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無知だから、映画『ミッドナイトスワン』が巻き起こす賛否両論を知ることでLGBTQについての知識を得ています

内田英治監督作『ミッドナイトスワン』を、公開初日である2020年9月25日(金)に映画館に観に行きました。

映画を見てから2週間たちました。実は、鑑賞直後に感情が高ぶってバァッとnoteに下書きを書いたのですが、全部消して、今再びパソコンに向かっています。

一言で言えば、素晴らしい映画でした。
けれども、それと同様にモヤモヤする部分が多い映画でもあったんです。

素晴らしさとモヤモヤが同居する。

こういうタイプの映画にはあまり出会ったことがなかったので、なんだか動揺しました。

感じたモヤモヤについて、批判的に書くことはできますが、そうすると素晴らしさの部分が帳消しになってしまうような気がしてレビューが書けないまま今に至ります。

ひとつだけ、ハッキリとお伝えしたいのは、主演の草なぎ剛さんの演技が素晴らしかったということです。

正直に言えば、私は草なぎさんのファンというワケではないですし、鑑賞前にCMでこの映画の予告を見たとき「これは厳しいかもしれない」という印象を受けました。

草なぎ剛さんがトランスジェンダーの役を演じるということで、いわゆる「女装」と呼ばれるような容姿で登場していたからです。
シスジェンダーの役者が、トランスジェンダーの役を演じるときにありがちなオーバーな演技を想像して不安でした。

この不安は、映画鑑賞後30秒で解消されます。

映画の冒頭に登場してきた草なぎさん演じる凪沙は、
トランスジェンダーの人
ではなくて、一人の人間としてスクリーンの中に存在していました。

予告編と映画本編の印象がまったく違います。予告を見て想像した草なぎさんの演技と、本編の演技ではまったく別物だと言ってもいいです。

なぜ、この違いが生じるのか、自分の勝手なイメージのせいなのかちょっと分からないのですが、とにかく映画本編では開始30秒で「この映画の草なぎさんは凄いな」と感じました。

それだけはお伝えして、自分の心の整理のためにも素晴らしい面とモヤモヤした面を箇条書きで記しておきたいと思います。

そして、同じくシスジェンダーの俳優がトランスジェンダーを演じて高い評価を受け、さらに賛否両論を巻き起こした映画『Girl/ガール』(2018ルーカス・ドン監督)も、合わせて鑑賞してほしいです。

偶然にもこの映画の主人公もバレリーナを目指しています。

LGBTQについて理解を深めるために、映画の巻き起こした反応から知識を得ていくというのも大切なプロセスだと感じています。

『ミッドナイトスワン』と共に、どんな賛否を巻き起こしているのかチェックしてみてください。


素晴らしい面

〇内田監督のオリジナル脚本でファンタジックでもあり、現実味もある魅せるストーリー。
〇凪沙(草なぎ剛)、一果(服部樹咲)、りん(上野鈴華)、早織(水川あさみ)、バレエコーチ(真飛聖)などキャストの演技。
〇山岸涼子作品のようなバレエ映画としての側面
〇結婚パーティでりんがバレエを踊り飛ぶシーンに驚く。美しく残酷で儚いシーン。天国から一瞬にして現実に引き戻される体験はなかなかできない。
〇トランスジェンダーに対する世間の無知を描いている→この映画自体が啓発になる
〇ありがちな説明ゼリフがないのがよかった。観客に捉え方をゆだねている。


モヤモヤした面

〇トランスジェンダーの現実を描いているのか疑問→当時者の方が見たらどう思うのだろう?
〇母性の描きかた。どんなにヒドイ親でも、ほんとうの母親がいる限り、子どもは母親のことが好き。本当の母親と、期間限定で面倒を見ている親とは子供の立場に立てば、やはり違うのではと思う。
一方で、ジェンダーに関係なく母性というか子供を守りたいという気持ちは存在する。血のつながりに関係なく、親子としての関係性を築き上げることも可能だと思う。なので、凪沙が性転換をしなくちゃという思考になった理由が分かりずらかった。
〇ラストの悲劇的な展開。凪沙やりんの思いを背負って頑張る一果は感動的ではあるが、今の時代、生き抜いていくこともなかなかつらい。

感じたことメモ

必ずしもトランスジェンダーの役をトランスジェンダーが演じなければいけないということはないと思っている。機会を奪ってはいけないが、ジェンダーに関係なく適材が抜擢されるのは俳優の職業としては当然のことだから。

アメリカでもようやくここ2年ほどでトランスジェンダー役にトランス俳優が抜擢されるようになったばかり。
わたしはLGBTQではないが、ジェンダーだけでなく、容姿、年齢、経歴、人種などにとらわれない適材を適所で活かせる多様性を重視する社会を望んでいる。


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