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みんなのNPO研究室レポート|#05「人を援助すること」を考える」

みんなのNPO研究室、第5弾のトークセッションを1月19日に実施しました!
今回のテーマは「人を援助すること」について。

人や社会と関わる仕事のひとつである「対人援助職」。今回は対人援助の仕事に就き、日々支援の現場で人と向き合っているゲストをお招きし、そのリアルを語り合いました。

登壇者の紹介

今回のトークセッションでは、静岡県立大学卒業後に対人援助職として働く3名が登壇しました。

1人目は、和歌山の社会福祉法人一麦会が運営する「ソーシャルファームもぎたて」で働く、湯浅雄偉さん。

社会福祉法人一麦会 ソーシャルファームもぎたて 主任指導員 静岡県立大学国際関係学部2012年卒業。 在学中から就労支援に携わり、YEC(若者エンパワメント委員会)では中・高校生の余暇活動支援を行う。北海道大学大学院在籍時から生活困窮にある方の支援活動と地域づくりに邁進。 現在は和歌山県の障害者福祉作業所にて自然栽培野菜をつかった新しい仕事づくりに取り組む。 2020年より静岡県立大学コミュニティ・フェロー就任。集中講義「地域づくりの方法」を担当(2019・2021年度)

2人目は、静岡の「NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡」で働く、宮西悠さん。

NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡職員 静岡地域若者サポートステーション 就労支援サポーター 静岡県立大学国際関係学部2020年卒業。在学中は"地域団体 静岡2.0"、"ボランティアサークルこんぺいとう"に所属。就労支援、障害者福祉、地域づくり、中国文化など幅広い分野をボランティア等の活動を通じて学ぶ。卒業後は、工場向け付帯設備メーカーにて法人営業に従事。2022年より現職。

そして、静岡の社会福祉法人城ヶ崎いこいの郷が運営する「障害者支援施設碧の園」で生活支援員として働く、森洋子さんにご参加いただきました。

社会福祉法人城ヶ崎いこいの郷 障害者支援施設碧の園 生活支援員 静岡県立大学国際関係学部2020卒業。在学中は静岡学生NGOあおい、静岡県立大学学生ボランティアセンターに所属。就労支援ボランティアやカンボジアでの子どもの権利普及活動に参加。卒業後は障害者支援施設にて主に知的に障害がある方の日常生活上の支援や創作・生産活動の見守りやサポートをしている。

(モデレーターは、みんなのNPO研究室事務局の渡辺眞子が務めました!)

「他者を知る」「人と関わる」というキーワードがみつかった学生時代

今回ゲストとして登壇いただいた3人は、福祉を専門的に扱う学部ではない、国際関係学部で学生時代を過ごしていました。みなさん、当初から対人援助の仕事に就きたいと考えていた訳ではなかったようです。どんなきっかけで対人援助の仕事を志すようになったのか伺いました。

宮西さんは、半年ほど前に現在のお仕事に転職した経緯があります。大学卒業後は、自分が経験したことのない分野にあえてチャレンジしてみようと考え、設備メーカーの営業職として就職しました。その後、自分のやりたいことを見つめ直し、現在のお仕事に転職を決めました。「やりたいこと」を考える際に立ち返ったのは、学生時代の活動だったそうです。

私のこれまでを整理してみて、自分自身のキーワードになったものが「他者を知る」「人と関わる」でした。私はもともと人と関わることが苦手ではあったんですが、大学に入学してすぐに「静岡2.0」という地域団体に所属して、地域で対話型のワークショップやまちあるきイベントを企画したりしました。その中で、どんどんと「人と関わることの楽しさ」を感じるようになりました。
そこから、さらに色んなボランティア活動に参加するなかで「もっと自分を出したい」と考えるようになった時に出会ったのが「ゆうゆう舎」という、身体・知的障害を持つ方をサポートするNPOでした。初めて、障害を持つ方々と触れ合うことになったのですが、「ここ、すごく居心地がいい」と思えたんです。ごちゃごちゃした感じが好きで、何一つとして綺麗にまとまらないところが心地よくて「わたしもここに居ていいんだ」と思えたことがすごく良かったです。自分と違う人、「他者」と触れ合うことへの楽しさや喜びを感じられた経験でした。

