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100回目のキスの前に

1. プロローグ

和歌山の静かな町。海のそばにある古びた木造の家には、18歳の少女、桜井アヤメが住んでいます。彼女はいつもエネルギッシュで、おてんばな性格で知られています。朝から晩まで走り回って、弟の健太(9歳)の面倒を見たり、家事をこなしたりと、休む暇もありません。彼女にとって、家族は何よりも大切です。誰かが家族を邪険に扱うのを見ると、すぐに頭に血が上ってしまいます。

アヤメには、誰にも言えない秘密があります。彼女は「100回キスをしたら絶命する」という奇妙な呪いを持って生まれてきました。彼女はまだ若いけれど、これまでに99回のキスをしてきたのです。友達の頬に、家族の額に、ふざけて…でも、次の一回が最後だと分かっているのです。

2. 呪いとの出会い

アヤメが呪いのことを初めて知ったのは、彼女が6歳のときでした。ある日、祖母が彼女にこう告げました。

「アヤメ、あなたには呪いがあるんだよ。100回キスをしたら、あなたはこの世を去ることになる。でも、その呪いには理由がある。あなたの心が強くなるために与えられた試練なのだよ。」

幼いアヤメはその意味がよく分かりませんでしたが、家族を守るために強くなりたいという気持ちだけはずっと心に刻まれていました。それからというもの、アヤメはいつも気をつけてキスを控えてきました。だけど、健太のことだけは例外でした。彼女は弟が大好きで、毎日おでこに軽くキスをしてから、学校に送り出していました。

そして、ある日、彼女は数えたくもなかったその数に気付きます。99回目のキス。

3. 冒険の始まり

「これで最後なんだ…」

アヤメは心の中で呟きます。もし100回目のキスをしてしまったら、自分はどうなってしまうのか?誰かを傷つけたくない…特に健太を失いたくない。でも、呪いを解く方法は何も分かっていないままでした。

その日、アヤメは学校の帰り道に不思議な少年と出会います。名前はレイ。レイはどこから来たのかも分からない謎の少年で、奇妙な機械を持っていました。

「君の呪いを解く手伝いをしましょうか?」と、レイは突然言いました。

「な、なんで私の呪いを知ってるの?」アヤメは驚きました。

レイは微笑んで、「僕は少し未来から来ました。あなたのことを助けるために」と答えます。

アヤメは半信半疑ながらも、レイの言葉に引かれ、彼とともに呪いを解く冒険に出ることに決めました。

4. 時を超えた旅

レイの機械を使って、アヤメとレイは時間を飛び越え、過去の様々な時代へと旅をします。アヤメの呪いの起源を探るためです。途中、アヤメは過去の自分と向き合い、自分が今まで守ってきたものの意味を改めて考えさせられます。

「家族のために生きてきたんですね」とレイが言います。「でも、その呪いは本当にあなたに必要なのでしょうか?」

アヤメは考えます。自分の価値観や情熱がどこから来て、何のためにあるのか。彼女は次第に、自分が何を本当に大切にしているのかを理解し始めます。

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5. 呪いとの対峙

数々の冒険を経て、アヤメとレイはついに呪いの真実にたどり着きます。呪いをかけたのは、遠い未来のある科学者で、自分の家族を失った悲しみから、人々に愛情の制限をかけるために呪いを作り出したのでした。だが、科学者もまた、愛する人を失った苦しみを抱えていたのです。


アヤメは科学者に向かって叫びます。「愛情に制限なんていらない!私は家族を守るために、この呪いを乗り越える!」

その瞬間、呪いの力は消え去り、アヤメは無事に和歌山の自宅に戻ります。

6. エピローグ

アヤメは、毎朝健太にキスをしながら、

「これが100回目じゃなくて良かった」

と心の中で微笑みます。彼女は、自分の強さと愛がどこから来ているのか、そしてその力が無限であることを知っています。

未来から来た少年レイは、静かに去っていきました。

「おばあちゃん、これからも元気でね」
と独り言を呟きながら…。


そして、アヤメは今日もおてんばな笑顔で弟の健太と共に、和歌山の町を駆け巡ります。彼女の冒険は、まだ始まったばかりです。

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