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美大に入って変化した8つのこと

明け方まで必死に学校で制作をしてギリギリに出した課題、フィールドワークと称して色んなホテルに泊まりまくったホテル設計、コーヒーのにおいがする先生の研究室で就活の相談にのってもらったこと、友達の家で朝までイラストを描く会をしたこと、夜に星を見るために近くの山に登ったこと、、、

美大に入ってから、息をつく暇あったのかな?というくらい目まぐるしく動く日常の中で過ごしてきて、たまにふと、「自分がここにいる状況が不思議だな、、、」と思う時があったり。もうすぐ大学を卒業してしまいますが、なかなかに濃い4年間でした。


2年生くらいの頃に「美大に入ってよかったこと・悪かったこと」をまとめた記事を書いたことがあります。

今振り返ってみると、あれはまだまだ美大での生活を一部の側面からしか見てなかった話でもあるなあ...と大学を卒業する最近になって思いました。


そこで改めて、美大に入って、自分の行動や思考で変化したことをまとめてみました。よかった/悪かった と一口に言えることではないので、「変化したこと」として書いていきます○


1,デザイン思考を身につけた

私は、美大ではデザイン科に入っていて、その中でも空間デザインを学んでいました。

その中でも、一番変化したというか、身についたことが 思考力 。

美大で思考力??と思う方もいるかもしれませんが、「デザイン」って単に絵やイラスト、写真やグラフィックで表現する造形力だけではないです。

先日読んだカイシトモヤさんの「たのしごとデザイン論」という本でデザインついてすごくわかりやすく説明されていました。

僕はデザイナーの仕事を、舞台の「演出家」にたとえています。(中略)
良い舞台をつくるために、役者どうしをきっちりと采配するのがデザイナーの役割なのです。デザインの舞台は版面です。名刺のような小さい舞台から、ポスターのような大きな舞台まで、デザイナーはさまざまな舞台の演出を行います。それがより効果的なものになるように、誰が主役で誰が脇役なのかを考え、版面という舞台に大きさを決めて並べていきます。興行主(クライアント)があれもこれも目立たせたい、主役にしたいなんて言いだしたら、きっとその舞台は混乱することでしょう。そうならないためにも、演出家が「どんな舞台にまとめたいか」について、しっかりとしたビジョンをもっておくことが大切です。そしてそれは単なる好みであってはいけなくて、その舞台がきちんと上演されることを目的にするべきなのです。

たのしごとデザイン論

この本の著者はグラフィックデザイナーの方ですが、建築や空間デザインにも同じことが当てはまると思います。


同著書に クリエイターに必要な「5つの力」 について書かれていたのですが、これらは本当に美大だからこそ鍛えられたと思いました。

「5つの力」というのは、

1,発想力(課題に対して画期的な解決策や誰も見たことがない表現方法を思いつくなど、アイデアを誕生させる力)
2,造形力(発想したものやアイデアをきちんとカタチにできる力)
3,美的判断力(他者が作ったものに対して適正なジャッジができる力)
4,情報力(収集力、編集力、応用力の3つに分けられる)
5,コミュニケーション力(情報を適切に交換できる力)

というもの。


正直、ノウハウ系は自分一人でも全然やろうと思えば身につくとは思いますが、思考部分の考え方やコミュニケーション力は、やっぱり人と一緒にデザインしたり話したり、教授たちに客観的に見て評価してもらったりしないと身につかないと感じます。

授業は、教授たちが社会に出て必要な力を身につけるためにすごくよく考えたカリキュラムが組まれていますが、学年が低い頃は「何のためにこの授業やっているんだろう?」と、木でいう枝葉しか見えてない状態で。


卒業制作とかを終えて振り返ると、これらデザインにとって大切な力を磨くために授業がすごく考えられていて、課題を通して結構鍛えられたな、と思います。

2,フットワークが軽くなった

自分の中で「とりあえず大学生中は色々試してみたい」と思っていたのもあるけれど、興味あるものも無いものも割となんにでも足を運ぶようになりました。

周りの子達も、自分の興味あることに自由気ままに行動している子も多いので、「とりあえず気になったら動いてみる」という風に自然となっていった気がします。

大学で色んな人や先輩と話したり出かけたりする中で、結構いい加減そうに見える先輩でもデザインについてすごく考えていたり、面白い発想で制作していたり、単純に表面だけではわからない良い面も悪い面も色々見れたのが、今考えると結構よかった気がします。自分の考えも前より自由になったと思うし。

