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主体性を奪わない、丁寧にデザインされたプログラム 〜MBSR講師養成を受講して(IMA/IMCJ)〜

※IMA:the Institute for Mindfulness Based Approaches(ドイツ/Linda Lehrhaupt)
  IMCJ :International Mindfulness Center Japan(日本/井上清子)

30代、大学教員、研究者で、学部時代からマインドフルネスの研究に関わっている、受講者のAさんにお話を伺いました。

インタビューアー:IMCJ井上清子、宮本賢也

医療の専門職・研究者としての問題意識

インタビュアー:
本日はありがとうございます。まずは、これまでマインドフルネスについてどのように学ばれてきたか教えていただけますか。

受講者Aさん:
2012年にJon Kabat Zinn博士(注:MBSR創始者)が来日した前後ぐらいからマインドフルネスと関わり始めました。具体的には、医療の専門職として、マインドフルネスを提供できるようになることを目標に研鑽を積み重ねてきました。

インタビュアー:
今、マインドフルネスがだんだん日本でも広まってきている中で、たくさんの人に届くようになった一方、課題もあるかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

受講者Aさん:
マインドフルネスが単なる医療領域の話しとしてのみならず、ビジネスや教育、宗教といった様々な領域の方々と対話する一つの共通項として活用できるというのは非常に素晴らしいことだと感じています。
そして今、どの分野であれ、マインドフルネスという言葉が広まるに連れ、その質に関心を寄せる人が増えてきたというのもとても良い傾向だと思っています。例えば医療領域では、瞑想、マインドフルネスを習慣にしていない人が、本や付録のCDを使ってプログラムを運営することというのが果たして妥当なのかという問題があります。
あるいは消費財や体験を商品として提供する際にマインドフルネスという言葉が使われることがありますが、これは妥当なことなのだろうかと、多くの人が考えるようになってきているように感じます。
それは問題点でもあり、そのように思う人が増えてきている良い傾向と捉えることもできると思います。

インタビュアー:
マインドフルネスが日本でより良い形で学ばれていくために大事なことは何だとお感じでしょうか。

受講者Aさん:
自分の専門領域である医療の分野に限定してお話します。MBSRやMBCTといった科学的根拠に基づく構造化されたプログラムを、海外で行われているのと同じようなクオリティで提供できるかということが課題と考えています。

正規プログラムに参加する必要性を感じた

インタビュアー:
現在、MBSRの講師養成講座を学んでいらっしゃいますが、なぜ学ぼうと思われたのでしょうか。

受講者Aさん:
医療専門職として、出来るだけ科学的根拠を伴ったサービスを、提供する責任があると思います。
質の保証されたMBCTやMBSRのプログラムを提供する上では、この講師養成講座に参加することが必要と感じ、参加を決めました

多様なバックグラウンドを持つ質の高い講師陣

インタビュアー:
4月に(1年半をかけて取り組む全7モジュールのうちの)モジュール1を終えて、それから4人一組のピアグループでの学びが始まっています。いま足を踏み入れてみて、学びの内容であったり、講師の先生から感じられたことであったり、いかがでしょうか。

受講者Aさん:
講師の先生方について、プログラムについて、そして受講者の方との学びについてお話したいと思います。
まず、講師の先生方ですが、Jon博士が来日した2012年以前から指導されている先生方から継続的に学べるというのは非常に良い機会だと思います。特に、先生方が多文化を経験されているような方々であるのがとても良いことなのではないかと思います。国際都市アムステルダムの先生(*プログラム・マネージャー兼モジュール1講師のIngird先生)やご自身で複数の国での生活を経験された方(*イラン生まれ、カナダで教育を受け、現在インド在住、モジュール1講師のAmir先生)などから学べるということです。

このような心理療法を日本に輸入する際に起こるのは、「西洋の人が考えたものが日本の人にあうのか」といった考えです。
私自身、この考えに多くの時間を費やすこともあります。
しかし、講師の先生方が様々な文化でマインドフルネスの指導を実践されてきたことが、上記の考えから距離をとる助けになっていると思います
先生方の教育者としての質については、プロフィールを読めば、言うまでも無いことことか思います

インタビュアー:
いま講師の国際性についてのお話がありました。たとえば、先生方が単一の文化的バックグラウンドを持つ人で構成されていると、どのようなことが懸念されますか。

受講者Aさん:
その文化と日本文化、という対立構造で考えてしまう恐れがあります。講師の方々が単一文化の方々であるのが問題ではなく、受け手側が議論を文化の違いに誘導してしまいがちになるということです。これについて、私は2012年ごろから課題として認識していました。物事を文化の問題として考えることは、魅力的なので、私を含め、多くの日本のマインドフルネス関係者はそのような議論をしてしまいがちですが、一旦、そのような議論に入ってしまうと、そこから抜け出すのが難しくなります。本来であれば科学的根拠についての更なる研究や、必要な人にどのようにマインドフルネスを届けるのがより適切かという議論よりも、文化論議に時間を割いてしまいがちになります。その点で、アジアでの出家経験のある方や、中東でのマインドフルネス指導など、多様な経験を持つ方を先生として学んでいくことには大きな意味があると思います

主体性を奪わない、丁寧にデザインされたプログラム

受講者Aさん:
次に、プログラムの内容についてですが、今回のIMA/IMCJのプログラムは、受講者の主体性を尊重するように、よく考えてデザインされているというのが印象的です。

これまで受けたことのあるよくある講座のスタイルは、単にスライドで知識を与えて、受講者同士でワークをやって、ディスカッションや質疑応答をやって終わり、といったものです。IMA/IMCJのプログラムは、こういった単純なものではなく、もっと実践的な構成になっていると感じます。これがとても楽しく学べていることの一つの理由だと思います。

インタビュアー:
受講生の主体性を尊重する、というあたりをもう少し教えていただけますか。

受講者Aさん:
1日目の夜に生徒役をやり、2日目に「教えられていない状態で」まずは受講者同士で教えてみる、そしてそこで感じた疑問点を元に学んでいく、という組み方ですね。

講師が受講者に教えるところからスタートするのではなく、まず体験させて、自分たちで発見させるという、受講者の主体性を容易に奪わないようによく考えてデザインされていると感じました。

様々なバックグランドの仲間との学びが刺激に

インタビュアー:
これに関連して受講者同士での学びというところについて感じていることを教えていただけますか。

受講者Aさん:
また、もしこのプログラムの受講者が、医療専門職に限定されたものだったら、受講者どうしの学びはもうちょっと限定的なものになっていたのではないかと思います。人には、学歴や資格、免許というものに載らない、人生で蓄積された経験があります。本当に様々なバックグラウンドの方々と一緒に学ぶ機会を持てているのはとても自分にとって刺激になっていると思います。医療の専門職でない方々は、医療やカウンセリングなどの専門的な訓練をうけていないことを引け目に感じている場合がありますが、そのような方々からビギナーズマインドを学ぶということもありますし、知識の面で必要があればサポートすることもできます。

インタビュアー:
ありがとうございます。今後、どのように学びを深めていければと思っていますか。どのような領域に力を入れていきたいと言ったことがあれば教えて下さい。

受講者Aさん:
私は専門が医療系ですので、その分野で、今の標準的な医療で満足されていない方々を対象にマインドフルネスをお伝えしたり、また、ストレスは社会的にも大きな問題なので、予防的な形でマインドフルネスを提供できるようになれればと思っています。

井上:
どうもありがとうございました。

MBSR講師養成講座は以下より

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