20人の男たち(2/20) 2年かけてストーカーした末に逆ナンしたFくん -3
12月に姿を見せてから、しばらく彼は図書館に現れなかった。
(前話)2年かけてストーカーした末に逆ナンしたFくん-2
高校の場所と、なんとなく自宅の方角を知っても、本人が来ないのでは仕方がない。
一過性のトキメキで終わり、私の日常は静かに戻って来た。
春休み。
たまたま近所に住む友達が図書館にきた。
久しぶりの彼女にと和気藹々と話しながら、一連彼の話をした。
「……私、その人の家知ってるかも。赤い自転車の、ブレザーの人だよね?私さ、近所のXX高校じゃん、たまーーーに通学路で会うんだよね。」
「あと…雨の日たまにXX駅で見かける。」
「え、ちょっとさ、その辺自転車で走りに行かない?自転車どれだかわかるっしょ?停まってたら家わかるかもよ?」
突然降って湧いた展開。
私は彼女の誘いに乗って、想定しているエリアを見て回ることにした。
2人の証言をもとに、20分ほど探し回った結果、割と簡単に見つかった。
見覚えのある赤い自転車。
玄関のガレージに無造作に置かれていた。
「やばい!みつけちゃったじゃん!ウケる!!笑笑」
(…Fくんっていうんだ)
はしゃぐ友人につられて、私はニヤニヤが止まらない。
ガチャっ
(ひっ!)
玄関から、コーギー犬と母親らしき人が出て来た。
私たちはそそくさと逃げ、また図書館へ、戻っていった。
思春期とは、とてもデリケートなもので、同じ空間に同じく学生がいるとどことなく居心地の悪さと言うか、相手を観察してみたり、自意識で集中できなくなったり、不自然な行動にでる。
図書館で過ごす、「赤の他人」だけど「同じ高校生」である私と彼も、相手の存在を認識しつつ、物理的距離を牽制し合いながら、常連になるにつれて彼は徐々に自習室のテリトリーを固めていった。
到着より前の先客の混雑の分布を見ながら、近いでもなく、遠いでもなく、そんな距離感でお互い自習を続けていた。
ある日、母が探りを入れて来た。
「あんたさぁ、最近放課後どこほっつき歩いてんの?遅くない?」
「はぁ?図書館?家で勉強すればいいじゃない」
「学校にいる間は学校の管轄、その後は親の責任なんだよ、未成年が遅くまで親の知らないところでフラフラするもんじゃないの!」
(遅いっていったって、図書館が終わるの20時なんですけど…)
「それが遅いっていってんの!15分の距離なんだし、図書館じゃなきゃ勉強できないとか言い訳でしょ。
塾で遅くなるならまだしもそれだって親が居場所はわかってるからね。そうでもないならさっさと帰って来な!」
その理屈がもっともなこともわかってるが、思春期のJKに正攻法が通じるわけがない!
反骨心が抑えきれず、あれこれ口答えする。
「そんなに図書館、図書館って、あそこ何にもないじゃない。まさか男でもいんの?」
私は観念して一部始終話をした。
「はぁ?笑
あんたそれ、恋愛でもなんでもないじゃん笑
そういうの、恋に恋してるっていうんだよ!笑」
「しょーもないわー、早く夕飯の支度手伝って」
私はこの会話は衝撃的で今でも忘れない。
思春期の淡い恋心に、大ナタを振り下ろした母の一言。
いや、確かに本人と話したこともないし恋に恋してるって言われたら元も子もないのだけど。
なんてデリカシーのない!
母の逆鱗に触れない程度に、機会を作って行くしかないと思った。
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