MMM2020→2021参加アーティスト連載①
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
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MMM2020→2021参加アーティスト連載①

「初めまして」のかたも「お久しぶりです」のかたも、改めましてこんにちは。みなとメディアミュージアムことMMMです。
大変な日々が続きますが、MMMでは2021年度の会期に参加してくださるアーティストのみなさまから文章を寄せていただき、「MMM2020→2021参加アーティスト連載」と銘打ってnote記事を継続的に連載する運びになりました。

コロナ禍のなかで、どう考え、どう動き、どう楽しんでいくのか。アーティストのみなさまが編み出したことばたちが、少しでもみなさまの胸の中で新しい結び目を作り、みなさまが少しでも柔らかい毎日を送ることができれば幸いです。

記念すべき連載第一回目には、・エコツミ・さんの文章を掲載いたします。また、キュレーターとして小川(waxogawa)も文章を執筆いたしました。これから続々公開していくnote記事にも、小川がことばを綴ってまいりますので、楽しみにしていただければ幸いです。

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連載エコツミ

https://www.ekotumi.jp 

■ プロフィール
アーティスト / パフォーマー
早稲田大学在学中より、数多くの舞台・ミュージカルに出演し、映画挿入歌にて歌手活動を開始する。卒業後、ライブ公演、PV、イメージソング、ゲーム主題歌など、シンガーソングライターとして多方面で活躍。
2010年からはライフワークとして、日本神話をベースとした一人歌劇「新訳 古事記シリーズ」を展開。神々がもつ人間に似た感情にフォーカスした作品群が評価され、2015 年以降は活動の拠点をヨーロッパに移す。同年パリの同時多発テロの直後に行った現地ライブが高い評価を受ける。 日本神話を従来とは違う形で再構築した作品を制作し続けており、自身のアートパフォーマンス映像がベルリン「Women Cinemakers Biennial 2018」にも選出される。 現在、様々なスタイルのコラボレーションを行いながら、日本神話を切り口としたアート活動を展開している。

■ 実績
・ベルリン WomenCineMakers 受賞 初監督作品、主演 パフォーマンスショートムービー「Descent to the Earth」
・北九州デジタルクリエイターコンテスト パフォーマンス部門受賞 (Anderson Sudario 氏と共同制作)
・ドバイ「ワールドアートドバイ」オープニングアクト出演 ・パリにて、掛軸「八雲立つ」制作発表。(居石康裕氏と共同制作) ・プロジェクションマッピング演出を取り入れたパリ単独公演、現地
ハンドダンサーとコラボレーションしたリトアニア単独公演 「IZANAMI」ほか、イタリア第一回日本映画祭をはじめ、世界各国でパフォーマンスを行う。

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「まぁ、どうしようもないですもんね。わかりました。落ち着いた時には必ず」
ため息をついた。何度目だろう、この会話は。

半年から一年かけて企画していた2020年海外ツアーは、2月のスイス公演を最後にすべてが中止、無期延期になった。フランス、ベルギー、アジアと、2月以降毎月どこかに行く予定だったのに。

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「いえ、キャンセル料はいいですよ。だってイベント全部開催できないから、そちらも大変ですよね」

すべての準備期間が1円にもならないのは正直キツかったものの、状況が状況なのだ。痛み分けするしかない。むこうの会社がつぶれてしまったら、せっかくつながった縁そのものが途切れてしまうじゃないか。
無料のオンラインイベントに映像を提供する約束をして(ここまできたらもちろんそれも無料である。)お互いステイセイフで!とオンライン打ち合わせを終えた。

さて、どうしたものか。
こんな時こそ音楽やアートの出番であると言いたい。
2015年のパリ同時多発テロの2日後に、小さなギャラリーで歌ったことを思い出した。あの時は、楽屋で震えながらも堂々とステージに立てた。お客さんも決死の覚悟で「パリは負けない」という言葉を口にしながら会場に集まってくれた。

でも、covid-19は訳が違う。
自分の命や信念の問題ではなく、それを自分が広めてしまう他者の命の問題が生じるのだ。
こんな時だからライブを!だなんて、言える状況ではなかった。
さてさて、本当にどうしたものか。

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*2020年2月スイスにて。この時、現地では誰もコロナの心配をしていなかった。

日本神話をモチーフに、歌と言葉と舞で作品を作ってきた。海外ツアーが年に何本か入るようになってから、楽しい反面どうしても準備と移動で時間がとられ落ち着かないことも多かった。
あれ、もしかして。
今ってこれまでできなかったことに挑戦できるかもしれない。
元々、日本神話は日本の土地や風土と密接に絡み合っている。どこかの土地で、その場所でしかできない作品を作りたい。ずっとそう思っていたじゃないか。

けれど、思いつくのは住まいの東京を離れ、地方の神社へ行って歌うことくらい。
飛沫問題がある。今の時期、どうやって安心して観て、聴いてもらったらいいのだろう。

パソコンを開いてあてもなく彷徨っているうちに、ある募集が目にとまった。
MMM? 那珂湊で作品を作る? 
もし、もしも那珂湊の方々の声を借りて、そこに私の歌をのせて、日本神話を表現することができたなら。録音して声を重ねてそれを那珂湊のあそこやここで流すことができたなら。
思考は外出自粛の日々をいともたやすくこえて、那珂湊に飛び込んでいった。

海外ツアーができない今だからこそ、じっくりと日本で作品を作れるのではないか。那珂湊の方々と一緒に、日本神話を元に新しい形で作品が作れるのではないか。できないことが増えたから、新しくできることも増える。
それってもしかしたら、作品を作るうえでものすごくプラスなのかも。