大学卒業後に就いた営業の仕事を通じて、「やっぱり自分は人と向き合うことを仕事にしたい」と気づいた宮西さん。学生時代にいろんな活動に参加しながら、自分自身のキーワードを模索したことが、卒業後のキャリア選択にも大きく影響していることが伺えました。

「人が好き」というまっすぐな想いが原動力になる

次に、ゲストのみなさんに、支援において大切にしていることや原動力となっていることを伺いました。日々の実際の支援の中で起きた出来事やストーリーから、自身のやりがいを感じた瞬間をお聞きしました。

対人援助の仕事と言ってもその幅はすごく多様で、宮西さんや湯浅さんのように「働く」という部分を支える仕事もあれば、森さんのお仕事のように「日常生活」を支えるという関わり方もあります。森さんは、障害を抱える方の暮らしを支える仕事に取り組む中で、小さな変化や成長を感じられた時にやりがいを感じるそうです。

頭をすごく叩いちゃう利用者さんが居て、理由を聞いても「わかんない」としか答えられない状況がありました。多分、本人も本当にわからないんだと思うんですけど、「自分の身体を大切にしてほしいから、叩きたくなったら自分の頭を撫でてみようか」という話を繰り返ししていくうちに、それができるようになっていったり。そういう小さいこと、ちょっとした変化や時間をかけて変化していくことを感じられる時にやりがいを感じます。出来ることが一つ増えたという、成長がやっぱり嬉しいです。利用者の方々の笑顔をみて、こちらが元気をもらうということばかりです。

森さんのお仕事は、食事や入浴の介助をするなど日々の暮らしを支えるもの。たとえば、家族であったとしても大変さを感じるような支援だと思いますが、森さんは「まったく抵抗だったり、嫌だなと思うことはありません」と笑顔で話してくれました。森さんのお話から、純粋に「人が好き」という根底にある気持ちが、森さんの原動力になっていると感じました。

「ケア」を担う対人援助職だから直面する、社会の仕組みにおける限界や矛盾

最後に、日々の支援において「あるべき姿」と「現実」の狭間の葛藤について伺いました。支援をする相手との向き合い方における葛藤、組織として支援に取り組む上での葛藤など、さまざまな視点から意見が出ましたが、湯浅さんからは「対人援助職だからこそ社会システム上の矛盾や限界に直面しやすい」というお話がありました。

対人援助という仕事は「ケア」とも言い換えられます。みんな赤ちゃんの時から大人になるまで、だれかの「ほっとけない」に助けられて、支えあって、依存しあって生きてきていると思います。
ケアは社会保障の仕組みの中で成り立っている部分があります。ケアの仕事で「人が足りない」等の限界は、すなわち制度の矛盾や限界でもあるわけです。ケアの仕事をしている人だからこそ、仕事としてどういう制度・仕組みの中で成り立っているのかという視点を持って、職場の同僚たちや労働・福祉の現場で働く人たちと一緒に考えて、社会に投げかける動きをつくりたいと思っているんですけど、仕事の中で運動に変えていくことや言葉で表していくことは、なかなか難しいと感じています。どうしてもケアって気持ちの問題とか、お世話の問題に回収されてしまうんですよね。それが私は問題だと思っているんですが、職場のなかの会話で作り出すことが難しいです。

対人援助職には、社会のなかでの支援やケアの在り方を考える役割があること、そして、それを対人援助職に関わる人たちだけで閉ざすのではなく、ケアに依存している社会側にも投げかけて行く必要があることを感じるお話でした。

最後に

今回は、対人援助職になることを検討している学生、NPO関係者や対人支援職として働く方々、そして転職を検討している方など、幅広くご参加いただきました。

会の終了後には、「転職先でも支援の仕事をしたいと思っていて、でも働き続けられるだろうかと少し不安もあったんですが、皆さんのお話を聞いてやっぱり支援の仕事を長い目でしたいなと素直に思えました。」という感想もいただきました。参加いただいた方にとっても何か得られるものがある時間になっていればうれしいです。

ご協力いただいたゲストのみなさん、参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

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