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映画「ちょっと思い出しただけ」フランス公開記念上映会

本日よりフランス国内110館で劇場公開されることを記念して、テアトル新宿で一夜限りの誕生日上映会が開催された。映画の登場人物の誕生日が、記念日になるって素敵だ。

フランスでも公開日を7月26日に合わせてくれたらしい。

フランス版ビジュアル
タイトルも「東京ランデブー」

いや、バックに五重の塔あるし、
なんかめっちゃ都会だし、
夏なのに、桜や紅葉まで舞ってるし
今日もカジュアルスタイルな松居監督

ジム・ジャームッシュ監督の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』にインスパイアされて書かれた曲が、クリープハイプのヴォーカル・ギターとして活躍する尾崎世界観さんの楽曲「ナイトオンザプラネット」で、その楽曲に松居⼤悟監督がインスパイアされて製作されたのが、映画『ちょっと思い出しただけ』。互いの信頼とインスパイアの連鎖、コロナ禍の状況もミラクルに作用して、素敵な映画が生まれた。


◆ストーリーの縦軸になる照生の誕生日

7月26日は、照生の誕生日。

そもそもなんで「26日」かというと、尾崎世界観さんが楽曲を制作された日にちだったと昨年監督のティーチインで話されていた。2020年春ごろに制作されたということは、7月ではなかったようだが。

誕生日って不思議だ。自分にとっては一年で一番特別な日なのに、他人にとってはただの平日。伝えられなければ察することもできないし。お祝いしてあげたいと思うのは、特別な人に対してだけだ。

28才から34才という、人生で最もエネルギッシュで輝いている時期の誕生日。照生も大きな転換期を迎えている。

28才、舞台初日の終演後サプライズでお祝いされ、葉と出会う
29才、高校生の泉ちゃんに豪華なプレゼントをもらいながらも葉と無事付き合う
30才、前日から泊まり込んでいた葉にバレッタをもらい、当日は一日楽しく過ごして軽くプロポーズ
31才、すれ違った末の別れ
32才、髪をバッサリ切る。一人寂しく商店街を飲んでるところで泉ちゃんに出会い行きつけのバーへ連れて行く
33才、リモートで仕事の打ち合わせ
34才、朝までパーティーしてたと嘘をつき、照明の仕事も軌道に乗り誰も居ないステージで1人踊る

映画の公式のTwitterもちゃんと今日に誕生日設定がしてあった。
https://twitter.com/choiomo_movie?s=21&t=GMG11FkKXRadXiHKFoZ_9A

◆「ナイト・オン・ザ・プラネット」

音楽映画ではないけれど、「言葉にできないことを形にする」というのは、尾崎さんが音楽を通してやりたかった理想と重なった。それまではずっと1人で弾き語りをしていたが、登場人物の言葉のやりとりを観て、「人に会いたい」「つながりたい」、「人とつながるならやっぱりバンド」だと思ったそうだ。そういう気持ちになれたのもこの映画のおかげという。

◆「ちょい思」制作秘話

2020年の春といえばコロナ禍、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する最中。予定していたライブが延期になり、ライブをやるはずだった時間帯に曲を作ってみようと思い立ってできたのが「ナイトオンザプラネット」だという。作り始めた瞬間から尾崎さんが「これは大事な曲になる」と確信したそうで、レコーディングが終わってすぐに、MV制作で懇意にしていた松居監督に託したのだった。

尾崎さんがバンドを始めるきっかけとなるほど影響を受けた映画を今回の曲のタイトルに持ってきたことに、監督は並々ならぬ覚悟を感じたという。そしてこれはミュージックビデオではなく長い話を作って、映画のエンドロールに流れる楽曲にしたいという気持ちが湧いたそう。

照生の誕生日を軸に過去に逆行していくストーリーは、『ナイト・オン・ザ・プラネット』の「世界各地の同じ時間の話」という横に軸を置いた設定からヒントを得たという。そして撮影当時のコロナ禍で東京を出られないという状況から「同じ場所のいろんな時間の話」にすることに決めた。「横軸を縦軸」に、「定点観測の話」にして、さらには「時間軸を逆行させる」ことで、ただのラブストーリーでは終わらない新感覚の映画が誕生した。

