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米軍の航空機に搭載される放射性物質等の危険物の本(サンプル)

この記事は同人誌「米軍の航空機に搭載される放射性物質等の危険物の本」のサンプルです。同人誌から一部を抜粋しました。同人誌は下記から購入できます。

まえがき

米軍機に限らず、航空機が墜落すると「放射性物質があった」や「有害物質が漏れた」という報道が流れることがあります。(中略)ここで筆者が感じた疑問は下記のとおりです。

◆「米軍はどのような事故対応手順を持っているのか」
◆「実際にはどんな放射性物質や危険物があるのか」

それらに疑問を解消するため、米軍の航空事故対応マニュアル「Technical Order 00-105E-9」から抜粋し、翻訳を行った物が本書になります。

入手可能な最新版として、06年版(Rev.11)から抜粋して翻訳を行いました。(米軍内では、より新しい版が発行されているはずですが、機密のためアクセスが出来ませんでした)

はじめに

この技術指令(TO)およびNATO STANAG 3896は、(中略)航空機で発生しうる様々な種類の非常事態に対する情報提供および手順の確立を目指して作成さている。これらの航空機は、ある日突然、不時着したり、事故を起こしたりする可能性がある。緊急事態は、それぞれ異なる問題を提起するが、TOの完全な知識があれば、消防・救難技術者として航空機の救助や事故対応を行う際に、知識に基づいて判断することができる。

(中略)
 
消防や緊急対応は、着陸した航空機や墜落した航空機の周辺で行うことから高度な技術が必要な作業であり、これ以上人命の危険がないことが確認されるまでは、搭乗者の救助が他のすべての作業に優先される。また、火災や爆発による航空機の被害を抑え込み、最小限に抑えることが第二の責務となる。閉じ込められた人を救出する際は、本TOに記載されている一連の流れに従うこと。

(中略)

任務に有用な知識は、本書に掲載されている図の学習だけでは得られない。本書に記載の内容は、乗務員や航空機を使った頻繁な「実地」訓練の代わりになると考えてはならない。

(サンプルなので以降は省略)

事故と危険な物質により生じる危険

3.1 導入と使用
航空機内には、暴露すると危険な化学物質や材料が存在する。また、通常は危険ではない物の中にも、適切に取り扱わなければ、航空機事故対応中に危険を生じる可能性のある物質や状況がある。燃料流出の場合のように、危険の存在が明らかな場合もある。また、放射性物質のように物質の危険性がすぐにわからない場合もある。対応者の安全を確保するため、本章では航空宇宙事故の対応で予想される危険に対する情報を提供する。(以降 省略)

危険な化学物質

(サンプルなので、本文は省略)

放射性物質の話

3-4. 放射性物質の危険性
本節では、事故の初期、またはその後の対応段階において、材料から、どういったことが生じ得るかについての情報を提供する。また、その材料が持つ、生じ得る最も重要な危険を提示し、取るべき最初の行動についての指針を提供する。この情報には、生じ得る健康被害、火災の危険性、火災発生時に取るべき緊急措置、適切な応急処置が含まれる。本節の最後に、表 3.4-1の特定の機体に対する危険性と、劣化ウラン(DU)についての説明がある。


a. アメリシウム241
人工的に作られる放射性の金属元素である。金属アメリシウムは銀白色で、融点は210°Fである(訳者注:2100°F(1180℃)の誤記と思われる)。AM241はF-18 A/B/C/DのLANTIRN (夜間低高度赤外線航法および目標指示) システム内に存在する。この物質は、前方監視赤外線ポッド(FLIR)の中にある。
 
(1) 生じ得る健康被害
アメリシウムはガンマ線とアルファ線を放出する放射性の毒物である。AM241のエミッタンスは約5MeV、ガンマ線エミッタンスは約60KeVである。
  

(2) 取り扱い方法、(3)火災の危険性、(4)応急処置
(サンプルなので省略)

b. 劣化ウラン(DU)
(サンプルなので省略)

c. クリプトン85
(サンプルなので省略)

d. ラジウム(RADIUM)
(サンプルなので省略)

ストロンチウム90
航空機の製造に使用される放射性物質である。典型的なものは、ヘリコプターの防氷探知機やブレードの健全性インジケータに使用される。
 
(1) 生じ得る健康被害
ストロンチウム90は、高エネルギーベータ線源である。これは毒性の強い放射性毒物である。したがって、その危険性は、内部および外部放射線障害にある。体内に取り込まれた場合、ベータ粒子によって生じる電離が、細胞に深刻な局所的損傷を与える可能性がある。骨髄を攻撃し、致命的な結果をもたらす可能性がある。外部では、ベータ線は皮膚被曝の危険性だけに分類される。皮手袋を着用することにより、四肢へのベータ線被曝を最大10%低減することができる。30フィートの距離では、放射線被曝はほとんどない。
 
(2) 火災の危険性、(3) 取り扱い上の注意
(サンプルなので省略)

f.トリウム
(サンプルなので省略)

g. トリチウム
(サンプルなので省略)

