の視聴者達が、あのように崩れ死骸同然になってしまった既存キャラクターの上にどっかりと座り、更には生命玉すらも足蹴にする態度の埋れ木一郎に対して、本当に好感をもって心から受け入れてくれるとお思いだったのでしょうか。

少なくともあのようなティザービジュアルは平成悪魔くんファンからすれば、とても
「ドキドキ!ワクワク!」
といったポジティブな心境で受け止められるものはなかったと思います。

また令和版テーマと思しき「君の幸せってなんだい?」という問いも相まって、11月27日の上映会に参加していた多くの平成悪魔くんファンの感情を逆撫する形になったのではないのでしょうか?
実際あのティザーを上映会会場で拝見した私も、思わず「もしかして喧嘩売られてるのだろうか????????」と思ってしまうほどでした。
平成悪魔くんファンである私の幸せは、「見えない学校」が足蹴にされないことですが、あのような描写に対して令和版悪魔くん制作陣の皆様より今後納得いくご説明がなされることがあるのか大変不安な面持ちでおります。

再三申し上げていますが、新しい物語を作り展開するうえで大なり小なり劇的な展開を用いる必要性は理解しています。

ただ、「平成悪魔くんのファンの愛の喝采と合唱でできたもの」が「平成版ファンの大切にしてきたものの破壊」とならないように今はただ願うことしかできません。

懸念点をうけて


今回の「令和悪魔くん」の諸設定について考えを巡らせてまいりましたが、今回なぜこうなったかについてはひとえに

・「令和悪魔くん」制作陣の、「平成悪魔くん」の圧倒的履修不足
・「平成悪魔くん」ファンに対する、マーケティング不足

大きくこの2点に帰結すると思います。
登壇した制作陣の皆様も、複数のお仕事をお抱えになっていることは分かります。しかし、作品に対し再履修・また理解を深める時間は本当になかったのでしょうか。

ここで改めて今回の「令和悪魔くん」に制作発表に至るまでの時系列を確認してみたいと思います。
下記が今回の「令和悪魔くん」の制作に至るまでの時系列です。

【ゲゲゲ忌2019・悪魔くんスペシャルデー】(2019年11月29日開催)
→悪魔くん30周年を記念して、始めてゲゲゲ忌での悪魔くんのトークつき上映が行われる(配信なし)。
この時会場で第1話OP終了後に他期の鬼太郎上映会では一度も起こらなかった拍手があがり、異例の盛り上がりを見せる(※2019年の筆者は各期鬼太郎の上映会ふくめほぼ全通だった為、この表現に間違いはありません。)
それに感動したシアタス調布支配人の許可でトークショー後に会場でOP大合唱が行われた。(令和悪魔くん制作のきっかけになった出来事)

【ゲゲゲ忌2020・悪魔くんスペシャルデー】 (2020年11月21日開催)
→ゲゲゲ忌では2回目となる悪魔くんスペシャルデー(コロナ禍による配信ありの上映会)
上映会終了後の会場限定じゃんけん大会ののち、トークショーの司会進行役として登壇していた永富大地プロデューサーから
「佐藤順一監督と悪魔くんの新しい動きを………」
という新作のにおわせ発表がある。
なおこのじゃんけん大会は配信終了後に行われており、この情報は会場にきたファンおよそ120人前後のみに知らされ、箝口令がしかれた。

【2021年水木しげる生誕祭】(2021年3月7日開催)
→水木しげる生誕祭99周年を記念して境港からライブ配信が行われる。(コロナ禍の影響)。悪魔くんの新作発表の報とティザービジュアル公開。
二代目悪魔くんのビジュアルが発表され、埋れ木真吾、メフィスト(当時は2世と思われていたが3世)が登場することが明らかとなる。

【ゲゲゲ忌2021・悪魔くんスペシャルデー】(2021年11月27日開催)
→・登壇者のスペシャルトークショー
 ・約10分の書き下ろし朗読劇
 ・登壇者による平成版第1話オーディオコメンタリー
 ・新作情報の詳細発表

ここからわかるように
2020年11月21日の「悪魔くんデー」で箝口令込みの初告知があり
今回物議が醸されている昨年2021年11月27日の「悪魔くんデー」まで
少なくとも丸々一年もありました

制作陣の皆様方は、本当に、本当に、本当に、一体全体、何をしてらっしゃったのでしょうか。

まさかとは思いますが、制作陣の皆様方は
そのような認識で、30年間ファンに愛されている作品の続編をお作りになれるとお思いだったのでしょうか。
そのような姿勢で、あの時大合唱に参加したファンが本当に満足し笑顔になってくれるとお思いだったのでしょうか。

【「平成悪魔くん」の続編】を作るのにもかかわらず
【「平成悪魔くん」の諸設定を確認していない】ばかりか
あまつさえそれを堂々と公言される。

思わず感嘆の息が漏れ出てしまいますね。

では、次の項目ではそれらの姿勢を含め、トークショー内での制作陣の皆様のご発言について語っていきたいと思います。

2、トークショー内の制作陣の御発言について


前項では

「令和悪魔くんが」が「平成悪魔くん」の公式続編作品であるにも関わらず、「平成悪魔くん」の履修及びフィードバックが十分に行われていないまま設定が決められている可能性

