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土地の価値はどうすれば上がるのか?メルボルンから学ぶ、世界一の場作り

「土地欲しいって言っていたよね、いい場所でてきたよ買わない?」ふるさとの親しい方からそんな声かけをもらい、土地を買おうかな〜。30代の私でも買えないことはない金額だしなと考え始めることがあった。

でもそこは富山の片田舎。人口減少率も、空き家率も右肩上がり。普通に考えて、資産としての土地を買うには全く適していない。

同時に社会背景として、私たちは、これから3軒に1軒は空き家になる時代に突入しようとしている。人口が減っていく地域で土地を持つなんて、”資産”ではなく”負債”以外の何物でもないよと、近しい友人たちはいろいろとアドバイスをくれる。

土地の価値ってなんなんだ。

土地ってなんで資産と言われて、なぜ上がり下がりするのか?

価値を生む場とはどんなところなのか。

そんなことを考えていたら、ファイヤープレイス代表の渡邊知さんから、『海外では、場作り(プレイスメイキング)という手法がある。メルボルンでは、その専門家が行政とタッグを組んでいろいろな施策を行っている』と教えてくれたので、今年の秋に、私は現地に行ってみました。

富山とメルボルン

環境は違えど、”土地の価値をどう上げるか”については共通項があるのではと思い、旅先で気づいたこと、参考になると思ったことを書いていく。

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メルボルンの場作りの裏側

プレイスメイキング専門家という人々は、過ごしやすいパブリックスペースの運営をプロとして行っている。その取り組みが起因となって、メルボルンは「世界で最も住みやすい街」に7年連続で選ばれたといわれている。

プレイスメイキング専門家は、『ある場所への人の滞在時間が20%伸びると消費が25%伸びる』ということを念頭に、人々が家ではなく”町”に居たいと思う時間を伸ばしているという。

でも具体的にどうやって?

そう思い、今回の旅では、プレイスメイキングのメソッドが発揮された場所を重点的に巡ってみた。

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1)アートの活用

まず、プレイスメイキングの1つ目は、アートの活用。メルボルンではたくさんのアーティストとのコラボレーションを行っていた。

しかもそれがスゴイ大規模で、徹底している点には驚いた。

地域活性化×アートなんて、日本でもやっている。

全然、新しいことではないと思う方もいるだろう。

そんな中、私が度肝を抜かれた点は、その地域の建物オーナーが一丸となって、アーティストたちにストリートアートを許可しているということ街の一角すべてをアーティストのキャンパスにしている点だ。

しかもしかも、アートが許可された場所というのは、豪州で最も歴史ある建物が残っている地域。

日本で例えると、浅草の浅草寺や、京都の先斗町のような数百年続く歴史ある街並みエリアの真横に、ストリートアートの世界を設けているという感じ。(きっと日本だと逮捕されちゃう!)

もう、言葉では表現しきれないので、以下、写真ツアーでどうぞ!

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(市役所の横にある立派な大聖堂:St Paul's Cathedral, Melbourne)

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(ストリートアートで有名な「Hoseier Lane」。道の名前さえかき消されている)

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(ウォールアートは、日に日に増えているようです。すべての壁やパイプ、ゴミ箱までぎっしり)

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(ウォールアートが最優先、コーヒー屋さんもアートが見えるように半分しかシャッターを開けていない)


日本だと、京都の一角にストリートアートを許容する地主が現れるなんて、なかなかイメージできない。

でも豪州は、地主や建物オーナーたちがアーティストが活動できる余白を与えていることで、古い街並みにアートが点在し、景観が更新されていく。

アーティストが日々アートを描き換えていくので、ひとの流れも継続して生まれ続けるというサイクルができていた。

2)ベンチの数が半端ない

プレイスメイキングの施策として2つ目に記憶に残っているのは、ベンチが町の中の至るところにあることだ。

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メルボルン市内には、メイン通りから中に入る小さな裏路地(Lane)がたくさんある。そのほとんどの裏路地は、飲食店の裏側。つまりお店のゴミ箱を置いたり、店員が休憩中にタバコを吸ったりする場所だった。

