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今週のSaaSニュース! Vol.43(4/4週)

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注目!資金調達ニュース

■  クリエーター支援SaaS Patreon $155M調達@$4B

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Patreonは、YouTuberやPodcaster、ミュージシャンなどデジタルコンテンツを創作するクリエーターのファンが、クリエーターを支援するプラットフォームを提供している。同社は、シンガーソングライターのJack Conte氏(CEO)とSam Yam氏の2人が2013年に創業した。Patreonのビジネスモデルは、クリエーターの収益の5-12%をTake rateとして課金する。コロナ禍で急成長しており、2020年3月第1週で3万人以上のクリエーターが登録した。今回は、昨年9月の前回ラウンドの3倍の$4Bのバリュエーションで、Tiger Globalがリード投資家で$155Mを調達した。

1分40秒でわかるPatreon(動画)

■  エンタープライズ向けノーコードSaaS Bryter $66M調達 

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2018年に独・ベルリンに創業したBryterは、エンタープライズ企業で開発スキルの無い知識労働者向けに、自動化のアプリ開発をノーコードで行うことができるSaaSを提供している。欧州のマクドナルド、PwC、Deloitte等の他、金融、ヘルスケアなど、グローバル企業100社以上で導入されている。用途としては、法務や財務、調達、人事などのバックオフィス部門向けのチャットボットやバーチャルアシスタントの利用が多い。UiPathなどのRPAとニーズは似ているが、大量のデータ入力や帳票の読み取りなどに強いRPAが対象としないワークフローの自動化に活用されている。本シリーズAは、Tiger Globalがリードで$66Mを調達した。

■  ノーコード型営業コミッション計算SaaS CaptivatelQ $46M調達

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CaptivatelQは、SalesforceなどのCRMやWorkdayなどの給与計算系SaaS連携し、複雑な営業の成果報酬(コミッション)の計算をドラッグ&ドロップで可能にするノーコードSaaSを提供している。リモートワークの普及により、営業チームの生産性を維持するために、業績連動型の報酬プランを提供する企業が増えており、前年比の売上は600%の成長を遂げている。現在AffirmやIntercomなどのテクノロジー企業が中心だが、金融業や製造業などの非テクノロジー企業でも活用が拡大しており、今後これらの産業分野への取り組みを強化する予定。本シリーズBは、Accelがリードで$46Mを調達した。

1分10秒でわかるCaptivatelQ(動画)

■  顧客対応チーム育成SaaS Pathlight $25M調達

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2020年3月に正式ローンチしたPathlightは、営業やCSなどの顧客対応チーム向けのパフォーマンス管理を行うSaaSを提供している。Salesforce、ZendeskなどのCRMから統合したデータを使用して、マネージャーが設定した様々な指標でチーム/個人のパフォーマンスを追跡・分析し、必要な時にコーチングを行うことを支援している。同社CEOのAlex Kvamme氏は、Yelp在籍時に顧客対応チームの課題に直面し、Yelpで同僚だったTrey Doig氏(CTO)とPathlightを共同創業した。本ラウンドは、Insight Partnersがリードで、既存株主であるKleiner PerkinsやYelp社CEO David Glazer氏なども追加投資を行った。

会話型コマースSaaS Charles €6.4M調達

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独・ベルリン発のCharlesは、WhatsAppやMessengerなどのチャットアプリを介してEC販売や顧客サポートの対応を可能とする、会話型コマースSaaSを提供している。WhatsAppなどのチャットアプリAPIとShopifyやHubSpotなどのEC/CRMとを接続し、ユーザーフレンドリーなUIでECの購買体験を高めることができる。本シードラウンドは、AccelとHV Capitalが出資した。

銀行APIユニコーン PLAID $425M調達: Visaとの経営統合を解消した銀行APIを提供するPLAIDが、シリーズDで$425Mを調達した。Altimeter Capitalがリードで、新規投資家としてSilver Lakeに加えて、既存投資家のAndreessen HorowitzやKleiner Perkinsなどの米大手VCも参加した。

プライバシーSaaSユニコーン OneTrust $210M調達@$5.3B: プライバシー管理SaaSの代表企業であるOneTrustが、SoftBank Vision FundなどからシリーズC追加ラウンドで$210Mを調達した。バリュエーションは$5.3B。

エンタープライズ向け財務管理SaaS OneStream $200M調達@$6B:企業の財務業務のレポーティング、計画策定、税務などを支援するOneStreamが、DI CapitalやTiger GlobalなどのPEから、$6Bのバリュエーションで$200Mを調達した。昨年は売上+85%増、顧客数は+40%増の650社を達成した。

クロスボーダー決済SaaS dLocal $150M調達@$5B: ウルグアイ唯一のユニコーンdLocalが、前回ラウンド(評価額 $1.2B)から7カ月弱で、$5BのバリュエーションでAlkeon Capitalなどから$150Mを調達した。現在、アジア、中東、南米、アフリカの29ヵ国で、AmazonなどのEC事業者向けにクロスボーダー決済のプラットフォームを展開している。

