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謝らないオランダ人と喧嘩

日本人はとてもよく謝る文化だ。まずは謝って、そのあと検証したり話し合って何とかしていく。

オランダ人は正反対だ。

ストレートな物言いをする文化のために他国からやってきた人にショックを与えることがあるのは結構有名な話で、たとえば男性が女性(時として恋愛対象の)に対して当然のように「君の口はネギ臭い」とか言ってしまう。きっと日本人なら距離感にもよるけど、ガムを渡したり、”ネギ食べたでしょ?笑” なんて聞いたりするかもしれない。これと同じくらいオランダ人が謝らないという国民性も、訪れた外国人の間で有名な話だと思う。


オランダ人の話の前に、イギリス人の友人とは、良くも悪くも婉曲表現やそれゆえの気遣いの良さで日本人の国民性と似ているなぁと思うことがよくある。例えば、日本人の私を映画に誘ってくれた彼女。「この前いい映画を見たの!もう一度見たいし、一緒に見に行かない?」と連れて行ってくれたのが『Isle of Dogs』だった。そもそも彼女にとっては2回目なのに敢えて”もう一度見たいし”と言うあたり、私に気を遣わせないようにとの配慮があった。行ってみるとこの映画はストーリーは英語だけど、登場人物のセリフは日本語も多くて、英語の聞取りが完璧でなくても(もちろんオランダ語の字幕は読めなくても)楽しめる内容だった。なんて気遣いなんだろう!

彼女の家に泊まりに行った翌朝、彼女が仕事に行った後に起きた私はお礼をしたくて、内緒で唐揚げを作ってタッパーに作り置きして家を出た。彼女はデザインセンスのこだわりがあるから要らないものをあげるとゴミになるだろうし、それに、以前日本に来た時にファミマのチキンに夢中になったという話をしていたのを思い出したからだ。その夜「唐揚げ素敵ー!!私がファミマのチキンの話をしたのを覚えていてくれたのね!」とボイスメッセージが入っていた。つまりは、言わない部分の意味が結構通じるのだ。


一方、オランダ人とはそうはいかないだろうと思う。何事も言葉にして説明する必要があり、何かを省くと一切気付いてもらえないのでキツく思えてもズバっという必要があるらしいということが、やっと最近分かってきた。

今回喧嘩したオランダ人の友人とは数日間メールで戦った。長くなるので理由は割愛するが、私に対して心無い振る舞いがあったので私は「失礼だ!あんたにガッカリした!ふざけんな!」くらいの勢いで相手の非を訴えたのだ。すると返ってきた返事は「君がそんな風に考えたなんて残念です」である。そこから彼自身がいかに悪気がなく正しい行動をしていたかという説明が延々と続く。私は「まずは ”すみません” だろ!」と余計に怒りを募らせたが数日間のプロレスであまりに話がこじれてしまったので、結局会って話すことになった。※この間、相手は一度もソーリーと言わなかった

私はこちらに落ち度がなかったことに自信があったので口論に負けるわけにはいかず、前日に戦術を考えた。そんなときネットで「オランダ人は初めに褒めたり感謝を伝えたうえで指摘しないと謝らない」という記事を見かけた。ちょっと胸くそ悪いけどここは文化の違い、怒りをぐっと堪えて開口一番に相手を褒めることにした。

「先日はありがとうございました。あなたの協力がなければ〇〇はできなかった。良いセンスとご尽力に感謝するよ」と言って、怒りで渡しそびれていた日本土産をプレゼントに手渡した。

すると、なんということでしょう!!

「嫌な思いをさせてすみませんでした。あれは完全にぼくの失敗で、僕が間違っていた。僕がアキコさんならとても辛かったと思う」と謝り始めるではありませんか!初めから謝ってくれたならこんなに何日も不快な気分を味わわなくて済んだのに、と心の中で思いながら、もう一度何が失礼であったかを1から相手と確認して同意を得られた。


オランダでは小さいころから自尊心が育つように褒められて寛大な理解のもとに育っているようだ。だからきっと、日本人が真っ先に「すみません」と口から出てくるように、オランダ人は「君は素晴らしい」から始める必要がある。日本人が「まずは ”すみません” がマナーだろ!」と怒るところで、オランダ人は「まずは礼と称賛がマナーだろ!」と怒るというわけなんだろう。今回の件で、遠慮して言わなかったり面倒だから省いたりしていることを言うだけでも、私は普段からし慣れていないのでとてもエネルギーを使って疲れた。でもそれを面倒がると、こちらには損しかない。こちらに非がなくてもダメな奴とみなされる。

文化の違いを受け入れるということの難しさ。もうオランダへの浅はかだった憧れはとっくに覚めているが、今回でかなり色々お腹いっぱいになった。


※国=個人ではないので、今回はステレオタイプだけど無くもない「お国柄/ナショナルキャラクター」が実際に垣間見れた個人的エピソードを書いた。オランダは面白い国で友人も多いので、筆者が批判的ではないことをご了承ください


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ミムラス内藤彰子/Mimlus Naito Akiko Singer Song Writer、東京在住 naitoakiko.com
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