塔の攻略〜アストラル界の夢〜

『塔の攻略』〜アストラル界の夢〜

(夢だとわかっているけど、
そのまま見つづけていた夢の話)




その塔は200階建てになっていて
物語は1階から始まる。
しかし、
1階ではだれもが皆、
円周状のフロアの外周部分をぐるぐると回っているだけで、
フロアの真ん中にある
上の階への階段には気づかない。



この世、この社会に生き、
そうすることで、
日々、人生が進んで行っている気になっている者たちは、じつのところ、1階フロアの外周をぐるぐる回っているだけなのだ。



あるいは、
失業、大病、投獄などで
『人生を踏み外してしまった』者は、
地下1階に落ちる。
文字通り、人生の落とし穴だ。
そこから這い上がってくる者もいれば、
落ちた先の地下1階で
外周を回っているだけの者もいる。



地下1階からさらに転落して
地下2階、地下3階も
あるのかもしれないが、
わたしは知らない。



それはさておき。
1階のどまんなかの
きわめて目立つ位置には、
大きな大きな階段。
しかししかし
みんなみんな
階段には気づかず
ただひたすら
外周を回っているだけ。



こんなに目立つ位置にあるのに。
なぜみんな気づかないんだろう、
と思いながら、
わたしは真ん中の階段から
2階へと進む。
塔の攻略の、はじまりだ。



塔の2階に到着すると、
2階から200階までは
1階とは別の世界だ。
1階から2階への階段は
どこかへ消えてしまって
フロアの真ん中には
大きな吹き抜け。


四角い塔に対して
丸い、
あまりにも大きすぎる吹き抜けがあるため、
2階以降の
各フロアは
東西南北の4部屋に分断されている。
部屋どうしを繋ぐ通路は、
ある場合と、
ない場合と。



2階以降は、
フロアの移動はランダムで
階段をあがってみたら
いきなり100フロア以上、上昇していたり、
そうかと思えば、
階段を上がったはずなのに、
低いフロアに戻っていたりもした。
そもそも階段じたいが変な場所にあって、
真ん中の大きな吹き抜け
(大きすぎる吹き抜け)
以外は、
あるもの全てが
隠し通路、
隠し階段、
隠し部屋、
という感じ。



これだとまるでRPGだが、
ほんとうにそんな感じなのだ。
ダンジョン内で出会った
冒険者どうしで
パーティーを組むこともできるし、
モンスターも出現する。
隠し部屋に、
謎のお店があって、
すごいアイテムを売っていることもある。



しかし、
これをゲームとして見るなら、
中身はひどく理不尽だ。
ゲーマーとしての喜怒哀楽の持ちようが
ひどく難しい。


5人パーティになりました。
武器屋を見つけました。
ただし剣は3本しか売ってません。














→はい、
仲間割れ。
ゲームオーバー。









モンスターを仲間にすることもできて
仲間にしているあいだは人間の姿になる。
でも、もしかして、こいつ裏切るんじゃ??
とか少しでも思った瞬間、
→はい、
そのとおり。
裏切られました。
ゲームオーバー。


もちろん、
こっちから裏切ることもできるにはできる。
裏切ろうと考えた瞬間、
ケモノの姿になって、
さっきまでの仲間は死亡、
ゲームは続行。
そのあとで、
今度はもっとケモノっぽいヤツを仲間にしよう。
できました。
でも裏切られました。
→ゲームオーバー。





あまりの急展開で
すぐにゲームオーバーになってしまい、
理不尽なこと、このうえない。
でも、このゲームには
えもいわれぬ謎の魅力があって。


気がつけばまた、
わたしは
ゲームをはじめているのだった。



ゲームをはじめるって、どうやって??
1階での外周運動を放棄して
真ん中の階段を上がることによって!!


社会生活に没頭している者たちは
何の疑問もなく
1階の外周をぐるぐる回っている。
社会生活を踏み外してしまった者たちは
地下1階だか地下2階にいる。
そうして、
社会生活には何の興味も持たず、
しかし踏み外したわけでもない、
ごく少数の者たちだけが、
真ん中にある階段に気づき、
2階へと上がっていく。



そして、
ゲームオーバーになっては
1階に落ちてくる、、、




2階から200階までを攻略、
などといったところで、
フロアの移動はランダムなのだから
いま何階にいるのかと、
どれくらい攻略が進んでいるかは、
まったく一致しない。



だからまぁ、
社会生活に没頭している者たちが
嬉々として1Fの外周を
ぐるぐる回っているのと
わたしたち冒険者が
飽きもせずに
真ん中の階段を上がるのとでは、
ある意味、
なんの、
違いもないことになる。
どちらも不毛な繰り返しに過ぎない、
という点では。




それにしたって。
ひとつだけ言い訳をさせてほしい。
ただただ、魅力的なのだ。
理不尽すぎる、
すぐにでも
ゲームオーバーになってしまう、
この塔が。



なので
きょうもわたしは
外周運動には興味ももたず、
目が覚めると(というかゲームオーバーになると)
さっそくまた、2階へ、、、、

























ある日わたしはこう聞かれた。
『この塔をクリアする方法は??』







わたしは答えた。
『カンタンだよー』
『真ん中の吹き抜けを
真上にあがっていけばいいんだ!!』








うっかり正解を答えてしまった。
すると即座に
それはそのとおりになり
200フロアぶんの吹き抜けを
真上に上昇して
最上階に到達した。
最上階、200階だか201階だかは
あらたな、別の地面になっていて、
そこまで到達すると、
そこはもう、塔とは別の場所。






(ふたたび降りる方法も
もしかしたら、あるのかも知れないが、
すくなくとも、さっき昇ってきた吹き抜けは、
もうすでに消えてしまっていた)






最上階、
200階だか201階だかの
主(ヌシ/アルジ)から祝福を受ける。
そいつの名前は
コーザリティといって、
なかなか尊大なヤツだった。
吹き抜けは一見、
障害物にしか見えないのに、
よく正解に気づきましたね。
そうです、
吹き抜けを上昇するのが正解です。
よくできました。
素晴らしいです。





『これであなたは因果を超越しました』




コーザリティ様の祝福も、
話半分にしか聞く気になれず。
そもそもコーザリティとやらを
敬う気にもなれない。
正解は正解でも、そのせいで、
塔の攻略からは永遠に追放されてしまったわたしは、ひどく不機嫌だった。







2階から200階までを
どれほど丹念に攻略してみても、
それはクリアとは何の関係もない。
しかしそのことを知っているからと言って、
決してそれを口にしてはいけなかったのだ。
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