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成功の鍵はコミュニケーション|「北のITシーズフェア2024」出展企業レポート第4弾

「北のITシーズフェア2024」出展企業レポート第4弾は、「鍵はコミュニケーション」をテーマにお届けする。今回の4社は【ラテラル・シンキング】【ASE】【システムデザイン開発】【サンクレエ】。さて、どんなコミュニケーションで、自社を、顧客を成功へと導いているのだろうか——。


【ラテラル・シンキング】ありがとう!を贈り合ったら企業は強くなる

謎の生き物と目が合った。横目で見ながら通り過ぎる人もいるようだが、足を止めずにはいられない。

▲展示パネルの生き物は惑星LATEPOに住む宇宙人「ポテラ」!

展示パネルをもう一度よくよく見ると、「『ありがとう』を贈り合う称賛コミュニケーションツールLATEPO」とある。このツールでお互いを称え合う? いったい誰と誰が??

ITツールといえば、業務の効率化やビジネスチャンスの創出を実現するモノとして期待されるのではないだろうか。ところが、LATEPO(ラテポ)は、社内の「心理的安全性」を高め、会社が成長していくためのツールなのだという。

▲ラテラル・シンキング株式会社のみなさん

開発したのは「ラテラル・シンキング株式会社」。常識にとらわれず、さまざまな視点から新しい発想を生み出す「水平思考」と技術で、顧客のニーズに応えている。

同社は、ゴルフ部や野球部などのクラブ活動が活発で、キャンプや社員旅行などの社内行事もある。仕事上では関わりの少ない社員たちが交流できる場を設けているという。
しかし、同社はそこで立ち止まらない。日頃はなかなか日の目を見ない「名もなき業務」にスポットライトを当てたいと考えた。つまり、LATEPOは、同社で働く縁の下の力持ちの「隠れた貢献」を可視化するアプリとしてつくられたのだ。

▲「LATEPO」のデモ画面

LATEPOでは、「名もなき業務」「隠れた貢献」は、「ありがとう」の言葉によって目に見えるようになる。例えば、同僚の振る舞いに対して、「お昼ごはん、ごちそうさま!」「オフィスの掃除ありがとう!」という感謝のメッセージとフラワー(ポイント)を投稿する。それは、社員全員に共有されてタイムラインで見られるため、「いいね」を付けたり、「あいのり」してフラワーを贈ったりできる。その贈られたフラワーは、アイデアしだいでいろいろな使い方ができて、同社の場合は年度末のボーナスになるという。

6年ほど前からLATEPOを使い、同社は変わった。会社が感謝体質となり、社員それぞれが自分の考えや気持ちを安心して発言できる「心理的安全性」が高まり、社員の定着率がより良くなったというのだ。だから、LATEPOを「企業にとってのビタミン」と位置づけ、続けることが大事だと考えている。

【ASE】「COEZO」の声がけで遠く離れた家族の安否が確認できる

いま、家族構成も生活スタイルも昔とはずいぶんと変わり、一人暮らしの高齢者は増加傾向にあるという。遠く離れた街から、老いつつある祖父母や両親を気にかけている人は少なくないだろう。毎日顔を出すのは難しくても、一日にほんの少し言葉を交わすだけで、不安は減るかもしれない。そんな安心をもたらしてくれそうなのが、高齢者みまもりサービス「COEZO(コエゾー)」である。

開発したのは「株式会社ASE(旧アドヴアンスト・ソフト・エンジニアリング)」。1986年の創業以来、社会インフラ系・公共・自治体系・学術系のシステム開発を手がける。環境の変化が著しい近年は、アジャイル開発やモダンアプリケーション開発に取り組んでいる。

▲株式会社ASEのSさん

COEZOの仕組みは——。見守られる側の自宅に設置した専用端末が、1日3回、「おはようございます」「眠れていますか?」「そちらは寒くはないですか?」などと声がけをする。その応答内容と、専用端末が感知した人の動きから安否を確認して、その結果を見守る側の家族に知らせるというものだ。

専用端末は、スマートフォンだから操作がしやすい。でも、誤操作には反応しないから、機械が不得手の人にも使いやすい。また、ネットワーク設備など特別な準備も必要なく、端末を置くだけで利用できるのがいい。

見守る側は、自分のスマホやタブレット、パソコンで安否が確認できる。しかも、COEZOが声がけしてくれるから、仕事などで電話がかけられないときでも不安にならなくていいし、電話するたびに相手の睡眠や外出を妨げているのではと気に病まなくてもいい。

▲COEZOのデモ画面。2022年にリリース、2023年からはLINEアプリからも安否確認ができるようになった
▲見守る側はスマホ・タブレット・パソコン、見守られる側はCOEZO専用端末(右)を使う

いま、開発中なのが「COEZO II」。AI技術を搭載し、高齢者の話し相手になるという。例えば、「昔、妹役が素敵な時代劇があったなあ」と語りかけると、「それは◯◯というドラマですね。妹役は◯◯さん」などと応答してくれる。おしゃべり好きの高齢者の良き相棒になるかもしれない。

