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漫画 「死役所」が与えてくれる安らぎ

あずみきしさんの漫画「死役所」が面白い。

世界観としては「現実世界(というか生前の世界というか)」と「死後の世界」の狭間にある「死者を成仏させるか、地獄行きか、罪滅ぼしするか」を裁く「死役所」を舞台にしている。

その死役所は複数の課に分かれる。

自殺課、他殺課、病死課、、、のような具合。

そこに訪れる死者の死ぬ直前を一話一話ドラマとして展開していき、様々な死と死者の感情を描く。

その死は多種多様で、「強い悔恨を持った死者」や「なんで殺されたか分からない死者」や「交通事故などで気づいたら死んでいた死者」など。

この世界観と企画がまず面白い。

サスペンスや、推理物が真実を探す過程を描写する物語であるのに対して、死後側から描く事で、現世側では謎として完結することが自明のことになる。例えば、殺人事件でも殺された側は誰が殺したかが当たり前だが分かっている、と言った具合。

そして、何よりこの世界観でないと実現しないのは、重大な殺人を犯して、死刑になった人の苦悩や懺悔が描かれている。

遺族からすれば死んでなお恨みが残るものだと思うが、現世とは別の世界を作り出し、死刑者の懺悔を描写する事で、そのどうしようもない感情を拾い上げて、安らぎを与えているかのように見える。

宗教における輪廻転生は、来世という概念を作り出し、その来世で現世の落ち度を取り返せる、という安らぎを作り出したものだと思うが、それと近いと感じる。

重たい漫画だが非常に面白い。

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