仕事のミスは誰のせい?
すべてのミーティングに参加した方がいいよ
何かミスがあった時、その場にいない人のせいになるからさ
私が映像業界に入って間もない頃、同じ業界の大先輩から、こうアドバイスされた。私が不在の場では、私のせいになる、ということだろう。
何言ってるんだ?この人は
これが本当なら、なんて業界に入ってしまったんだろう…
そんな理不尽がまかり通るのか?
と、思ったものだった。
でも、
その後の会社員生活の中で、他人のミスが自分のミスとして扱われる、というケースに何度も直面した。私が不在の場で、私のせいになっていたのだ。
これらの経験を通して、「仕事のミスは誰のせい?」の答えが自分なりに見えてきたのだ。
その中でも思い出深い2つのエピソードがある。
高学歴の新人
入社2年目、ある取締役の指示で書類を提出した。少々、専門的な内容を含んでいたため、綿密に調査した上で作成したものだった。
翌日、「作り直せ」と戻ってきたのは身に覚えのない書類。それは、入社間もない新人が同じタイミングで同取締役に提出した別の書類だった。
見れば、誤字脱字は当たり前、当時はワープロの時代、行替え、行揃えもまともにできず、見直しするという概念もなかったようで、一目見てグチャグチャな書類。
その新人は、会社始まって以来の高学歴であり、同取締役が入社を決定し、上層部の期待が高かった。
そんな優秀なはずの新人がこんな書類を作成・提出する訳がない、という理由で、「実際は新人が作成したグチャグチャ書類は私が作成した書類」と、「綿密な調査の上、実際は私が作成した書類を新人が作成した書類」と断定されたと、秘書室を通して知った。
私が不在の場で、私のせいになっていた。
何度か上司が説明をしても、なかなか受け入れてもらえず、真実が上層部の共通認識になるまでには数日を要した。
なぜこうなったか?
私が高学歴でなかったから?
取締役としては、期待の新人が、視覚的にもグチャグチャな書類を提出するとは、入社させた当事者として認めたくなかったのだろう。というのが上司の見立てだった。
営業課長
それから数年して転職1年後、所属する権利許諾部署に、他社のプロジェクトから著作権関連の使用申請が入った。そのプロジェクトが大規模な話であったため、タイアップの可能性も考え、営業部に取り次いだ。
営業課長に説明するも無下に却下された。気になって、再度説明すると、自社の企画とは結びつかないから事務的に使用許可の手続きでいいと言われ、その通り対応した。
数ヶ月後、そのプロジェクトは始動後大ヒットし、営業部員たちが、自社の著作物が使用されていることを知った。
「自分たちに話が入っていたら、著作物が使われるだけという勿体無いことにはならず、ビジネスに繋げられたはず」、「事務的に使用許可をした若い転職女(私)のせいで、大きなビジネスチャンスを逃した」と、営業部長始め、営業部員たちが憤慨していると、先輩を通して知った。
私が不在の場で、私のせいになっていた。
何度か上司や先輩が説明をし、営業課長に二度も伝えていたという真実が関係者全員の共通認識になってからも、営業部員たちの怒りの矛先は私に向けられたままだったそうだ。
なぜこうなったか?
私がよそ者(転職者)の実績のない若い女だったから?
大きなビジネスチャンスを逃したことについて、営業部員たちの落胆は計り知れない。そして彼らが前に進むためには、やり場のないストレス発散の対象が必要なのだった。
つまり・・・
仕事のミスというものは、
誰かが「この人のせいにしたい」という人のせい
になるということだ。真実でなくてもいいのだ。真実でないからこそ、私が不在の場で、私のせいになっていた。
業界の大先輩の言っていた「ミーティングの場にいない人」は都合がいい人なのかもしれない。
私がターゲットとなったのは、巡り合わせだろう。
でも、渦中にある時は、「どんなに真面目にやってきても、簡単に濡れ衣を着せられる」と絶望し、怒り、それを通り越して、虚しさを感じたのだった。会社を辞めようとも思った。
とはいえ、救いはあった。
いずれのケースも悲観的な側面ばかりではなかった。
高学歴の新人の件では、上司と取締役の秘書さんが、取り持ってくれた。特に普段は無愛想な秘書さんがこの件で親身になってくれたことには驚いたのだった。
また、営業課長の件では、上司や同じ部署のそれほど親しくない先輩たちが、私の言葉を信じ、盾となり守ってくれたおかけで、怒りを抑えることができたのだった。
私にも味方はいたということだ。
自分は特別なスキルがあったわけではなかった。その当時の自分にできたことは、日々誠実に仕事をし、周りの人たちに最低限の挨拶と明るさを持って接していたくらいだった。
案外、そういうことが一番大事なことなのかもしれないと思っている。
さて、
「仕事のミスは誰のせい?」という問いに対しては、普遍的な答えなどないだろう。
とはいえ、誰かが「この人のせいにしたい」という人のせいになる、というケースをたくさん見てきた。誰でもターゲットになりうるということだ。
だから、私は逞しくなった。いちいち絶望するくらいなら、そんな目にあわないように動いたり、暴れたりする方法も見つけて立ち回った。
とりあえず、ミーティングにはなるべく参加するようになったのだった。
私が不在の場で、私のせいにならないように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
追記:見出し画像等は、いらすとやさんからお借りしました。
ありがとうございます!
追記:コングラボードをいただきました!
お読みくださった皆様、ありがとうございました😊
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