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【経済本100冊】Vol.38:『わたしたち消費』(著:鈴木謙介)のあらすじ

経済本100冊読破タイトル作成

こんにちは!メンタルブロック解除人こと心理カウンセラーの大和です。
こちらでは、「数字に疎い心理オタクが、経済関連の本を100冊読むとどうなるか?」と言う企画で、読破した経済関連の本を紹介して行きます。
既に経済に詳しい方もそうでない方も、今後の本選びの参考にして頂ければと思います。


今回ご紹介するのは、鈴木謙介さんの『わたしたち消費』です。

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基本情報

タイトル:わたしたち消費
著者名:鈴木謙介
初版発行年月:2007年11月
ページ数(大体):約200pg
難易度所感〈五段階〉:★★★ ほどよい

大和の適当あらすじ

大衆的な「みんな消費」でも、個人個人が買いたいものを買う「わたし消費」でも無く、現代は「わたしたち消費」の時代になっているんだよと言うことを理論的に教えてくれる本。


全体の感想

以前から個人的に、世間的には「流行」「ブーム」「ヒット」と言うことにはなっているけれど、どうも身近にムーブメントとして感じないなと思ったり、何でこれがメディアで話題になっているのかピンと来なくて分からないものとかがあって、常々疑問に思っていましたが、この本はその謎を解き明かしてくれる良書でした。

「わたしたち消費」と言うのは著者の造語ですが、中々キャッチーな言葉であり、要するに内輪ネタでウケたものが拡散してヒットすることを表したものです。「内輪ネタ」、即ち「あるコミュニティ内で完結しているネタ」と言うのがミソで、そこからじわじわ拡大すると言うことですが、ニコニコ動画とか観てると正に内輪ネタの宝庫何で、この本の主張は僕にはとても理解できるものでした。どちらかと言うとエンタメ系コンテンツによく適用できる理論だと思います。

全体的に、前半は色々なマーケティングの理論や概念が取っ散らかっていますが、後半に著者の核となる考えや「わたしたち消費」のマーケティング戦略の提案が凝縮されています。但し飽くまで原則論ベースなので、この本を読んだからと言ってヒット商品が作れるとは限りませんのでそこは注意です。個人的に特に面白いなと思ったのが、「わたしたち消費」によるヒットと、所謂一発屋のヒットとが切り分けて考えられている所です。新刊本とかの人気ランキング上位や公開してすぐの話題の邦画何かは、実は一発屋であることが多いみたいなので、そこに惑わされない「目」を養うのに、本書は物凄く役立ちます!


大和の学びポイント


< 学びポイントまとめ >


★みんな志向の消費から、わたしたち消費の時代へ
★ネタ的コミュニケーションが購買動機に繋がる
★カーニヴァルに企業は関わってはいけない
★コミュニケーションの模索期が企業参入の狙い目
★停滞したネタを盛り上げるには、文脈を書き換えるのがコツ
★昨今の売れ方3パターン
★わたしたち消費のヒットの2段階
★わたしたち拡大層の繋がり意欲
★わたしたち拡大層の心を共振させる6つの要因
★文脈置換で「空気」を作るとは
★商品を購入したくなるモチベーション作りとは
★情報の「半径10メートル化」で自分に関係付けるとは
★情動コミュニケーションで、伝達力をターボ化するとは
★感覚的なシンボル記号で、情報波及の核を作るとは


< 各詳細 >


★みんな志向の消費から、わたしたち消費の時代へ
・・・90年代前半のブーム、ティラミス、ナタデココと言ったブームは強い「みんな志向」のものであり、皆がやってるから自分もやろうと言うものだった。また、マイホーム神話も「みんな志向」であり、購入動機もハッキリしていて分かりやすいものだった。しかし失われた10年を経た90年代後半から、「みんな志向」が薄れて行った。かと言って全く個別化したのでも無く、一定の集合体の中で盛り上がって消費する「わたしたち消費」が誕生して行った。これが、売れていると言う実感は無いのに、売り上げ数を見るとヒットしている「見えないヒット商品」の要因である。代表例はケータイ小説や脳トレやムシキングと言ったゲーム等である。


