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ゆっくり大事に読む創作大賞記事

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創作大賞用に投稿された記事をじっくり読む用に作ったマガジンです。
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記事一覧

【創作大賞 2024】Dance 1話

【創作大賞 2024】Dance 1話

◀前のお話

第1話 月のクレーターをとびこえる

 夏の暑い日差しの中で、木々が強い光を遮る。
 木漏れ日は階段に光と影のグラデーションを作る。木たちは協奏し、リズムを作り、階段に強弱のコントラストをもたらしている。そして、コンクリートの隙間から生えた草たちは先日の大雨続きのあとからみるみるうちに背丈を伸ばして主張している。
 変わるものと変わらないものはただそのものとして日常に存在していて、移

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空き家の子供 第1章 現在・冬(1)

空き家の子供 第1章 現在・冬(1)

あらすじ現在・冬。久しぶりに実家に帰った私(平井聡子)は、子供の頃に深い関わりのあった「空き家」が壊されたと知る。その跡地に出かけた私は、「空き家の子供」に襲われる。危ないところで近所に住む慶太に助けられるが、慶太は「捕まればよかったのに」と言うのだった……。
過去・夏。十五年前、十一歳の平井聡子は、空き家の絵を描くことに夢中になっていた。クラスメートの慶太の導きで空き家に入った聡子は、「空き家の

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さびしくならないサラダを探して<第一話>

さびしくならないサラダを探して<第一話>

屋上植物園のようになった<天神屋デパート>の屋上には、半円型の舞台があって、その前にはベンチがいくつか置かれている。それは3列並んでいて背もたれに描かれたペコちゃんマークはすでに錆びていて、すごく末枯れた風情を醸し出していた。
 雨ざらしのせいか、さびさびでペコちゃんはもうペコ姐さんって感じで、傷だらけの舌をたらりと垂らしたまま、ずっと屋上のベンチの背もたれにいた。

 わたしはここに居るペコちゃ

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けたたましい心音 #1

けたたましい心音 #1

 
 校門から勢いよく転がりだす小学生の集団のなかを、ひとりで下校するのはとても心細いことだった。

 明るくて楽しげで騒がしい声に「一緒に帰る友達もいない不人気者」だと苛まれながら、制帽の伸びきったゴムを噛みしめ、地面ばかりを睨んで歩く。

 ありふれた、だけど毎日繰り返されるその苦行は、気づかぬうちに蓄積していた小石のように、彼女の心の奥底にころりごろりと溜まっていた。

 校門からちょうど電

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ミステリー小説「創作代償」

ミステリー小説「創作代償」



あらすじ

 「父を殺してください」という殺人の依頼を受け「必ず納得される方法にてお父さんを殺すことを誓います」とその日のうちに快諾する主人公。言葉の裏に隠された依頼人の心から望む殺害を遂行するため、物語は途中14篇の短編小説を挟むこととなる。短編小説を読み終えた後、主人公が仕掛けた驚くべき殺人方法が明らかとなる。

1.父を殺してください

 父を殺してください、と約2ヵ月ぶりとなる門掛夕希

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涙パレット|1/4

涙パレット|1/4

 泣けません。
 紅白幕に彩られた体育館で、同級生たちはパイプ椅子をきしませながら、ときおり鼻をすすっていました。
 通い慣れた通学路を自転車で駆けることも、仲良しのミカとクラス替えで一緒になれるか心配することも、体育祭で自分の組のバトンが落ちないように祈ることも、文化祭の催しに使うダンボールの束が持ち上がらずに男子の手を借りることも、もうないと思えば私はきっと泣いてしまうにちがいないと思い込んで

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さよなら炒飯!一皿目

さよなら炒飯!一皿目

その店だけ時給が飛びぬけて高かった。

二十八歳で職を失い、とりあえず金を稼がなくてはならない。口座にある数字をかきあつめても家賃二ヶ月分。ファミレスでメニューを選ぶのに躊躇する。実家はそこまで太くない。
転職でステップアップを目指すところだが、正社員ってやつがしんどい。責任、決断、上司、後輩、顧客。そんなもの考えたくない。
バイトを探す。実入りがよい肉体労働を考えたがキツイ事はしたくない。飲食店

