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第73回エミー賞を見て思ったことを、副音声解説的に書いてみた

【海外ドラマファンのためのマガジン第112回】

2021年度のアメリカテレビ界の祭典エミー賞授賞式をみました。今年は日本ではU-NEXTさんで生中継してくれたので、本当にありがたかったです。
同時日本語通訳のみなさん、お疲れさまでした!

9月24日までU-NEXTさんで、見逃し配信があるようです。
この記事を読みながら鑑賞すると、副音声解説的な効果があるんじゃないかなと思うのですが、どうでしょうか。
本当は、生中継と並行して音源で喋ろうかと思ったのですが、生中継中に速報記事もアップしていたので、ひとりでは手が回らずでして……。
中継終了後にこちらを書いています。

いやぁ、やはり、生中継で鑑賞できるというのはいいですね。

今回の舞台は、いつものマイクロ・ソフト・シアターではなくて、スティプルセンターに隣接する場所に特設の会場を作ったようです
意外に狭くて驚きました。だから、招待されたゲストの数はいつもよりかなり少ない気がします。しかも、会場内にテーブルがあって、番組別に座る感じで、けっこう密ですが、ワクチン接収証明書をとったり、新型コロナウィルスのガイドラインを万全の対策で守っていることを中継中に発表していました。

さて、今回の中継はCBSで、司会はセドリック・ジ・エンターテイナー。オープニングアクトはセドリックのラップからスタート。

今年7月に亡くなったラッパーのビズ・マーキーの曲「Just a friend」の替え歌エミー賞バージョンで、「テレビは友達」といった内容の歌を歌っていきます。セドリックのラップのあとには、LL・クール・Jが登場、そしてLil Dickyがラップをかまし、なんと会場のドラマ別のテーブルに座っている歌のうまい出演者たちが歌いはじめて、感動的でした。

『This Is Us』のテーブルでは、マンディ・ムーアとスーザン・ケレチ・ワトソンが、『Black-ish』のテーブルでは、アンソニー・アンダーソンと、トレイシー・エリス・ロス、『POSE』ではもちろんビリー・ポーターとMJ・ロドリゲスも歌っていました。
トム・ハンクスの妻であるリタ・ウィルソンが、ノリノリで歌ってる姿におどろきましたが、楽しそうでいいですよね。
歌ってないゲストで体全体でビートを感じていたのはケイリー・クオコでした。マイケル・ダグラスもなにげにノリノリで。奥さんのキャサリン・ゼタ・ジョーンズと一緒にきていたのですが、彼女にも歌ってもらいたかったな。

オープニングアクトは短かったですね。もう少し長めに見ていたかった気がします。

司会のセドリック・ジ・エンターティナーの喋りのオープニングは、先日行われたメットガラのド派手な衣装をちょっと皮肉ってスタート。
今回は、たくさんの黒人がノミネートされていて喜ばしいとか、親友のアンソニー・アンダーソンもいますね。11回目のノミネートなんですが、マイケル・ダグラスとテッド・ラッソがいるから受賞は無理かなとか。

アンソニー・アンダーソンって、毎年オープニングでいじられているんですが、お約束化しているのかな。

気になったドラマとして、『ワンダヴィジョン』『ザ・クラウン』に言及して、『ブリジャートン』については、あの時代に黒人男性があんなに白人女性とセックスするなんてありえないよねといったジョークを飛ばしていました。その後のセドリックは、司会に徹していたという印象です。彼のコメディシークエンスもありましたが、そんなに笑いに比重を置く感じではなく、サラッと進んでいきました。

①最初の賞の発表は、コメディ部門助演女優賞。プレゼンターは、『ザ・ボーイズ』のプロデューサーのひとりでもあるセス・ローゲン。

受賞者は『テッド・ラッソ破天荒コーチが行く』のハンナ・ワンディンガムです。大興奮で「あー!」という絶叫で登壇しました。
登壇前に、キーリー役のジュノー・テンプルを探してハグしてました。
本当にうれしそうで、喜びにあふれるスピーチでした。舞台を降りた後には、テッド・ラッソ役のジェイソン・サダイキスとハグ。