【システムデザイン開発】会話を重ねながら顧客の「欲しい!」を叶えていく

今年、創業40年を迎えた「システムデザイン開発株式会社(SDD)」。その社名が示すとおり、事業の柱は受託システム開発である。「企業の『欲しい!』を『形』に」を掲げ、流通・製造業、食品業、農業、医療、サービス業、建設業などさまざまな業種の顧客ニーズに応えるべく、オーダーメイドの基幹システムや業務システムを開発してきた。その実績は100社を超える。

そのほか、「SDD販売管理パッケージ」などの自社製品、直売所専用の総合販売管理システム「ぱっ直」や露路栽培に特化したクラウド型スマート農業サービス「nexag」、灯油販売支援システム「net-de-灯油」などのクラウドサービス、ストレスチェック総合サービス「こころDo!?」などのBPOサービスを手がけている。

▲会場の50インチモニターに流れる「システムデザイン開発」の紹介
▲システムデザイン開発株式会社のWさん

同社が自覚している強みは、「確かな技術力」「信頼と実績」「オーダーメイド開発」であり、現場の意見をしっかりとヒアリングするから「誰でも操作できるインターフェース」をつくれるし、顧客の意見を取り入れながら一緒に開発するから「共に成長」できる。

この強みの根源はコミュニケーションなのだと思う。同社によると、受託システム開発にあたってはシステムエンジニア(SE)が、顧客の悩みや問題点を現場担当者にヒアリングするという。だから、お互いの認識に齟齬がなく、同じゴールを目指せるようだ。しかも、納品して終わりという関係性ではない。運用・保守はもちろん、業務改善や企業成長のためにさらなるヒアリングを重ね、システムに反映させていくのだ。同社が自らを「お客様の業務改善を行うためのコンシェルジュ」と位置づけているのもうなずける。

IT業界やエンジニアには寡黙にパソコンと向き合うイメージがつきまとう。しかし、その仕事はコミュニケーションなしには成り立たない。システムデザイン開発の仕事ぶりを聞いていると、良好なコミュニケーションがあってこそ、顧客ニーズに的確に応え、信頼を得られるのだとつくづく思う。

▲展示ブース前で来場者と会話を重ねる


【サンクレエ】密なコミュニケーションで社会をより良く

IT企業と一口に言っても、その事業は幅広く、職種もさまざまだ。「株式会社サンクレエ」は、主に中小企業を対象としたシステムインテグレータである。次世代型販売支援システム「PieceWorks®Smart」や印刷業に特化した経営管理システム「HIGUMA」など、汎用性の高い自社製品を開発してきた。

▲主力製品「PieceWorks®Smart」のデモ画面

委託システム開発は基本的に行わない。「可能な限り作らない」をモットーに、顧客にはスモールスタートを提案している。「どうすればお客さまの負担が軽減されて、どうすれば課題を解決して成長を実現できるのか。しかもコストを抑えながら」を常々考えていえるからだ。だから、「身近な技術を使ってできる」というのが重要であり、コアパッケージ(既製品)をカスタマイズして、データを連携させることで、さまざまなソリューションを開発しているのだ。

▲株式会社サンクレエの事業展開を表したタペストリー

例えば、「PieceWorks®Smart」に「LINE WORKS」をつなげると、発注点(発注をかける基準となる在庫量)をスマホに知らせられて、発注もれを防げる。というふうに顧客の課題を解決していくわけだが、このとき、活躍するのが「セールスコーディネーター」。顧客の業務を分析して、課題を洗い出し、改善策を提案していく。ここではやはりコミュニケーションが欠かせない。

▲株式会社サンクレエのAさん、Tさん、M社長

近年、同社が力を入れているのが、AI事業。例えば、ドローンと赤外線カメラで空撮を行い、その動画をAIに解析させてヒグマの存在を特定したり、カラーボールを投下して撃退したりしている。あるいは、ウェラブルデバイスを用いてバイタルサイン(体温・血圧・脈拍・呼吸)を測り、健康状態を管理しながら見守る。また、少子高齢化による人手不足を補うため、RPA(ロボットによる自動化)やAI検品などのサービスも開発している。

同社の事業の根幹にあるのは、「人のためになる」「社会のためになる」。だからこそ、顧客の要望に、社会の要請に耳を傾けて新たな価値を創造し続けている。


本日は、コミュニケーションのためのツールを開発した企業と、コミュニケーションを生かして仕事をする企業の4社の展示ブースにご案内した。以上をもって「北のITシーズフェア2024」出展企業レポートは終了である。16社の製品・サービスおよび取り組みはいずれも興味深いものだった。あの場の新しい出会いから、新しいビジネスのタネが生まれると思うとわくわくする。

▲「北のITシーズフェア2024」も滞りなく閉幕。ありがとうございました!


(取材/北海道IT推進協会 広報委員会、ライター 一條 亜紀枝)

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