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すべての人に感性は備わっている

私はピアノの先生として
たくさんの生徒さんに音楽について教えてきました
やはり音楽というのは人が生きていく上で必要なものだと思っています
音楽を聴くことはすごく大事
さらに歌ったり演奏できたりするとなお良いと思うんですね

楽譜が読めるってすごく面白いんです
なぜなら楽譜とは「コミュニケーションツール」だから
ベートーヴェンとかモーツァルトとかシューベルトとか
作曲家のおしゃべりが詰め込まれているんです

彼らから溢れ出てきた音楽を書き留めたものが楽譜ですが
そこにはどんな風景を見ていたのかとか
そのときどんな思いだったかとか
そういったことが記号で示されています

フォルテ(forte)=強い
フォルティッシモ(fortissimo)=より強い
ピアノ(piano)=弱い
クレシェンド=だんだん強く、とか

また、作曲された背景を調べてみたりすると
より想像がふくらんで
まるで作曲家たちと会話しているような気持ちになれるんですよ

そんなふうに音楽を楽しむって難しいことだと思いますか?

でもね、実は音楽を聴くことで情景が浮かんだり
感情を理解したりすることって
子どものほうが優れてるんです

私がピアノのレッスンをしていたとき
あまり練習してなくて上手に弾けていない子でも
伴奏をつけてあげるとうまく弾けたりするんですね

伴奏するとき私は必ず長調と短調の両方をやってみました
同じ曲でも長調で弾けば明るい雰囲気に
逆に短調だと悲しい雰囲気になります

それを3歳や4歳の子どもでもわかるんですよ

長調の伴奏だとニコっとするし
続いて短調を聴かせれば「うーん、ちょっとかなしい…」って言うんです

「どっちが好き?」と訊くと「最初のがいい!」
「どうして?」と訊くと「だって楽しいもん!」

長調とはね、短調とはね、と説明しなくても
理解できるんですよね
そこで「楽しい」とわかればピアノもどんどん上達していくんです

それって「感じる力」なんですよ
自分の心や脳を共鳴させて感じて
自分にとって「いいな」と思うものを選び取っていく力

脳の前頭前野という部分が感性や感情を司ってる部分なのですが
そこは2〜3歳までに発達するので
その間に美しいものを見たり聴いたり楽しいことをしたりするのが
すごくいいと言われています

だから、3〜4歳まで親から語りかけられたことがないというような
特殊な環境の人は別として
生まれてからの数年の短い間でも
身の回りの音や音楽、会話などいろんなものを聴いて
子どもは感性を磨いている
だから音楽も感性で聴くことができるんです

そしていろんな音楽を聴いて成長することで
楽しいときはこれ、悲しいときはこれ、元気がほしいときはこれ
というように
自分の感情と音楽を結びつける感性が育まれるんです

感性を育てるのが大事と言われるのは
感性が必要なのは芸術の分野だけではないからです

昔聞いたことがあるのですが
数学、音楽、体育の3つの力は互いに影響し合って育っていくと…
この3つは感性が土台になっている科目で
それぞれイメージする力が支えになっている気がします

数学が得意な子は体育や音楽も得意であったり
その逆もあったり

実際、私がそうでした
数学って私にとっては感性でやる教科だったし
体育も意外と得意だったんです

とは言っても
必ずこの3教科を重点的にやるべきだと言いたいわけではありません
あくまで結果として
この3教科がバランス良くできていると
それぞれに作用しあって伸びていく傾向があるということです

ただ「感性」という土台があるということは
人にとって非常に重要であるということは確かです

私は大人も子どもも関係なく
すべての人が生まれながらにして感性って持ってると思ってるんです
成長の課程でそれに気づき、磨きをかけていくだけ

その原点って「好き嫌い」なんです
だから自分の好き嫌いを認識するのって大事です

なにかを「美しい」「心地よい」という表現に至るまでは
小さい子なんかは時間がかかるかもしれないけれど
好きか嫌いかは本能的なものだからわかりますよね
そこから「引き出していく」のが感性
決して「植え付けていく」というものではないように思います

人って能力に強弱があったり凸凹があったりしますよね
「才能」なんて言われることもあるけれど
でも「才能」って果たしてあるのかしらと感じることもある

音楽を短大で教えていたとき
授業で歌を歌ってもらうことがあったのですが
歌うことが専門の人ばかりじゃないので
「歌えません」とか「私音痴なんです」と言う人がいる

でも私は音痴の人って絶対いないと思っているから
そう言うとそれに感化されて歌えるようになる人がけっこういたんです

もちろん聴覚などに医学的な問題がある人は別として
童謡って誰でもだいたい歌えるでしょう?
それって小さい頃から何度も聴いているし歌っているからなんですよ

だから繰り返すことによってだんだん開花するものってあるんですよね
音楽でもスポーツでも同じことが言える

たとえばすごく好きだけと下手っぴなことってありませんか?
でも下手だからって諦めないでずっと続けることによって
あるとき一気に花開くっていうことはあるんです

だからそもそも人間にはそういう力をみんな等しく持ってるんですよ

人生の中でいろんなことをやるか
ひとつのことを粘り強くやり通すか
そこに「正解」はなくて
それはもう個々の生き方

その土台になるのが「感性」だし
いろんな経験をするというのが重要なんです

2021.6.21
下向峰子



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