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277|この話のゴール

ときどき、”この話のゴール”を思い浮かべるんだ。
ちらちらと花びらが舞う桜並木の道を長身のスラっとした美人の君と歩いて行く。
まるで、小さな映画館に流れる無音の映画みたいにチカチカと光ってフィルムがカタカタと回る音だけを立てながら、その光景が再生される。

そのころ、僕はすっかり年をとってしまっているが、君はまだまだこれからの世代だ。
君は「覚えていてくれたんだ」と言って笑い、僕が「もちろん」と答える。
元号は令和からかわっているだろうか。(この話は令和5年に書いている) 

「今から僕が話すながい話を聞いてくれる?」 

君が生まれる前、僕はクリエイターをしていて、それこそ毎日のように製品や作品をつくりつづけていたんだ。
だけど、つくる度に盗まれて、僕は苦悩していた。
インターネットで検索すれば簡単に証拠がみつかるのに、親すらも信じてくれず、「息子は頭がおかしくなってしまった」と吹いて回り、理解者もいない僕は、この話をしなくなって、ある計画を立てた。

「誰も信じやしないさ、こんなTragicomic(悲喜劇)」 

水色の髪をしたクリエイター「海月姫」が現れたころ、僕は君と知り合った。
海月姫には君と同じくらいの年の娘がいて、僕は海月姫によく君のことを話していたんだ。
あのころの君はまだ僕の膝にも届かない身長しかなかったのだけれども。

夜も眠れなくて目の下に大きなクマができてしまった僕の顔を心配そうにのぞき込んで「目の下が黒くなっている」と言った君は、続けて”あること”を言ったんだ。
だから、僕は気づいた。

”こうじゃなかった幸せな未来があったことに” 

僕はそのゴールを思い浮かべると、たまらなく嬉しくなる。

”このためだから、僕は頑張れた” 

いつか聞いた歌の歌詞にあった、「神さまが僕に与えた使命は”君だけのヒーロー”」で良かったのだ。

タキオンもみつかっていない、PVMも後世に残らないかしれないけれど、僕は「もう”それ”を果たせることがわかった」だけで、今日も安心して眠ることができるんだ。

何でも言っちゃう僕だけど、”あのこと”だけは、まだ言っていない。
それは、そのときまで秘密にしておこうと思うんだ。

#ゴール #秘密 #ぜろなゆ

謙虚でポジティブに続けていきたいと思っています!応援よろしくお願いします^^