人が作るシステムを大切に。道外との繋がりを北海道の発展に繋げる│株式会社テクノウイング【会員インタビュー】
IT業界だけではなく、AI(人工知能)が人に代わって業務を行うことは珍しくない時代です。人とAIがどう共存していくのか、人が仕事を失わずに発展していくにはどうしたらいいのかを考える場面は多いのではないでしょうか。そんな時代の変化に対応しながら、システム作りをしているのが「株式会社テクノウイング」です。技術職から経営の道へ進み、40年以上システム作りに携わる代表取締役社長の澤田知宏さんにお話を伺いました。
大きな組織になってもお客様と直接向き合える独立系企業
―主な事業についてお聞かせください
株式会社テクノウイングは、ITソフトウエア開発・販売、技術支援・運用サポートまでを一貫して行う会社です。2018年に株式会社北海道総合技術研究所(HIT技研)と100%の資本・業務提携をし、HIT技研グループとして活動しています。私は2023年にHIT技研社長からテクノウイングの社長に就任した形です。現在はグループ全体で120名ほどの社員がおり、北海道内の独立系ソフトウェア開発企業の中ではそれなりに大きな組織になったと認識しています。
大手メーカーなどの親会社に依存せず、独立系企業として、お客様と直接向き合い、お客様の本当の声を拾い具体的にシステムを作り運用するまでのスピード感も強みです。
また、一般社団法人日本ニアショア開発推進機構より「認定ニアショアベンダー」として認定を受けており、道外から依頼された仕事を北海道を拠点として開発を進めるニアショアにも力を入れています。
繋がりを大切にして作り上げるシステム
ー株式会社テクノウイングを一言でいうとどんな会社ですか?
「人にやさしいシステムを作る」会社です。システムは「人」がいるから生まれるものです。
経営理念として「社会の役に立つ会社であり続ける(三方良し)」を掲げ、その目的として「人に優しいシステム作りを目指す」ことを明文化しています。システムを作る技術職の人間は、パソコンに向かってだれとも話さず一日が終わるようなイメージがあるかもしれませんが、実は人とのコミュニケーションが大切なんです。
特にお客様とのコミュニケーションでは、頂いたご要望に対して本当に必要とされているシステムを提案していくことが大切です。ヒアリング力ともいえます。独立系の強みを活かし、迅速かつ柔軟な対応ができる会社なので、社員個人が持つ権限も大きく、判断と行動の速さを保つには高いコミュニケーション力は必須だと考えています。
また、社内のコミュニケーションも大切にしています。全体では年度初めのキックオフミーティング・中間キックオフ・その他懇親会などで交流を持っています。できれば社長室にも自由に社員が行き来するような環境にしていきたいです。2023年に代表取締役社長に就任してから、社員との1on1ミーティングも全社員と進めており、垣根を意識せず会話ができる環境を作っていきたいです。システムを作る会社だからこそ「人」を大切にする風土を社内から作っています。
8年間社長を務めたHIT技研では、直接社員から相談を受けることも多々ありました。もちろん、相談を受けてから私とその社員のふたりで話を進めるわけではありません。まわりを巻き込んでいきます。下から上へ順番に返事を待つのではなく、思ったことをすぐに相談できる相手がいる事、コミュニケーションに役職は関係ないことを実感していました。部屋を使わないわけにはいきませんが、社長室はいらないと思っているのが本音です。
仕事と直接関係ありませんが、社員の福利厚生の充実も積極的に改善しています。昼食代の補助やスナック・お菓子類の設置など、社員が平等に楽しんでもらえる福利厚生を実現しています。
ーコミュニケーションの大切さをどう伝える?
まずは社長である私から話しかけることや、「どう思う?」と社員に質問することを心がけています。コミュニケーションの取り方は人それぞれ違うもの。やり方を具体的に教えるより、自分がやりやすい方法を見つけてほしいと思っています。技術職から経営側へ、また創業者から会社を受け継いだ経験なども、個性や違いを認めて活かす今の考えに繋がっているのかもしれません。
変化と発展を北海道に取り入れる
ー北海道に拠点を置く意味は?
ニアショアベンダーとして北海道外からの仕事を請け負うことも多くなっていますが、基本的には地域に根差した会社として、北海道の産業を活性化していくことを目指しています。道外との繋がりや新しい開発に携わり、北海道に新しい変化を取り入れています。
扱っているものが無形のものだからこそ、初めましての関係ではビジネスに発展しづらい。北海道で築いてきた人脈が、道外での仕事にも活きています。
ー変化する市場にどう対応している?
