Twitter×美容マーケティングの勝ち筋 2020年上半期編 ~③CHANEL ルージュ ココ フラッシュ 90 バズ要因考察~
こんにちは、MimiTV編集部の添田裕女です。2020年上半期の「バズコスメ」のうち3つのバズ要因を分析し、そのストーリーを紐解いていくこの企画。今回は3本目、最終回をお届けしていきます。
ここまでのnoteはこちら
バズ分析のハイライト
❶「Twitterでバズったらコスメが売れる」現象が発生している。
❷背景には、Instagramとの違いである「拡散性」「検索機能」が影響。またTwitter独自の「美容垢」と呼ばれる美容情報の発信に特化したTwitterアカウントも影響している。
❸「バズツイート」と呼ばれる拡散されたツイートは、規模感により「プチバズ」「ミディバズ」「グランバズ」と判定できる。
❹バズったら必ずしも売れるわけではない。バズによって「評判形成→拡散→評判定着」の3ステップを形成することでコスメが売れるようになる。
❻バズコスメは「モノ・ヒト・コト」の3軸でバズった理由を分析できる。
「評判形成→拡散→評判定着」の3ステップ&バズツイートの大きさの定義はバズストーリーを読み解く上でかなり重要なので、簡単にまとめた画像を貼っておきます。
今回は、「BUZZ COSMEAWARD(通称バズコスメ大賞)※2020年上半期」において受賞に輝いた「CHANEL ルージュココフラッシュ 90」について、バズストーリーをご紹介します。
※2019年からMimiTVが半年に1回発表する、「Twitter上で話題になった(=バズった)コスメ」のアワード企画。今回は2019年11月~2020年4月の間のバズコスメが対象です。MimiTV編集部の精鋭美容オタクメンバーと、厳選されたMimiTVユーザー215名(フォロワーが100名以上で、日頃からアクティブに美容情報の収集・発信を行っている美容垢が対象)の投票で決定しています。
2020年上半期バズコスメはこちらをチェック
目次
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■バズったのは…CHANEL ルージュ ココ フラッシュ90
・バズプロセス
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■考察:自走したキャッチコピーとビューティーアイコンの存在
・「粘膜リップ」というSNSで自生したキャッチコピー
・なぜ「田中みな実売れ」が起こるのか
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■結論:CHANEL ルージュ ココ フラッシュのバズ要因
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■バズったのは…CHANEL ルージュ ココ フラッシュ 90
永遠の憧れブランド、CHANELが2019年3月8日に発売したリップスティック。輝くようなツヤと美しい発色が特徴。90は、ジュール(熱)という名前の通り、限りなく血色に近いナチュラルなピンクベージュ。一見無難なカラーに見えるけれど、素の唇を綺麗に見せて上品な色気を醸し出してくれることから、「粘膜リップ」という異名を持っています。私も個人的に買って、とっても気に入っています。似たような色は他メーカーから出ているはずなのに、色味や唇の立体感など、仕上がりが別格です…
CHANELはコスメにおいても誰もが憧れるブランドですが、リップは4000円(税抜)と他アイテムと比較して手が出しやすく、使いこなすのも難しくないことから、エントリー商品(ブランドのアイテムを使うきっかけとなる商品のこと)になることが多いです。
・バズプロセス
こちらの図は、「CHANEL ルージュ ココフラッシュ 90」について、Twitter上で呟かれた回数の増減をグラフで表したものです。※リツイートも含みます。
こちらのグラフを元に、評判形成・拡散・評判定着のプロセスを説明していきます。
【評判形成期】2019年4月~2020年1月
発売して1か月後のタイミングで、国内トップクラスの美容YouTuberかじえりさんが、「素の唇を綺麗に見せてくれる」「粘膜色リップ」と紹介。
かじえりさんおすすめのリップという文脈で話題となり、また「粘膜色」という強烈なキャッチコピーもあってか、クチコミが投稿されるようになります。
【拡散期】2020年2月~3月
「知る人ぞ知る名品」からバズコスメに名を上げたきっかけは、2020年上半期の美容トレンドを語る上で欠かせない、フリーアナウンサーの田中みな実さんです。写真集発売のPRのためにInstagramアカウントを開設されたのですが、1月28日に行ったインスタライブ内にて、ルージュ ココ フラッシュ90 を紹介。「田中みな実愛用のリップ」だと情報拡散されるようになった結果、一時的に入手困難のアイテムとなりました。
【定着期】2020年4月~
4月以降は百貨店営業自粛により、購入者のクチコミは減ったものの、オンラインストアでの指名買いをしていた人も見受けられました。緊急事態宣言解除後は、営業再開した百貨店のカウンターに出向き、自分へのご褒美として購入した!というクチコミが続々と上がっています。
