今週のSaaSニュース!🌞-Vol.14(8/16週)
東京は暑い日が続いてますが、皆様体調は崩されてないでしょうか？
さて、今週もSaaS関連のニュースをお届けしたいと思います。今週は大型調達のニュースが少ない週でしたが、その中でも注目ディール8件をピックアップします。また、SaaSスタートアップのための注目記事を、いつもより増量して解説します。
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今週の注目SaaS資金調達ニュース
◆[従業員の資金繰り管理SaaS]PayActiv シリーズC $100M調達（LINK）
PayActivは、サービスワーカー向けに、働いた分の給与の前借りや資金繰り管理をサポートするSaaSを提供。コロナ禍で小売や飲食店に勤務する従業員の資金繰りの悪化が問題になっており、雇用主の企業も従業員のリテンション目的で導入されている。米国では、”Financial Wellness(金融の健康度)”と言われ、注目される金融サービスの1つ (参考記事)。Walmartなど1,400社以上の企業、400万人以上のサービスワーカーがPayActivを利用している。本ラウンドは、Eldridgeがリード投資家。
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◆[パスワードセキュリティSaaS]Keeper Security $60M調達（LINK）
Keeper Securityは、個人や企業向けに端末のパスワード管理、SSO、セキュリティ保全を可能にするSaaSを提供。幅広い端末/機種、ウェブブラウザに対応していることが特徴。世界で最も信頼され、最もDLされているパスワード管理アプリの1つです。コロナで人々の生活がオンラインに移行する中で、サイバー犯罪が急激に増加。加えてリモートにより、人々のプライベートと仕事の境界が曖昧になる中で、個人向けで強いKeeperへの統合ニーズも高まっている。本ラウンドはInsight Partnersがリード。
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◆[OSS型DevOps SaaS]Grafana Labs シリーズB $50M調達（LINK）
Grafana Labsは、エンジニア向けにデータベースのログやデータなどを解析、可視化するオープンソース・ソフトウェア(OSS)型のSaaSを提供。欧米ではOSS型SaaSは近年注目が高まっている。Microsoftに$7.5Bで買収されたGithubや、IBMに$34Bで買収されたRed Hatの超大型エグジット。a16zが投資するユニコーン企業Data BricksやRasaなどが好例。Grafanaは、既に55万インストール、1,000社以上に導入されている。本ラウンドは、オーバーサブスクライブで投資オファーが殺到する中、既存投資家のLightspeed Venture Partnersがリード投資家。
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◆[ビジュアル最適化 SaaS]Movable Ink シリーズC $30M調達（LINK）
Movable Inkは、マーケター向けにEmailやウェブコンテンツに使われる画像を、ユーザー属性に合わせて自動パーソナライズするSaaSを提供。デジタルマーケティングにおいて、画像などのビジュアルはCVRに大きく寄与するため、重要性が増している。本ラウンドは、欧州・日本・豪州などの海外展開を目的として、Intel CapitalやSilver Lakeが追加出資。
[サービス紹介動画]
◆[カスタマーデモ管理 SaaS]Chili Piper シリーズA $18M調達（LINK）
Chili Piperは、SaaSなどの企業の営業向けに、顧客とのデモ日程調整やオンラインデモをシームレスに行えるSaaSを提供。デモは顧客の購買の意思決定において重要度が高まっており、Chili PiperはそのCVR向上させる。本ラウンドは、Base10 Partnersがリード投資の他、GoogleのAI特化型CVC Gradient Venturesも参加。
[サービス紹介動画]
◆[OSS型DataOps SaaS] Pachyderm シリーズB $16M調達（LINK）
Pachydermは、大企業のデータサイエンスチーム向けにKubernetes上で動く、オープンソース・ソフトウェア(OSS)型のデータ解析ツールを提供。AI/MLプロジェクトで使われる教師データの品質を中央管理できる。本ラウンドは、MicrosoftのCVC M12がリードの他、既存投資家のY CombinatorとBenchmarkも追加投資。
◆[ヘルスケア向けチャットSaaS] Klara シリーズA $15M調達（LINK）
Klaraは、患者と医療チームのコミュニケーション、予約、リマインダー、フォローアップなどを行うSaaSを提供。コロナ禍で、患者と医療チームのコミュニケーションも遠隔になり、ニーズが高まっている。KlaraはEHR(医療データ)やケース管理のシステムと連携し、医療チームの生産性向上を支援。本ラウンドは、GoogleのAI特化型CVC Gradient Venturesがリード投資家。
◆[SaaS統制SaaS] YESOD プレシリーズA 2億円調達（LINK）
YESODは、散らばった人事・組織情報を簡単に統合、各種SaaSのアカウント発行・権限設定を自動化するクラウドSaaS統制プラットフォーム。企業内で使われるSaaSの増加により業務は効率化される一方、従業員の入退社時のアカウント管理工数の増加や、ITガバナンスの観点での管理コストが増えている問題を解決する。本ラウンドは、DNX Venturesがリードで、ANRIも参加。