★ネタ的コミュニケーションが購買動機に繋がる
・・・ある対象を巡って、それを「ネタ」にしたコミュニケーションが連鎖して行き、コミュニケーションそのものが目的になる状態を、鈴木氏は「ネタ的コミュニケーション」と呼んでいる。ネタ的コミュニケーションが商品の購買動機を醸成した例としては「初音ミク」と言うソフトウェアが挙げられる。初音ミクブームに火を付けたのは動画投稿サイトのニコニコ動画である。初音ミクが歌う動画と言う「ネタ」がニコニコ動画で生まれ、新曲が次々と公開されてファンが広がり、そのファンがネタ的コミュニケーションを持続させる為に商品購入に至ったのである


★カーニヴァルに企業は関わってはいけない
・・・ネタ的コミュニケーションの盛り上がりを仮に「カーニヴァル」と呼ぶとしたら、カーニヴァルの時期に企業が商売っ気を出して参入することは、寧ろ連鎖を阻害しかねないので控えた方が良い。何故なら、何がネタかを決めるのはコミュニケーションしている「わたしたち」であり、情報を提供する企業の側では無いからである。実際の例としては「のまネコ騒動」が挙げられる。これは、「恋のマイアヒ」と言う曲がネット上で話題になっていることに目を付けたCDの発売元が、2chの「モナー」と言うキャラに酷似した「のまネコ」を作って宣伝した所、一部のユーザーの強い反感を買い、騒動の末に発売元が「のまネコ」から手を引くことになった一連の騒動である。

★コミュニケーションの模索期が企業参入の狙い目
・・・ネタ的コミュニケーションには盛り上がり・盛り下がりの波がある。ネタが生まれた時期の「生成期」に盛り上がり始め、そのピークが「カーニヴァル」状態となる。しかし々ネタを繰り返すと飽きが生じるので、次第に「倦怠期」となり、次の新しいカーニヴァルを模索する「模索期」に入って行くことになる。実は模索期が企業が参入する狙い目の時期で、そこで上手く新しいネタを提供して活性化できれば成功である。しかし一度停滞したコミュニケーションを再び盛り上げるのは非常に困難であり、失敗することも覚悟しなければならない。


★停滞したネタを盛り上げるには、文脈を書き換えるのがコツ
・・・一度停滞したコミュニケーションを再び盛り上げるコツは、流行の文脈を書き換えることである。例えば話題になった脳内メーカーは常にリーチを伸ばして来た訳では無く、一度停滞期を経験している。最初に話題になったのはニュースサイトで取り上げられた時で、その後停滞した後にテレビ番組で取り上げられて、芸能人の脳内イメージが紹介されたことで、既に利用したことのあった層にも、芸能人の脳内イメージと言う新しい文脈が提供されたことで、自分から他人の脳内イメージを診断するものとしてネタが変化し、盛り上がったのである。


★昨今の売れ方3パターン
・・・昨今の売れ方には大きく3つの傾向が見られる。1つ目はロングテールの売れ方で、規模は小さいけれども、長期間一定量売れ続けるような売れ方である。2つ目は短い間にブレイクして、比較的短いスパンで終わってしまうヒットのパターンである。例えば話題の邦画の多くは公開後一週間で動員のピークを迎え、その後トーンダウンするものが多く、また、売れ筋ランキング等の世間が流行と断定したものもこのパターンである。これらに対し、初速こそ遅いけどじわじわと大ヒットして行くのが「わたしたち消費」の売れ方である

★わたしたち消費のヒットの2段階
・・・わたしたち消費のヒットは次のような2つの段階を経る。1つ目が、そのジャンルのコアなファン層を中心にじわじわと評判を獲得して盛り上がり、「共通文脈」が形成されてプチヒットとなる段階。2つ目が、わたしたち消費の段階を経て、徐々に興味関心を抱く層が拡大して、「共通文脈」も拡大・転換する段階。この途中でマスメディアが取り上げることで注目度が一気に上がり、一般層も巻き込むマスヒットに成長する。このヒットパターンは言い換えれば、「姿の見えないヒット商品」が「姿の見えるヒット商品」に変貌するプロセスであるとも言える。


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