見出し画像

【1000の日々】866/1000

都内の美術館3館を回って作品を集荷する。

ライトを当てながら至近距離で作品の表面にひたすら目をこらす。主な目的は作品の状態の確認なので、ヒビや亀裂や絵の具の剥落やゴミ付着やなんかの有無をただただ目視でスキャンするのであるが、その作業のなかで絵の具の塗り方や厚みや筆致や下書きの線やちょっとした塗り残しの効果やなんかも確実に目に入る。故に画家と最も間近で対話できる気がする至福の時間ともなる。

貸し出すのが20年ぶりの作品とか、去年収蔵されたばかりでさっそく貸していただける作品とか、それぞれである。貸してもらう側としてはただひたすらに嬉しくありがたく、そのことをチェック作業の合間になるべく伝えようと、その作品が入ることで今回の展覧会構成にとても締まりが出ましたとか、初期の貴重な作品でありがたいです、とかちょいちょい話す。お世辞ではない。心底そう思うので話す。貸して下さる側のご担当者も、ベテランであれ新人であれ喜んでくださるのでなお嬉しい。

モノの貸し借りは組織と組織の、ということは人と人の信頼関係あってのもの。

これから日本の美術館業界は下り坂なのだから助け合ってコレクションを活かし合わないとね、と、とある国立館のベテラン学芸員が真顔で言った。

20240613


この記事が参加している募集

もしサポートいただける場合は、私が個人的に支援したい若手アーティストのためにすべて使わせていただきます。