について指摘させていただきましたが。
これは同日のトークショーおよびオーディオコメンタリーでの佐藤順一総監督のご発言で裏付けがなされています。

・続編制作中なのに前作を履修していない旨の発言


令和版悪魔くんの総監督である佐藤順一様が、11月27日の上映会のトーク中に

佐藤D「久々に見るんですけど(中略)悪魔くんってそうかこのテイストだったのか〜」

とおっしゃっていたこと、そして1話のオーディオコメンタリー中に

佐藤D「ソロモンの笛が悪魔くんを認めるんだな」
永富P「あれですか、いま新作の方の情報収集しました?」

等のご発言をなさったことから、
佐藤順一総監督様を含める令和悪魔くん制作陣の皆様は
2021年の「悪魔くんスペシャルデー」上映会前に、平成版本編の履修を充分したといえる状態でないまま登壇し
あまつさえそのような知識・履修段階で【平成版続編である令和悪魔くん】の作品制作に臨んでいらっしゃる可能性があの段階で非常に高かったことは言うまでもありません。

「ソロモンの笛が悪魔くんを認める」というのは平成悪魔くん第1話で明言されている基本設定の初歩中の初歩です。

総監督様がそのような認識であるにも関わらず、今回の「悪魔くんスペシャルデー」より前にすでに1・2話の脚本が出来上がっているという情報があったため(2021年9月公開YouTube「ゲゲゲのなんチャラ」第13回より)、本件は大変由々しき事態であると思います。

また上映会での新作発表もまじえてのこのご発言は、平成悪魔くんファンからすれば非常に信じ難く、また同時に多大な不安を煽るものであり、続編作品を制作すると公言しておきながらそのような発言がまろびでることそのものが通常あり得ないことです。

これらの御発言や令和悪魔くんの現時点で明かされている設定を鑑みても
当日現地・配信でトークショーに、参加していた悪魔くんファンに対しての最大の非礼だったと言っても過言ではないかと思います。

・2021年悪魔くんデーでの制作陣のノーギャラ発言について

また今回、悪魔くんスペシャルデーで初めての試みとなった10分間の朗読劇で(内容については後述します)平成悪魔くんで選曲をご担当されたさとうやすの様が朗読劇の選曲をしてくださったことがトークショー内にて明らかになりました。

(さとうやすの様は2019年・2020年の悪魔くんスペシャルデー上映会にはご登壇されており、本年はご登壇されませんでした)

しかし本件について、令和版悪魔くんプロデューサーであらせられる永富様が次ようにおっしゃられました。

永冨P :あとですね、実は今日、今の朗読劇にはミュージックが付いてたと思うんですがその選曲はですね、本編でも選曲をお勤めいただいたさとうやすのさんがですね、なんとボランティアでやっていただきました。この場を借りて御礼申し上げたいと思います。ギャラを払う気は一切ございません。はい。
(中略)
永冨P :皆さんの声と拍手はさっき届きました。届きました?届いたと思います。ありがとうございます。そして全国にも配信されております。
佐藤D :ボランティアだってことも全国に配信されました。
永冨P :配信されました。言っておかないと後で請求されても嫌だなと。
佐藤D :確かにね。はい。

永富プロデューサー様は以上の発言を終始朗らかな笑顔で仰られておりました

しかし

あのような公的場で「給与を支払わない」という宣言は、果たして面白おかしく語るような内容でしたでしょうか。

仮に
ボランティアであることをさとうやすの様が事前に承諾なされていたとしても、ご本人があの場にご登壇されていない以上、双方合意の上でおっしゃられているか否かは一般参加者であるこちらにはわかりかねる事です。

あの発言は、プロデューサー様の代表者意識に一切欠けるものであったと思っています。

またあの場で制作陣の皆様が誰1人としてプロデューサーの御発言を咎められなかったのも問題かと思います。

【追記】(2022/6/7)
2022年6月7日(火)18:00に、「映画鬼太郎誕生&悪魔くんアニメ公式
」アカウントに本件に対する永富大地プロデューサー様のお詫び文掲載されました。
https://twitter.com/kitaroanime50th/status/1534098028986265602?s=20&t=mBSRyBr3lfTwfJKTyaGGCQ


・令和版悪魔くんプロデューサー・永富大地氏のご発言について


またそもそも、令和悪魔くんのプロデューサーである永富様のこのような発言は今回の悪魔くんデーに限ったことではありませんでした。
一昨年の2020年ゲゲゲ忌各上映会で、「ゲゲゲの鬼太郎GEGEGE WHISKY」という鬼太郎ラベルの限定ウィスキーが登場し、それをトークショー内で御宣伝されていた際にも

永冨P「これ(ゲゲゲの鬼太郎GEGEGE WHISKY)僕も呑んだんですけど、勤務中なのにベロンベロンに酔っ払っちゃって〜」

という旨のことを冗談めかしで度々ご発言なされていたかと思います。
ウイスキーの試飲も永富様のお仕事であったに違いないと当方は思っておりますが、本来『勤務中に飲酒』というのは世間一般では咎められる行いであり、あのように冗談めかしでおっしゃることはあらぬ誤解を生む可能性があるかと思います。