複合材料の危険性

3.5 複合材料の危険性
事故対応者の主な職務は、航空宇宙機材に関連する複合材料や航空宇宙材料について学ぶ機会が与えられるものではない。本章は、事故シナリオに関連する複合材料を学ぶために役立つ入門的な情報を含んでいる。本章a項およびb項の情報は、残骸の中から複合材料を識別するために使用することができ、すべての種類の対応に一貫性を持たせるための共通知識を提供するものである。

a. 複合材料の基礎知識
(サンプルなので省略)

b. 事故における複合材の損傷
損傷を受けていない複合材は、見た目も挙動も均質な固体のように見える。織物のような質感の層が表面に出ていなければ、コーティングの下で材料が複合材であるかどうかを判断することは、ほぼ不可能である。一方、複合材料が損傷すると、それが材料の「システム(組み合わせ)」であることがわかるようになる。損傷により、システム内の材料は分離し始める。 
 
(1) 事故時の破片について
3.5a項では、複合材システム内の材料の種類と、部品が持つかもしれない様々な形態についての一般的な情報を示した。これは、損傷していない部品の識別に役立つだろう。しかし、損傷した破片がどのようなものかを判断するためには、さらなる情報が必要である。損傷した破片は、次のように分類される(サイズが大きいものから順に並べる)。
 
(a) 破片(FRAGMENTS)
積層板全体の断片や複合材の断片は、破片(FRAGMENTS)と呼ばれる。衝突によって生じた破片は、緊急対応の最中に、衝突クレーターの中、またはクレーターから少し離れた場所にある瓦礫の山の中で見つけることができる。破片は重量があるため、最初に地面に接触してから遠くへ移動することはない。(写真18、19)

(b) ストリップ
一枚のラミネート層はストリップと呼ばれる。複合材料は、損傷により、層が分離することがある。物理的な損傷から生じたストリップは、破断した端部を除いて繊維に樹脂が付着しており、元の複合材部分の近くで発見される。火災による損傷で分離した場合は、樹脂または炭化物が繊維をつなぎ合わせている。火災による剥離は、燃焼帯の内側と外側の両方に見られる。(写真20) 

(c) 繊維の束
繊維の束は、物理的な損傷によってのみ生じる壊れた繊維/母材の断片である。複合材料が破断すると、繊維と母材が割れて、繊維/母材の破断部分ができる。割れは層内でも層間でも生じる。繊維は母材によって保持され、繊維の束となる。繊維の束は破断面やその付近(破片の表面や積層体内)で見られる。破断面の損傷が激しい場合は、その近辺に繊維の束が分散している。(写真21、22)
 

(d) クラスター
クラスターは、火災にさらされた一方向性テープ又はフィラメントワウンド層から生成された数百又は数千の長い連続長繊維のことである。クラスターは、火災で加熱された時間が異なるため、ストリップと異なる状態である。クラスターには、繊維をつなぎとめる樹脂がほとんど残っていない。このため、繊維は自由に動きまわることができる。炭素繊維のクラスターは、黒い毛糸のようであり、髪の毛の塊のように見える。クラスターが発生した場合、クラスターは現場の周辺や燃焼区域の外側に分散していたり、ストリップに付着していたりすることがある。クラスターは空気中に残ることはない。(写真23)

(e) 粉塵
(サンプルなので省略)

(f) 単繊維
(サンプルなので省略)

(2) 物理的損傷
(サンプルなので省略)

(a) ソリッドラミネート
母材が損傷すると、層間や層内の繊維間に亀裂線が形成される(写真25)。

層間の母材の破壊が激しくなると、層間剥離と呼ばれる層間の完全な分離が生じる。層間剥離は、ラミネートスタック内の個々の層を露出させる。この際、プリプレグテープの種類、繊維の方向、芯材が露出するため、複合材料の特定を試みることができる。厳しい負荷がかかると、繊維は曲がり、ねじれ、座屈し、あるいはせん断され始め、最終的に繊維に亀裂が生じる。亀裂線は、繊維をより短く分割し、繊維束を作る層を通って進むこともある(写真 25 および 26)。ほとんどの合成繊維は剪断されたり、座屈したり、曲がったりして、破断部分に不規則な繊維の破断面を作り出す。元の繊維の直径は変わらない(写真27と28)。



ケブラー® は、異なる反応をする繊維のひとつである。破断すると、亀裂の代わりに、より小さいサイズの繊維の表面層が形成される。つまり、親繊維はより小さなサイズの繊維に分裂する。この小さい繊維はフィブリルと呼ばれる。繊維の直径はフィブリルの生成によって変化することになる(フィブリルは元の親繊維の直径よりも小さなサイズの直径を持つ)

 (b) サンドイッチドラミネート
ソリッドラミネートで説明した損傷に加えて、サンドイッチパネルは表面層とコアの間で分離が発生することがある。コアが押しつぶされたり、破れたりすることもある(写真 30訳者注:不鮮明なため不掲載)。

 (c) フィルムワウンドラミネート
ソリッドラミネートで説明したように、母材と繊維の亀裂が発生する。また、層が分離し、繊維/母材のストリップ(剥離した層)が発生する。巻線パターンが解けて、個々の巻線層が見えることもある(写真 31)。

(d) 残骸の種類、(e) 繊維パターンの影響、(f) 健康への影響
 (サンプルなので省略)

(以降、サンプルのため省略)

付録1 F-22戦闘機の材料分布

付録2 F-16戦闘機の材料分布

サンプルは以上です。
全く一般受けしない本になりますが、良かったら買ってくれると嬉しいです。

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