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言葉の中から、伝えたい本当の心をすくい上げる仕事

いつか夢見たモロッコのサハラ砂漠で一夜を過ごし、バックパック世界半周の旅を終えた。日本から出発し、東南アジア、中央アジア、ヨーロッパを経て、日本から最西の国へたどり着いた。約4ヶ月の短くも濃い旅だった。

モロッコから日本へは、トランジットを含めて3日かかる。最後はゆっくり飛行機に乗って変えるため、Netflixで気になっていた映画かアニメを見ることにした。それがアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」だった。

普段見るアニメや映画は、感動するけれども涙はジーンとくるぐらいで、ボロボロとなくことはないけれど、このアニメは違った。京アニの見事なまでの作画の綺麗さ、壮大な音楽、そして切なくも透き通るほどのストーリーに感動し、初めてアニメでボロ泣きした。

旅を終えたという疲れもあっただろうか。いや、4ヶ月の旅の記録に思いを馳せる隙もないほどストーリーにのめり込み一気見して、異国の地の空港で25歳の日本人はボロ泣きしていた。

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アニメの主人公は、孤児として生まれ戦争で闘うことしか知らない少女、ヴァイオレット。彼女は人の感情がわからず、上官にあたる少佐に言われる命令だけを頼りに実行し、生きていく。

しかし、戦争は終わり、少佐は行方不明になり、彼女は行き場を失う。そして最後に言われた「愛している」という言葉の意味を知るために、自動書記人形(ドール)という仕事を始めるのだ。

「愛してる」が知りたいのです。

自動書記人形とは、手紙の代筆の仕事である。依頼人は、ドールに手紙で伝えたいことを喋り、ドールはその内容を手紙という形にする。そして、良きドールとは、「言葉の中から、伝えたい本当の心をすくい上げるもの」であると彼女は知る。

人の感情がわからないバイオレットは、初めの依頼で、しゃべった内容をそっくりそのまま簡潔にまとめ送ったところ、依頼人に怒られてしまう。

「この手紙をみてみなさいよ!こんなことを言いたかったのではなかった!」

依頼人は恋人を振り向かせたがいために、自分を高く見せたかったのだ。しかし、ヴァイオレットは言っていることをそのまま手紙にしてしまい、怒られてしまう。

人の言葉は裏腹だとバイオレットは困惑する。

しかし、そうなのだ。人というのは思っていることを必ずしもそのまま伝えられるとは限らない。例え相手のことを想っていても、逆の態度や言葉をかけてしまうものである。

しかし、ヴァイオレットは様々な依頼人の代筆をこなしていくことで、人の気持ちを少しずつ理解していく。

戦地から戻った兄のことで悩む同僚。親に置いて行かれ、孤独な少年。辛い過去を持つ劇作家。1人の娘を持ち、重い病を患う母親。

その一人一人と向き合い、伝えたい言葉の中から本当の心をすくい上げていく。その過程で、「愛している」の意味を知っていく。

手紙を書くこと。スマホですぐ連絡を取れる今の時代では、滅多に減ってしまったことの一つだ。しかし、どんな物事にもそれぞれの本質的な価値が存在する。

手紙を書くという行為は、自分の伝えたい思いに向き合い、それを紡ぎ出す行為である。手紙を書けば、普段思っていても伝えられない想いが、一方通行であるけれでも、届くのである。そして、手紙を書こうとするからこそ、自分の奥底に眠る思いに気づくこともある。

そんな当たり前のことだけれども、手紙を書くこと、想いを、それぞれの愛するということを伝える素晴らしさを、ヴァイオレットの成長と共にこの作品は教えてくれる。

想いを言葉にすること。僕らはどれだけ、大事にできているだろうか。

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バックパックを終えて、約半年。アニメのヴァイオレットエヴァーガーデンの完結に繋がる「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が今年の9月に公開された。

やはり映画では何度も涙が流れたが、物語が終わる悲しさよりも、無事完結してよかったなぁなんていう思いに満たされる。(実はこのアニメは、京都アニ放火事件で延期され、映画もコロナでまた延期になってもいた)

まるで主人公のヴァイオレットが過去に生きていたかのように思える。それだけこの作品で、登場人物気づくそれぞれの愛の形に、自分も考えさせられ、心動かされたのだ。

少し忘れかけていた旅の思い出を、この映画を見て思い出す。今までの人生を振り返っても、いろんなことにチャレンジすることができ、そしてあの時の旅も直感に従って歩んでいたと、このブログを書くことで気づく。

人生辛いこともあるけれど、何よりも自分がチャレンジできる環境にいるということに、なんと恵まれ幸せなことなのだろうか。

こんなことを気づかされてくれたこの作品に感謝を。そして。ここまで育て、自由になんでもさせてくれた父と母、家族に、心からありがとう。

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