昨年(2021年)も一昨年(2020年)もプロデューサー様は、これらのお言葉を単なるご冗談として仰られていたものと思いますが、

少なくとも当方は、全く笑うことができませんでした。

また、これらのこと……特に「ノーギャラ発言」は十分に企業コンプライアンスおよび企業倫理に抵触するに足る発言です。

「令和悪魔くん」のプロデューサー様として、また同時にあの場では東映アニメーションからの代表であるというお立場にも関わらず、公の場であのような発言をされたことは一顧客として看過できるものではございません。

これは悪魔くんデー当日の会場限定でのアンケートにも、直筆にて書かせていただきましたが
プロとしてのお仕事をしてくださった、さとうやすの様に正当な報酬が支払われることをいち悪魔くんファンとして強く望みます。

3、朗読劇について

前項でも少し説明をさせていただきましたが、まず本稿を語るにあたって2021年「悪魔くんスペシャルデー」内の朗読劇について軽くご説明させていただきます。

【2021年「悪魔くんスペシャルデー」内の朗読劇とは】

水木しげる先生の命日(11/30)に毎年開催されている「ゲゲゲ忌」で、2021年11月27日(土)に行われた「ゲゲゲ忌アニメ特別上映会・悪魔くんスペシャルデー」のトークショー内で催された朗読劇のことです。
2020年のゲゲゲ忌上映会では各期鬼太郎、悪魔くんそれぞれで約3分ほどのショート朗読劇が行われ、ゲゲゲ忌2021では前年に伴う初の試みでおよそ10分の長尺朗読劇が催されました。

今回、朗読劇脚本を執筆したのは
「令和版悪魔くん」シリーズ構成担当の大野木寛氏
です。

本朗読劇でご登壇いただいた三田ゆう子さんと古川登志夫さんの演技は30年前と変わらぬ素晴らしいものでした。三田さんと古川さん両名に対し、この場を借りて改めて御礼申し上げます。

しかし、一方で今回ゲゲゲ忌悪魔くんデーで行われた朗読劇のシナリオに関しては「平成悪魔くん」のファンとして疑問に思う箇所が多々見受けられました。

今回は『凄腕脚本家』と目されるシナリオ構成作家様がお書きになられた朗読劇脚本について、浅学な身でまこと恐縮至極ではございますが筆者が疑問に思った点を書き出し下記にまとめさせていただきます。

〜朗読劇のあらすじ〜
悪魔くん(埋れ木真吾)の元にアフリカの悪魔・ウンガロンゴが現れた!
メフィスト2世を喚び出して、悪魔を倒しほっとひといき。
調布のラーメン屋「八幡」にラーメンを食べに行くことにした2人は、調布の水木先生ゆかりの地を巡りながら街を散策することに……。
ところが、悪魔くんはメフィスト2世になにやら三十年間ずっと隠していたことがあるようで……____。

朗読劇内容① 冒頭早速の矛盾

埋れ木 :エロイムエッサイム、エロイムエッサイム。我は求めたり!出でよメフィスト2世!………
埋れ木 :アフリカの悪魔、ウンガロンゴが現れたんだ!
2世  :なんだってぇ!?
埋れ木 :ほらそこに!

2世  :魔力・絶対零度!ピキピキピキ!
埋れ木 :そいつに絶対零度は効かない!
2世  :だったら魔力・稲妻電撃!バリバリバリバリバリバリ!
埋れ木 :やった!
2世  :(ため息)東嶽大帝が復活したんじゃないだろうな。こんな事のために俺を呼び出したのか。
埋れ木 :あ、いやぁ。用ってほどのことは…久しぶりに思い出したことがあってね。八幡のラーメンでも食べないか。

■【召喚前に既に黒悪魔が現れている点】→

まず、この時点でツッコミどころしかないのですが……。
この脚本の場合、召喚時に黒悪魔が現れている時点で、2世を喚び出す動機・理由付けがすでに充分整っています。
にも関わらず黒悪魔退治後に「こんな事のために俺を呼び出したのか」と埋れ木を問い詰める2世の発言には、シナリオの流れ的に強い違和感を覚えます。
私個人の意見ではありますが、「八幡のラーメンを食べにいく」というのがメインのストーリー構成であれば、寧ろ[冒頭の戦闘描写を全カット]した方が流れとしては自然であると感じました。

■【本編カットされた悪魔ナガトミーについて】→

また今回、朗読劇後のトーク中に朗読劇脚本について触れた折に、

佐藤D :元の台本だとでも永富キャラがいたんでしょ。ナガトミーっていう悪魔が……
永富P :監督〜監督、バラさなくて大丈夫ですよ。
佐藤D :こっそり削除したって
永富P :切りました。や、だってですよ。三田さんと古川さんがお芝居してるところに僕が割って入るのは無理ですよ。