3,自分の好きなもの・世界観が少しずつわかってきた

美大生ほど、4年間の大学生活を通して自分自身と向き合っている人たちっていないんじゃないかな...?と思うくらい、「制作」を通して自分自身のことを知ることができました。

多くの大学生は、就活での自己分析を通して、自分の好きなことや得意なことに深く向き合うことが多いと思いますが、美大では制作そのものが自己表現であり自己分析でもあります。

社会人になったらまた違うと思いますが、学生のうちは自分の好きなことや興味のあることを生かして制作を行います。何を作るか、デザインするかという企画やコンセプトから自分で考えるので、自分の好きや興味のある対象じゃないと、何時間も考えたり向き合っていられません。そして、自分がそのコンセプトやデザインを「良い!」と本当に思っていないと、それはプレゼンでも相手に伝わってしまいます。

私も、自分の興味あるお茶から発展させて植物園のような施設を考えたり、好きなモチーフである雨、水、路地、など使ってみたい素材から空間のコンセプトを考えたり、常日頃自分の面白そうだと思ったものや使いたいアイデアなどはよくメモしています。

もちろん、最初から自分の考えややりたいことをデザインに落とし込むのは本当に難しいですが、その中でも試行錯誤しながら自分と向き合って、何度もやり直しながら少しずつかたちにする力が磨かれてきたんじゃないかな、と。

自分の頭の中の構想がなんとか形にできると嬉しいし、クラスメイトに「この提案めっちゃよかった!」とか「空間のデザインが好き」と言ってもらえるとやっぱりすごく嬉しいです。

自分の好きなモチーフやテイスト、それから自分の大切にしたいことがわかってくると、それは色々なところにも応用できます。服装やお部屋のインテリア、何のデザインを買うかについてもあまり迷わなくなったり。


それから、周囲に対して自分の"好き"を隠してない人が多いので、自分の好きなものが多少変わっていても、あまり恥ずかしがらずに言えるようになりました。なんだかんだ高校までは、まわりからどう見られるかすごく気にしていた方でもあると思うので、この環境はすごく居心地がよかったです。

4,プレゼン力が上がった

「伝える」とはどういうことか、についてすごくすごく考えるようになりました。

私の大学では、毎課題ごとに必ずプレゼンテーションがあったので、デザインをして終わり、ではなく自分の作ったものを周りの人に「伝える」ということがすごく重視されていました。

単純に自分の好きなように作って終わりだと、それはただのひとりよがりな趣味になってしまいます。自分のデザインやサービス、空間が社会や人に対してどんな価値があって魅力的なのか、人に共感してもらって、納得して(動いて)もらうところまでが社会で今後デザインをする上では大切だと思うので、その力をプレゼンでは鍛えられました。

これは良いか悪いかとかではなくて、美大生は圧倒的に人の心を感動させる/ワクワクさせる、のような情緒的価値を提供している制作が多いです。実用的に問題を解決するよりも、人の心を動かして行動につなげたり社会解決につなげる。人の感じ方や好きなものは千差万別だから、全員が共感してくれるものではないかもしれないけれど、好きな人の心にささらせたい。

なのでプレゼンでも、興味を持ってもらえるようなかっこいい動画を導入に入れたり、魅力的な空間の3Dパースは大きく一枚で見せてインパクトをつけたり。

よく言われるけれど、人は基本的に話を聞いてくれないものだと思って、どうやったら自分のデザインに興味を持ってもらったり、聞いてくれるように工夫するかは本当に大切だと思います。

5,自分の限界を理解した

最近はオンラインの授業も増えて、学校も21時で閉まるので、学校に朝までいることはなくなったけれど、1,2年生の頃に限界ギリギリまで制作していたおかげで、
自分はここまでならいける、逆にこれ以上やると後でしんどくなる、
という感覚的な自分の境界がわかりました。

