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よわよわ作家とつよつよ編集さん 19

19 星乃先生ふたたび(占い2回目)


みつき「……というわけで、デビュー前なのにすでに枯れてるんですよ……しばらく書けそうもないので、受賞前よりひどい状態になっちゃって……」

星乃先生「なるほど。それは哀しいね。泣くよねー」

 今回、私が予約した占いの時間はほんの数十分でした。短いですが、この間の星乃先生は、私にとって、なんでも聞いてくれる心優しいアドバイザーです。

「お金で買える関係」って、素敵です。(←言い方(笑))
 遠い存在なので依存の危険は少ないし、恥も外聞も気にせず、相手の時間を奪ってしまう心配もなく、相談できるんです。この解放感がたまりません。
 そんなわけで、現状を赤裸々に報告し、質問したのでした。

みつき……本、無事に出ますか? なんだか不運続きで、永久に延期されて、永遠に出ない気がしてるんですが。もしかしてスピリチュアル的な何かが、『お前はデビューしないほうがいい』って助言くれてたりします? あるいはその逆で、変な呪いとか受けてます? だったらその辺、教えてほしいんですが」

星乃先生「うんうん(傾聴中)」

みつき「……担当さんには聞けないんです。本当に出るんですか? って。言ったら困らせてしまうし、まるで信用してないみたいな言い方になるじゃないですか。――って、実はそこがいちばんの問題なんですけど。つまり今、自分も周囲も信じるのが難しい状態でして……自己肯定感ダダ下がり中なので、素直に思いやりを受け取れなくなってるみたいなので……。たいして才能もない上に、性格まで悪いとなると救いようがないですよね?」


 星乃先生は「うーん」といいつつカードを切ります。

(このとき先生は「OOのカードが出た」って言ってくださるんですが、その意味までは分からないのでした)

星乃先生「前にも言ったけど、みつきさんは真面目な方なんだよね。だからぐるぐるしちゃう。
 ちょっと話がそれちゃうけど、小説だけじゃなくてエッセイとかブログとかも書いたほうがいいよ。他、文を書く仕事ならいろいろチャレンジしてみて」

 エッセイ? 自分のことを書くなんて恥ずかしすぎるのでパス……と流し、本筋のほうに返答します。

みつき「ええと、それで編集さんとのことでも私、とうとう、『やりにくい、ハズレ作家』になっちゃったなぁと。
 面倒くさいですよね。今回も通話させるまで心配かけちゃって……でも記憶力がないせいか、どこでまちがえたかもわからないというお粗末さでして。人間関係と書籍化デビューを、きっかりわけて考えればいいのかもしれないのですが、切り離せない頑固さが自分にはあって」

 似たようなことの発言を繰り返します。ちっとも整理されてません。 
 ほどなくして、星乃先生が答えました。

星乃先生「でも、みつきさんは、心が折れてないでしょ。世間では一作出して満足する作家さんも多いけれど、『まだまだこんなもんじゃない』って思ってるよ」



みつき「え……?( ゚Д゚)」

 
 自己認識とかけ離れたことを言われたので、ちょっと困惑します。


 折れてない……? さらに、「こんなもんじゃない」……?
 もしそれが本当なら、私の自己肯定感、どん底どころかすごく高いような気がするんですが……?

 
 でも言われてみれば、この一作目が最高だと思ってないのも事実なのでした。
 だって、私の代表作は当然、未来にあるものと思ってる。
 年を重ねれば、興味の方向も変化するし、書けるものが増えていくし、なにより人と関わった経験値が積み重なっているはずだから。(←作家さんたちはみんな、そうだよね? と思ってます)


みつき
「まぁ。たしかに、書くのをやめようと思ったことはないかなぁ……。もの書きを続けること自体に意味があるって思ってるし……」

星乃先生「うん。最初はここでまちがってない。だから安心していいよ」

みつき「ま、待ってまって?( ゚Д゚)」



 本人すら知らないことが次々に提示され、混乱がひどくなる一方です。
 まちがってない? つまり、私がつよつよ出版さんで最初の一歩を踏み出すことは、まちがってないってことですね?
 や、今までも、まちがいだとは思ってなかったけど。
 じゃあ、現在の不運も、それに付随する私のもの思いも、イレギュラーなことではないってことになりますよね?
 むしろ必要なことだった可能性もあると?
 現状認識すらまちがってることを知らされるとは思ってなかったです、先生――詳細を詳しく細く長く!!

星乃先生「あ、ごめん。もう時間が」


 ああああ――。
 しまった――ケチらないで、もっと占い時間を購入しておけばよかったあああ。(先生にも次の予定があるので延長できません)

 占いよりも、いきさつの報告と相談事のほうが多かったため、いつのまにか時間が押していたのです。
 結局、最後の数分、ロスタイムになってから、
「すみません!! 本が無事に出るのはわかりました! それで、私の二冊目っていつ頃になりますか?」
 ということだけを占ってもらい、星乃先生との時間は終わったのです。

 改めて思い返してみると、いろいろ衝撃なことばかりでした。



>20へ続きます

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