②コメディ部門助演男優賞の発表。プレゼンターは、ヤラ・シャヒディ。
受賞者はブレット・ゴールドスタイン『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』。

助演男優賞部門には、『テッド・ラッソ』からブレンダン・ハント、ジェレミー・スウィフトもノミネートされていました。
ロイ・ケント役のブレッド・ゴールドスタインは、当初、作家としてのこのショーに参加したのですが、ロイの性格に魅力を感じてオーディションテープをクリエイターのひとりビル・ローレンスに送って役を勝ち取っています。

③リミテッド・アンソロジーシリーズ 助演女優賞の発表。
プレゼンターは『POSE』のビリー・ポーターとMJ・ロドリゲス

受賞者は、ジュリアンヌ・ニコルソン『メア・オブ・イーストタウン 』。
ケイト・ウィンスレットが演じる主人公のメアの親友のローリー・ロス役です。

ジュリアンヌは、今年50歳なのですが、長いキャリアの中で、エミー賞にノミネートされるのは今回が初なのです。顔をみれば、「あのドラマに出ていたな」と感じる名バイプレイヤーです。彼女のような女優に賞が贈られることが、エミー賞の醍醐味ですよね。鳥肌立ちました。
遠くの席で、サラ・ポールソンが立ち上がって声援を送っていたのを見逃しませんでした。彼女もバイプレイヤーから主演にのし上がってきた、いわゆる「テレビ俳優」なので、ジュリアンヌの受賞がうれしかったのでしょう。

④リミテッド・アンソロジーシリーズ助演男優賞の発表。プレゼンターは、『NCIShawaii』のヴァネッサ・ラシェイと『NCIS』のウィルマー・バルデラマ。

受賞者はエヴァン・ピーターズ『メア・オブ・イーストタウン』コリン役。
エヴァンはライアン・マーフィーの関連のドラマに良く出演している印象のハンサムな俳優さんですが、今回初ノミネートでした。
『メア・オブ・イーストタウン』を見ながら、今回のエヴァンすごくいいなと感じていたので納得の受賞です。
壇上でケイト・ウィンスレットへの感謝を叫んでいたエヴァンですが、『メア…』チームは、ケイトのリーダーシップがうまくいって、雰囲気の良い現場だったんじゃないかなと想像します。

⑤ドラマ部門脚本賞発表。プレゼンターは、コメディエンヌのミンディ・カリング。

受賞者は、ピーター・モーガン『ザ・クラウン』。どうやらロンドンにエミー賞のロンドン会場があるようで、アメリカにいないイギリス人のノミネート者がひとつの会場に揃っていました。
対象のエピソードはシーズンファイナルとなるS4第10話「栄光の女王」です。

⑥ドラマ部門監督賞。プレゼンターはアメリカ・フェレーラ。エミー賞受賞者です。『アグリー・ベティ』終了したのは2010年です。

受賞者はジェシカ・ホッブス『ザ・クラウン』。
この辺から、ドラマ部門は『ザ・クラウン』の全制覇がアリうるんじゃなかなと思い始めました。
対象エピソードはシーズン4第10話「栄光の女王」です。

⑦ドラマシリーズ部門助演女優賞。プレゼンターはスティーヴン・コルベア。

受賞者はジリアン・アンダーソン『ザ・クラウン』。
この部門は、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の候補者が4名もいたのですが、『ザ・クラウン』が勝ち取りました。ジリアンは、イギリスのサッチャー首相を演じました。普段のジリアンとはまったくちがうんですよ。サッチャー首相なりきっていて驚きました。エリザベス女王との確執も興味深かったです。

⑧ドラマ部門助演男優賞の発表。プレゼンターはケリー・ワシントン。ケリーは、先日、9月7日に急逝したマイケル・ケネス・ウィリアムズさんに追悼の言葉をささげました。
エミー賞の投票は、彼が亡くなる前に終わっていたようです。

