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ミミクリデザイン全体会 vol.3 「コーポレートメッセージを創案する - ビジョンメイキングワークショップ」

「組織全体としての結束力を高め、前に進んでいく足掛かりをつくる」という目的のもと、不定期で実施されるミミクリデザインの全体会。2018年4月から約半年にわたって行われた第一回全体会から第三回全体会までは、「ビジョンメイキングワークショップ」と題して、メンバー全員でミミクリデザインの理念をアップデートしていきました。今回のイベントレポートでは、ワークショップ最終日にあたる第三回全体会の様子をお届けします。

▼前回・前々回の様子はこちら。

今回の全体会のゴールは、これまで徐々に明確になってきたミミクリデザインの理念やビジョンを、コーポレートメッセージとして形にすること。ファシリテーターは、前回・前々回と同様に和泉裕之が務めました。

チェックイン@新ミミクリデザインオフィス

第三回全体会が行われたのは、残暑も厳しい2018年8月26日。数日前に入れるようになったばかりのミミクリデザインの新オフィスにて開催されました。まだ家具もwifiもなく、電気と水道だけはかろうじて通っているような状態。この日初めてオフィスに足を踏み入れたメンバーも多く、素足で歩き回りながら、「広い!」「広いけど、なんかすでに狭い!笑」といった嬌声があちこちから聞こえていました。

また、今回の全体会から新しくミミクリデザインの一員となったメンバーも何名かいたため、ほうぼうで自己紹介が行われていました。そんな明るくもどこか落ち着かない雰囲気のなかスタートした第三回全体会。その冒頭で安斎は、メンバーが今回の全体会に臨むうえで外からの視点を強く意識してほしい、と話します。

安斎 これまでの全体会では、メンバー同士の結束を固めたり、ミミクリデザインという組織について、内部で認識を擦り合わせていこうとする側面が強かったと思います。そして、もちろんそれらも重要ではあるものの、今回の全体会ではもう一つステップ・アップした課題として、外からの目線も意識したビジョンづくりにチャレンジしてほしいと思っています。

というのも、これからミミクリデザインが企業として成長していくにつれて、メンバーも増えていきますよね。そうした中で、ミミクリデザインが提供できる価値を他の企業に売り込んでいく際に、たとえ誰が語っても正確に自分たちの価値を伝えられる必要があります。そのためには、まずは組織のなかで、「自分たちが提供していく価値とはなんなのか?」「それをどう伝えるのか?」といった点について、きちんと定義されていることが重要です。なので、今回の全体会は、これまでなんとなく共有してきたミミクリらしさや、ミミクリの価値について改めて理解を深めながら、ミミクリ以外の人にもそれらが伝わるようにするためにはどんな形に落とし込めばいいのか、模索していく機会にしていきたいですね。

そうした背景のもと、今回の全体会では、第一回全体会でも取り組んだ「ミミクリデザインのウェブサイトのトップに掲載するコーポレートメッセージをリデザインする」というワークの続きに取り組みました。

第一回全体会の際には具体的な言葉に落とし込む前に時間切れとなってしまいましたが、今回の全体会では、第二回全体会で得られた多角的な視点も手がかりとしながら、実際に一人ひとりがミミクリデザインの新たな理念を文章として作成したのち、それらのアイデアを全員で吟味・検討したうえで、最終的にミミクリデザインとしてどんな言葉で自分たちについて表明していくべきなのか、協同的に探求していきます。

ミミクリデザインが大切にしたい“キーワード”を抽出する

まずはコーポレートメッセージを書き始めるための準備から。4〜5人ほどのグループに分かれて、前回の全体会で出てきたアイデアや、関連する資料から、コーポレートメッセージを作る上でヒントになりそうなキーワードを付箋紙に書き出していくところから始まりました。

しばらく黙々とキーワードを書き出したのち、グループ内で共有する時間へ。それぞれが選んだキーワードを大事にしたい理由を語り、ディスカッションを通じて、その背後にある想いを深掘りしていきました。同時に、抜き出したキーワードを模造紙上でカテゴリわけしながら、どのようなキーワードが共通して大事にされているのか、可視化していきました。

その後グループ内でどんな話し合いがされたのか、順番に発表していきました。

まずあるグループで語られたのは、学術的知見との距離感の取り方に関するお話。代表の安斎をはじめ、ミミクリデザインにはアカデミックの領域に造詣が深いメンバーが多いことから、そうした豊富な学術的な知見とどのように向き合い、事業にどう活かしていくのか、議論が展開されていました。

松尾 学術的な研究に裏打ちされた理論に基づいた実践を行うところが、ミミクリデザインの独自性であり、企業としての強みですよね。だけど実際の業務では、どうしても理論だけでは語り得ない事象が出てくるじゃないですか。企業とのお仕事でも、理論的には正しいとされているフレームを当てはめてみるんだけど、うまくいかない場合も結構ありますよね。

