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努力の師匠を女子プロレスの中に見つける

スターダムを観に行くと自分に言い訳できなくなる

 女子プロレス団体『スターダム』に「中野たむ」という選手がいる。プロレスに詳しくない人は、団体名も彼女のことも耳にしたことはないかもしれない。

 僕は今年、このスターダム中野たむ選手から目を離してはいけないと思っている。

スターダムに起きた変化。課された命題

 去年の10月にスターダムの事業権が新日本プロレスをV字回復させたブシロードに譲渡された。そしてブシロード代表の木谷氏は「日本のプロレス業界第二位に」と述べた。一位は新日本プロレスそして二位をスターダムにという話であり、ともすればこれは女子プロレス業界は圧倒的一位を取るという話である。

 すこし脱線するが、スターダムの雰囲気・毛色は新日本プロレスとの共通項が多いと思っていたのでこの事業譲渡はとてもおもしろいし間違いなくスターダムは2020年以降に大躍進するだろうと思っていて、これからどんな施策を打っていくのだろうか興味深く感じている。

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(昔の女子プロのイメージとはまったく違う、洗練されたビジュアル)


命題に向かって進むということ

 上が変わってあとはそのままなんてことはありえない。まして超人気団体になるのに、そのままでいられるわけがない。変わることが必然になる。

 実際に起こり始めた変化として、選手たちは普段の興行(試合)以外に、業界トップの新日本プロレススタップに混じり設営や運営を手伝いながらノウハウを学び、プロレスのレベルも男子並にレベルアップするために試合を観に行き、指導者やトレーニングを変え、メディア露出はどんどん増えつづけている。これらは、これまでやってきたサイン会や2ショット撮影などのファンサービスを減らさずに、だ。

 目標に見合った変化は必要なことで、言うは易く行うは難し、受け入れるはなお難し、なのだ。団体の命題は転じて、選手たちに業界トップを受けとれる器になることを命じている


「中野たむ」という選手

 去年の観戦時から可愛らしい選手だなあと思っていたが、試合ではトップコーナーから場外へのプランチャ(ダイビング・ボディ・アタックといえばイメージできるかな)を躊躇なくしたり、回し蹴り、スープレックスと映える技を練度高く、きれいに扱う。

 そこからさらに興味が湧いて、プロレスを始めた経緯やスターダムでの歴史を調べると驚くことがたくさんあった。まさに山あり谷あり。特にプロレスにおいてはその見た目からは想像できないくらいに、命をかけている事がわかった。電流爆破マッチなんて、第一印象からの想像を余裕でトペ・コンヒーロである(トップロープを超えて場外の相手にダイビング・ボディ・アタックする技のこと)

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 そしてインタビュー動画で女子プロレスの練習生時代のハードさを知る。

(男子も大概なのは聞いているが、チアノーゼって……)

 そしてまた彼女はスターダムの中でもストーリーが厚い。年末から起こった看板選手の引退や新加入など動きがあるなかで、すくなからず看板選手との因縁が深い中野たむ選手は、いったい何を託されるのか。ほのめかされている新加入の選手とも因縁もある

 プロレスファンにとっては、試合の強さと同時に選手が歩いてきたストーリーが重要で、苦楽や悲喜・他の選手との因縁やライバル関係・師弟関係などといった厚みがあるほど想像を掻き立てられ、その選手を知れば知るほどさらに魅力的になっていく。これはハッピーターンの粉並みに中毒性が高くてヤバい。


プロのレスラーであるということ ~トレーニング、試合、SNS、ファンサ、運営 etc...~

 選手たちは各種SNSで自分たちや団体のことを発信する。そして発信するだけじゃなく、どう評価されたかなど、自らの手で調べて感謝とプロモーションと喚起などを混ぜながらうまく反応を返している。

