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今週のSaaSニュース! Vol.38(2/28週)

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注目!資金調達ニュース

バーチャルイベントSaaS Hopin $400M@$6.56B

コロナショックで急成長を遂げた代表的なSaaSスタートアップの1つとして、バーチャルイベントSaaSのHopinはよく挙げられます。1年前の2020年2月のシード(ARR $0M)から、現在は同分野の世界的リーディング企業としてARR $70Mに到達している。このARRはHopin単体だけではなく、今年1月に$250Mで買収した、プロ向けライブストリームSaaSのStreamYardのARRも含まれる。今回のシリーズCは、Andreessen HorowitzとGeneraly Catalystがリード投資家。創業者のJonny Boufarhat氏は、連続起業家でもなく、Hopinは大学卒業後3年で起業。コロナ前のシード時は、VCからの資金調達は相当苦労している。

1分30秒でわかるHopin(動画)

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売上予測・RevOps SaaS Clari $150M@$1.6B

Clariは、CFOや営業企画部門がCRMデータのみならず、営業のカレンダー、Email、外部のニュースなどに基づいて、独自のMLアルゴリズムにより粒度の細かい売上予測を実現するSaaSを提供している。コロナ禍で、B2B営業を抱えるエンタープライズ企業の経営陣にとって、売上予測は頭痛のタネになっており、そのペインに訴求することで急成長を遂げている。WorkdayやAdobeなど、エンタープライズ向けB2Bテクノロジー企業が主な顧客。本シリーズEは、$1.6BのバリュエーションでB Capital Groupがリードし、$150Mを調達。

2分でわかるClari(動画)

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デジタル教育コンテンツSaaS Newsela $100M@$1B

Newselaは、K-12(日本で言う幼稚園+小学校)向けに、National Geographicなどの時事ネタの読解などの生きた教育コンテンツをレベルに自動編集し、クイズや宿題の提出を行うことができるSaaSを提供している。「教科書は死んでいる」と同社CEO Matthew Gross氏が語る通り、最新のニュース・デジタルコンテンツの読解やディスカッションベースの授業を行う米国ならではEdtech SaaSと言える。コロナ禍で、受注金額ベースでYoYで115%成長、売上ベースで81%と堅調な成長をしている。本シリーズDは、Franklin Templetonをリード投資家に迎え、$1Bのバリュエーションで$100Mを調達。

1分でわかるNewsela(動画)

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インドネシア発! 決済インフラSaaS Xendit $64.6M調達

Xenditは、一言で言うと「東南アジア版Stripe」。東南アジアの中小~エンタープライズ企業が、現地の金融機関などを介した様々な決済手段を1つ1つ連携するのは非常に手間のかかる作業だ。Xenditは、これをワンストップで統合することができる決済系SaaSスタートアップ。東南アジアのコンシューマテックはGrabに代表されるように急成長しており、その需要の高さからTransferwiseやWishなど欧米大手テック企業も多数参入している。Xenditは、これらの企業を顧客とし、創立からの年平均成長率は+700%で年間の決済金額は$6.5Bに到達。2020年は成長が加速し、顧客数は+540%に増加。本シリーズBは、米国トップVCのAccelがリード投資家。

1分でわかるXendit(動画)

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プロダクト・ユーザーテストSaaS Maze $15M調達

B2B、B2C問わずテクノロジー企業のデザイナーやPdMは、Figma、InVision、Adobe XDを利用して、新機能のデザインをすることが一般的になっている。Mazeは、これらのツールで作成されたアプリケーションを、ユーザーにテストして、活用状況の可視化、アンケートの回収まで一括して行えるSaaSを提供している。顧客にはUber、IBM、Samsongなど、4万社に到達。直近1年間でMRRは+600%で成長。本シリーズAは、Emergence Capitalがリード投資家。

Mazeとは? by Designcourse(動画)

クラウド認証SaaS Auth0をOktaが$6.5Bで買収: IDaaS最大手Oktaが、コンシューマ向けID認証SaaSを展開するAuth0をM&A。2013年創業のAuth0は、世界70ヵ国、9,000社に利用されている。投資家にはBessemer Venture Partnersの他に、日本のWiLも出資している。WiL 代田さん、Robさんの今回のM&Aに寄せたリリースもご参照ください。

IoT向けセキュリティSaaS Axonius $100M調達: IoTやデバイスのセキュリティ保護/管理を行うSaaSを提供するAxoniusが、Lightspeed Venture Partners、Bessemer Venture PartnersなどからシリーズDの資金調達。IoT向けセキュリティSaaSは、ArmisVdooなど数多くのプレーヤーがおり、ホットなセキュリティ分野の1つ。

Shopify特化SMSマーケティングSaaS Postscript $35M調達: Postscriptは、Shopifyのプラグインアプリとして、Shopifyユーザー向けに欧米では主流なSMSマーケティングを行うSaaSを提供している。顧客数3,500社。本シリーズBは、GreylockやY-Combiantorが出資。

Salesforce特化CRMデータ自動入力SaaS Dooly $20M調達: Doolyは、Salesforceにログインすることなく、直観的なUI/UXで、営業のSalesforceへのデータ入力時間を10倍加速するSaaSを提供している。本シリーズAは、AdditionやBattery Venturesが出資。

市場トレンド

バーティカルSaaSのネクスト・ウェーブとしてのデータ」

バーティカルSaaSの雄 Veevaの初期投資家と知られ、長年米国のバーティカルSaaSの可能性を見つめ続けてきたVC Emergence Capitalによる、業界特化型クラウドデータの可能性やホリゾンタルSaaSとの違いについての解説記事。ホリゾンタルSaaSでは、クラウドデータの収集、分析、活用まで様々な手法が確立されており、Snowflakeなど、多数のSaaSスタートアップが出現している(下図)。しかしながら、バーティカルSaaSでは、必ずしも同じ手法が使えないと指摘している。業界特化型クラウドデータSaaSの事業機会のある業界の特性は以下の通り。

業界特化型クラウドデータSaaSの可能性のある業界の特性とは?
1. DBがレガシーでサイロ化されている
2. 大手企業がマルチクラウド+オンプレを併用している
3. データ共有に関する法規制が厳しい
4. DXが加速している

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CSMの役割「Retain or Grow?

カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の役割は、既存顧客の維持(リテンション)か?それとも売上成長(グロース)か?という問題は、SaaSスタートアップでも良く検討に上る。売上成長と言っても、更新(リニューアル)、CSQLの創出、アップセル/クロスセルのクローズと、企業によってかなりグラデーションがある。SaaS企業の組織設計の名著 『Blueprints for a SaaS Sales Organization』でも記載されている通り、"one-size-fits-all"の回答は存在しない。本記事は、世界的な戦略コンサルティングファーム Bain&Coによる大手ソフトウェア企業に対するCSMの役割に関するサーベイ結果を示している。以下の図の通り、大手企業でもRetain or Growthで二分されているのが現状です。高成長SaaSの場合、Growthの役割が強めとのことです。

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成長戦略

■ 「PoC」を安請け合いしない営業術

米SaaStrの記事『長いセールスサイクルの対処法』では、「長期目線で考えてPoCを恐れるな。」という提言をしています。しかし、むやみやたらに顧客の言いなりのPoCは、多くの場合失敗します。特に日本の大手企業の場合、目的もゴールもあいまいなまま進むケースは少なくありません。こちらの記事は、無駄なPoCを避けてセールスサイクルを短縮する、ないしは受注の成功確率を上げるPoCを行う上での営業術が丁寧に解説してくれています。エンタープライズ向けのSaaSスタートアップの方にはおすすめですし、営業のロールプレイングのトレーニングでも活用できると思います。

コンテンツ・マーケティング戦略の5つのタイプ

コンテンツ・マーケティングは、SaaSでもポピュラーなリード獲得手法になっている。しかし、一言でコンテンツ・マーケティングと言っても、SaaS主導型(例.HubSpot) vs ユーザー主導型(Notion)、バイラル(Superhuman) vs SEO(Zapier)と多種多様である。本記事は、メジャーな米国テック企業を例にコンテンツ・マーケティング戦略を5つのタイプに類型化(下図)し、実行における注意点を解説している。

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HubSpotの例に見るUsage-Based Pricingの威力

先日のUsage-Based Pricing(利用量ベース課金)に関する素晴らしいレポートを作成したOpenview Venture Partnersの記事。本記事は、HubSpotがUsage-Based Pricingを導入したことで、NRR 70%から100%+まで改善した事例を紹介している。Usage-based Pricingの導入は、ゼロイチの議論ではなく、低位プランからテストするなど、一般的なサブスクリプションとのハイブリッドでもテストすることは可能なので、検討してみてはいかがでしょうか。

マネジメント

Sequoia流 テクノロジー企業の取締役会の構成とは?

日本のスタートアップの経営者は、初めて起業されるファーストタイム・アントレプレナーが大多数であり、取締役会の経験がある方は少ないです。加えて、そもそも「根回し文化」が根強い、日本では上場企業においても、"取締役会の形骸化"は大きな課題です。その観点で、取締役会をいかに有意義な時間にするか?について、米国企業のプラクティスを学ぶことは有効だと思います。本記事は、米トップVC Sequoia Capitalによる、「効果的な取締役会の構成(下図)」に関する解説です。日本では毎月&1時間で行われるケースが主流ですが、米国では四半期毎&3時間が主流であり、Amazonで見られるように必ずしもスライド形式ではなく、メモ形式も一般的です。

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David Sacks流 SaaS企業の理想的な取締役会の構成とは?

こちらの記事は、ペイパルマフィアの1人、Yammer創業者兼CEOのDavid Sacks氏によるSaaS企業の取締役会に関する記事です。Sequoia Capitalの記事と重複する部分もありますが、SaaSスタートアップの方には参考になる記事だと思いますが、ステージや取締役の会議への期待値(例. 戦略の議論)によってカスタマイズすべきだと思います。概要をまとめると以下の通りです。

SaaS企業の取締役会について
・取締役会の構成例
 1) CEOアップデート(30分)
 2) セールス進捗(30分)
 3) 他部門の進捗(20分)
 4) 財務関連トピック(10-20分)
 5) 組織関連トピック(10-20分)
 6) アドミ関連(5-10分)
・頻度は4半期がベスト。月次は非効率
・時間は2時間がベスト
・開催時期は、4半期の締め後
・資料は会議の1-2日前に展開

ファイナンス

プレイドIPOの軌跡:IPOプロセスにおける計画策定と予実

もはや説明不要ですが、プレイド社ファイナンスチームの皆様による『プレイドIPOの軌跡』の連載第3回。今回は、外部からうかがい知ることが難しい、IPOプロセスで重要な事業計画の策定に関する内容。IPOプロセスに入る前のタイミングにおいても、IPOを見据えてどういうことが求められるかを事前に理解しておくことは非常にたいせつです。SaaSスタートアップの経営者の方々は、この連載に目を通しておくことは良い思考トレーニングになると思います。

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