というような発言があったことから、朗読劇本編で使用された脚本は朗読劇開始前に「悪魔ナガトミー」登場および台詞部分が削除されたものであったことが判明しています。
「平成悪魔くん」というファンの思い出の詰まった作品に、無理やり【平成版と一切関わりのない現スタッフ】の身内ネタの様なものを入れられていた場合、おそらく視聴者である私は混乱すると同時に多大な不快感を覚えたことでしょう。
故に今回該当部分を「削除した」という点は、本朗読劇における最大の英断であったかと思います。
永富プロデューサー様および東映アニメーション御関係者様におかれましては、是非今後もそのような姿勢で制作に励んで頂ければ、いち水木しげるファンとしても非常に喜ばしい限りです。

朗読劇内容② キャラ呼称と無粋なファンサ

埋れ木 :あ、いやぁ。用ってほどのことは…久しぶりに思い出したことがあってね。八幡のラーメンでも食べないか。
2世  :いいねぇ。いこういこう。
埋れ木 :うん……メフィスト
2世  :ん?
埋れ木 :タイが曲がってるよ?
2世  :ああ、ありがとう。
埋れ木 :じゃあ、行こうか。

■【メフィスト2世を「メフィスト」呼びする埋れ木真吾】→

埋れ木真吾は、アニメ作中では2世を「メフィスト2世」とフルネームで呼んでいる上、作中での呼称は統一されています。
そもそも「メフィスト」という呼称は平成版アニメ版では2世の父親である「メフィスト老」を指す名称のため、あの場に集まった平成悪魔くんを見ている視聴者に対し結果として大きな混乱を招くものとなりました。
この朗読劇が行われていたのは新作情報解禁前だったため、当時はなんらかの伏線である可能性を考慮して拝見しておりました……が、
結果としては伏線でもなんでもなかったため、なぜわざわざ2世を「メフィスト」表記にしたのか……そしてなぜこれで周囲はOKを出したのか甚だ疑問です。

■【2世のタイが曲がっている事を指摘する埋れ木真吾】→

埋れ木真吾には[自分の寝癖をさほど気にしない(第4話参照)][歯を磨かずに出かける(第3話参照)]など……各話で自分の身嗜みに頓着がない描写が散見されています。そんな彼が2世のタイが曲がっている事に目敏く気付き、わざわざ直してあげるなどというマメな事をするとは思えません。

〜上記該当シーンの個人的な感想〜
初見の際このシーンの挿入意図が全くわからず思わず顔をしかめましたが、全部見終わった後も変わらず挿入意図を読み取ることができませんでした。(邪推ですが)これは作家様がファンサの意図で挿入したのでしょうか。
もしそうであれば「このキャラ同士の絡みがあればファンは喜ぶだろう」というお考えそのものが安直極まりなく無粋で、ファン蔑視であると感じました。
ファンが重視するのはそのように特定の層(この場合は「女性向け」を好む女性ファン?)に向けていることがくどいほどわかる描写などではなく、一定以上のシナリオの整合性とクオリティ。そして一人一人のキャラを大切に扱って頂く事です。そんなことよりもまず第一に従来キャラクターのキャラ付けの確認と読み込みをしっかりして頂きたいと心より願っております。

朗読劇内容③ フィードバックにそぐわぬ台詞

2世  :悪魔くんだっていけないんだぞ。1万年に1人の天才とか言って威張っていたろう。
埋れ木 :ぼくそんなことで威張ったりしないよ。成績も良くなかったし。
2世  :あれ、そうだっけ?何しろ30年も前のことだからなあ。いばってないか。
埋れ木 :威張ってない!
2世  :そっか、そうかもな。
2人  :(笑い声)

■【30年前の埋れ木が「1万年に1人の天才とか言って威張っていた」と言い張るメフィスト2世】→

平成アニメ版では埋れ木真吾が「1万年に1人の天才とか言って威張っていた」描写は一切ありません。
平成アニメ版本編・第2話をみればわかるかと思いますが、
そもそも「魔界を乗っ取ろうとしていた」と2世が序盤で勘違いしていたのはこうもり猫からの誤情報であったからです。しかし、その後メフィスト2世本人がその目でしっかりと埋れ木真吾という人間を判断したからこそ、2話中盤というかなり早い段階で誤解が解け、さらに2話ラストで2世が埋れ木真吾を「気に入った」と評するにまで至ったのではなかったでしょうか?
また、メフィスト家に代々伝わる魔法の風呂敷マントを第2話ラストの段階で埋れ木真吾に託したのは紛れもないメフィスト2世当人です。ここまでのフィードバックがありながらなぜ2世にこのセリフを当てがったのか……正直なところ、理解に苦しみます。

またこの部分もそうですが、全体的に会話の内容から「何を伝えたいのか」という意図が一切伝わってきません。
「悪魔くんは威張ってなかった」「成績も良くなかった」という事を伝えたかったのでしょうか。
平成版アニメ本編をみればそんなことはわざわざ朗読劇に落とし込まなくても分かることでありますし、あの場の大半の視聴者は理解していたと思います。
仮に平成版の振り返りだとしても、長々と設定だけを語るのは面白みが一切ありませんし、センスも皆無です。