そういうフレームから飛び出してしまうような、混沌とした事象があらわれた時に、「これは一体なんなんだろう?」と、みんなで考えていく。そんなふうに、混沌からも学びを得ようとするから、自分たちの思考や知見がさらにアップデートされていくと思っていて、そういう姿勢はミミクリらしさなのではないかと話していました。だから、ともにプロジェクトを進めていくクライアントとしても、そういう楽しみながら学べるスタンスを持った企業だと相性が良いように感じています。

淺田 理論による裏付けがしっかりしていると、企業としてはすごく安心感があると思うんですよね。例えば上司に報告するときも、エビデンスが明確だと報告しやすい。だけど、あまりにも方法論が固定化してしまって、成果が予想されすぎてしまうと、未知の何かが生まれる期待感は薄まってしまうような気がします。ミミクリの場合は、理論はあるんだけど、それだけに固執するのではなく、遊びや余白も大事にしているところが良いところなのかな。

竹田
 余白が大事という話は、もう少しちゃんと言語化したいですよね。なんとなく良さそうなのはわかるけど、具体的にどのように...と聞かれると、答えられない。

青木
 理論はもちろん大切にしているんだけど、理論にがんじがらめにされるいるわけではないと思っていて。極端な例だと、プロセスもやり方も初めから全部決まってて、どんなクライアントとの案件でも同じように進める...というやり方もなくはないと思うんですよね。でも、ミミクリデザインはそれをやらない。クライアントごとにプロセスも方法論も毎回柔軟に変えながらやっているし、ワークショップのプログラムすらも、当日の場の雰囲気とかを見ながら変える時はある。余白を大切にしているから、そういう臨機応変な対応ができるんだと思う。

また別のグループでは、ミミクリデザインが単に与えられた課題を解決する組織ではなく、「その課題は本当に解決すべき課題なのか」というふうに企業の課題そのものや固定観念を問い直したり、クライアント自身が見つめ直す機会を提供しながら、その結果として、クライアントが自分たちが面白いと思う何かを自ら始められるようになることを良しとする風土がある、と語られていました。

安斎 クライアントが、自分たちの力で何かを作ろうとする姿勢や、そもそも作りたいものが何かすらも見失ったまま、流行りの手法に飛びついてしまっている場合がある。ミミクリデザインは、そういう視野狭窄に陥っているクライアントの提案に対して、「課題のリフレーミング(再設定)からやりましょう!」って返し方をする会社だよね。

課題が適切に設定されてないプロジェクトで成果なんて出ないから、最終的に成果が出るように、課題の再設定をするところから関わっていく。そんなふうに“土壌づくり”から一緒にやる。そのプロセスの中で、クライアント企業の一人ひとりが創ることの楽しさとか、喜びを取り戻していくような、いわばイノベーションのステップゼロを支援しようとするスタンスが、人材育成の取り組みでも、商品開発の取り組みでも、根本にあるよね。

青木 「じゃあどういう課題がいいんだろう?」と、クライアントの人たちと一緒に悩むプロセス自体が、人材育成や組織開発の機会になっているのが、ミミクリの面白いところだなと思います。最終的なアウトプットだけでなく、そういった過程にも価値が置かれているところが、面白い。

ウェブサイトに掲載するコーポレートメッセージを考える

その後、いよいよ本日のメインワークであるコーポレートメッセージづくりへと入っていきました。数十分、じっくり文種をを練る時間が与えられ、一人一案ずつ出揃ったタイミングで、“多様決”という方法による投票が行われました。

”多様決”とは、安斎の父・安斎利洋さんが提唱している投票方法で、一人ひとりが赤と青の二種類のシールを持ち、「賛成・共感・良い!」と思ったアイデアには赤いシールを、「反対・疑問・違和感・惜しい!」と思ったアイデアには青いシールを貼り、その掛け算によってアイデアに点数をつけていきます。誰からも賛同を集めるような、いわゆる王道のアイデアよりも、賛否両論を集めるアイデアのほうがイノベーションに繋がりやすいといった考え方に基づくこの方法は、ミミクリデザインが実施するワークショップでも頻繁に用いられています。

ひと通り投票を終えると、点数の高いものから順に検討していきました。

案1.
社会に創造性の土壌を耕す

案2.
研究に支えられたワークショップデザインの手法で課題を捉え直し、ともに新しい変化・価値を探求し、創発するプロセスパートナーです。

和泉 これ、投票した人たちはどの辺に共感したんですか?

