映画『ラストサマーウォーズ』感想

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ご当地映画応援プロジェクト
埼玉県入間市の街おこし事業として持ち上がった企画。しかし当てにしていた「ARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)」の補助対象からは漏れ、制作費はクラウドファンディングで募る事に。当初目標としていた5,000,000円は開始からわずか3日で達成。コロナ対策とより良い作品にするためにとストレッチゴールを倍の10,000,000円に変えたがその金額も無事達成。プロジェクトへの期待は大きく賛同者も多かった。
プロジェクトを知ったきっかけは、7ORDERの長妻怜央くんの出演が決まっていたからですが、非力ながら賛同した者として公開を心待ちにしていました。

Story
小学6年生の陽太は、好きな映画のイラストを描いてひとり楽しんでいるような内気な性格。1学期の終業日、クラスメイトで密かに思いを寄せる明日香が、もうすぐ外国に引っ越してしまうことを知る。ホームルームで言った担任の先生の言葉が脳裏に浮かぶ。「最後の夏休み、やり残したことがないかしっかり思い返して、後悔のないものにしましょう!」
陽太は下校する明日香を呼び止めると、勢いで「ボクの映画の・・・・・ヒロインになってくれない!?」と言ってしまうのだった。意外や意外、快諾してくれる明日香。作り方の分からない陽太は途方に暮れてしまう。そこへ、学生時代自身も映画制作に挑戦していた映画マニアの担任教師がアドバイスをくれる。映画作りには少なくとも〈監督〉〈助監督〉〈プロデューサー〉〈脚本家〉〈カメラマン〉〈録音〉〈俳優〉が必要だとわかったが、友達のいない陽太は果たして仲間を集め、映画を完成させることができるのか。

入間西少年撮影隊
陽太がいじめに遭っているシーンから、友達集めに苦労するのかと開始早々不安でいっぱいになるが、杞憂に終わる。シナリオを書けるクラスメイトが偶然見つかった事を起点に最強のメンバーはさくさくと集結。あっという間に「入間西少年撮影隊」が結成される。ここにジメジメしたドラマを盛り込まなかったのがいい!自主制作映画のテーマもヒロイン明日香の好みを聞いてホラーに決定。昨今"ゾンビコメディ"と呼ばれるくらいメジャーな分野。陽太監督の描いた絵コンテに合わせて、好きな映画に『ミッドサマー』なんて小学生とは思えぬチョイスをあげる小学生人気web作家の書くストーリー、面白くないわけがない。

親vs子
陽太の母親が異常に映画作りに反対する理由はちょっとモヤモヤした。陽太の兄がいかにも健康そうで、音楽をやっていたり、力強く大太鼓を轟かせて、昔大怪我をしていたという設定が不思議に思えた。あと兄が映画に興味を持つきっかけがエロ本を探しに親父の書斎に入って映画のビデオをたくさん発見したってことだったけど、エロに興味持ち始めるの早過ぎないか。怪我をしたのは陽太が物心つく前のようだし回顧場面はどう見ても兄がまだ小学校低学年にしか見えなかった。

反対理由、普通に中学受験だとか、勉強させたがる親たちと最後の夏休みを意義あるものにしようとする子供たちとの対決で良かった気がするけれど。入間市の長閑な風景に、お受験の世界は合わなかったのかな。

陽太の母親に代表される親軍団+学校を相手に最初は押され気味の子供たちだったけど、最後までやり通したい子供たちの熱意が頑なだった大人たちの心を動かす。ラストの大量の鬼ゾンビシーンは圧巻だった。

キャスト
子供たちはオーディションで選んだという。全国から300人集まった応募者の中から3度のオーディションをくぐり抜けた選りすぐりの6人。女の子たちはみんな可愛いし今後の活躍が楽しみだな〜。基雄役の男の子の甲高い声も可愛い。元乃木坂の井上小百合さんは清潔感に溢れ生徒思いの熱意ある先生役にぴったり。活動しているグループ内では最年少で普段は弟ポジの長妻くんも、今回はお兄ちゃん役で、子供たちを優しくサポートしている貴重な姿を見られたのもよかった。

感想
自主映画の撮影に奮闘する子供たちといっしょに、いつしか自分も入間の緑いっぱいの茶畑を駆け回っているような気分になる。問題が起こるたび現代っ子らしいポップな発想力で次々とクリアしていく様は爽快で、過酷なミッションにも「やるっきゃない!」と果敢に挑む6人が頼もしく眩しい。やる気スイッチの入った子供たちに不可能なことはない。ひとりで居ることにさほど苦痛を感じなかった陽太が、映画制作を通して共同作業の楽しさを知り、代表としての責任の重さを知る。ひと夏の冒険物語、「夢を見ることの大切さ」と、「大人の役割は子供の夢を奪う事じゃない、失敗した時支えること」だと改めて痛感した。この映画がより多くの方に届きますように。

入間市もぜひいつか訪れてロケ地巡りをしてみたいな。

http://lastsummerwars.com/

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