朗読劇内容④ 説得力のない会話劇

埋れ木 :あはは。あ、公園で思い出したけど、あの頃よく一緒に遊んでた貧太や情報屋は何してるんだろ。
2世  :連絡とってないのか?
埋れ木 :うーん、なんとなく疎遠に。
2世  :うん。
埋れ木 :クラス会の誘いなんか来るけど、長いこと行ってない。
2世  :会ってやれよ、貧太も情報屋も喜ぶぞ。
埋れ木 :そうかな。
2世  :そうだよ

■【埋れ木真吾の「貧太」呼び】→
埋れ木真吾は、金無貧太を作中で一貫して「貧太くん」と呼称しています。
これを書かれた作家様及びOKを出したスタッフの皆様は、「平成アニメ版悪魔くん」を一度も視聴しておられないのでしょうか?
ここまで何度も申し上げていますが、前作キャラを使用する以上は前作で使用されていた呼称ぐらい確認・統一して頂きたく思います。

■【「なんとなく疎遠に」】→
平成アニメ版悪魔くんでの金無貧太は「貸本版悪魔くん」でいう人間界の蛙男(※松下一郎版悪魔くんの第一使徒。松下悪魔くんの忠実な信徒であり理解者であるキャラクター)のポジショニングを担っている人物です。
しかも貧太・情報屋(に加えキリヒト)は、作中35話で全員、埋れ木真吾が『悪魔くん』であることを知ることとなった数少ない人物です。情報屋も正体を明かして以降は彼のことを積極的に応援し、サポートまでしてくれています(38話参照)。
以上のことから、諸般の事情を知っているのにも関わらず「なんとなく」という理由で疎遠にされたのは前作のキャラクター同士の関係値を知る身としては非常に釈然としない上、説得力に欠けるものです。
また平成悪魔くんのキャラクターをその様な形で消費されたことに、いちファンとしてとても強い憤りを感じました。

朗読劇内容⑤ 唐突な中の人ネタ

埋れ木 :ええっ、はは。いや、水木先生って言えば、今度鬼太郎が映画になるんだって!タイトルは「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」。
2世  :ああ知ってるよ。鬼太郎のやつも何度もアニメになって、また今回もだろう?は〜あ俺様もいっちょ噛みしておけば良かった。
埋れ木 :あ?ねずみ男?
2世  :いやいや6期の猫娘にゃ驚いたろう?
埋れ木 :ああ、びっくりした。身長があんなに高くて美人で。
2世  :あれね、猫姉さんって呼ばれてるんだぜ(笑)。
埋れ木 :お姉さんキャラだよね。僕は夢子ちゃんと一緒にいた3期が猫娘が好きだな。なぜだかわからないけど、
2世  :悪魔くん。そういえば3期の猫娘となんか声が似てる気がするなぁ
埋れ木 :はははは、気のせいだよ。映画のタイトルは「鬼太郎誕生」だよね。猫娘も出てくるのかな?
2世  :おっと、こっからさっき知りたかったら金払いな。情報も何もかも金次第だ。えっへっへっへっへ。
埋れ木 :またネズミ男に取り憑かれた?
2世  :いやいや、メフィスト2世だよ。八幡でラーメン食べるんだろ?
埋れ木 :ああ、まってよ。メフィスト2世。

■【唐突な中の人ネタ】→

「古川登志夫さんが演じている6期ねずみ男の中の人ネタを取り入れたかった」

という意図は理解できるのですが、「この朗読劇で古川さんは【メフィスト2世】を演じている」という前提がある中で、突然ねずみ男のセリフを喋らせるといいうのはキャラ崩壊もいいところです。
また朗読劇という特性上、台詞のみでは「キャラが切り替わった」と言うのが分かりにくく、視聴者に大きな混乱を招く部分であったと思います。
実際、私は初見時、演出意図がわからず大変混乱しました。
おそらく宣伝目的での挿入であると邪推しておりますが、もしもこのような演出をど〜〜〜〜しても取り入れたかったのであれば、
同年の「ゲゲゲの鬼太郎第2期・第4期スペシャルデー」朗読劇で、4期猫娘である西村ちなみさんが、6期鬼太郎で演じた雪女・ゆきとして。4期ねずみ男役である千葉繁さんが、6期鬼太郎で演じた黒坊主としてそれぞれ登場し、演じ分けをしたようにキャラの切り替わりをシナリオ上でもっと明確にするべきだったのではないでしょうか。
ちなみに当時劇場でこれをみていた私個人の感想ですが、この演出みた時点で9割方心が冷え切っていたので、単調でつまらなくてもいいから普通に説明したほうがよかったと思います。

朗読劇内容⑥ 「〇〇はそんなこと言わない」

埋れ木 :30年………はぁ………
2世  :またかよ悪魔くん、何が言いたいんだよ。
埋れ木 :わかった話すよ。僕が30年以上メフィスト2世に隠していたことを。
2世  :えっ?
埋れ木 :東嶽大帝の戦いが全部終わった日、僕は家に帰って体を休めてたんだ。激闘だったからね。そしていつの間にか僕は眠っていて、気がついたときは夜中だった。ふと目を開けると、その時……
2世  :そのとき?
埋れ木 :目の前に………
2世  :目の前に?
埋れ木 :君が大事にしていた限定版のインスタントラーメンがあったんだ。それを、それを僕は食べちゃったんだ。許してくれ。お腹がすいてたんだ。

