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梅の実ころりんすっとんとん

家の裏にある梅の木は、数えるほどしか実をつけない。
昨年は14個。
今年もちらほらと花をつけたけれど、スーパーで梅の実が売られる時期になっても、新緑の葉っぱの中から緑の実を見つけられずにいた。

そんなある日。
裏山に登ろうと足元を見ると、なんと、梅の実が1個、落ちているではないか!
梅の木はちょうど裏山に登る石段の横に在る。

えっ? 梅の実?
と、上を見上げてみると、ポツンと梅の実がついていた。

なぁ~んだ。見つけられずにいただけだったんだぁ…。
梅の木が「ちゃんと実をつけましたよ。」と教えてくれたようで、とても嬉しかった。

そこでよく目を凝らしてみると、さらに上のほうにも、もう一つ実がついている!
落ちていた実と合わせて、我が家の梅の木は、今年は3個の実をつけていた。

「梅の実は揺らして採るんだよ」という夫が、木を揺らしてみても一向に落ちる気配はない。
それにココで落とされても、せっかくの実を上手くキャッチする自信がない。
なので枝ごと、夫が上手に切ってくれた。
これは完璧だ!と意気揚々と梅の実を採る。

最後の梅の実はとても美しかった。
こんなに傷のないきれいな実は見たことがない。
とその様子に惚れ惚れと感動していた。
と、その次の瞬間、思いがけないことが起きてしまった。
なんと、美しい梅の実は指の間を滑りぬけて、地面にポトリと落ちてしまったのだ!

あっ、
と思ったのもつかの間、裏山へ通じる坂道の急勾配を梅がコロコロと転がっていく。
もう無我夢中で追いかけてみたが、速い、速い!
どこにも引っかかることなく、一番下の駐車場まで一直線に勢いよく転がっていく。
坂道が急なので、実の転がるスピードは加速するばかりだ。
そのまま花壇にぶつかって、止まってくれ~。
と願いながら、私も必死に追いかけた。
が、勢いよく壁にぶつかった梅の実は、そのまま迷わず右横へ方向を変え、崖の下にポトンと落ちてしまった!

お~い。きれいな梅の実ちゃん、何処へ隠れてしまったの~ぉ?

梅の実ころりんすっとんとん
梅の実ころりんすっとんとん
梅の実ころりんすっとんとん

おむすびを追いかけて穴に落ちてしまったおじいさんの話が頭をよぎる。

梅が転がっていく様子より、追いかけていく私の後ろ姿が笑えた。
とは夫の談話。
もう笑うしかない。

と、ストーリーはここまで。
この出来事を後から振り返ってみた。
このお話は、私の心の何を映し出しているのだろうか。

梅の実は私の願い、夢。
足元に落ちていた実は、その夢の知らせ。
キャッチできずにコロコロと転がって、姿を消してしまった実は、とてもきれいで美しかった。
私は、一番良いものを受け取ることを無意識に拒否している?

いつもどこかで受け取ることを遠慮している。
どこかで妥協してしまう。
お姉ちゃんだから我慢しなさい。
自分は我慢して、他の人を優先しなさい。
そんな母親の声が聴こえてくるようだ。

私はもう一番、良いもの、素敵なものを受け取っても良いんだよ。

実はストーリーには、全く意味などない。
ただ、梅の実がその存在を私に教えてくれた自然界の摂理と奇跡から、今の私の心に映し出している心理を思い描いてみたくなった。

同時にキャッチすることができずに、残念とか、悔しいとか、そんな氣持ちは全くなかった自分に氣付く。
なんだか面白いことが起きたぞ、というワクワクしかない。
そして、その場面をただ笑い合えた夫婦の在り方に幸せを感じている。



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