開発言語や手法は変わっていくものです。5年経てば古いといってもいいと思います。ただ、人は変わらない。人がやることをしっかり見つけてやっていけばいいと考えています。知識のブラッシュアップは学生の頃より勉強していると言い切れるほど、やっていますね。
ー人材育成について
以前は理工系・コンピュータ・情報系の学校の学生を中心に採用をしていましたが、今は幅広い人材を受け入れています。
その流れもあり、社内で人材を育てる環境も整っています。一番変化を感じるのはコミュニケーションの部分です。
お客様と話し、ヒアリングから本当に困っていることを聞き出す高いコミュニケーションが必要な仕事です。個性を活かしながらスキルを高めること、社内でコミュニケーション力を高める意識を持つことを大切にしています。
また、近年は社員の意識も変わってきており、働き方もさまざまです。入社後に未経者を育てることはもちろん、大学や専門学校との連携で、入社前の学生と繋がることも大切にしています。
社内で人材を育てるには3年はかかると思っています。ただ、3年後には新しい職場や同じIT業界でも新しい分野を選ぶ人も多い。そうなってくると入社前から伝えられることは早めに伝えて、活躍できる環境を提供することも大切だと考えています。給料形態や経営の事も含めて、私から伝えられることは多くあると思っています。長く同じ会社に勤めてもらう、という付き合い方以外の形を開拓しています。
ー澤田さんご自身はいつからコミュニケーションを大切にするようになった?
30年程、自分も技術職をしていました。その頃はコミュニケーションを大切にすることをこれほど考えていたわけではありません。楽しく仕事をするには?理想的な職場を作っていくには?と考えた時、現場から変えていくより経営側に入ることを選びました。その頃から、雑談をしながら楽しさを仕事のパワーに変えていくような職場作りに取り組み、コミュニケーションを大切にする今の考えを持つようになりました。
もちろん、システムを作るおもしろさも知っています。今のようにカーナビゲーションシステムがない時代に地図情報を作ることに携わっていたこともあります。システムが人を助ける、人にやさしいシステムがまさにそこにはありました。
今はオンライン会議も主流になっていますが、実際に集まって会話をすることで、会議前後の会話・話すタイミングを感じ取る事なども大切にしています。人は特にネガティブなことは話しにくいもの。なにかあっても話しやすい環境を作るために、日々の業務中の会話を大切にしています。とはいえ、社長がなにか言うとそのまま通ってしまうこともあるので、必ず「どう思っているか?」を確認するようにしています。
テクノウイングでは、まだ全社員との1on1ミーティングを終えていません。社員全員とのコミュニケーションを深めるには、もっと時間をかけたいと思っていますが、前任者から受け継いだ風土と新しい理念が浸透するように、常に社員に伝えるようにしています。業務報告という形で、自分の想いや日々の事を週に一回必ず社員に伝えることもしています。
マンパワーを活かして、変化に対応
ー株式会社テクノウイングのこれからの展望をお聞かせください
現在グループ会社を合わせて120名ほどの社員がいます。今はまだ、各社で業務を行うフローになっていますが、将来的には120名という大きな力があるからこそできるプロジェクトを手掛けたいと思っています。そのために、まずは社内でのキックオフミーティングをグループ全体で行うなどの取り組みをしていきたいと思います。
システム作りはお客様から求められるところから始まります。そこに、プロ目線で提案をしていく。お客様の近くにいるからこそ、コンサルティングから作り上げていくことができます。現状として、独立系だからこそ迅速にお客様のニーズに応えられていると思っているので、グループ社員全体が集結したときのパワーが楽しみです。一人一人が考える習慣がある企業は大きくなっていくはずですから。
また、北海道は広いので、札幌のように発展している地域だけではないのが現実です。なかなか難しいところはありますが、第一次産業への介入や特定の地域のすべてのシステムを担うということもできたらいいなと考えています。
ーAIをどう取り入れていく?
人の仕事を奪うのではなく、人に優しくをテーマに、AI(人工知能)をうまく取り入れていく活動をしています。システム作りやプログラミングでも一部をAIが仕事を担うようになってきました。AIが私たちの仕事を奪っていくのではなく、楽にしてくれているという認識です。AIについては専門家(北海道大学名誉教授)に社員教育を依頼しており、定期的に学ぶ機会を作っています。この知識を使ってAIを活かしたシステム作りをし、人がやるべきことは人がやり、単純なことはシステムで楽にしていくことを目指しています。
何事も一人で考えていてはわかりません。技術やAIについては特に外部から知識を入れるようにしています。また、繋がりのある北海道内の大学で学生にアンケートをとり、意見や考えを知るようにしています。年齢などには関係なく、ITに興味をもって楽しく働いてくれる・仕事を好きになってくれる人たちと、変化を受け入れながら会社を発展させていきたいと思っています。
インタビューの中で、澤田さんは常に「人がシステムを作っている」ことを強調されていました。だれもが簡単にシステムやAIを使える時代だからこそ、「顔」が見えるシステムを。人のためにITの発展があることを意識しなおし、人と人が繋がりシステムが生まれる事を伝えていく必要があるのではないでしょうか。
取材日2024年8月1日/北海道IT推進協会 広報委員会 ライター 吉川明子