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JAL123便墜落事故の自衛隊犯人説が嘘である理由

日本航空123便墜落事故の自衛隊犯人説が嘘である理由をまとめました。

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自衛隊無人機衝突説の概要

JAL123便が操縦不能になった原因は飛行機の垂直尾翼が3分の2程度破壊されたことにあります。そのため、何らかの飛行物体がJAL123便の垂直尾翼に衝突したのではないかという説が持ち上がりました。高度24,000フィート(7200m)の上空で飛行機の垂直尾翼に衝突し、それを破壊できる物があるとしたら別の飛行機かミサイルのようなもの以外考えられません。

そして、航空評論家の関川栄一郎氏によりその物体は自衛隊の無人機ではないかという説が唱えられました。関川氏によればJAL123便の墜落事故が発生した1985年8月12日に相模湾で海上自衛隊の当時の新型護衛艦「まつゆき」が試運転中であったとのことです。試運転では単に海上を航行するだけでなく、兵装の運用試験を行うことも重要な目的となっています。その兵装のうち、ミサイル誘導システムの精度をチェックする目的で「無人標的機」が使用されます。関川氏はJAL123便の垂直尾翼に衝突したのはこの無人標的機ではないかと言っています。

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護衛艦「まつゆき」(画像はWikipediaより)

無人機衝突説への反論

当時の自衛隊の無人標的機は3種類あり、それぞれ「ファイア・ビー」、「チャカⅡ」、「RCAT」と呼ばれています。第1の「ファイア・ビー」は実用上昇高度17,000mで事故発生時の高度7200mにゆうに到達できます。「ファイア・ビー」は海上自衛隊の訓練支援艦「あづま」から無線により操作されます。

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「ファイア・ビー」無人標的機(画像はWikipediaより)

第2のチャカⅡは「ファイア・ビー」を小型化した標的機で、対空ミサイルの標的として用いられます。実用上昇高度は9,000mでこれもJAL123便に届きます。飛行の操作は訓練支援艦「あづま」の管制システムによって行われます。

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飛行後、海上に着水した「チャカⅡ」無人標的機(画像はWikipediaより)

第3の「RCAT」は母艦艇からロケット推進により発射されるプロペラ機で、UHF、FM方式の電波でリモートコントロールされる低速標的機です。RCATはレシプロエンジンのプロペラ機のため最高速度が382km/hと遅く、飛行高度もそれほど高く取れないと推測されるため、ジェット機であるJAL123便に衝突するのは困難だと考えられます。

そうなると「ファイア・ビー」か「チャカⅡ」のどちらかが衝突したことになるが、「チャカⅡ」の重量は182㎏であり、JAL123便の垂直尾翼を破壊するには軽すぎると考えられます。一方の「ファイア・ビー」は重量686.3㎏でJAL123便の垂直尾翼を破壊するには十分な重量があります。従って、もし無人標的機が犯人である場合、「ファイア・ビー」の可能性が高いことになります。

しかし、前述のとおり「ファイア・ビー」をリモートコントロールするには海上自衛隊の訓練支援艦が必要です。事故当時は訓練支援艦は「あづま」のみしか実在しなかったのですが、当日「あづま」は広島県の呉港に係留されていました。呉港からでは相模湾上空へ「ファイア・ビー」を飛ばすこともリモートコントロールすることもできません。

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訓練支援艦「あづま」(画像はWikipediaより)

また、「ファイア・ビー」は航続距離や民間航空路線との関係から相模湾では飛行できないことになっているので、「ファイア・ビー」犯人説は嘘であると考えられます。

対艦ミサイル「SSM-1」説の概要

無人標的機「ファイア・ビー」が犯人ではないとするとミサイルが犯人ではないかとする説も出てきました。その説では謎の飛行物体の正体は1985年当時鋭意開発が進められていた沿岸防衛用巡航ミサイル「SSM-1」のプロトタイプで、爆薬を搭載していない演習用のミサイルではないかというものです。

前述のとおり事故発生当時、相模湾では護衛艦「まつゆき」が試運転中でした。その中でミサイルの発射実験と誘導レーダーの操作、命中までのテスト訓練が行われ、演習用ミサイルが何らかのアクシデントによりコントロール不能になり、民間航空機用の空域に侵入し、JAL123便に衝突したのではないかと言われています。また、その説では「SSM-1」に搭載された画像誘導式のシーカー(照準装置)には民間機識別情報が入力されていなかった、演習用なので全ての航空機を敵機とみなすようになっていたのではないかと言われています。

対艦ミサイル「SSM-1」説への反論

まず、「SSM-1」こと88式地対艦誘導弾は巡航ミサイルではなく、地対艦ミサイルで、1985年当時開発中でした。地対艦ミサイルとは陸上から艦船に向けて発射し、艦船を攻撃するもので、護衛艦から発射するミサイルではなく、そもそも飛行機を目標とするミサイルではありません。また、「SSM-1」はレーダー誘導方式でシーカーには画像誘導機能は付いておらず、レーダー誘導でも航空機を狙うようには設計されていません。

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「SSM-1」こと88式地対艦誘導弾(画像はWikipediaより)

しかも、「SSM-1」は地上や海面に沿って敵の艦船に向かうように設計されているので、エンジンも低高度向けになっており、JAL123便のいた高高度まで届くエンジンとは言い難いです。さらに、対艦ミサイルは先端が尖っておらず、空気抵抗による摩擦が起きるので、高度7,000mまで届くのは不可能と言っていいでしょう。そのため、「SSM-1」犯人説も嘘であると考えられます。

(了)

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