もちろん、社会人になって、美大の時のように徹夜して過ごすみたいなことはブラックな企業でないかぎり基本的には無いと思いますが、どこまで自分がやれるのかを知っておくのは大事かな、と。


6,人目を気にする回数が減った

昔からすごくすごく人の目を気にして生きてきた人間ですが、美大に入って、色々なものを見たり、出かけたり、色んな人と話す中で、人目を気にせず自分らしくいられることが増えました。

どこかに出かける時でも、身だしなみきちんとして、変に見られていないか気にして少し気を張って歩いていましたが、最近はもう少し自然体でいられるようになりました。

もちろん、街によっては歩く時に少し緊張しちゃう場所もあるし、逆に開放感全開!みたいな気持ちになれる場所もあります。そういう人目ではなく街に合わせて過ごせるようになったかなと。

人目を気にしなくなると、心に余裕ができて、より自分らしく動けるようになりました。


7,人に頼るようになった

人に頼るのが苦手だった、というよりも、今まで人に頼る必要があまりありませんでした。人に頼ると助かる場合もあるけれど、なんだかんだ自分ひとりでやった方が早いことは結局自分でした方が効率が良かったり。

でも、それは高校生の頃までの自分の関わっていた範囲内であって、大学に入って(これから社会人になってもそうだと思うけど)、デザインを学ぶ中で個人一人でできることは少ないな、と思うことが増えて。

自分ができることの量は限られているし、自分ができることでも、もっと自分より得意な人がいたらお願いして頼る、というのは美大に入ってからできるようになったことだと思います。


それから、4年生になってからですが、後輩にも頼るようになりました。

おこがましいかもしれないけれど、自分たちが先輩の卒制を手伝ったりしてその中で色々学べたことや教えてもらったことがたくさんあったので、そういうのはちゃんと下(後輩)にも伝えていかないとな...と思ってます。


8,人と何かを創ることが好きになった

入学した頃は、グループワークとかも全然好きじゃなくて、
一人で黙々と作業して制作するのが好きで、それが自分にも合っていると思っていました。

でも、学年が上がっていくにつれて、

一人でできることって少ないな、
人と一緒だからもっと色々なことができる、面白いものが生まれる

と思うようになりました。

それはもちろん、きっかけは周りの環境のおかげです。
人見知りな私にたくさん話しかけてくれた先輩や、相談にのってくれたクラスの子達、的確なアドバイスをくれたフレンドリーな先生、素直でかわいい後輩、全然違う考え方を共有できる他学科の友達。「楽しい!」「面白い」と思えるきっかけをたくさんもらえたおかげで、人と一緒に何かを創るのが好きになれたと思います。


美大での4年間を振り返って

自分の考え方や思考を変えるには、まず環境から!と思い、今までとは全然雰囲気も違う、実家からも遠い美大へ入った4年前。

高校まで、(自称)進学校だったこともあり「勉強ができる=優秀」という価値基準の中で過ごしてきた自分としては、美大での多様な価値観や色んなものの見方にはじめて触れた時は戸惑いが大きくて。

自分の好きなことが学べるという期待もあったけれど、「ちゃんとやっていけるかな...?」という不安の方が圧倒的に大きかったです。

特に1,2年生の頃は、デザインしたり設計することも初めてで、段取りも悪くて、めちゃくちゃ悩みまくって虚無感にかられることも多く、大学に行きたくなくなる日もありました。

それでも、ある程度続けてみると、最初はわからなくても、後から理解できることも多くて。結局は回りまわって、美大で、この大学で、この学科でよかったなと思っています。


春から、新社会人。自分のやりたかった職種に就いて新しく仕事を始めるのはワクワクしていますが、大学を卒業してしまうのはやっぱり少し寂しいです。

私は新しい環境に適応するのがそんなに早い方では無かったのですが、それでも4年生の頃には「この大学に入ってよかった」「このクラスメイトと一緒に入れなくなるの悲しすぎる」と思うくらいにはいつの間にか美大での生活が好きになっていたみたいです。

そんな美大での4年間を振り返って変化したことを、
最後に備忘録として書いてみました。


卒展もあと少しで終わってしまいますが、頑張ります〜!




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