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『母性』 湊かなえ 作 #読書 #感想

今日は映画化も決まっているこの作品の感想を。

自分の母親を愛しすぎていて、親離れができないまま母親になったルミ子(戸田恵梨香さん)と、
母に愛されたいと望み続ける その娘の清佳(永野芽郁さん)のお話。


母と娘。二種類の女性。美しい家。暗闇の中で求めていた、無償の愛、温もり。ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。母の願いだったから。心を込めて。私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました―。そしてその日、起こったこと―。

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これを映画化する必要はあったのだろうか?と思った点として、
母親視点の語りと娘視点の語りが本では交互に続く点が挙げられる。

これをどうやって映像作品にするのだろうか。母から見た景色と娘が見た景色はあまりに食い違っている。

母は自分が母(娘にとっては祖母)に愛されたように娘を愛してあげたいと考えているものの、娘はその愛に答えてくれない、と非難している。
母(娘にとっては祖母)に幾度となく愛され褒められて生きてきたからこそ、その母を急に失ってしまった母は、親離れができないまま娘の母親となってしまった。

娘は自分も母に愛されたい、触れられたいと思い母の期待に応え続けようとするものの、愛されたいという思いの強さが原因で空回りしている。母からは暴力を振るわれていると感じている。
どうしたら母が喜んでくれるか?と考えて行動した結果、母の怒りを買ってしまっている。



最初から最後までほとんど希望がないと言っても良いし、
何よりこの母と娘の関係に薄々気づきながらも見て見ぬ振りをし、不倫をしていた夫(父親)が許せなくなるのがこの本だ。
母(娘にとっては祖母)が生きている間は幸せそうに見える生活だったが、亡くなってからは消えてしまった。美しい家が。家庭が。家族が。




娘はこう言っていた。

許される=愛される。
わたしの中だけで成立する式だった。愛されるためには、正しいことをしなければならない。(略)
わたしが暗闇の中で求めていたものの正体がようやくわかった。
無償の愛、だ。

39ページ

母(ルミ子)は自分が母親に与えてもらったように、娘にも無償の愛を与えたかった。でも娘は、自分が望むように育たなかった。それが母を苦しめていた。娘が自分の思い通りに育つわけがないのに。

自分の不幸は、全て娘のせいだと考えている。
自分の母(娘にとっては祖母)が死んだのは、娘のせいだと思っているのだから。
ネタバレになってしまうのでこの辺でやめておくが、ここが物語の重要なポイントである。



「子どもを産んだ女が全員、母親になれるわけではありません。母性なんて、女なら誰にでも備わっているものじゃないし、備わってなくても、子どもは産めるんです。子どもが生まれてからしばらくして、母性が芽生える人もいるはずです。逆に、母性を持ち合わせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです」

216~217ページ


ちなみにこの物語は一応ハッピーエンド。煮え切らない部分は多々あるけれど、一応元の家族に戻れた、と言うことができなくもない。


子供ができた、自分のお腹に子供がいる..…と気づいた時に、
嬉しいという感情が先に大きく出てきたとしても、自分に育てられるのかという"不安"も 同時もしくは後になって抱くことになる感情だろう。


母に愛される娘という世界から抜け出せなかった母(ルミ子)よりも、ここまで母からの愛を求める娘(清佳)を見て悲しい気持ちになった。
この子は愛を母親にしか基本求めていないけれど、これが加速すると無償の愛を求めて体の関係を始めたり恋人に依存し始めたりする人がいるから怖いのだ。

申し訳ないけれどこの本を読んでいて1番頭を横切ったのは「マザコン」と呼ばれる(主に)男性の存在だった。
息子に対して母親が過剰な母性を抱いているのか、息子が無償の愛を求めているのか??
ここにはなにがあるのだろうか。


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