市場トレンド

DXを加速させるAPIファーストSaaSの未来

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米国で注目を集めるAPIファーストSaaS(エンジニアがコードにAPIを組み込むことで、フィンテックやECなどの様々な機能を追加できるSaaS)の歴史やトレンドをざっくり解説した記事。APIファーストSaaSは、世界的なエンジニア不足、DX化、マイクロサービスの高速開発、パーソナライズニーズの向上などを背景に、Stripeなど評価額1兆円超のSaaS企業(上図)を多数輩出している。記事では、APIファーストSaaSが従来のSaaSより優れた点(以下)についても解説している。日本でもAPIファーストSaaSの出現に期待したい。

APIファーストSaaSの優位性
1. 利用量ベース課金による導入ハードルの低さ
2. データネットワーク効果によるMoat
3. スイッチングコストの高さ
4. 顧客のビジネスと連動した高い成長性

コロナ禍のSaaS企業の営業効率

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コロナ禍の米国SaaS上場企業の営業効率への影響を分析した記事。ZoomやShopify、Twilioなど、コロナにより営業効率が飛躍的に向上したSaaS企業が注目される一方で、SaaS全体の営業効率指標は0.6から0.51と低下している。

成長戦略

SaaS企業のリード創出の失敗要因

売上成長率が重要なSaaSビジネスにおいて、安定的なリード創出は欠かせない。本記事は、SaaS企業のリード創出における基本的な失敗要因(以下)を紹介している。日本のSaaSでは一般的ではない取組みも含まれますが、自社のリード創出の取組みのチェックに利用してみるのも良いかもしれません。

SaaSのリード創出の失敗11要因
1. ウェブサイトがモバイルに対応してない
2. プロダクトの説明があいまい
3. 提供価値やオファーが魅力的でない
4. 顧客の導入事例がない
5. 既存顧客を活用できてない
6. 問合せフォームが無い
7. チャットボットが無い
8. プロダクトデモがいまいち
9. リードチャネルが特定できてない
10. CRMが使いこなせていない
11. ゲスト投稿に自社サイトへのリンクが無い

大手SaaS企業の売上成長は、既存顧客がドライブしている

一般的に言われることだが、特にエンタープライズ向けSaaS企業では規模が拡大するにつれて、新規顧客ではなく、既存顧客が売上成長を牽引することをまとめたSaaStrの記事。代表例は以下の通り。

既存顧客がSaaSの成長をドライブしている例
・Salesforceの新規受注の73%は、既存顧客
・UiPathの売上の75%は、既存顧客
・Zoomは、既存顧客の売上が年率+30%アップ
・Slackは、既存顧客からのID追加が成長を牽引

マネジメント

 Marc BenioffがSalesforceを創ったコミュニケーションの力

Salesforce.com創業者兼CEOであるMarc Benioff氏は、世界のビジネス界で常に発言が注目される存在ですが、同氏が数年前にInc.誌に対して語った、セールスフォースの知名度を高めるために創業から大切にしてきたコミュニケーションやストーリーテリングについて解説した記事。SaaS企業経営者にとっても、貴重な洞察があると思います。

・コミュニケーションはCEOの最優先の仕事:常に直接かつ迅速に対応
・シンプルな説明を心掛けて比喩を活用
・プレゼン能力の高い人材を採用/育成

ピーター・ティールの起業家が自問自答すべき7つの質問

PayPalマフィアのボスで米トップVCの1つFounders Fundなどの創業者であるピーター・ティール氏による、「起業家が自問自答すべき7つの質問」に関する解説記事。この質問は、起業家がイノベーションを起こし、失敗の可能性を減らし、良きリーダーになるためには大切なポイントが詰まっています。記者によると、SalesforceやAmazon、Appleなど成功しているテクノロジー企業は、7つの質問の内、最低5つは明確な回答があったとのことです。

起業家が自問自答すべき7つの質問
1. 現在の技術の改善ではなく、画期的なテクノロジーを産み出せるか?
2. その事業は、"今"が最適なのか?
3. 小さい市場で圧倒的なシェアを取れるのか?
4. その事業を始めるのに、最適なチームなのか?
5. プロダクトを作るだけでなく、流通させることができるのか?
6. 自社のポジショニングを、今後10-20年維持できるのか?
7. 一般には知られていない、ユニークな市場機会を特定できているのか?

ファイナンス

プレイド社IPOのオファリング設計と実務

お馴染みのプレイド社コーポレートチームの方々による、同社IPOの軌跡に関する記事。今回の記事は、グローバルオファリングの設計と実務、特に重要な英文目論見書の作成に関して丁寧に解説されています。ユニコーン級の大型IPOを目指すSaaSスタートアップのCFOや財務担当者のみならず、経営陣の方々も一読することをお勧めします。

freee社の海外公募増資の考え方

こちらは話題になったfreee社の上場後の海外公募増資に関して、実際に同社でリードされてきた、原さんを中心としたファイナンスIRチームの方々による解説記事。今回の増資の目的である「中長期的な成長に向けた、サービス・機能の強化・拡大を行うためのM&A」は、SaaS企業が成長し続ける上で必要不可欠です。その観点でも、SaaS企業経営者にとって貴重な情報になるので、こちらも一読することをお勧めします。

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