映画『ツーアウトフルベース』感想

3月25日に公開された『ツーアウトフルベース』

主演の阿部顕嵐くんから、LINEで、感想文を書くようにという課題をいただいたので、さっそく取り掛かります。
率直すぎる感想ですみません、あと、ネタバレ注意。

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「7ORDER」阿部顕嵐×若手人気実力派No.1板垣瑞生による激熱バディ!脚本:内田英治『ミッドナイトスワン』×監督:藤澤浩和『レディ・トゥ・レディ』 が激熱タッグ!“二死満塁”一発逆転をかけた 男ふたりの青春エンターテイメント!

まず一番に思ったのは、ハチ役の板垣くん、演技うまいねということだった。
「若手人気実力派No.1」と冠されるのも納得。
2000年生まれの、まだ21歳だって。
どっかで見たことあると思ったら、ソロモンの偽証の子だ!ったのと、「響 -HIBIKI-」や「映像研には手を出すな!」でも見てたわ。めちゃくちゃ有名な人じゃんこの人。朝ドラにも出演するような大手事務所所属の彼が、すでに主演が阿部顕嵐に決まっている映画のバディ役のオーディションを受けにきたの?マジで?そこに一番驚かされた。
元はアイドルグループに所属していたことも今回初めて知った。俳優業に専念したいと早々にアイドルは辞めたらしいけど、そんな気概が伝わってくるような細やかで素晴らしい演技だった。

一方、イチを演じた阿部顕嵐くんは、7ORDERの「顔面国宝」であり、気品に満ちた優雅な振る舞いが特徴的な彼が、チンピラ役に合わせて体重を5キロも絞り、髪型を汚らしい金髪長めにして挑んだ演技はとても迫力があった。仲間を思う純粋な気持ち、頼りないバディを引っ張る頼もしさは本人に通ずる部分もあったし、ストーリーを追うごとに輝きを帯びてくる目も印象的だった。

バディ役を演じる二人は、すぐに打ち解け仲良くなったというけど、コンビネーションの良さはスクリーンを通しても伝わってくる。

映画は、人生のピークだった高校野球の試合シーンに始まり、一転して10年後クスリ代にも窮する堕落した生活を送っている場面に。
大麻吸引文化は世界的にはお馴染みでも洋画の中でしか見ない光景。日本ではクスリに溺れるステレオタイプって覚醒剤だけど、そこまでいくと人間やめますかのイメージで最悪すぎる。現代の日本にはマッチしないシチュエーションに少々戸惑ったけど、あえてアメリカナイズされた世界観を落とし込んだのかな。
そして劇中に登場する色鮮やかでクラシックなヤン車。
「ブォン!ブォン!ブォン!」改造エンジン音轟かせている車をたまーに見かけるけど、100%自己顕示欲が強いヤバいやつが乗っている。無視されるとさらにエンジンをこれでもかと吹かしてくるから地獄だ。実際あんな車でナンパしても成功しないんじゃ・・・。
基本、車移動らしいから田舎設定なんだね。

しかしいくら仲間の不祥事で甲子園に行けなかったからといって、ここまで転落する?と不思議に思うくらいその日暮らしのイチとハチ。
そんな精神ならたとえ出場できたとしても、たとえプロになれたとしても、大成しなかったんじゃないのか。
で、そんな転落人生を送っているのがチームメイトの中に二人居るだけでも珍しいのに、さらにマネージャーまでもが10年のうちに窃盗前科二犯になってるなんて、そんなわけあるかーい。
卒業後イギリスに留学までしていたらしいお嬢様だよ?いくらなんでも落ちぶれすぎ。

舞台挨拶で阿部顕嵐くんが言っていたらしい。
「イチは、レスポールを親父からもらうくらい余裕のある家庭に育った。」
いや逆にレスポールだけは奇跡的に質入れを免れたくらい、何ならせめてこれだけは抵当に入れられないようにと父が息子に預けたレベルなのかと思っていたら。顕嵐くんの解釈ではそこそこ裕福だったのかよ!
家庭環境がそこまで悪くはないのに子供がジャンキーになるって確率的にそうあるものじゃない気がして、ここまでに至る物語を感じ取れなかったことは残念だった。

早紀がヤクザのアジトに連れていかれた場面。
部屋には子分二人が居て、どうやら奥の部屋で早紀はオニヘイに暴行を受けている様子。ビジバシ殴る音が響く。
あ、これは間違いなくヤラれてると思った。いや普通そう思うでしょ。だって相手ヤクザだもん。
ヤラれて、子分にもまわされて、その後はソープとかに売られちゃうんだろうな~と勝手に早紀ちゃんの未来を憂いていたのに。
奥の部屋に展開すると早紀、マジで殴られてるだけだった。
「んなことあるか~」拍子抜けしちゃったけど、いやこれは間違いなくアイドル映画のジャンルなんだと理解した瞬間だった。
早紀ちゃん演じる工藤さんは元アイドルだしそんな体当たりするわけなかった。

やっぱり映画って、どんな世界観を描こうとそこに生きる人々をリアルに感じ取れなければ、面白味に欠けてしまうと思うのだ。

そこで、ヤクザの三人がウ〇コを我慢してるシーンだ。圧巻。
あのリアルすぎる音とお芝居、上手すぎる!