■【2世が大事にしていたインスタントラーメンを食べる埋れ木真吾】→

埋れ木真吾は、朝当番を理由に進んで朝飯を抜いたり(第3話参照)、2世に自分のラーメンを勝手に食べられても一切文句を言わなかったり(第5話参照)、母親がちゃんとした夕飯を作ってくれなくてもあっさり諦めてカップ麺ですます(第32話参照)
……食に対して大変頓着がない(いわば「別に食べなくても平気」タイプの)人間です。
また、メフィスト2世と埋れ木真吾は平成版アニメ全42話という長い付き合いを経て硬い友情で結ばれ、深い信頼関係を築いていたと思います。
それないのに埋れ木真吾があの涙の最終回直後に、親友である2世の最も大事にしているラーメンを、しかも限定版を勝手に食べたりすると本当にお思いなのでしょうか?
「お腹が空いていた」などという生理的な理由以前に、
埋れ木真吾という人物が、親友であるメフィスト2世の「絶対に怒るだろうこと・嫌がるだろうこと」をする不粋なキャラクターであったか、制作陣の皆様には今一度考えていただきたいと思っております。
彼がそんな「デリカシーのない」キャラクターであったのなら、私は平成版アニメ悪魔くんで描かれた埋れ木真吾というキャラクターを心から愛することはなかったでしょう。

2世  :え、え…それだけ…
埋れ木 :うん。
2世  :インスタントラーメン?
埋れ木 :そう。昨日ふっと思い出して、君に謝ってなかったなーって。
2世  :本当にそれだけ?
埋れ木 :ああ。
2世  :本当に?
埋れ木 :ほんとに。
2世  :こんだけ!こんだけ引っ張ってインスタントラーメンの話!もっと何かあると思うだろ普通!
埋れ木 :食べてよかったの?
2世  :よくはないさ、俺が楽しみにしていたラーメンだよ。確かになくなったとは思っていたけど。
埋れ木 :えへへ……ごめん。
2世  :謝るところが違う!魔法陣呼び出して、30年30年って引っ張ったあげく、インスタントラーメン。

■【限定のインスタントラーメンを食べられて「それだけ?」というメフィスト2世】→

平成版のメフィスト2世はラーメンに命をかけているキャラクターです。
ラーメンのためなら働くし(第6話、第10話…etc参照)、ラーメン食べるために大事な任務を後回しにするし (第18話参照)、戦闘に戻る際の言い訳に「ママさんのラーメンが食べられなくなるからな!(第5話参照)」と言い切り、食いそびれたラーメンは涙を浮かべながら食す(第6話参照)キャラクターです。
そんな彼が、大事にしていた限定のインスタントラーメンを食べられて「それだけ?」などと言うはずがありません。
例え30年経とうが、100年経とうが、1000年経とうが、10000年経とうが、烈火の如く怒ることでしょう。
たとえ、それが唯一無二の親友であってもです。
ラーメンに本気(マジ)にならないメフィスト2世など、メフィスト2世ではありません。正直、「誰だお前は」という感想しか湧きませんでした。

どの作品、どのキャラクターにも
「このキャラクターならこういうことを言うよね」「こういうことをするよね」
という覆ることのない設定・前提があると思います。

しかし前述のように、従来キャラクターと設定剥離を起こしているレベルのシナリオをみると、おそらくこのシナリオを書かれた大野木寛氏は、そういったことを意識せずに自分の価値観の中でしか物を書いてらっしゃらないのではとお見受けいたします。

「(自分だったら)どうしてもお腹が空いてたら、親友のでも我慢しきれなくて目の前のラーメンを食べちゃうよね」

「(自分だったら)こんだけ引っ張ってインスタントラーメンの話だったら、もっと何かあると思って、ラーメン食われたことよりもそっちの方を怒るよね」

……あらゆる事象において「『想像力』に欠ける」というのはトラブルのもとですが、ここまでとなると、もはや作り手として致命的なレベルかと思います。
このような方が令和悪魔くんのシリーズ構成を担当されると思うだけで、私の頭痛はますばかりです。

朗読劇シナリオの総括

たった10分弱の朗読劇だったのに、ここまで「平成版アニメ悪魔くん」の基本設定に対する矛盾・無配慮がこめられているともはや怒りを通り越して唖然といった思いです。

また今回の朗読劇で最も恐ろしいのは
これを書いている大野木寛氏が「平成悪魔くん」の【続編】である「令和悪魔くん」のシナリオ構成を担当なされる
という点かと思います。

さらに、このような作中展開の面白みも一切ないどころか、シナリオそのものの致命的矛盾点があるのにも関わらず、公然とそんなシナリオを絶賛した制作陣の皆様方におかれましては、深く強い失望と憤りの思いであります。