よし、面白いことしよう。まだ見ぬ人たちと一緒に。

2019年リトアニア公演の様子

コロナ禍の中で制作した小さな神様スクナビコナをモチーフにしたホログラム

キュレーターコメント

・エコツミ・さんの作品企画書を見たとき、彼女のプロフィール写真が雄弁に語りかけてきた気がした。この場所でやりたい、那珂湊という場でやりたいのだ、と。

日本神話をモチーフとした作品群やそのパフォーマンスを見たとき、正直なところを話せば、「これが那珂湊という場所にどう存在できるだろうか」と感じた。強い想いが、那珂湊という地面に/土地に/関係性の中に/どう溶け合い、新しい編み目を作るのだろうか、と。・エコツミ・さんが那珂湊に住まう人々の現在地を「声」によって知ろうとしている試みはとても面白い。舞台芸術的なアプローチによって那珂湊のどこかの空き地がその場所固有の神話性を伴って壮大なスペクタクルとして立ち現れてくる様子を、私は見てみたい。その展示が完成したとき(単純に設営が終わったときではなく、人々がそこで話し合い、声が飛び交い、音が反響し、ひとつの大きな輻輳的/重奏的ゆらぎが場をつつみこんだとき)、どんな神性がそこに現れてくるだろうか。

九十九神という概念があるように、単なるアミニズムとしてではなく、何かもっと超層的で複合的な「神」、あるいは「祈り」というものが日本にはあるような気がしている。

東京の都市構造はまさに複合的で、一つのビルにいくつものテナントが入り込み、「雑居ビル」として存在しつつ、それが集合体として何か有機的な生命体を構成している。一方、フランスやアメリカ都市部での都市構造は整然としており、ゾーニングが計画的にされている。こうした理路整然とした構造体の中に住まうことは何か直線的で潔く、活発な印象を受けるし、明朗な日常があるのだろうと思う。とはいえ、やはり枝葉がいくつにも重なり合い、常に揺蕩う木漏れ日の中で「ハレ」と「ケ」が入り混じり、境界線が揺らぐなかで、その不確定さに身を委ねることもまた、心地よいのではないか。少し言い換えよう。もう少し具体的に述べれば、「どこか荘厳で、張り詰めていながらも、複雑で曖昧な静けさ/騒がしさ」が心地よい。

ではその輻輳的《静けさ/騒がしさ》はどこにあるのか? それは地域の祭りや、行事にこうした「曖昧な静けさ/騒がしさ」を感じることができる。と思う。祭囃子や太鼓が響くなかでも、少し身を引いて路地裏に入れば、夏の夜の匂いの中に日々の営みに立ち返ることができる。屋台が並び——それは明確なテナントではないゆえに——、ひしめき合い、並び替えられ、混沌とした心地よさを提示する。その「不確定的な揺らぎ」は、県ごと/地域ごと/街ごとに微妙なニュアンスの違いを持ちながら現れてくる。

そうした「地域」固有の揺らぎのなかに身を投じ、「祈る」こと。その街の神さまに、敬意の念を抱くこと。こうした姿勢はまさに「語りうる可能性の全て」のなんたるかを緻密に想像していく作業ではないか、と思う。

さらに、コロナ禍の今だからこそ、祈りという行為が大きな意味を持って現れてきている。・エコツミ・さんと、どうやって祈ろうか。そんなことを考えている。

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キュレーターコメント

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このたび、みなとメディアミュージアムは
クラウドファンディングを開始しました!

アートの力で、一緒に考え・動き・笑い合えたら、幸いです。支援してくださっているみなさまには、この場をお借りして感謝申し上げます。また、新しく支援してくださる方々には、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

みなとメディアミュージアムについて

みなとメディアミュージアム(以下、MMM)は、茨城県ひたちなか市那珂湊地区を中心に開催する地域芸術祭です。毎年、全国からアーティストを募集し、厳正な審査を経て、出展作家を選出します。出展された作品は会期中(8月〜9月、約2〜3週間)、那珂湊の駅やまちなかを中心に、ひたちなか海浜鉄道沿線や車輌内にも展示されます。また、ワークショップやその他の関連事業の運営も行っています。

MMMは「産(主に那珂湊地区商店街、ひたちなか海浜鉄道湊線)+学(主に教育関係者)+芸(アーティストおよび美術関係者)」の三者からなる実行委員会により運営されています。2009年に第1回目のMMMを開催以降、毎年開催していましたが、2020年は新型コロナウイルスにより初の中止となり、2021年は2年ぶり12回目の開催となります。
Minato Media Museum (MMM) is a local art festival held in Hitachinaka city, Nakaminato area in Ibaraki prefecture, for two to three weeks every summer.Every year, we invite applicants from all over Japan to showcase their work, which are shown at Nakaminato station (city center) along Hitachinaka Seaside Railway inside train cars. We also organize and host some workshops and events. Our event is held every year since 2009, and this year, we are holding the 12th annual Minato Media Museum festival.

みなとメディアミュージアム2020→2021
展示開催期間:2021/8/30(月)〜9/11(土) 11:00-18:00
※最終日は16:00まで。

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追記:いつでもどこでも実行委員を募集しています!

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みなとメディアミュージアムは、茨城県ひたちなか市ひたちなか海浜鉄道湊線沿線を舞台に開催する地域アートプロジェクトです。「産+学+芸」の三者からなる実行委員会により運営されており、芸術表現と地域との協働によるまちの活性化を目的として活動しています。