オニヘイはヤクザだけど子分に優しく人間味が感じられる。渋川さん、「真犯人フラグ」のどっち刑事として初めて認識したけど魅力たっぷりな方だ。
天然ヤクザのオニヘイと、最強の不良なのに基本30分前行動の怪物ヒロポンがそれぞれに持つトンデモ伝説も楽しい。

そういえば、自己主張の激しいヒロポンに向かってオニヘイが放つ、
「”さんした”のお前が名乗ってんじゃねえよ」
と、たしか、言ったと思う。
ん?傘下のこと「さんした」って言った?あえて?天然だから?
もう一回見に行った時には注意して聞きたい。

「傘下」といえば、『Bad Boys J』というドラマ&映画で、広島の不良チーム「ビースト」のNo.2として活躍した森田美勇人演じるカズさんが多用するセリフ、
「ビーストの傘下に入らないか?」
を思い出し笑ってしまった。

そして忘れてはいけない「チャー坊」役の諸星くん。
モロは『Bad Boys J』出演時は、カズの横に控えるビーストの一員だった。
初映画ではセリフがたった一言しかなく伝説となったけど、今回はセリフもたくさんあって別のタイプのクズを見事に演じている。
チャー坊は、タランティーノの映画に出てくるタランティーノ本人が演じている役どころに思えた。決して本筋には関係ないけどクセが強くて妙に印象に残るキーマン。映画のアクセントになっている。

疑問に思ったのが、クスリの運び屋が大量のパケを飲んで運んでるけど、あれだけ激しく殴られたり車に揺られたりしたら、まあ吐くのは当然として、体内で破裂してショック死しないのか。あとビニール溶けないのかな。
あと今どきクスリのこと「ブツ」とかまんま言っちゃうものなのか。礼儀正しい顕嵐くんが放つ、普段絶対口にしないような言葉「ブツ」は、現代映画とは思えない一昔前臭が漂う。

一番イチの目がイっちゃってるように見えたのは、ラストのライブシーン。
高揚感を得るのにクスリなんか必要なかった。
レスポールを抱えステージに立つ。ライブこそが生きる喜びをMAXに感じる瞬間だってことが伝わってきたよ。
人生のピークなんて死ぬまでわからないよね。

そこで流れる映画主題歌の「レスポール」。
人生を諦めていたはずの二人の、希望に満ちた未来を想像させるラストにふさわしい楽曲だった。

クレジットの先頭に流れてくる「阿部顕嵐」という強い四文字が誇らしく輝いて見えた。

モロと顕嵐くんは、もう一度このような映画を撮ろうとなったら、全然違う芝居をするんじゃないのかな。
今回の経験を積んで成長した彼らは、また違った「イチ」と「チャー坊」を作りこむと思うのだ。
初々しくて、儚い、泥臭さのある演技は、去年の彼らにしか表現し得ない奇跡的なもの。その瞬間を切り取った貴重な映画になったと思う。

7ORDERの「レスポール」のMVは、退廃的な世界観を表現していて、どこか現実味のない映画の世界観に馴染む。最初は、“歌舞伎町を練り歩き7ORDER殴り合う”みたいなイメージだったらしい。たしかに現代でクズのジャンキーに現実味を帯びせるには舞台は歌舞伎町がベストかもしれない。堕落したイメージが固定観念として植え付けられている。でもリアルすぎるのも夢がないから、あくまで幻想的に方向性を変えたのだろう。正解!

タランティーノやガイリッチーに影響されたオッサンたちによる、奇想天外ドタバタコメディ映画がここに蘇える。そのオッサンには顕嵐くんも含まれる。顕嵐くんの映画の好みは昭和の人間並みに渋いから。

そしてアイドル映画なのに、ウ〇コ我慢する場面や思い切りゲロも出てくるし死体に手を突っ込んでたりする、わりとハードなグロ映画である。

でもタランティーノ好き、ホラー映画も好き(この映画にホラーの要素はないけど)、グロに耐性ある私にとっては、大好きな映画の一つになりました。

グロ映画でも愛嬌のあるグロ。見終わった瞬間に、爽快感と不思議な物足りなさを感じる。本当にそこまでグロかった?大した事なかったんじゃない?確かめるためにもう一回見なきゃ気が済まなくなる。ああもう間違いなくハマっている。

まだ1回しか観てないから、あと燦回は映画館で見ます!

人生のうちに、必ずハチ回は見ることをここに誓います。