■考察:自生したキャッチコピーとビューティーアイコン田中みな実の存在
CHANELの「ルージュ ココ フラッシュ90」のバズ要因において注目すべきは、「粘膜リップ」という自走したキャッチコピーや、田中みな実さんというビューティーアイコンの存在だと考えます。
・「粘膜リップ」というSNSで自生したキャッチコピー
元々は、前述のかじえりさんが動画内で「粘膜色のような」と表現したことから、「粘膜リップ」と呼ばれるようになりました。「健康的な粘膜のような、ナチュラルな血色を感じるカラーのリップ」という意味で、派手な色付けはしないけれど自分の素の唇を綺麗に見せてくれます。かじえりさん自身の言葉で語られた印象的なワードが、TwitterなどのSNSで拡散されることで自然と生まれたキャッチコピーです。
キャッチコピーがSNS、特にTwitterで自生した事例は過去にもあります。2018年~2019年頃、ローラメルシエのアンバーバニラという香りにつけられた「人類モテ(老若男女から愛される香りという意味)」や、2019年夏頃にイニスフリーのノーセバム ミネラル パウダーにつけられた「塗るあぶらとり紙(メイクの仕上げに使うことで皮脂を抑えてテカらないという意味)」です。これらはすべて、インフルエンサー自身の率直な言葉で語られたコンテンツから生まれていることは注目すべきでしょう。
かじえりさんの動画公開以降、ベージュ系のリップを「粘膜リップ」「粘膜カラー」と紹介するメディアや美容垢が増えるようになります。
こちらは、MimiTVが2019年12月にリンメルの新作について紹介した投稿ですが、ピンクブラウンのリップについて「粘膜感のある」という表現をしたところ、多くの反響を獲得しました。
トレンドをいち早く取り入れた商品を低価格で販売することで支持されている「セザンヌ」も2020年3月発売のリップティントの新作カラーを「粘膜色」と打ち出していたことから、まさに今年のリップ一大トレンドとも言えるのではないでしょうか。
ちなみに、日本で粘膜リップと呼ばれているカラーたちは、韓国で「MLBB※」と呼ばれ、2018年頃から続くブームだったりします。
※MLBB=My Lips But Better(自分の唇の色と大きく変わらないけど、よりきれいな色)
今年、日本での存在感を増したHERAのリップ。MLBBというワードが入ってますね。
・なぜ「田中みな実売れ」が起こるのか
知る人ぞ知る名品だった「ルージュ ココ フラッシュ90」がバズコスメに名乗りを上げたきっかけは、前述の通り、田中みな実さんのインスタライブで愛用品として紹介されたことです。
2020年上半期の美容トレンドを語る上での最重要人物は、「田中みな実」さんなことは周知の事実です。アットコスメを運営するアイスタイル社が6月11日に発表したトレンドキーワードにも「田中みな実買い」が入っていますし、今回MimiTVが発表したバズコスメ大賞にランクインしたアイテムも10点のうち3点は田中みな実さんが絡んでいます。
美容雑誌やファッション雑誌でも表紙を飾ったり、特集が大々的に組まれたりと、いまやビューティーアイコンとして支持されている田中みな実さんですが、美容オタクの女性たちはなぜ、彼女に熱狂するのでしょうか。
皆さんご存知の通り、田中みな実さんは元TBSの大人気アナウンサーで当時は「ぶりっ子キャラ」として知られており、むしろ女性ウケは悪い印象がありました。しかしフリーになってからは、赤裸々に恋愛を語ったり、自分のキャラクターについて自虐を織り交ぜて話されていて、女性の共感を得ることに成功。さらに、局アナ時代のセルフメイク研究で培った美容知識を惜しみなく披露して好感度が爆上がりし、「女が嫌いな女」から完全脱却をしました。
もう1つ、田中みな実さんの魅力として、「努力を隠さない」という点があるでしょう。美肌のための徹底とした食事管理や日々のルーティーン、体型維持のためのトレーニングをインスタライブや美容誌、テレビ番組など様々な場で発信をされています。「努力は報われる」を身をもって体現し、美意識の高い女性たちという新しいファン層の獲得に成功。ビューティーアイコンとして認識され、強い影響力を持つようになったのではないか、と考えます。
■結論:CHANEL ルージュ ココ フラッシュのバズ要因
モノ軸:憧れブランドの中では手が出しやすいエントリー商品
ヒト軸:パワーのある美容インフルエンサー、ビューティーアイコン
コト軸:粘膜リップという自生したキャッコピー
の3つの軸から考えることが出来ます。
発売直後、パワーインフルエンサーのオーガニック投稿がきっかけでキャッチコピーがSNSで自生し評判の下地が形成される→田中みな実さんというビューティーアイコンの愛用品として大きく拡散される→優秀コスメとして評判定着という事例だと言えるでしょう!
今回で、2020年上半期のバズ分析企画は以上となります。読んでいただいて有難うございました。次回も乞うご期待!
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