浅田
 プロセスパートナーという言葉が、絶妙だなと思ったんですよね。

安斎
 プロセスパートナーは確かにいいなと俺も思った。ただ、(赤ではなくて)青を入れたのは、ワークショップの研究だけをしているわけじゃないしな...とか、そういう細かい言葉が少し気になりました。

一つ目の「創造性の土壌を耕す」というのは、長々と説明するのではなく、実現したい状況をワンフレーズで言い切ってるところがいいなと思った。いろんな案件をやっていくなかで、僕らが何がしたいのかを一言で言っておく必要はあるな、と。そっちは赤を入れましたね。


和泉 じゃあ一旦次...。次に得点が高いのは、この二つですね。

案3.
ミミクリデザインは、組織のクリエイティブな文化を共に耕し、より良い価値や方法を共に探っていく会社です。

案4.
ミミクリデザインは、クリエイティブなチームワークを育み、問いをデザインし、新しい価値を共に探る場です。

和泉 これらに投票した人たちは、どの辺が面白いと思ったポイントだったんですか?

水波 
両方青を入れていて、どちらもすごく好きで、惜しいなという意味での青なんですけど、下のは語呂の悪さだけ少し気になりました。上のは、文化を耕しているのかと考えると、なんとなく違和感がある気がして。文化というのは耕した結果として醸し出されるものように思えて、そう考えると耕してるのはもっと別の何かであるような気がしています。ただ、さっきも畑のメタファーの案(「創造性の土壌を耕す」)が出ていて、どちらも高得点だということを考えると、全員が共有している何か強い思いがあるんだろうなと思います。

安斎 
ステップゼロからやっていく感じを出したいというのは、すごく賛成。文化ではない別の言葉に言い換えるとしたら、「イノベーティブなチームの土壌」とか? ただ、若干の頼りなさは感じたかな。「より良い価値や方法を共に探っていく会社です」と聞いた時に、人によっては「方法も持ってないのかな...」と思うかもしれない。もう少し安心して仕事を依頼できる感じを出したいね。

根間 
「一緒にやっていきます!」というメッセージが強く伝わるのでそこはとても良いなと思うんですが、それだけじゃなくて、そのプロセスや成果を客観的に評価できるところまでがミミクリのいいところかなと思っているので、そこも込められるとなお良くなる気がします。

安斎 
僕らが答えを出すわけじゃないけど、クライアントが自分たちでちゃんと価値を見出すところまではコミットするし、きちんとやりきる。「アウトプットまでちゃんと一緒に走るぜ!」みたいな感じをもう少し出してもいいのかな。

案5.
確かな知見から新たな見立てを提供し、共に価値創造を実現するコンサルティングファームです。

東南 青に入れました。一見すごくいいなと思ったんですけど、よく考えたら、“やってくれそう感”がすごく強くて。だから、なんというか、依存型クライアントが多くやってきそうだな、と思って、まぁ、青かなって...。

安斎
 依存型クライアント(笑)

小田
 「お金払ったらそれくれるんでしょ」みたいな。

東南
 「確かな知見」とか、「提供し」とか、「コンサルティング」ってワードが、そういう印象を生んでるのかもね。

安斎
 難しいな...。

上位のアイデアを一通り検討したところで、終了の時間を迎えました。
最後に安斎から、まとめの言葉が語られました。

安斎 初めてのオフィスの使い方として、とても良い時間を過ごせたと思います。以前、京都市でまちづくりをやっている人たちに、ミミクリがどうやってビジョンを作っているのか話す機会があったんですよね。その時に出てきた仮説として、完成されたビジョンを持っていたとしても、必ずしも良いチームが作られるとは限らないのではないか、という話がありました。むしろモザイクのかかったおぼろげなビジョンを、みんなで頑張って解像度を上げようとする過程を共にすることで、チームが強固に結びついていくこともありうるんじゃないか、と。

今回のコーポレートメッセージも、それぞれがこだわりを持っているなかで、全員が100%完璧だと思うようなメッセージを作るのは難しいと思っています。だから、今後こういう機会を定期的に開いて、対話を重ねながら、なんとなくみんなが意味付けする余地のある、80点くらいの文言を一旦作りましょうよ。そして、それをとりあえずウェブサイトに載せてみて...と、プロトタイピングしながら進めていくのがよいのではないかと思っています。

第一回ではそれぞれ今考えていることを共有し、続く第二回ではアナロジーを用いてその視野を広げ、最後の第三回ではコーポーレートメッセージというかたちで収束させていく...という流れで進められた今回の「ビジョンメイキングワークショップ」。和泉による参加者の主体的な関わり方を促すファシリテーションや、毎回変わる非日常的な空間もあいまって、「ビジョンをつくる」という活動に目全力で、楽しく向き合っていくうちに、チームとしての確実に結束が高まっていくのを感じました。

そして、この第三回全体会から約半年後が経った2019年3月13日、ミミクリデザイン創立2周年の節目となるこの日、ミミクリデザインのウェブサイトが全面リニューアルしました。トップを飾るコーポレートメッセージも一新されています。今回の議論を踏まえて、最終的にどんなメッセージになったのか、ぜひ確かめてみてください!

▼株式会社ミミクリデザイン 公式ウェブサイト

執筆・水波洸
写真・比企 達郎 / 水波洸

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