35歳になりたかった

35歳になりたかった。

そう思っていた35歳も、とうに過ぎた。

そしてわたしは今、
45歳になりたいと思っている。

別に生き急いでいるわけではない。
アラフォーの未婚女性にとって、少しでも若い1日1日は、きっと貴重にするべきものだ。

それでも　わたしは
はやく45歳になりたい。

わたしがハタチそこそこだった頃、
35歳以上の初産は、差別的な意味をすこし含めて「まるこう」と言われていた。

職場の先輩が「まるこう」で妊娠したとき、それはとても稀なことのように取り扱われていたし、健康体の先輩もリスクを心配して大学病院でお産をした。

35歳になれば、妊娠も出産も、特別な人にしか出来ないものになるんだ
と、あの頃のわたしは思っていたのだ。

だけれど、そこから20年近くがたち
初産の平均年齢は30歳を超え、35歳以上で子を産む人たちが増えている。
「まるこう」を揶揄する意味はなくなり、きちんと死語になった。

そして35歳になれば、普通の女性になれるというわたしの淡い期待は叶わなかった。
今は、アラフォーになっても、女性は子を産む性として、期待される時代だ。

わたしは子を産むことができない。

それを知ったあの頃から、わたしは普通の女性になりたいと願ってきた。
適齢期にあって子を望めないというマイノリティでなく
周囲の期待に沿えるだろう、多くの女性のなかの一人に。

子を産む性として期待されなくなった頃、わたしはやっと普通の女性にもどる。
その日がきたら、まっすぐに向き合えるはずだと。

それを未婚でいる理由にして、自分を慰めているわけではない

ただ、大切にしたい人が現れるたび　いつも負い目を感じてしまう。
他人の人生から大切なものを奪ってしまうこと。
このマイナスを埋められる何かを、わたしはいまだ自分のなかに見つけられない。

覚悟も自信もなく　そして、きっと単に不器用なのだ。

ここから解放される日は、まだ少し遠い。

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