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リアクション動画のすゝめ―"見る人を見る"ことは快感だ

 これまでに何度も書いてきた通り、自粛期間中からHUNTER×HUNTERの魅力に囚われた私。そんな素晴らしい作品との出会いの喜びをさらに高めてくれたもの、それは「リアクション動画」で誰かとこの感動を"分かち合う"感覚だった!

 YouTubeの検索窓に「ハンターハンター」「HUNTER×HUNTER」などと入れてまず出てきたのは、ストーリー解説や伏線の考察、今後のストーリー予想の動画たち。どの動画も独自の仮説を展開していておもしろい。みんな本当に好きなんだなあ…オタクの生きる世界ってなんて輝きに満ちているんだ…と感動しながら、数日間かけて関連動画を漂流した。そうしてたどり着いた先が、海外のリアクション動画だった。

 はじめてみたリアクション動画がこれ(現在は消されてしまいました)。こらえきれない笑いとともに、心の底のほうから「私が求めてたのは、これだー!」という叫びが聞こえた。

 なかでも私がハマってしまったのが、Kimchi & Tofuというカップルのリアクション動画。とにかくKimchiの反応がめちゃくちゃデカくて、笑いと涙なしには見られない……。それを温かい目で見守るTofuにも癒やされる。

 英語のリスニングが得意ではないので、言っている内容の理解度はたぶん半分くらいだと思うんだけど、そんなことが気にならないくらいにコロコロ変わる表情を見ているだけでおもしろい。本当は全部見てほしいところだけど、あえてひとつ選ぶなら…私的ベストリアクションはこれ!※音量注意

カイトの死が発覚するシーン(18:00~)

"見る人を見る"ことの意味

「リアクション動画」とは、アニメなどを見ている様子を動画にしたもの。これってどんな経緯で始まったんだろう?という疑問が湧いてきて、Googleの検索窓に「リアクション動画」と入れてみたのだが、そのときに出てきたサジェストにちょっと驚いた。

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 これら赤線のキーワードから「一般人がアニメを見る動画ってどこに需要があんの?見る意味がわからん」というのが多くの人の感覚だと推察される。しかし実際私はハマったし、Kimchi & Tofuのチャンネル登録者数は2020年7月11日現在で21.4万人。どう見ても需要があるとしか言いようがない。では、"見る人を見る"意味はどこにあるのだろうか?

"あのシーン"における感情の共有

「リアクション動画」と銘打っているくらいだから、大切なのはリアクションの大きさ。それはもちろんリアクション芸人に求められるような「エンタメとして成立させる」意味もあるが、同時に「ある場面を見ることによって生じる喜怒哀楽の感情をよく伝える」ことでもある。私は後者がかなり重要だと考える。

 私を含め多くの人は、ひとりでアニメを見ているときにリアクション動画のような反応はしない。かなりの感動シーンでも、静かに涙を流すくらいだ。でもたしかに心は震え、喜びや怒り、悲しみなどの感情でいっぱいになっている。その心の状態を誰かがわかりやすく表現している動画を見ることは、その誰かと感情の共有(=共感)ができた状態に近い感覚をもたらすのではないだろうか。下の動画は、ふたりと一緒に見ながら私も思わず泣いてしまった。

メルエムとコムギ、最期のシーン(21:00~)

共感 is 快感

 心理学において「共感」は(基本的には)人間に本能的に備わっている能力であると考えられている。それゆえに、人間の根本的欲求にもつながっている。人間は本来的に他者から共感を得たり、他者に共感したりすることを求めているのだ。だから、自分が大好きな"あのシーン"を見た時の感覚をこの人も同じように持っているんだ…と感じられることは、人間にとって本能的に気持ちのいいこと、つまり「快感」なのだ!

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日本でリアクション市場は育たない?

 ところで、日本人によるリアクション動画の投稿はほとんど見つからなかった。解説動画は山ほど出てくるのに……!これはかなり興味深いぞ…!

 大きな理由として考えられるのは、日頃から感情表現をあまり大きくしすぎないことが美しいとされる日本的コミュニケーション文化。上のGoogle検索で「リアクション動画 うざい」が上位にあるのもそういう理由だろう。

 しかし「日本のアニメを海外の人が見たら…」という文脈なら素直に受け止めることができる。なんとも不思議なことだけど、異文化/異空間を前提としているからこそ楽しめる現象は、実際によくある(ディズニーランドの中でなら盛り上がっている人も気にならない、など)。

狩野英孝に見た市場開拓の光

 ここまで考えて、ふと思い出したのがテレビ番組「アメトーーク!」で昨年放送された「STAR WARS芸人」の回。スター・ウォーズを見たことのない狩野英孝さんが実際に映画を見る様子を放送した。

 もちろん狩野さんだからエンタメ的におもしろいとか、エピソード順に見るというトリック?の効果は大いにあるけれども、作品を初めて見る人の素直なリアクションそのものにワクワクした人は多かったのではないか。

 もしかすると、純粋に日本では「共感カルチャーが未開拓」ということなのかもしれない。有名人でなくともおもしろいリアクション動画を公開してくれる人が、日本にもこの先現れる予感がする。

「共感」で世の中は熱くなる!

喜びをほかの誰かと分かりあう! それだけがこの世の中を熱くする!
【引用】痛快ウキウキ通り - 小沢健二

 リアクション動画を見るとき、自分のなかに起こる気持ちは、自分ひとりでアニメを見ているときとは少し別物のような気がする。動画の中でアニメを見ている彼らと共感しながら、もう一度、新しい気持ちで物語を楽しむことができる。

「共感」は人間のもつとっても素敵な能力であり、人間が本来的にもつ欲求。誰かと一緒に見ていなくても共感を味わえるリアクション動画は、きっとなかなか人が集まれないアフターコロナの世の中を熱くする!と私は信じている。(あとは著作権問題がなんとかなるといいなあ、、、)

【さいごに】
 Kimchi & TofuのおふたりはHUNTER×HUNTER以外にもたくさんのアニメリアクションを上げているのでぜひ見てみてね。リアクションだけじゃなく合間合間にふたりが語り合う感想や考察も、作品やキャラクターへの愛が溢れていて素敵です。


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