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【読書記録】読んだことのない有名作を読む 松本清張「点と線」

「点と線がつながった」言い回しは知ってても読んだことない人多いでしょう!読みました! 刑事ものの2時間ドラマにもうといので「時刻表ミステリー」の段階で新鮮。
列車内を舞台にした映画や、乗り物を止めるのが目的の話は山ほどあるけど、時刻表のミステリーって日本独自に発展したジャンル…ですよね?
だって、時間通りに交通機関がキッチリ動く国じゃないと成立しない。蛭子さんの路線バスの旅も時刻表をめぐるドラマだ。

九州で男女の死体が見つかり、ジュースの瓶から青酸カリが検出された。恋人同士の心中かと思われたが、男の方は汚職事件に関わっており、死んでくれると都合のいい人間が多数いる。

捜査線上で不審な人物が浮上するが、その男は事件の時間、ちょうど真逆の北海道にいた。
あまりにも完璧なアリバイ。
わざとらしいほど揃いすぎた目撃証言。

だけど、「完璧すぎて不自然でもある」から、刑事のカンにひっかかる。捜査陣は証言ひとつひとつの裏付けを求めて電報を打ち、日本全国を飛ぶ。乗員名簿の束を一件づつ洗い、病床の女性にまで菓子折りをもって聞き込みに行く。

時刻表をどう繋げれば、犯行時間に男は現場に行くことができるのか。「点」とは捜査中に見つかった違和感のことだと思ったけど、
「点」と「線」は「駅」とそれをつなぐ「列車」の比喩とも思える。
これが「九州情死事件」みたいなタイトルだったら、それだけでダメだろう。

通信機器のない時代の手紙の重さ、(刑事同士の手紙に、季節のあいさつがしっかり入ってる)家には五右衛門風呂と、ご飯をよそってくれる妻。
ところどころにある時代感もちょっとおもしろいし、思い込みをくつがえすトリックにはちゃんと今でも「なるほど」と思える。これを読みながら、出張に向かう途中で車窓に目をやったサラリーマンがたくさんいたんだろうなあ。


読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。