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心が吸い寄せられるんだ

ただ走るだけという至ってシンプルな競技。

長距離の観戦が好きだと言うと、かなりの高確率で「一体何が面白いの?」と聞かれますが、個人的には面白くて見ているというよりも心が吸い寄せられるから見ている、という感覚に近いです。

長距離種目が何をもって私を吸い寄せようとしているのか、その全てを語ろうとすると8000000000000字くらいになりそうですので、今回は競技特性などの説明的な部分は省き、個人的に思う長距離の中毒性について3点だけご紹介します。


中毒性その1「何でもない道が特別な道になる」

どんな競技でも、あるいはスポーツでなくとも、聖地というものは存在します。
有名どころであれば、テニス→ウィンブルドン、ハリー・ポッター→キングスクロス駅、などが良い例です。

この流れで「長距離ファン、特に学生駅伝ファンの聖地は箱根だ!」と申し上げることもできますが、今回はもう一歩踏み込ませてください。

我々長距離ファンにとっての聖地は、その辺の道路です。

私の最寄りの聖地は、自宅から徒歩5分。
2020年3月1日の東京マラソンでは、大迫傑さんが自らの持つ日本記録を更新し、東京オリンピックの出場権を手にしました。
その記念すべき日に彼が走ったコースに、私は自宅から徒歩5分で出ることができます。

それまではただの通勤経路の一部でしかなかった道が、大迫さんの活躍によって大きな意味を持つようになりました。

駅に向かうだけで聖地巡礼になるって、すごいことだと思いませんか?


▼「その辺の道」の例

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中毒性その2「一緒に闘う感覚がある」

スタート直前を除いて、いつでも声を出して応援することができるのは長距離の良いところのひとつです。

スポーツと応援はセットでしょ?当たり前じゃないの?と思った方へ。
当たり前ではないんです!泣

例えば、バドミントンではラリー中に声援を送ることは禁止されています。シャトルのイン/アウト判定の助力行為とみなされてしまうからです。(中学時代に部活動の顧問から注意を受けました。。。)

でも、長距離では号砲が鳴って競技がスタートした1秒後からは、いくら声を出して応援しても良い。

むしろ、これはファンの思い上がりかもしれないけれど、こちらが「〇〇くんファイトーーーーーーーーー!!!!!!!!」と叫んだ次の瞬間にギアチェンジしてくれる選手も中にはいます。

陸上の応援はカオスというか、競技場でも沿道でも各々が自由に声を出すためか一体感は皆無なように見えるかと存じます。
それでも実際は、ファン同士の一体感はないとしても、選手-ファン間のそれぞれの結びつきが無数にあるのではないかという見方もできます。


「ラリー中は固唾を飲んで選手たちを見守り、点数が入ったときに思いっきり叫ぶ」という応援スタイルの方が一体感があって盛り上がるように見えるかもしれないけれど、我々も選手と共にあるんだよ、というお話でした。


▼「声が届いている?」と錯覚した、八王子LD

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中毒性その3「選手の顔が良い」

毎日何十kmも走り込み、食事制限と筋力トレーニングによって体中の脂肪を削ぎ落し、どれだけ速く走れるようになってもそのしんどさは変わらないという、過酷な世界。

競技中に選手が見せる表情は、往々にして辛そうなものであることが多いです。

しかしながら、ゴールシーンや駅伝での襷渡しの瞬間には、驚くほどの笑顔を振りまきます。

突然ですが、ここからは読者の皆様へ向けた「顔」のプレゼンタイムです!!!

男子三大駅伝から一つずつ抽出したものであり、長距離ファンなら誰もが「あ~アレね!」となるシーンでもありますので、是非ご覧ください。


★第23回出雲駅伝(2011年)中継所で矢澤曜選手を待つ山本修平選手

⭐︎33:00あたりから再生してください⭐︎

浪人してまで憧れた早稲田の臙脂のユニホームに身を包み、事前インタビューで「矢澤さんから襷を受け取れるなんて夢のようです」と語っていた修平さんの、まばゆい笑顔が目に飛び込んできます。

1年生で大学駅伝デビュー戦という状況で緊張感もあるはずなのに、それ以上に早稲田を背負える誇りやあの矢澤さんから襷を受け取れる喜び、そしてレースへの高揚感で、思わず笑顔になってしまったのだろうと推察しています。


★第47回全日本大学駅伝(2015年)上村和生選手ゴールシーン

⭐︎5:30あたりから再生してください⭐︎

初優勝を狙う東洋大学では、先攻逃げ切り型の作戦をとり、アンカーの上村さんは背後から迫る3代目山の神・神野大地さんを振り切る役目でした。

しっかりとその役割を果たすも、体力と精神力どちらに限界が来ていたのか、残り僅か数百mとなっても辛そうな表情を続ける上村さん。

それが最後の直線、ゴール地点の向こうで待つチームメイトの姿を見た途端、安堵の表情で両手を挙げて手を振り始めます。

走っている最中としてはなかなか珍しいパフォーマンスで、勝手に「世界一可愛いゴールシーン」と呼んでいます。


★第96回箱根駅伝(2020年)中西大翔選手から浦野雄平選手への襷渡し

⭐︎3:02:15あたりから再生してください⭐︎

前哨戦の出雲駅伝で見事初優勝を遂げた國學院大學は、箱根往路優勝も見据えていました。

4区の大翔くんは1年生ながら出雲優勝メンバーでありチームの主力。5区の浦野くんは土方くんと並ぶ國學院のエースで、当時の5区区間記録保持者。
1位の青山学院大学とは僅か1分30秒差という展開に余裕の表情を見せる浦野くんがとても頼もしい。

そして襷渡しの瞬間、小田原中継所に飛び込んでくる大翔くんを笑顔で迎えて「よくやった」と言わんばかりに頭をポンポンする浦野くんの優しいお兄さんっぷりと、達成感と先輩への期待に穏やかな顔つきになる大翔くんの姿が、とても微笑ましく感じられます。


いかがでしたか?
みんな、良い顔をしているでしょう?

この一瞬の表情を見るために、我々はひたすら声を送り続けるといっても過言ではありません。



あとがき

現在、ランナーの多くが思うように練習できない状況が続いていると聞いています。

そんな彼らの輝く姿をこの目に焼き付けることのできる日まで、大人しく過去を振り返ったりSNSを通じた近況報告を楽しんだりしながら、いつまでも、待ち続けます。


最後までお読みくださりありがとうございました。
それではまた、お元気で。

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「こんなことを考える人もいるんだな」という感覚で読んでいただければ幸いです。