受賞者は、トビアス・メンジーズ『ザ・クラウン』。トビアスは授賞式を欠席しています。

このあと、バラエティ部門にはいるんですが、ここでは省略させていただきます。すでに3000字を超えていますし……。

⑨コメディ部門主演女優賞の発表。プレゼンターは、SNLで活躍中のボウエン・ヤン

受賞者は、ジーン・スマート『Hacks』。 
1971年にテレビ映画でデビューしてから、50年にわたり第一線で活躍してきたジーンは、スタンディング・オベーションで迎えられました。
ここ数年の活躍もめざましく、昨年は『ウォッチメン』今年は『メア・オブ・イーストタウン』にも出演し、こちらでは助演女優賞にノミネートされています。
『Hacks』の共演者で2017年にデビューしたばかりのハンナ・エインビンデルへの気遣いも忘れない、大人の女性の度量のひろさもコメントから伝わってきます。

⑩コメディ部門主演男優賞の受賞。プレゼンターは、『The White Lotus』のジェニファー・クーリッジ

受賞者はジェイソン・サダイキス『テッド・ラッソ破天荒コーチがゆく』。ジェイソンがかつてNBCのスポーツ中継サッカープレミアリーグを宣伝する際に作ったキャラクターテッド・ラッソを、ドラマ化したのですが、彼の作ったキャラがこんなにも世の中に幸せを与えるのを目の当たりにできて、嬉しい気持ちです。視聴者はもちろんですが、スタッフやキャストにも新たな人生を与える、クリエイター、プロデューサーとしてのジェイソンの力が、素晴らしいですね。こんなにもヒットして評価されると、自分でも少し怖いかもしれないな、なんて思いました。

11)リミテッド・アンソロジーシリーズ部門 監督賞。プレゼンターは原住民のティーンが主人公のドラマ『リザベーション・ドッグス』のキャスト&クリエイター

受賞者はスコット・フランク『クイーンズ・ギャンビット』。音楽がなっていても、コメントをやめず感謝したい人全員に言葉を捧げていました。途中で、音楽のほうがあきらめて、音が止まったのが印象的でした。
主演のアニャ・テイラー・ジョイの目の力がスゴいと褒めていました。

12)リミテッド・アンソロジーシリーズ部門 脚本賞。プレゼンターは、『スター・トレック』のパトリック・スチュワート。お元気そうな姿がみられて感動でした。

受賞者はミカエラ・コール『I May Destroy You 』。このドラマかなり高評価で、はやく日本でも見れるといいなと思っています。会場でもスタンディングオベーションがおきていました。性的暴行の被害にあった女性の物語で、ミカエラ・コールがクリエイターとして脚本を書き、主演を努めています。
パトリック・スチュワートが、ミカエラと握手して、落ち着いたトーンで「おめでとう」といったのが印象的した。

⑬リミテッド・アンソロジーシリーズ部門主演女優賞。プレゼンターは、サラ・ポールソンとビニー・フェルドスタイン。

受賞者は、ケイト・ウィンスレット『メア・オブ・イーストタウン』。
今回のノミネートはミカエラ・コール『I May Destroy You』、シンシア・エリヴォ『ジーニアス:アレサ』、エリザベス・オルセン『ワンダヴィジョン』アニャ・テイラー=ジョイ『クイーンズ・ギャンビット』とかなり豪華でした。
最近のリミテッドシリーズは、本当に名作が多いです。
『メア…』も、今年イチオシのドラマのひとつです。このドラマでケイトは、田舎町に住む中年の警察官で自我の強い女性なので、言ってみれば高感度があまりないタイプの女なのですが、ケイトの持っている人間の魅力みたいなものが画面から伝わってきて、それがキャラクターの魅力を何倍にも増幅していると感じました。
ケイトが主演でなければこの雰囲気は出ていないのかな。彼女を主演にこのドラマを撮った意味というものがとてもあると思います。ここ数年のHBOの世界的有名女優を主演にして作るリミテッドシリーズは、ハズレがないですね。今回も、イッキ見しました。メアは、普通の女なのに妙にセクシーなのも印象的で、すっかりケイト・ウィンスレットのファンにもなってしまいました。