多少なりとも「平成版アニメ悪魔くん」への知識があれば、大野木寛氏のシナリオが「プロとしての仕事ができていると、お世辞にも言えぬ内容だった」のは明らかかと思います。

むしろなぜあれを手放しで絶賛されていたのか理解に苦しむところです。

シナリオを書かれる大野木寛氏、そして令和悪魔くん制作陣の皆様のプロとしての仕事を期待しておりましたが、今ある思いは絶望と漆黒の虚無のみです。


4、シリーズ構成作家のご発言に対する問い合わせに関して


またシナリオ以外にも
大野木氏の悪魔くんデー終了後のTwitterでのご発言についても申し上げたいことがございます。

・女児性被害ニュースに対するツイッターでのご発言について


2021年11月28日。
大野木氏は、「2021年11月14日、福岡県で起きた78歳男が女児の体を触った猥褻事件」のニュース記事をTwitterアカウントでRTしたのち

「ムッシュ・ムラムラ! RT」

という発言されておりました。
これは悪魔くんデーの翌日のツイートで、当時多くのファンから制作陣に対して注目が向けられている最中の出来事でした。
(悪魔くんのファンの中で大野木氏を存じ上げなかった方が、今回の「令和悪魔くん」の報を聞き、大野木氏のTwitterをチェックしに行ったところ該当ツイートが一番最初に目に飛び込んでしまい非常にショックを受けたという話も耳にしています。)

私は当該ツイートをみた際に、これは性被害を茶化すもしくは茶化していると誤解を与えるような発言だと感じましたし、それを平然となさる作家様が元来子供向け作品である「平成悪魔くん」の続編作品のシリーズ構成をされることに非常に不安を感じました。

そもそも大野木氏のそういった不謹慎かつセンシティブな御発言は今回にはじまったことではありません。

・6期鬼太郎再放送の際のツイッターでのご発言について


大野木寛氏は2018年〜2020年までフジテレビにて放映された「ゲゲゲの鬼太郎 第6期」のシリーズ構成を担当されておりました。
(なお「6期鬼太郎」のプロデューサー様は「令和悪魔くん」の永富大地氏です)

筆者はこの「ゲゲゲの鬼太郎第6期」第1話先行上映会〜アニメ最終話をリアタイ全話視聴しております。(ちなみに同作家がお書きになられた6期のシナリオに対しても言いたいことが富士の山ほどありますが、確実にこのnoteの文量が今の2倍以上に膨れてしまいますので今回は控えさせて頂きます。)

遡る事およそ2年前
2020年の年明けから春先にかけて日本でもコロナが猛威を震い始め、その影響によるアニメの制作遅延や放映延期などが発生しました。
当時は深刻化するマスク不足、2020年4月には初の「緊急事態宣言」が発令されるなど、まさに日本においても世界においても未曾有の事態であったことは記憶に新しいことと思います。

そんな中で2020年4月放送開始の「デジモンアドベンチャー:」もコロナ禍の影響で制作が遅れ放送休止になりました。
そしてその放送再開の繋ぎとして再放送されたのが同年3月まで放映されていた「ゲゲゲの鬼太郎 第6期」です。

「ゲゲゲの鬼太郎 第6期」公式Twitterアカウントからも再放送に対する告知ツイートがなされました。
しかしそこで、6期シリーズ構成を担当されていた大野木氏は公式アカウントの告知ツイートを引用RTしたのち

『みなのもの! 喜べ! 6期再放送だ! いや、デジモンスタッフには申し訳ないが。』

とご発言され、更にその発言に苦言を呈された方に対しては

『「デジモンスタッフには申し訳ないが」といったのに…。 ま、不快に思うツイート主はブロックするに限ります。』

と一切悪びれる様子もなく、また同様に該当ツイートそのものに対する直接の謝罪はありませんでした。

当時はクラスターによる世界的非常時に伴った異例の再放送であたったため、6期を応援している鬼太郎ファンの間ですら

「6期鬼太郎の再放送だが、状況が状況故に喜ぶに喜べない」

という意見が多く見られていました。
私はこれが倫理感と配慮の伴った一般的な感覚であると思います。

そもそも本件に関しては『「デジモンスタッフには悪いが」と言ってるからいい』とおっしゃってることそのものが非常に問題で

❶コロナ禍で制作が出来なくなった穴埋めとして鬼太郎が再放送されることは偶然であり、その陰に悲しんでいる人がいることを理解しながら、上から目線で「喜べ」と発言している。

❷そもそも論として、人の不幸をせせら笑うに等しい行為である

❸デジモンのスタッフもそうだが、最も気遣うべきはデジモンの放送を楽しみにしていたファンである。しかし、デジモンファンに対する配慮はツイート上で一切見られない。

❹(いないとは思うが)鬼太郎のファンが大野木氏の言葉を鵜呑みにして喜んだ場合、デジモンファンやスタッフをさらに傷つけることになる。またそのように扇動した張本人であると客観的に捉えられかねない。