 選手たちは僕らが思っている以上に、調べて、考えて、向き合っている。

 なんとなくだが、スターダムの選手は業界の中でも高い水準でマメな印象だ。以前に、僕はハッシュタグをつけずに選手の写真と感想をツイートしたとき「いいね」をもらって驚いたことがある。あくまで主観になってしまうが、特にたむ選手はマメ。こういうのはファンからしたら嬉しいこと。僕もファンなので一瞬でも声が届いたときは、ガッツポーズがでる。それくらい嬉しい。

 また、たむ選手はサイン会でもファン一人ひとりと、元気に、しかし丁寧に会話をしていて、横にいた村山レフェリーに「ちょっと巻きで」的なことを言われたりして、たむ選手はファンサへの意識も高い。

 先にも書いたとおり、スターダムは大きくなるため、団体の中はファンが想像する以上に変化があると思う。それでも以前と変わりなく、もしくはそれ以上に、明るく、疲れも見せない笑顔で、スターという文字通りのキラキラした彼女たちをファンに見せてくれている。

 いったいそれはどれだけの体力と精神力なのか。

 スターダムの選手たちはファンにキラキラを見せつつ、激動の中を現在進行系で進んでいる


会場で会える。話せる。 僕はそれでいいのか?

 この記事のタイトルに書いた、僕の努力の師匠とは誰かもうお察しのとおり中野たむ選手のことだ

 自分事で恐縮だが、僕は自分ひとりの会社を持っている。ひとりなので今はまだいい。けれどもっと上を見たい。目標とする業界と世界の人間たちは、発する言葉は日本語なのに異国の言葉ように感じるほど、はるか彼方の沖の方まで船を進めている。陸にいる僕にとっては果てしなく遠いし、近づこうとした時間のぶんだけさらに距離を離される。絶望しかない。でもそこに向かって船を進めるという変化を自分に課した

 当たり前だが、変わるのは簡単じゃない。これまで回り道の中で拾ったり頂いたアイテムでなんとかやってきた。目的として狙って一直線に進もうと歩いて、望んだものを望んだままの形で獲得した経験はじつのところとても少ない。そして、何でもそうだが始めたてはうまく行かない。かすかな成長は気づきにくいから、うまく行かないと感じて、心はいとも簡単に削られて何度でも折れそうになる。

 昔だったら折れて終わりだったかもしれない。でもいまは、中野たむ選手の活動を見たり思い出したりしては、「たむ選手はもっとがんばってる」「これくらいなんも辛くない」「これでチアノーゼはおきない。死なない」と、頭のなかで唱えるようになった。

 女子プロレスのファンになるってとてつもなくモチベーションをもらえるんだなと自分で驚いているが、いまのスターダムの選手達を見ていると、自分の言い訳を完全に潰される

 彼女たちくらいやってみろよ、やれてからの結果で泣き言を言え、と。もうひとりの自分が叱咤激励してくるようになった。

 すると観念してというか、意地というか、ファンとして堂々とサイン会に行くためというか(笑)、比較的去年よりも歯を食いしばれるようになったと思う。特に大好きで尊敬する中野たむ選手には、「たむ選手のおかげで諦めない自分に変わりつつあります」と、今度の名古屋大会の観戦&サイン会時に感謝を伝えるというモチベーションで土壇場の負け越し回避を続けられている。と、自分ではそう思う。

 珍しく語ったnoteだが、もし興味が湧いたらスターダムを観てほしい。You Tubeのオフィシャルチャンネルがあるし、これまでの女子プロの印象がガラッと変わる。スターダムはじめ、いまは徐々に昔のプロレスにあったバイオレンスさは極めて薄く、スポ根的なドラマチックさが主流になっているので、とてもおもしろいのだ。そして願わくばたむ選手のファンになって、一緒に目標に向かって頑張れる人間になろうという、そんな記事だ。

めでたしめでたし。(なんとも無理やりで力技な締め 笑)

明石多朗はペンネームです。たっぷり朗らか、と書いて「多朗」です。太郎と間違えられますが画数がとてもよいので間違えないでください。 多朗です。