⑭リミテッド・アンソロジーシリーズ部門主演男優賞。プレゼンターは、タラジ・P・ヘンソン。

受賞者は、ユアン・マクレガー『HALSTON/ホルストン。アメリカにいたのか、会場に出席していました。ユアンは、4度ノミネートされていて今回初受賞となりました。

⑮ドラマ部門主演女優賞。プレゼンターは、アンソンー・アンダーソン、トレイシー・エリス・ロス。

受賞者は、オリヴィア・・コールマン『ザ・クラウン』。
このジャンル、noteのサークルで予想をしていたのですが、オリヴィアかエマ・コリンかと予想しつつも、希望を込めてMJ・ロドリゲスにトランスジェンダー女優初の受賞をしてもらいたい願望がありました。でも納得です。
オリヴィアのエリザベス女王役は、シーズン4で終了です。S5からは、イメルダ・スタウントンにバトンタッチすます。

⑯ドラマ部門主演男優賞。プレゼンターはキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。

主演男優賞は、ジョシュ・オコナー『ザ・クラウン』。ジョシュもロスにいて会場で受賞しました。ロンドンの会場でみんなが喜んでいて、ダイアナ妃役のエマ・コリンも嬉しそうでした。シーズン5にはふたりとも出演しないようなので、ちょっともったいないというか、もう1シーズン二人のチャールズとダイアナを見たかったな。

⑰コメディ部門作品賞。プレゼンターはオークワフィナ。

受賞作は『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』。
ジェイソン・サダイキス、ブレンダン・ハント、ジョー・キーリー、ビル・ローレンスといったアメリカ人のクリエイターが、イギリスでイギリスの俳優たちと作り上げたコメディというのが、個人的には魅力的でした。
心があたたまる笑いを追求した、コロナ過の憂鬱を吹き飛ばす素晴らしいコメディ・ドラマだと思います。

⑱ドラマ部門作品賞。プレゼンターはエイドリアン・ブローディ。

受賞は『ザ・クラウン』シーズン4。これで、ドラマ部門の7つの賞を『ザ・クラウン』が独占受賞しました。ロンドンの会場は、さぞ盛り上がったでしょうね。今、シーズン5を撮影中だそうで、トロフィーを受け取ったピーター・モーガンは、「1時間後から撮影がある」と言ってましたが、
シーズン4のキャストメンバーのほとんどは、シーズン5には出演しないので、思いっきりパーティーを楽しめそうです。

⑲リミテッド・アンソローシリーズ部門作品賞。プレゼンターはアンジェラ・バセット。

受賞作は『クイーンズ・ギャンビット』。今回のエミー賞は、リミテッド・シリーズ作品賞の発表が最後になりました。通常はドラマ部門作品賞ですが、最近のリミテッドシリーズの出来の良さを受けての変更なのでしょうか。

「アルゴリズムでも口コミを予想できない」というプロデューサーの言葉が、なんとも核心を得ていて、心強い言葉だなと主ました。
Netflixのドラマはアルゴリズムの分析でシーズンがキャンセルになることもあるのですが、根強いファンがいるドラマにはもう少し人間の目を向けてもらいたいという気持ちを持っています。『The.OA』は、シーズン3が見たかったし。でも、その逆で、キャンセルになったドラマをNetflixで救うこともあるので(『ルシファー』など)、今後は、アルゴリズムプラスアルファの解析で、もっと世間のニーズを細かく取り入れてもらえると完璧ですよね。Netflixさんは強大になりすぎて、動かすには口コミでは力が弱いのかもしれませんが、『クイーンズ・ギャンビット』は、口コミで人気が広がったドラマでもあるので、一般的なドラマファンの意見を反映してもらえる口コミ力を示せたという意味では、『クイーンズ・ギャンビット』の功績は大きいのかなと感じました。チェスも流行しましたしね。


口コミを広げて、素晴らしいドラマをもっとみなさんに知ってもらうために、私も個人的に頑張りたいと思いました。

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