❺『「デジモンスタッフには悪いが」と言ってるからいい』とかそう言う問題ではなく、その発言そのものが失礼かつ不謹慎極まりない。

という点を、発言をしたご本人が最後まで理解していらっしゃらなかったように思います。

当時は放映が終了していたとはいえ、6期シリーズ構成であるにも関わらずあのような発言を平然となさる大野木氏は、ご自身のお立場と責任を非常に軽んじられているように私は感じましたし、また何よりも各所への配慮どころか倫理観も一切欠如した発言であったと思っております。

また先ほど申し上げた通り、水木ファンからしてみれば鬼太郎6期という作品の主要スタッフがそのような発言をするだけで、デジモンファンからの心象がよくないというのは想像に難くない上、鬼太郎ファンとデジモンファン間で諍いが起こるということも大いに考えられました。

さらに私は上記の件も含め、「ゲゲゲの鬼太郎 第6期」に携わる2年間で散見された氏のモラル・倫理に反する度重なる言動に対し、昨年2021年の悪魔くんデー以前に東映アニメーションに対し手紙を送付もしくは問い合わせをした水木しげるファンを複数名存じています。
にも関わらず、大野木氏は「令和悪魔くん」のシナリオ構成として作品に参加されており、その後も反省がみられるどころか今もなお「女児性被害を茶化す発言」や「コロナ禍が絡んだアニメ再放送に関する不謹慎な発言」以外にも「感染症対策を軽んじる御発言」、「転売を助長させるような御発言」また、2022年2月26日現在ウクライナ情勢において「情報戦の加担になるから安易な情報ツイートをしないよう」と各所で言われているにも関わらず情報を「拡散」したり、今実際に苦しい思いをしていらっしゃる渦中の方のお気持ちをまるで考えていないツイートをされるなど……変わらずモラルに欠けると誤解を与えかねない御発言を発信し続けています。
作家名でTwitterを運営しているのにも関わらず、このような言葉が次々とまろび出ることに私は驚きを隠せません。

私は、平和と幸福と平等を語る「平成アニメ版悪魔くん」の続編を書かれる立場にも関わらず、そんな御発言をする方が筆を取り続けることを大変残念に思います。

今回の令和悪魔くんの件で、既に多くの、そして実にさまざまなお問合せが東映アニメーションに送られていることと思います。

にも関わらず2022年2月26日時点で令和悪魔くんのプロデューサー様および関係者からの一連の件に関する釈明などは以前一切ない状況です。

鬼太郎6期で物議が醸され、水木しげる御大がこの世に産み落とされた作品の行く末を心から心配して手紙ないし問い合わせに綴ったファンの警鐘をどこかで真摯に受け止めていれば、今このようなことにはならなかったのではないでしょうか。

顧客からの度重なる声を無視し、このような醜態を放置・黙認し続けた東映アニメーションおよびプロデューサー様におかれましては、悪魔くんファンである以前にいち水木しげるファンとして強い憤りと嘆きの思いであります。

また私はいち悪魔くんファン、そしていち水木しげる大先生のファンとして大野木寛氏の令和悪魔くんの制作に携わることに多大な不安を抱いておりますし、顧客の声に真摯に向き合っていただけないのであれば令和悪魔くんのお仕事を御降板いただきたいなと思っております。

またそれと同時に、大野木寛氏の言動に対するこれまでのファンからの多くの問い合わせ、そして永富大地プロデューサーの悪魔くんデーの「ノーギャラ発言」については……令和悪魔くん制作陣(東映アニメーション)の企業コンプライアンスに欠けるご発言を指摘すると共に、顧客の声に対する説明責任と、企業倫理を果たされることを強く求める所存です。

5、最後に


私が東映アニメーションの令和悪魔くん関係者各位に求めているのは

この方になら愛する作品をまかせても大丈夫だという「安心感」と

原作(元になった過去作品……この場合は主に「平成アニメ版悪魔くん」)
原作者である水木しげる先生、版元である水木プロダクション様への「敬意」
です。

元来子供向けアニメでありながら、種族を超えた「平和」と「幸福」と「平等」を謳ったのが「悪魔くん」だったはずです。

そんな「平成悪魔くん」の続編であるはずの作品に、女児の性被害を茶化す様な言動をなさる方がシナリオに携わっていて「安心感」はあるでしょうか。

「平成悪魔くん」の続編を制作しているのにもかかわらず、それらの設定や描き方を復習しておらずあまつさえそれを許容している現場に作品や原作者・版元そしてファンへの誠の「敬意」と「愛」は感じられるでしょうか。

私はこれまで2019年に初開催された「悪魔くんスペシャルデー」から3年間毎年贈り物をお贈りさせていただいておりました。

それはひとえに「平成悪魔くん」という素晴らしい作品を作ってくださった
30年前の御関係者様に少しでも見える形で愛と御礼を伝えたいと思っていた事。

そして「平成悪魔くん」という作品の素晴らしさを少しでも多くの方に伝える助力となればとの思いからでした。

故に令和悪魔くんが今回このような形になったことには、改めて憤りそして悲しみ満ちる思いです。

東映アニメーションの令和悪魔くん制作に携わる御関係者各位には、今一度是非今後の方針および制作体制を改めていただければと切に願っております。


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