原田マハ『いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画』を読む。

 近ごろ、原田マハが書いたものをいろいろ読んでいる。

カフーを待ちわびて
キネマの神様
星がひとつほしいとの祈り
本日は、お日柄もよく
旅屋おかえり
ラブコメ
生きるぼくら
ジヴェルニーの食卓
リーチ先生
いちまいの絵
フーテンのマハ
スイート・ホーム
美しき愚かものたちのタブロー

と、数えてみたら、13冊目になっていた。
どれも面白くて、ぐいぐいひきこまれて読めてしまう。

せっかくなので、読書を楽しんでいることを少し書き残してみたいと思う。

今回は、『いちまいの絵』を。

ふうんと通り過ぎてしまうような絵も、
目の前に生き生きと現れてくるような文章だ。

「アートと向き合うことが仕事だった頃は、
『この絵は輸送が難しそう』とか『保険料はいくらぐらいかかるんだろうか』などと、
余計なことばかり考えてしまい、
雑音ばかりが聞こえてきて、絵の中から聞こえてくるはずの声がちっとも感じられなかった。
ところがいまは、雑音がいっさいない。
そうすると、はっきりと、またより豊かに、絵の中からさまざまな声が聞こえてくるのだ。」
(アヴィニヨンの娘たちーパブロ・ピカソ)

「この一枚の肖像画をみつめれば、
セザンヌがいかに彼の妻の本質に深いまなざしを注ぎ、
それをあぶり出すようにして表現したかがわかる。
確かに、彼女はいかにもつまらなそうな顔をしている。
言いたいことはいっぱいある、けれどいまは言わずにおきましょう
ーーとの彼女の心の声が聞こえてきそうである。」
(セザンヌ夫人ーポール・セザンヌ)

「しかし、モネは耐えた。そして気づいた。
この世のすべての風景は、時間とともにうつろいゆき、
天候によってまったく違った見え方をするのだと。
時々刻々と変化する風景をカンヴァスに写し取ることこそが、
自分が生涯をかけて追い求めていくべきものなのだ
ーーということに。」
(大壁画「睡蓮」ークロード・モネ)

「『静物画』は、英語で’still life’(動かない命)、
フランス語で’nature morte’(死せる自然)と書く。
いずれにしても、それは『静かなる物』であると同時に、
『生きていること』につながる言葉で表現されている。
まさにモランディの静物画そのものではないか。」
(ブリオッシュのある静物ージョルジュ・モランディ)

「ルソーは確かに、アカデミックな手法に則って
二次元のカンヴァスに三次元のイリュージョンを作り出すことは
できなかったかもしれない。
けれど彼のイマジネーションはカンヴァスを超えて私たちに迫ってくる。
『夢』に向き合ったとき、私たちはすでに彼の『夢』の中にいる。
ルソーの世界を生きて呼吸をしている。
彼の描いた『夢』は、夢などではない。
夢のような現実なのだ。」
(夢ーアンリ・ルソー)

こんな風に絵画の見方を知ると、
絵画がこれまでとは違って見えてくると思う。

アートの力をあらためて知ることになった。

私はまだ原田マハのアート関係の本は、
『ジヴェルニーの食卓』しか読んでないけど、
強烈な印象を受けて、
これからもこの作者の本をたくさん読みたいと思った。

原田マハは、20代の頃からアートに夢中で、
美術館に通っていたそうだが、
私が美術館に行くようになったのは、
30代になってから。
これまでに行った美術館は、
国内、イタリア、フランス、デンマークの美術館で、
30箇所にも及ばないと思う。
数が多ければいいというものでもないけど、
もっとたくさんの美術館で、
たくさんアートに出会いたいと思った。

これまで私は、どちらかと言えば、
アートよりも音楽よりな生活をしてきたと思う。
10代の頃から演奏会、音楽ホールに足を運ぶことはあっても、
アートにはあまり興味がなかった。

私は、いちまいの絵に出会いたい。
原田マハの人生を変えてきた絵、
物語が生まれた絵があった。

私もそんな風に絵と出会ってみたいと思った。

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