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住む場所をシェアするだけでない暮らし方 「和楽居」について

今年に入ってから何故か私の需要が高まっている。何だろうこれは。モテキなのか? 

ある日「峰子さんに文章を書いてほしい」というお話がきた。

それは垂水で10年以上シェアハウス和楽居を運営しているいのじさんからだった。


和楽居の存在は知っていたし、いのじさんのことも知っている。でも和楽居のことを書けるほど私はいのじさんのことも和楽居のことも知らない。

私が文章を書く時は、知識としてそんなに知っていなくても自分の体感として理解していることや自分なりの解釈できていることについてはペラペラしゃべるように書ける。

私にとって文章は「これを今書きたい!」という初期衝動に突き動かされるような感じで、「これ食べたい!」という料理があって、それをそのまま作るくらいの感じ。

「和楽居について書く」というのは、見たことはあるけど食べたことがない料理をいきなり作らなければならない感じになる。そんな風によく知らない状態で文章を書くというのは私にとっては苦痛なので、いのじさんにお話しをして「もし和楽居について書くなら和楽居に泊まってレポートするのが良い気がします。私は自分が本当に思ったことしか書けないので、それがいのじさんにとっていい文章になるかはわからないですが…」と答えた。

いのじさんは「それでも大丈夫!」ってことだったので、文章が書けるかどうかはわからないけどお引き受けした。和楽居についてまず知ることから始めようと、いのじさんのお話しをじっくり聞きに行き、実際に入居を検討している方たちと一緒にシェアハウス見学会に参加した上で1日入居体験を行いました。前置きが恐ろしく長くなりましたが、私から見た和楽居について書いてみます。

シェアハウス見学会の後にシェアメイトとお花見しました



和楽居との出会い

船なのか月なのか気になるロゴ

私が和楽居を知ったのは12年前の1月。横浜サムズアップで行われる「どんとソングスデー」の2日前ほどのこと。1月の初めに買ったギターでおぼつかない運指でどんとの「波」を家でひたすら練習していた。そこに当時、ふんどしぬいぬいの会をやっていた柳龍子さんから「峰ちゃんの家の近くでふんどしぬいぬいの会やってるから来―へん?」と連絡があった。「和楽居でやってんねん」と言われたけど、「和楽居って何?」という感じだった。「何か面白い一軒家」という説明を受け「余計に何それ?」ってなった。どんとソングスデーに出る為に家でひたすら練習をしてると答えると「じゃあギター持って来たらええやん」という答えだった。人の家にギター持って行っていいんだろうか? と思いつつ、せっかくなので訪れたのが和楽居だった。

当時の和楽居はリビングが畳でこたつだった。冬休みにおじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに来た気持ちになった。そこには龍子ちゃんの他に今田良子ちゃんや清火くん、暢子ちゃんも来ていて、お手洗いには同じグループ展によく参加していたやのともこさんの龍の絵が飾ってあり、何かよくわからないけどご縁を感じた。そしてどんとソングスデーの本番を前に初めて人前で自分の弾き語りを聴いてもらったのがこの日の和楽居だった。その時はいのじさんは居なくて、和楽居に住んでいる女性が主催のイベントだったと記憶している。

それから以前勤めていた会社の同僚が、和楽居でヨガをやったり、いのじさんの特製漬物セットを勧めているのを見て「あそこか」と思っていた。いのじさんとちゃんと会ったのはいつだろうか。いのじさんと初対面をしたのはいつか忘れたけど、何回かイベントに足を運んで、餅つき大会で歌をうたわせていただいたこともあった。

それからずいぶん時間が空いて4年前。知人の紹介で働くことになった介護施設に出社すると「やっぱり吉田さんだ」と声をかけてくれた女性がいた。「お会いしましたっけ?」と答えると「和楽居の餅つきの時に歌ってましたよね」と言われ仰天した。あの時のことを覚えている人と会うなんて! 

そんな風に和楽居には不思議な引力があるように感じていた。でも、実際に住むとどんな感じなのかは想像できなかった。私はとくにかくマイペースでひとりが好きで、旅をする中で2~3日ゲストハウスに滞在するのはいいけど、ずっと人がいる中で暮らすのは気疲れしてしまいそうな気がしていた。

和楽居に1日体験入居

いのじさんの話を聞いているとシェアメイト(住人のことをいのじさんはこう読んでいます)も自分も快適に暮らせるように、誰かが我慢したり気を遣って疲れることがないように、もっとみんなが快適に暮らせるようにシェア会というのを開いているということだった。現在5棟ある中で、多忙につき定期的に行えているのはオーガニックのみのようだけど、それでもシェアメイトの「もうっとこうだったら」になるべく答える運営を行っているようだ。

個人的に驚いたのは和楽居にはガスオーブンがあること!!! これはめちゃくちゃポイントが高い!!! “ホットケーキミックスを使って作れる簡単で美味しいおやつ”のレシピを見ても大体オーブンが出てくる。「オーブンないし…」となって静かにページを閉じることが多々ある中でオーブンがある生活。しかもガスオーブンである。

私が1日体験宿泊をした際、たまたま居合わせたシェアメイトの女性がオーブンで焼いたスコーンが余分にあるからどうぞ…と分けてくださった。
めちゃくちゃ美味しかった。

ガスオーブンだと料理が本当に美味しくなります

宿泊体験して気づいたのは、一人暮らしを始める際のハードルとして家具や家電を一通り揃えなければならないことのネックは大きいということ。それを考えるとシェアハウスは家電を取りそろえる必要はない。そしてやはりネックになる敷金礼金もない。デジポットと火災保険の加入は必須だけど、それを差し引きしてもありがたい。