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プレジャー・ランドへようこそ_第1話

プレジャー・ランドへようこそ_第1話



プロローグ



「うたた寝でも悪夢かよ」
ノキアは小さく独りごちて、舌打ちをした。

同じような家が建ち並ぶ住宅街の中に、山中ノキアの家はある。中学二年生のノキアは、生理痛を理由に部活をサボって早めに家に帰ってきていた。時刻は夕方の6時半。腹痛はすでに回復していたものの、なんのやる気も起きず、ノキアは制服の白いシャツとジャケットそしてスラックスを着たまま、ベットの上に横たわっていた。窓から

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大阪城は五センチ《 1 》 【創作大賞2024】

大阪城は五センチ《 1 》 【創作大賞2024】



脱いでいた服を身につけた後は、宇治のそばにいる資格をすっかり剥奪されたような気持ちになる。

バスルームに水の音が響くのを聞きながら鏡台の前に立ち、クリーニングしたてのスラックスをしっかり引き上げ、新品のセーターの裾を整えた。申し訳程度に眉を書き足し、色付きの薬用リップを塗っただけのささやかな顔が、鏡の中から心配そうにこちらを見つめ返してくる。励ますようにショルダータイプのスマホケースを肩から

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日本で一番小さな県で育まれる愛のサイズ【一話】【創作大賞用】

日本で一番小さな県で育まれる愛のサイズ【一話】【創作大賞用】

完読時間目安:50分

あらすじ



去年の今頃は、まさかこんな状況になって桜を眺めているだなんて想像すらしていなかった。桜の満開を祝すかのように五年ぶりに開催される歌舞伎の旗が踊っている。

幸助が故郷の香川県琴平町に戻ってきたのは一年前のことだ。高校を卒業して以来の帰郷で、気づけば幸助は二十六歳になっていた。

◇ 春 4月

一年前のその日。

幸助はかつて祖父母とよく来ていた金比羅山の

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【創作】オーガニックコットン 第1話

【創作】オーガニックコットン 第1話

"You have a golden heart!"

英会話教師のジェームズは
額の皺を更に深くするように
グレーの目を大きくし、
両腕を広げて大袈裟に言った。

職業を告げたときの
周りの反応が私は好きじゃない。

「何て良い人なんだ!」

少し声を高くして言われた後に

「私には出来ない」

と続く。

「他人の下の世話なんて」って。

どうしてだろう。

下の世話なら看護師だって
毎日行な

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夢と鰻とオムライス 第1話

夢と鰻とオムライス 第1話



 飛んできたのは五百円玉だった。
 よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。
 鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。
「いってぇ……」
 俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。

「何すんだよ!」
 渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた。

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それは、パクリではありません!【第1話】【全4話】

それは、パクリではありません!【第1話】【全4話】

各話リンクはこちら

第2話
第3話
第4話

第1話 

パクリなのか、それとも

 チカチカした画面を、何度も食い入るように覗き込む。ブルーライトの光が瞬き、瞳の奥が痛い。瞼を、ぐいっと指で擦る。残像が霞み、スクリーンの輪郭が朧げになる。このまま、何もかも幻覚になり、いっそ消えてなくなればいいのに。

 缶チューハイを持つ手が、カタカタと音を立てる。腕にしゅわっと泡が流れ、パチパチと音を立てた

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小説「弦月湯からこんにちは」第1話(全15話)

小説「弦月湯からこんにちは」第1話(全15話)


【あらすじ】



第1話



──「お目覚めかね、イチコ」

 いつもの低いしゃがれ声が聞こえる。肩に置かれた手は、ずっしりと重い。見上げないでも分かっている、そこには獅子頭の男がいる。舌なめずりしながら、私を待ち構えている、獅子頭の男が。

 あたりを見回す。いつもの白い部屋にいた。床も、壁も、天井も、どこもかしこも白くて、つるつるしている。換気扇が回るぶーんという音が、薄く聞こえる。

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