◆ティーチイン

今年の上映会は満席。質問する人が「今日で見るのは◯回目なんですけど〜」で始めるという、この映画への愛をまず競うのだから、熱いイベントである。9回目や12回目なんてザラだ。まだまだ私なんてちょい思ド新規だなと思う。

見た人それぞれの解釈ができる含みもあるし、何度見ても毎回気になるシーンも変わってくる魅力的な映画だから、ハマる気持ちがよくわかる。

そして客席には老若男女さまざまな年代の人が集まっていて、こんなに幅広い年代に支持される映画も珍しいと思った。

◆監督は、映画のタイトルを本当は「星のつま先」にしたかった

これが今日イチの衝撃だった。でも池松さんはじめスタッフの反対にあい、改変されたようだ。映画の原題から星がつく名前にしたい監督渾身のタイトルだったらしいが、どうやら周囲に監督の暴走を止めてくれる働きがあるらしく、見送られた。いや正直私も、このタイトルだったら見なかったかもしれない。

◆不思議に思っていたこと

31歳の誕生日、葉が迎えに行ったタクシーに乗っている間にタイムワープでもした?

レッスン場では外はまだ明るかったのに、2,240円で着いた到着地はもう真っ暗。あたりを見渡して、照生がさあケーキを食べようとしたときには時計の針はもう0時近くを指している。深夜とはいえ真夏の気温の中でナマモノは無事?プレートは綺麗なままだけど。この疑問はノベライズ本を読んでも解決しなかった。

前回のティーチインではチキってできなかったから、今回こそは思い切って手を挙げて聞いてみることにしよう。

「すみません、、劇場で見るのは2回目です。すみません💦あの、ずっと不思議に思ってたんですが〜照生と葉が別れることになってしまう日、照生をタクシーに乗せたときはまだ外は明るかったと思うんですけど、降りてケーキを食べ始める時にはもう0時近くになっています。2,240円分の移動しかしていないはずなのに、その、時間経過はどうなっているんですか?💦」

と、聞いたつもりだった。が、どうやら夢の中だったらしい。私は何の質問もありません、なんてすました顔して黙って座っていた。

いや、疑問は解決したからだった。
照生、ずっとそこに居たんだよね?
降ろされた時点では賑わっていた周囲。ダンスを踊っているグループや、会社帰りのおじさん達に、学生、帰り道を急ぐ親子連れまで居る。それから照生、実は4時間くらいそこで動けずに居たんだなとわかった。まるでワープしたかのように感じるくらい、次の瞬間には周りは静かになっている。それくらい照生呆然としていたんだなって。やっと解った。でもケーキが溶けずに完全体で残っていたのは依然疑問ではあるのだが。

◆もう一つの気になること

気になることは実はまだある。
30才の誕生日に葉からもらう「バレッタ」である。「バレッタ」って、踊るに全く適してないアイテムと思う。ゴムで纏めた上に飾りで付ける人はいると思うけど、髪の毛をそれだけで纏めて踊るのは無理。激しく踊れば取れてしまう。
他にダンスをする時髪をまとめるのに活用できるアイテムはあるかなと考えた。「シュシュ」もゴムが緩いからダンスには適してない。照生のダンスのジャンル的にも床を転がったりもするほど激しいのだから。「ヘアクリップ」なら纏められるけど、それでダンスができるかっていうと、やっぱり無理。そう考えるとダンスしている時に使える髪を纏める物って、ゴムしかない。飾りの付いたゴムもあるとはいえ、ゴムじゃ絵にならないから「バレッタ」だったのかな。

・なぜバレッタだったのか 

葉は、照生が照生の世界に居る間、何か自分が携われるものをプレゼントしたかったのだと思う。29才の誕生日に垣間見た、レッスン場での泉ちゃんとの親し気な様子もずっと気にかかっていたのかもしれない。離れている間も何かしら繋がっていたい。照生に自分の身代わりとなる物を身に着けてほしかった。そう考え行き着いた先が髪をまとめる物だったのかな。
と、監督、私はこう思ったのですけど、だとしてもなぜバレッタ?バレッタ、ダンスには邪魔じゃね?

次回のティーチイン質問タイムに持ち越しです。

松居監督はとてもふわふわした雰囲気の方で、イメージとしての映画監督像とは大きく異なります。

ノベライズ本にサインをいただいた。
サインかわいい

来年の照生の誕生日お母さんの出産記念日にまたお会いしましょう!」で楽しい楽しい上映会は幕を閉じました。