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縁の下の力持ち、事務方スタッフの真剣なウキウキが嬉しい。【美術館再開日記23】

どんなジャンルのクリエーションの現場もそうだと思うが、強力な裏方なしにはことが進まない。舞台芸術であれば、公演パンフレットに照明や音響はもちろん受付事務に至るまで、ほぼ全関係者の氏名が載るが、美術展の場合はそういう慣習がない。しかし名前が出ようが出まいが、たくさんの裏方が日々全国の文化施設で働いている。もちろん当館でもである。

「作品のない展示室」の最終日にパフォーマンス「明日の美術館をひらくために」を行うにあたり、コロナで非公開にせざるを得ないとなって、ならば館内スタッフが観客になればよいと即座に思った。展示もパフォーマンスも観客あって成立する。観客は消費者ではなく場のつくり手だ。そういうつくり手として、皆さんぜひ参加してください!と全スタッフに呼びかけた。

こういうときに喜ぶのは事務方である。いつも裏方の彼ら彼女らだが、何か少しでも美術館を盛り上げられないかと思っている人が多い。何かのかたちで「参加」したい。「つくり手として参加してください!」という呼びかけに、「あの、特に踊ったりしなくてもいいんですよね?」とおずおず確認しにくる人もいれば、以下の日記のように若干違う(けれど楽しい)方向に理解する人たちもいる。どちらも大歓迎で、「その場に立ち会っていただけることが大事です」と答えてきた。裏も表も巻き込んで、「明日の美術館をひらくために」空間と時間を共有する。これが最大の狙いだった。

本番前日には急な出張が入った。本文には書いていないが、1月に他界された写真家・奈良原一高の作品調査である。私は生前最後の、しかも長らく世に出ていなかった(東京で見せるのはほぼ50年ぶりの)、異色のシリーズを紹介する個展を企画担当していた。作家は閉幕直前に他界し、その直後からコロナ禍が始まった。個展をやったことがほとんど夢のようだったが、作品調査で再び作家の息遣いにふれて、夢じゃない、続いている、と実感した。作家は世を去ったけれど、これからなのだ。「作品のない展示室」最終日の前に、「何もかもこれからなんだ」と思える体験をしておけてよかった。
展覧会情報と、チラシpdf(「タイトル未設定」)は以下。特にチラシは美しいので、ぜひちらっとご覧ください↓

上のチラシデザインはラボラトリーズさん。カタログも。




美術館再開72日目、8/24、暑い。どうすれば貢献できるのか、楽しく考える事務方。

写真 2020-08-20 16 51 42


都内コロナ200人くらい。

えーいろいろ楽しいことがあったのだが
ひとつだけ。

8/27のクロージング・プロジェクトの進行表を
館内スタッフ向けにシェアした。
残念ながら非公開のパフォーマンス、立ち会うのは館内スタッフだけである。
学芸員に事務職員にアルバイト。彼ら彼女らも作品づくりを担っている。

夕方、事務方の人たちがなんだかウキウキして
次々と話しかけてくる。

つかださ〜ん、申し込んでなかったけど、
私も途中から参加したい。(ベテラン女性1)

ああぜひぜひ!

あのさ、お面とかかぶったりしていいの?(ベテラン男性)
リアクション大きいほうがいい?(ベテラン女性2)
ベネチアふうマスクとか持ってきていい?(ベテラン女性3)

…は????笑笑笑

あの〜普通でいいです普通で。

なんだ〜普通でいいのか〜、
盛り上げた方がいいのかなって。
ねーそうだよね。(全員)

そこでもう大笑いしてしまったが
いやーいい同僚に恵まれてるわあーと
しみじみ思いました。
明日の夜は最後のリハーサルです。


美術館再開73日目、8/26、猛暑。急きょ、作品の調査に。そして最終リハーサル。

写真 2020-08-26 18 47 07

都内コロナ200人以上。

早朝から夕方まで、山中湖に急な出張。
アーティストの作品調査。

約30年前の作品。
長い病のあとで東京をうろついて撮った。
めちゃくちゃいい。新鮮。
理解、というか感受できる人は、当時少なかったかも。

そして作家は淡々と生み出していただろう。
星を見るのにも夢中だった人なので、
いつも宇宙からこの地を眺めてたのだろう。
今年他界された。

夕方、「明日の美術館をひらくために」の
最終リハーサル。解像度が上がっていた。
ほんの1時間で終了。

で、明日の夕方はこの窓からの眺めが
どうやら大荒れの土砂降りになるらしく笑。
やってくれるねえ低気圧。
でも嵐とか台風の眺めも最高なんです、ここ。
さてさて。




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