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【読書記録】三月は深き紅の淵を

普段私は読みやすい本を読んでいるのかなぁーと
思わされる一冊だった。
不思議な感覚。
どんどん飲み込まれていくように、
頭の中にハテナが浮かんでは消えて、
掴めそうで掴めない、
を繰り返した。
理解しようと努め、自分のちっぽけな頭で
解釈しようと奮闘するのだけれど、
なんだかケムに巻かれているような不思議な感覚が
つきまとう。

「三月は深き紅の淵を」というタイトルの本をめぐる、4つの短編から
成る。
4つの短編を繋げているのは「三月は深き紅の淵を」という本と、
小泉八雲に似た人物のみ。

Small Worldさんのこちらの記事を読んで、ぜひ恩田陸ワールドを堪能したく読んでみたもの。
恩田陸さんは「蜜蜂と遠雷」や「夜のピクニック」はとてもわかりやすく面白くて、夢中になって読んだがそれの間に一冊不思議な本に出会い、一度挫折したことがある。
今回、「三月は深き紅の淵を」を読んだ時に、その本をふと思い出した。
挫折した本の題名が今、思い出せないが、空気感はとても似ている本だった。
「三月は…」の中の1シーンで、迷路に迷い込んだ少女二人が三つの尖塔を目印に迷路を抜けていくシーンがある。
そう、挫折した本も塔が出てきた。
何とも不気味な空気感。

第一章「待っている人」では、会長の邸宅に2泊三日で招かれた主人公がある本についての謎解きを迫られる。一晩しか貸してはいけない本。その本がこの屋敷のどこかに隠れている。そのあらすじだけを聞かされる主人公。
その本についての謎ばかり深まり、読みたくなってしまう。
第二章「出雲夜想曲」では、出版界で伝説となっている「三月は深き紅の淵を」を書いた作者は誰か、という謎解きを夜行列車の中で解いていく出版社に勤める女性二人。
第三章「虹と雲と鳥と」は女子高生二人が転落死した事件の謎を解く。一見して「三月…」は関係のなさそうでいて、でも、先に一冊の本が関係しそうな終わり方をする。
第四章は、本を書こうとしている作家の思考と、他の物語が並行して語られる。

不思議な世界に迷い込んだような、それでいてミステリアスな空気感が心地よく、でも、第四章はやはり迷宮のような作りだった。

不思議な、奥深い作家さんだなあと思う。


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