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気高きレディに祝花を捧ぐ

2020年3月12日、これまで誰かのファンになることなんてほとんどなかった私が、恋に落ちるようにだいすきになってしまった女性、野宮真貴さんが還暦を迎えた。還暦記念ライブは流行病のため延期となり「私は、還暦ライブ実現まで歳は取らないことにしました」とご本人も公言しているけれど、私は私のタイミングで勝手かつ個人的にお祝いしたいと思う。

一応知らない人のために説明しておくと、野宮真貴さんは90年代に大ブレイクしたバンド「ピチカート・ファイヴ」の3代目ボーカリストで、当時のファッションアイコンとして"渋谷系の女王"と呼ばれた人。ピチカート・ファイヴのヒット曲「東京は夜の七時」は、2016年のリオ・パラリンピック閉会式で椎名林檎さんがアレンジして用いたことで話題になった。

私が野宮真貴さんを特別に好きになったのは、2017年の終わり、ある記事を読んだのがきっかけだった。彼女はこの記事のなかでこんなことを言っている。

「できない」ことにフォーカスするのではなくて、「どうやったらできるか」を考える…<中略>…私は歌が本当に大好きですが、バンドで自分の人生を犠牲にするつもりもありませんでした。人生は一度切り。仕事が忙しいからと言って、結婚や出産を後回しにしたくなかったんです。

記事内では、具体的にどうやって仕事と子育ての両立を図ったかが詳しく綴られていた。さらに、年齢を重ねることによる髪質の変化や肉体の衰えなど、自身の「老い」への肯定的な向き合い方についても、何かを隠したり卑屈になったりせず、逆に傲るような雰囲気もなく語っている様子で、とても感じのいい人だなぁと思った。

もう10年以上前から、世の中には現代を生きる女性を鼓舞?するような言葉や動きがどんどんあふれてきている。けれど、私にはどれもあまりフィットする感覚がなかった。励ましのどこかに誰かの理想の押し付けや無理強いがあったり、本当に実現できるの?と思わされる遠い夢の話のように聞こえたりしていた。そんななか、彼女の言葉はとても現実的な質感をもっていて、それが私にとって特別なものに感じられたのだった。

野宮真貴さんはおしゃれが好きで、自分に似合うものを知っている。それを見つける方法や心持ちなんかを、自身のInstagramや書籍でガンガン紹介してくれている。

私は昨年この2冊を買って一気に読んだ。本のなかでもやはり、野宮さんは彼女の美学・哲学を披露するだけでなく、かなり具体的で実践しやすい、本当に参考になるテクニックやエピソードを添えて語る。崇高な思想を見せびらかすような感じではなく「これなら私もできるかも!」と思わせてくれる。野宮さんのそんなところに、私は心底惚れ込んでしまった。

もちろん、私は野宮真貴さんをボーカリストとしても超リスペクトしている。私はバンドのボーカルをやっているものの、実は自分を「バンドマン」だと思ったことがない。圧倒的に男性がマジョリティとなるバンドカルチャーに、どうしても馴染みきれない自分がいつもいる。実際の現場にいると、それに引け目を感じてしまうこともある。しかしそんなときに思い出すのは、野宮真貴さんのことだ。

どんな音楽がすきだっていいし、どんなふうに表現してもいい。
別に特別上手じゃなくても美人じゃなくてもいい。
そして、私は自由におしゃれをしていいんだ!

こんな当たり前のようなことが当たり前にできなくなってしまうのが、「ある社会・文化に埋め込まれている」状態だと思う。時が経ち、"渋谷系"というワードは(皮肉にも)形式化してしまったものの、当時の渋谷系ムーヴメントの根底にある発想は、オルタナティヴであること、つまり「ある文化からの離脱」だった(参照記事)。
私にとって、野宮真貴さんの存在は窮屈な価値観から解き放ってくれる案内人。野宮さんの言葉だけでなく、ソウルフルな力強さ、少女的か弱さ、どちらにも寄らない凛とした歌声と佇まいが、いつも私を励ましてくれる。

ある日、カワムラユキさんにラジオのゲストで呼んでいただいたとき、収録後の食事の席で「野宮真貴さんのファンなんです」と私が言ったところ、野宮さんと一緒に仕事をすることもあるユキさんに「ちょっと雰囲気似てると思う!」と言っていただけたことは、私にとってお守りみたいな言葉になっている。野宮さんが「りんご音楽祭」に出演されていた時も、バックステージで話しかけることなんて到底できなかったけれど、同じ出演者としてあの場にいられたことがとてもうれしかった。
今は野宮さんの足元にも及ばない私も、自分に似合うものを知り、自分を認め、凛と立つ姿が誰かに力を与えるような女性にいつかなれるように…。

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さて、野宮真貴さんへの愛をたっぷり語ったものの、これでも全然語り足りない。私の熱烈な愛をご本人に直接伝えることができる日まで、私も自分自身ができる仕事・活動に向き合おうと思う。
野宮真貴さんが還暦を迎える今年、私はちょうど半分の30歳になる。目標にしたい女性が同じ時代に生きていることは、本当に幸せなことだと思う。ときどき照らし合わせて自分を励ましながら、野宮真貴さんのこれからの活躍を目撃し続けたい。

野宮真貴さん、お誕生日おめでとうございます!
いまのあなたがいつでも一番素敵です。とびっきりの愛を込めて!

ご無理はなさらず、しかしご支援はたいへん助かります!