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巨木の森から学ぶ「手放す勇気」〜コントロールという幻想

私の住むサンタクルーズには、樹齢千年を超え中には100メートルに至るほどのレッドウッドの巨木の森があり、折々そこを訪れては、その中を静かに歩くことを楽しみにしています。

樹齢1000年以上、大人が5−6人で両手を広げても囲みきれないレッドウッドの大木たちは、威風堂々と空高くそびえ立っています。大きな山火事にあっても、表面だけ炭化し元気に成長し続けます。
そしてよく見るとその周囲には、木とも呼べないか細い側枝がびっしり生えています。
これらのか細い木々は、大木である木とまったく同じDNAでありながら、巨木として成長することも長寿に恵まれることもない、はかない存在です。

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     (写真の緑の小枝がレッドウッドの淵にある側木です)

DNAは同じ、ならばなぜそのような大きな差が生まれるのでしょう?
森林ガイドの方に尋ねたところ、次のように教えてくれました。
「運とたくさんの偶然。それだけです。
たまたま芽吹いた場所の土に養分がしっかりあった。
たまたまその場所が他の木に邪魔されず日光が当たった。
たまたま幼木の時に火事や洪水に合わなかった。
気の遠くなるような偶然の重なりで、この木は巨木となり、
そのような条件の揃わなかったほとんどの木が、これらのちっちゃな雑草のようなレッドウッドになるのです。」

人間も似ている。
と私は思いました。
決して「何をやっても無駄だ」というニヒリスト的観点から言っているのではなく、なんでもかんでも自分の力で為せると思って、何度も燃え尽きそうになった自分を思い出したのです。

志あるからこそ陥りやすい「コントロール幻想への依存」

「努力と戦略によって、全てのゴールは達成できる。それこそが良きリーダーだ。」
「だからこそ、自分自身がチームの手本となってがんばる。」
私はそのように自分を駆り立てていました。
物事がうまくいっている時は、まさにこの考え方でアクセルを踏み込み、成果を上げていけます。
しかし、残念ながら間違いなくそうはいかない時がやってきます。
「ゴール達成できないのは、自分やチームの努力と戦略的知恵が足りないせいだ。」
「これまで以上にがんばって、時間もかければ克服できるはず。」
実はこれは建設的な取り組みではなく、根底にある恐怖・不安を感じないよう、脳が作り出す幻想に浸っているに過ぎないことが多いのです。
「それについて考えていれば、何かやっていれば、自分は状況をコントロールしている」という幻想、恐れ・不安から来るコントロール依存ともいえる兆候です。

ビジネスや組織のゴール達成の現実は、レッドウッドの森と同じように、運も含んだ数えきれない条件が複雑な蜘蛛の巣のように織り成されて出現します。
したがって、ゴール達成はリーダー個人の力によるものではありません。
同じく、自分の欠点や失敗も、自分だけのせいではありません。
たまたま生まれ持ったDNA、生育環境、出会い、その時の世界の状況(パンデミックのように)、競合他社の出方、多くの健康問題など、自身のコントロール外の条件もあるのです。

稀代のバッターイチローだって、人智を越える努力をしても打率4割いかない、6割以上はミスってるのです。

常に勝ち続けるという幻想を手放し、失敗を受け入れ、次のゴールに向かって立ち上がることのほうが、全てをコントロールしようとすることの何十倍も、誰をも良いリーダーにするのです。

コントロール依存とマインドフルネス

神よ、変えることの出来ない事柄については、それをそのまま受け入れる平静さを、

変えることの出来る事柄については、それを変える勇気を、

そして、この二つの違いを見定める叡智を、私にお与えください。

これはニーバーの祈り、または静穏の祈りとも言われるものですが、
1. 変えられないことをありのままに受け入れる平静さ
2. 変えられることを変えていく勇気
3. 変えられないことと変えられることを識別できる叡智

3つとも、リーダーシップにそのまま当てはまります。
そしていずれも根底にマインドフルネスが要されるものです。

手放すことで得られる力

変えられないことを受け入れるーーそんなに易々と諦めていては、何も達成できないのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、変えられないことが世の中には存在し、それを見極めた上で手放すことで得られる貴重なリソースにも触れたいと思います。
* 時間、エネルギーなどリソースをより有効に「変えられる部分」に再分配できる。
* 自身のウェルビーイングを守るーーテコでも動かないことを必死で動かそうとすることは、日に日にストレスを増すことになります。
* 視点を変えて、状況を見る機会ができる。

つまり手放すことで、一旦自分をその状況から解放し、新たな視点でゴールと対処法を再構築できるチャンスを与えてくれるのです。
煮詰まった状況が長引くとき、コントロールできないことを見極め「手放す勇気」「諦める勇気」を持つ。

こう書きながら、それは非常に大きな痛みを伴い、決して綺麗事ではないことをひしひしと感じます。
パンデミックにあって、飲食業・旅行業など縮小、閉店を余儀なくされたところも多く、その苦悩や大変さはいかばかりであったかと、お察しするだけで心が痛みます。

生きていくこと、組織を繁栄・存続させることは、どんなに知恵を働かせても苦しみが伴います。そんなとき、全てを自分の責任と思わず、できることを見極め、運の良し悪しもいやおうなくあることを思い出すーーそこにマインドフルネスとセルフ・コンパッションをお役立ていただければ幸いです。

大変な決断をされたリーダーの皆様が、新たなゴール向かい成功を収められることを願い、心よりの尊敬のエールを送ります。

木蔵(ぼくら)シャフェ君子

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