ちなみに何故ガスオーブンがあるかというと、シェアメイトで料理作りが得意な方がいて二口のガスコンロでも見事な料理をされていたのをいのじさんが見て「オーブンを導入したら、もっといろんな料理を楽しめるんじゃないかな」と思って決めたと言っていた。

和楽居が管理しているシェアハウスは、垂水にもともとあった古い一戸建てで、そこをいのじさんとシェアメイトでDIYで内装をして少しづつ整えている。漆喰を塗ったり、シェアメイトのアイディアで漆喰の色も変えてみたり。シェアハウスというよりは、自分たちが心地よく住みやすい場作りをしている感じがある。その住みやすい場作りの中で、特に大事にしているのが先にも出てきたシェア会だそうだ。特に大きな出来事を話すとかでなくても、顔を合わせて話をすること、なるべく思っていることを正直に伝え合うことをして、誰かが我慢したりしないように和楽居に住むメンバー全員で考えて作っていきたいという想いがこの和楽居というシェアハウスの特徴でもある。

そのへんはいのじさん自身のこの文章を読んでいただければ伝わってくる。

いのじさんのお話しをじっくり聞いて、今のこの和楽居があること、和楽居が大事にしている核の部分には、いのじさん自身が若い頃に一般的な働き方になじめない体質(当時は睡眠障害と診断を受け、克服した)に悩み、その体質から退職することになった会社の社長から言われた言葉が大きいように感じた。

「井上、お前何歳や。ちゃんと今後の自分のことを考えなあかんぞ。その体質を治すようにがんばりますって言っとるけど、がんばるところちゃうやろ。まずその体質をお前自身が受け入れへんと、またその体質を隠して就職しても一番辛いのはお前やろ。その体質を受け入れるのか、それとも本気で改善するのか、本腰入れて考えなお前自身が苦労するぞ」と三日三晩かけて話してくれたという。いのじさんから聞いた和楽居が誕生するまでのエピソードの中にあったこの話が、実は一番私の心に響いた。

和楽居というシェアハウスには様々な生活をしているシェアメイトがいる。公務員の方もいれば大手企業で働いている方もいるし、自分のしたいことで自由に生きている人もいる。どんな生き方をしていても悩むこともあるし、ひとりでは乗り越えられないこともある。だからこそ、そこに居るひとりひとりの自分らしさを受け入れられる場所が必要。短所さえも受け入れられる場所が。

受け入れられるからと言って依存的にはならず、自分のすべてを受け入れつつ、ひとりひとりがしっかりと自分の軸を持って自立しながら、それぞれのほどよい距離感で自由な心で共に生きる場所をいのじさんは目指しているのだと思う。和楽居とはそんなシェアハウス。

というのが、今回私なりに和楽居を体感して自分の中で理解できたこと。

今回宿泊取材してもらった際のシェアハウス内の共有部分の写真も掲載します。

調味料等も少量で買えたりします
一階リビングは広々してます
子どもたちも遊べます


和楽居文庫があり住人に貸し出し可能


一階洗面所


お風呂場


お風呂場とは別にシャワールームがあります


1階2階に別にトイレがあります


洗濯機は2台


自転車が多くなった時の為に自転車を吊るしてスペースを確保するDIYもしたそうです。
何と屋上があります

ちなみに今回私が泊まらせていただいたお部屋はこんな感じ。古い日本家屋のそのままの部分を生かしながら今の生活にもなじむようになっている。

以前の住人が置いて行ったマットレスを使うことも可能(その時にあれば)
10畳ほどの広々としたお部屋
建て付けの収納があるので家具がいらない
ちょっとした縁側が。


興味を持った方がいらっしゃったら、和楽居のHPをぜひご覧ください。

詳しくはHPから直接いのじさんにコンタクトをとって確認してもらえればと思います。

取材を終えて

後日談として、この文章を書くに当たり、いのじさんとのやりとりが多々ありました。

私の疑問や疑念に対しても、柔らかく誠実に正直に思っていることをディープに伝え合う事態が発生して、いのじさんが周囲の人に対してどういう思いで接しているかを図らずも深く理解できました。

住居としてただ住むだけでなく、人と人とが出会い、シェアハウス内に留まらず、周囲の人々や地域で安心して共に生きることを大事にしてる大家さんなんだなぁと改めて感じました。


(記事依頼について)

今回文章を書いて欲しいという依頼を受けて、自分の中でいろいろ感じ入ることがありました。

自分の好きな世界にどっぷり浸かりながらウットリとひたすら文章を書くことが私の喜びなので、それはそれで続けますが、もし私の目線や感性でレポートを書いてほしいという依頼があればご相談ください。

有料で受け付けますが、内容次第ではお受けしない場合もあります。料金についてはお話をお伺いして対価を決めたいと思います。

また遠方に出向く場合、交通費や宿泊費も頂戴いたします。

お金が欲しいというより、自分の文章にかける熱量や労力を自分の価値や富として認めていこうと思えました。

以前編集プロダクションで働いた際に、社長からのパワハラで急性胃腸炎になってる中で退職の意向を伝えた際に「お前みたいなどこの誰だかわからない奴が勧めるものなんて誰が読みたいと思うのかよ」と言われたことがトラウマになっていて、文章や好きなことでお金をもらうことに恐怖心があったんですが、そこで閉じた蓋を開けて、自分の世界以外にも出てみようかなと思えました。

そんなきっかけを下さった和楽居のいのじさんに心から感謝しています。

サポートほしいです!  よろしくお願いします! お金をもらう為に書いている訳じゃないし、私の好きや感動に忠実に文章を書いていますが、やっぱりサポートしてもらえると嬉しいし、文章を書く励みになります。 もっと喜んで文章や歌にエネルギーを注いでいけますように。