※その他資金調達ニュースは以下をご覧下さい。
（今週からCodaにまとめます。）
今週のSaaSおすすめ記事
★ 経営戦略
SaaS経営者が考えるべき戦略とは by All Star SaaS Fund
Fond創業者/CEO 福山氏によるSaaSの経営戦略についての、非常にためになるポッドキャスト。長年の経営経験に基づく、SaaS経営者の考えるべき論点やそれに対する思考プロセスが明快に語られているので、SaaS経営者の方に特におすすめです。
【解説】SaaSの新戦略。Product-Led Growthの全貌 by UB Ventures
SlackやZoomなど、近年の急成長するSaaS企業の成長モデルとして注目される、「Product-Led Growth(PLG)」。Salesforceなど、従来のエンタープライズSaaSで採られていたSales-Led Growthとの違い、PLG戦略を取るための論点やフレームワークが丁寧に解説されています。
The Product-Led Growth Single Point of Truth Framework
PLG型SaaSにおいて、「顧客」と「プロダクト」を中心に据えた経営の仕組み作りが必要不可欠です。その上で重要な、”Single point of truth”戦略について解説したOpenview Venture Partnersの解説記事。顧客からのフィードバックループの回した、顧客のプロダクト活用状況データに基づく、マーケ/営業などのフロント業務の重要性などの概論を説明しています。
★オペレーション(成長に向けた戦術)
Mastering the “Frugalnomics” Sales Environment by Emergence
昨今のリモートワークの中で、生産効率が上がる一方、経営からすると以前に増して、”営業”が見えにくくなっています。その中で、リモートでの営業活動の可視化がコロナ前より重要性が増していること、またその上で磨くべき、ツール導入や営業の戦術(例. 顧客セグメント別アプローチやトークスクリプトの見直し)について解説したEmergence Capitalの記事。
Product Stickiness Ratio: Measuring Product Success
SaaSプロダクトの顧客へのスティッキネス(粘着性)を測るためのKPIとしての、DAU/MAUの重要性について丁寧に解説した記事。DAU/MAUを、カスタマー・サクセスのみならず、プロダクト開発、営業/マーケがどう活用するかや、プロダクトタイプによるDAU/MAUベンチマークの違いについて詳細に書かれています。SaaSのDAU/MAUのベンチマークとしては、平均13％、中央値 9.4％、トップクラスのSaaSは28.7%に達するとのこと。
カスタマーサクセスの指標としてよく使われるNPS(Net Promoter Score)。しかしNPSは、実際の顧客のリテンションレートとの相関が低いため、顧客からのリファーラル数やプロダクトの活用状況(例. DAU/MAU)、実現済みROIを測定することの重要性を解説した記事。NPS頼りのカスタマーサクセス評価をしているスタートアップの方にはおすすめです。
★市場トレンド
Why is cloud revenue growth so slow if DX is accelerating?
米国SaaS上場企業のQ2の結果は、Shopify, Fastlyなど一部のSaaS企業では確かに売上成長が加速した一方、ほとんどの企業において成長が鈍化した結果になりました。またGoogleやAmazonなど、IaaSやPaaSを提供する企業においても、全体としては停滞感が強まりました。世には「DXが加速している」と言われている中で、なぜこの現象が起こっているのか？についての考察記事。記事では、ニューノーマルに対応するためのDXの加速化には時差があるため、Q3以降に結果が見えてくるだろうと結論付けてます。
What a Difference a Quarter Makes: COVID’s Impact on Q2 Performance by Scale Venture Partners
米国有数のSaaS投資家であるScale Venture Partnersによる、SaaS投資先のQ2のARR達成状況に関する分析記事。全体としては、ARR目標達成率が58％(中央値)と、Q1より非常に厳しい結果となりました。しかし、一部(全体の17％)のSaaS企業は、コロナ前の目標を大きく超えており、ECやWFH関連が牽引していることを解説しています。
★ファイナンス
When Entry Multiples Don’t Matter by Andreessen Horowitz
SaaSなどの高成長テクノロジー企業における、マルチプルの考え方についてのa16zの優良記事。なぜSaaSのような高成長テクノロジー企業では、利益ベースのマルチプル(EV/EBITDAやPER)ではなく、売上ベースのマルチプル(EV/Revenue)が使われるのか？なぜグロースファンドが、上場市場より高いマルチプルでも投資するのか？など、VC/スタートアップにとって非常に示唆深い記事です。未上場企業のマルチプルを考える上で、「将来の売上成長の継続性と蓋然性」、「将来の収益構造」が重要になると論述しています。コーポレートファイナンスに馴染みの無い方には、若干読みにくいですが、重要な論点なのでオススメです。
※その他記事はこちらをご覧下さい。
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