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(写真:利用されていない裏路地の一例)

しかし、そんな場所だと通りすがりの人もさっさと通過したくなってしまう、ということで、メルボルンでは至るところに「ベンチ」を設置している。

そして、街の人もお店の人にも「ベンチ」を設置するからきれいにしてねと呼びかけて、「小汚い裏路地」だった場所を「お家のテラス」のように利用できるパブリックスペースに変化させている。

そんな風に整えた場所では、人通りを更に増やそうと、そのエリアの飲食店のオーナーたちがお金を出し合って、定期的にアーティストや音楽家を呼んでいるという。そうして、更に人々が少しでも長く滞在したい場所にしているのだという。

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(写真:利用されている裏路地の例:Degraves Street)

私がお昼ごはんを食べた路地(Degraves Street)は、このような道の使い方で有名になり、今やメイン通りよりも多くの人が立ち寄る場所になっていた。

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3)無料バス

最後のプレイスメイキング・メソッドとして、一番すごいなと思ったのは、『完全無料バスの運行』。

メルボルン市内の限られた、しかし広範囲のエリア内を走るバスであれば、何回乗っても完全無料という市政サービス。バスは山手線に負けないくらいの頻度で動いており、行きたいところに手軽に移動できるようになっていた。

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(写真:グリーンのエリア内を走るバスは無料)

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(無料エリア内では、バスのカードをタッチしなくてもいいよとのこと)

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おばあちゃんも、移民の子供も、子連れのお母さんも、街中であればスイスイと身軽にサクッと移動できる。完全無料バスの運行は、世界広しといえど他になかなか聞いたことがない取り組みで、私は感動。

これら3つの施策以外にも、「場の昼と夜を使い分ける」「場特有のものを重ねる」「ウォークショップ(ワークショップという1点にとどまる体験ではなく街を歩く体験)」など、様々な施策が行われていた。

プレイスメイキング(場作り)とは決して派手なものではないが、『ある場所への人の滞在時間が20%伸びると消費が25%伸びる』という理論のもと、その場が持つ力を最大限にしようとすることだと体感することができた。

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メルボルン在住のプレイスメイキングのプロ、ジュベール・ロシュクストさんは、とあるイベントで以下のように語っている。

「消費にとどまらず、その場所ならではの体験や場所特有の(オーセンティックな)魅力を求める傾向が強まっています。プレイスメイキングは、単純にある場所の魅力を高めるだけではなく、コミュニティの力や人々の幸福感を高め、環境や文化を守る力につながる活動なのです。世界がスピーディーに変化し、人々が移動しやすくなっている現代だからこそ、プレイス特有の価値が求められています。」

土地の価値ってなんなんだ?

という問いに対して、私にはまだ答えがないが。

土地は買うだけ価値が上がるわけではない。

周辺の人々の生活が豊かになるように、より動けるように考え行動した結果、その土地を利用したい人の想いの総和で価値が上がっていくものだと理解した。

人口減少の日本地域と、人口が伸びているメルボルンでは、社会環境が全く違う。日本では、土地付きの家が1円で売買されている事例も出てきている。

そんな中、私たちの世代は何をすべきか。どうすれば人が少なくなる時代に想いの総和を生み出せるのか。

メルボルンに前例や事例は無いけれど、だからこその面白さがあるとワクワクする。

ご縁があった富山の小さな土地も、すぐに大きな変化は起こせないかもしれないけど、価値を上げたい、ふるさとの風景をUpdateしたいという気持ちや、仲間の存在がある。

その結果、逆境の中でも、少しずつ土地の価値が上がっていくことを体感できるかもしれないと思うと、”土地”は持ってみたい。

オモシロイと思っている自分がいる。

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